劣等生と落伍者   作:hai-nas

13 / 88
皆様、お待たせいたしました。
なかなか時間が取れず、二週間たってしまいすみません。
当分はいつ投稿できるか自分でもわからないので、文字通りの不定期更新となりそうです。




第十三話 授業初日

達也が深雪と別れて教室に入ると、室内は喧噪で満たされていた。まあ入学して二日目の教室など、そんなものだろう。

 

「司波君、オハヨー!」

 

 声のした方を向くと、そこにはエリカがいた。座席に座っているので、恐らくそこが彼女の学校から指定された席なのだろう。

 

「おはようございます」

 

 一つ空席を挟んで、美月も座っている。

 二人に挟まれたその空席が、達也が指定された席だった。

 

「おはよう。また隣だが、よろしくな」

 

「はい、こちらこそよろしくお願いしますね」

 

 達也の言葉に、美月が笑顔を返す。

 

「なんだか私だけ仲間外れな気がするー」

 

 反対側でエリカが不満そうな顔をしていたが、口調からして冗談なのは丸分かりだった。

 

「千葉さんを仲間外れにするのは難しそうだ」

 

「ご、ごめんなさい!そういうつもりじゃなくて、あの‥‥‥‥」

 

 しかし、分かっていないのが若干一名。

 

「美月、今のは冗談だよ?」

 

「えっ‥‥‥‥も、もちろん分かってますよ?」

 

 エリカの説明を聞いて、しどろもどろになる美月。

 その様子を、達也とエリカは暖かい目で、いや、正確には生暖かい目で見ていた。

 

「何ですかその目はー!」

 

 二人の視線に気づき、お返しとばかりに美月は抗議する。

 

「美月が怒ったー」

 

「‥‥‥‥お前らは朝から一体何をやっているんだ」

 

 エリカがそれを茶化しているところに、龍が登校してきた。

 

「あ、龍!オハヨー!」

 

「おはようございます、百済君」

 

「おはよう」

 

 軽く挨拶を交わすと、彼はそのまま自分の席へと移動していく。

 いまだエリカと美月が楽しそうにしているのを横目に、達也も意識を別の事に向けた。

 備え付けの端末にIDカードを差し込み、学校の規則を頭に叩き込んでいく。

 それが終わると、今度は受講登録をキーボードのみで猛然と済ませていく。

 

「‥‥‥‥」

 

 前方から視線を感じ、達也が顔を上げると前の席に座っていた男子生徒と目が合った。

 

「別に見られて問題がある訳ではないが、あまりジッと見られるのは気分のいいものじゃないな」

 

「あっと、すまん。あまりにもすげーから、つい見入っちまった」

 

「そうか?慣れれば脳波アシストなんかよりずっと楽だぞ?」

 

「それよ、それ。今時キーボードオンリーなのも珍しいし、何よりその入力スピードがすげーよ」

 

「そういうものか?」

 

「そりゃそうだろ‥‥‥‥おっと、自己紹介がまだだったな。俺は西城(さいじょう)レオンハルト。親父がハーフで、お袋がクォーターなんだ。レオって呼んでくれ」

 

「司波達也だ。俺の事も達也でいい」

 

「OK、達也。よろしくな」

 

「ああ、よろしく」

 

 改めて互いに挨拶を交わしたところで予鈴が鳴り、思い思いの場所に散っていた生徒たちが次々に自分の席に戻る。

 初回の授業はオリエンテーション。

 達也にとっては全く意味のない内容だ。既に選択授業の登録まで済ませているので、端末を使ったオンラインガイダンスなど退屈なだけである。一科と違って二科は担任がいないから、手順をスキップして学内資料でも検索していようと考えていた。

 しかし本鈴が鳴る直前、前のドアが開いてスーツを着た若い女性が入ってきたのだ。

 この学校の職員であることは間違いないだろうが、だとすれば彼女は一体何をしに来たのだろうか。

 教室中が戸惑いを隠せていないなか、彼女が口を開く。

 

「皆さん、入学おめでとうございます。私は本校で総合カウンセラーを務めている、小野(おの)(はるか)です」

 

 随分と明るい女性だが、何か裏がありそうだと達也は思った。

 

「これより、オンラインによるガイダンスを開始します。皆さんはガイダンスの指示に従ってください。すでに受講登録まで済ませている人は、退室して構いません。ただし、ガイダンス開始後の退室は認められませんので、希望者は今のうちに退室してください」

 

 その言葉が終わると同時に、ガタッと椅子が鳴った。

 達也、ではない。彼はこんなところで目立ちたくなどなかった。

 立ち上がったのは、教室後方の廊下側に座っていた男子生徒だった。

 集まったクラス中の視線を気にも止めずに、彼はそのまま教室を出ていった。

 手元に目を戻し、何を調べて時間を潰そうかとキーボード上で手を止めた達也は、ふと視線を感じて顔を上げる。

 達也に視線を送っていたのは、遥だった。

 他の生徒に怪しまれないように視線を動かしてはいるが、やはり達也を見ている。

 理由に心当たりは一つしかない。

 しかし、彼女は達也と目が合うたびに微笑みを向けてくるのだ。

 受講登録を済ませているのに退室しない自分に興味を持った、にしては随分と親しみを感じる視線に達也はオリエンテーションの時間中ずっと疑問を抱いていたのだった。




ご指摘ありがとうございます。
本文を修正しておきました。
なぜこんなミスが起きたのか、自分でもわかりません。
ただ、これからは本文のチェックをさらにしっかりしていこうと思っております。
この度はお騒がせして申し訳ありませんでした。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。