ほぼ一か月振りの投稿になります。
それでは、本文へどうぞ。
色々と特殊なところのある魔法科高校だが、基本的な制度は普通の学校と変わらない。
ここ第一高校にも、クラブ活動はある。
ただ、魔法と密接なかかわりを持つ、魔法科高校ならではのクラブ活動も多い。
メジャーな魔法競技では、第一から第九まである国立魔法大学の付属高校の間で対抗戦も行われ、その成績が各校間の評価に反映される傾向にある。この対抗戦で優秀な成績を収めたクラブには、クラブの予算からそこに所属する生徒個人の評価に至るまで、さまざまな便宜が与えられている。
よって有力な新入部員の獲得競争は各部の勢力図に直接影響をもたらす重要課題であり、学校もそれを公認、どころか後押ししている感もある。
かくしてこの時期、各クラブの新入部員獲得合戦は
「‥‥‥‥という訳で、この時期は各部間のトラブルが多発するんだよ」
場所は生徒会室。
深雪の作った弁当をじっくり味わいながら、達也は摩利の説明に耳を傾けていた。
「勧誘が激しすぎて授業に支障をきたすこともあるから、新入生勧誘活動には一定の期間、具体的には今日から一週間という制限を設けてあるの」
これは、摩利の隣に座った真由美のセリフだ。
ちなみに達也の隣には、当然のように深雪が寄り添っている。
鈴音とあずさはいない。昨日は真由美が声を掛けていたからで、あの二人は普段クラスメイトとお昼を食べているらしい。
なお、摩利も昨日と同じく自作弁当。一人ダイニングサーバーに頼ることになった真由美はかなりへそを曲げていたが、ようやく機嫌が直ったらしい。明日からは自分もお弁当を作ってくる、と張り切っていた。
「この期間は各部が
摩利のこのセリフに、達也は
「CADの携行は禁止されているのでは?」
「新入生向けのデモンストレーション用に許可が出るんだよ。一応審査はあるんだが、事実上フリーパスでね。そのせいで余計にこの時期は、学内が無法地帯化してしまう」
「学校側としても新入生の入部率を高めるためか、多少のルール破りは黙認状態なの」
摩利の答えと続く真由美の補足は、達也を呆れさせるのに十分なものだった。
「そういう事情でね、風紀委員は今日から一週間、フル回転だ。いや、欠員の補充が間に合って良かった良かった」
そう言いながらチラッと隣を見たのは、おそらく嫌味のつもりだろう。
「良い人が見つかってよかったわね、摩利」
笑顔でさらりと流して、二人とも眉一つ動かさないところを見ると、こういうやり取りは日常茶飯事か。
手元に置かれた達也の湯飲みに、隣からお茶が注ぎ足される。
一口、
「各部のターゲットは成績優秀者、つまり一科生でしょう?俺はあまり役に立たないと思いますが」
「そんなことは気にするな。即戦力として期待しているぞ」
が、すっぱりと却下された。
こうも真正面から切り捨てられると、さすがに告げるべき二の句はない。
「‥‥‥‥はぁ、分かりました。放課後は巡回ですね」
「授業が終わり次第、本部に来てくれ」
摩利の言葉を、達也は大人しく受け入れた。
「それと、今年から臨時委員が加わることになった」
「臨時委員、ですか?突然ですね」
すでに言質を取られた後だったので、達也は皮肉っぽく返すしかない。
「そうだ。各学年から正義感の強い成績優秀者が一人ずつ選ばれるんだが、あたしは正直期待していない。差別意識の高い連中は面倒だからな」
対して、摩利も渋面を作っている。
苦々しく思っていることは明らかだった。
「あくまで試験的に導入されただけだから、きっと大丈夫よ」
真由美が摩利を
達也はそんなことを考えながら、心の中でため息を吐いた。
その隣では、深雪が真由美に指示を
「会長、私たちも取り締まりに加わるのですか?」
「巡回の応援はあーちゃんに行ってもらいます。何かあった時のために、はんぞーくんと私は部活連本部で待機していなければなりませんから、深雪さんはリンちゃんと一緒にお留守番をお願いしますね」
「分かりました」
深雪は
好戦的な性格ではないはずだが、実力的には問題ない。
新たに組み込んだ拘束系の術式を試してみたいのかもしれない、と的外れな考えを