劣等生と落伍者   作:hai-nas

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 本日二回目の投稿です。
 飛ばし過ぎて早速書き溜めがなくなってきました。
 というのも、今話と次話で原作と違う流れになり、書き溜めを書くスピードが格段に落ちたからです。
 また書き溜めがたまり次第、投稿を再開します。一応来週あたりには更新できるのではないかと思っていますが。
 では、どうぞ。


第七話 放課後のお喋り

生徒会だけでなく、ほぼすべての一科の先輩から不興を買ってしまったようだが、達也はそんな事を気にする性質ではなかった。

 

「さて深雪、帰るか」

 

「そうですね、お兄様」

 

 特に用事もないのでまっすぐ家に帰るつもりだった兄妹に、エリカから提案があった。

 

「あ、それじゃあ一緒にケーキでも食べに行かない?この近くに美味しいケーキを出すお店があるんだ」

 

「ケーキですか~」

 

「いいですね。お兄様はいかがなさいますか?」

 

「別に構わないぞ」

 

 はしゃぐ三人を見て、達也はこの流れで行かないとは言い出せず、付き合う事にした。もし深雪がいなかったら断っていたかもしれないが、今ここで自分が行かないと言えば、深雪も行かなくなると思ったからだ。

 

「俺も構わない。だがなエリカ。お前、あいつの事を忘れたというんじゃないだろうな」

 

 その中でただ一人、龍だけがエリカにストップをかけた。

 表情も声もそれまでと何も変わらないはずなのだが、不思議な圧があった。

 

「‥‥‥‥」

 

 固まったエリカ。どうやら龍の指摘は当たっていたらしい。

 しかしそれにしては様子がおかしいと、達也は気が付いた。

 よく見ると、彼女は大量の冷や汗をかいている。

 恐らく、龍の言っていた“あいつ”が原因なのだろうが、と考えていると――

 

「遅かったわね、エリカ」

 

――エリカの背後から、寒風が吹きつけた、気がした。

 その声は同年代のものとは思えないほど、涼やかだったのだ。

 

「入学式が終わったら、校門の前で待ち合わせと言ったのは誰だったかしら?」

 

 その姿は、驚くほど凛としていて、華麗だった。

 達也をして、深雪と同等だと思うほどに。

 

「いくら親友といえども‥‥‥‥許せないことってあるのよ」

 

 “彼女”はゆっくりとエリカに近づき、その肩に手を置いた。

 まるで、エリカを凍らせるかのように。

 

「そこらへんで勘弁してやれ。エリカの奴、失神しそうになっているから」

 

 龍の声に、達也は我に返った。“彼女”の持つ独特な雰囲気にのまれていたらしい。

 気が付けば、エリカの顔面は蒼白を通り越して死人のような色になっている。

 

「お兄ちゃんがそう言うなら、仕方ないか」

 

 “彼女”は一つため息を吐くと、エリカを開放した(ように達也には見えた)。

 そして、達也たちの方に向き直る。

 

「初めまして。私は南海(なんかい)氷華(ひょうか)です」

 

「氷華は俺の義理の妹なんだ」

 

 氷華の自己紹介に続いて、龍が補足する。

 なるほど、だからお兄ちゃんなのかと達也は思った。登場の仕方のわりに呼び方が子供っぽいとも思ったが、そういう余計な事は口にしない。

 代わりに、普通の自己紹介をした。

 

「司波達也です。よろしく」

 

「妹の司波深雪です。よろしくお願いしますね」

 

「親友の千葉エリカで~す。よろしく~」

 

「何がよろしくなの、エリカ」

 

 いつの間にか復活しているエリカに対し、氷華は辛辣な言葉を投げかけた。しかし、その表情は笑っている。

 二人の言う通り、この二人は親友なのだなと達也は実感した。

 

「そういえば美月は?」

 

 エリカの一言で彼女の方を見ると、彼女は立ったまま気絶していたのだった。




 いかがでしたでしょうか。
 これで主人公が全員揃いました。
 氷華の登場シーンはもう少し鮮烈な印象にしたかったのですが、今の私にはこれが限界でした。
 さて、前書きでもお伝えした通り、次回の更新は来週になる予定です。
 消えたりはしませんので、少しの間お待ちください。

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