今回は説明回となります。
よって話はほとんど進みません。
ですが地味に伏線を張っていたりするので、読んでいただけると幸いです。
「そもそも、CADがどういう物かは知っているよな?」
説明が始まって早々に龍から確認されるとは思っていなかった達也だが、魔法理論と魔法工学で満点を取る彼にとって、その程度の質問は朝飯前だった。
「ああ。まず、想子信号と電気信号を相互変換する感応石を使って、魔法師のサイオンを電子的に保存された起動式(魔法陣)へと出力させる。次に魔法師はそれを吸収し、自身の無意識下にある魔法演算領域で魔法を実行する魔法式を組み立てる。最後に魔法式が物体を定義している
「司波、俺はそこまで求めていなかったんだが」
エリカと美月が分かっているのか分かっていないのかはっきりしない表情になっていることに、達也はそこで初めて気が付いた。
「つまるところ、想子を起動式に変換して魔法師の補助をするって認識でいいのよ」
「なんだ、それって常識じゃん」
「途中で知らない単語が出てきて、焦ってしまいましたよ」
氷華の言葉に、二人は納得したようだった。というより、達也の答えが詳しすぎたのだ。
「お兄様はそういった事にお詳しいですから」
深雪はそのことをよく知っているので、驚くことはなかった。
「それで氷華のCADの話になるんだが、正式名称はHK-90多重鎖状連結式凡用型CADという。凡用型は記録できる起動式が多いのは知っているよな?」
「もちろんです」
龍は美月の方を向いて確認を取り、今度はエリカの方を向いた。
「それじゃあエリカ、特化型の特徴は?」
「想子を流し込んでから魔法が発動するまでのタイムラグが短い事ね」
「‥‥‥‥即答だな」
「あはは、高校の受検勉強で龍に叩き込まれたから」
意外にもエリカは、龍の教育によって座学の魔法教科の基礎がしっかりできているのだった。だからと言って、高校でいい成績が取れるとは限らないが。
「そこで、だ。もし凡用型と特化型の特徴を合わせ持つCADがあったら、どうする?」
そんなものある訳がない。二種類のCADは相反しているのだから。
大多数の魔法師はそう答えるはずだ。
しかし、達也は知っていた。
その常識は、すでに過去のものになっていると。
「という訳で俺が開発したのが、多重鎖状連結式凡用型CADなんだ」
「そこを何でもないように言えるのが神才の証拠ね」
エリカの呆れた声に賛同する者は多いだろう。
普通の魔法師はこんな事を考えたり、ましてやそれを実現しようとは思わない。
もはや龍が神才であることは、疑いようがなかった。
「まあ実際、大まかな構造は特化型CADを十数個くっつけただけだし」
「それが非常識だって言ってるの!」
「ちょっと、そういう天才的な発想がどんどん出てくるのがお兄ちゃんなんだから」
「使ってる本人に言われても説得力ないわよ!」
エリカが龍と氷華に交互にツッコんでいるさまは、見ていて面白いものだった。
深雪も美月もそれを見て笑っている。
が、すぐに笑っていられる状況ではなくなった。
「えへへ、やっぱりお兄ちゃんは凄いなあ。元許嫁の私としても、鼻が高いよ」
場が固まった。
「あちゃ~‥‥‥‥」
エリカが頭を抱える。
「やっぱりこうなったか‥‥‥‥」
続いて、龍がため息を吐く。
呆気にとられている達也たちを前に、氷華は止まらない。
「お兄ちゃんったらそれだけじゃなくて最っ高に男らしくてカッコよくて優しくて強くてたくましくてイケメンなんだけど時々可愛かったり女々しかったり弱かったり嫉妬したり子供っぽかったり意地悪だったりしてもう本当に私の王子様っていうかまあ実際昔は王子様だったんだけどその頃よりもずっとずっとずっとずっとずっとずっと私の理想のタイプになってもう夜なんて一緒じゃないと眠れなくなっちゃったし夜だけじゃなくて朝昼晩一日中お兄ちゃんの事を考えてないと不安になっちゃうしちょっとよそ見してたら他の女に盗られちゃいそうだしもうこうなったらいっそのこと抱いてほしいなって思っちゃったりもしくは夜這いしてそのままゴールインっていうのもありかななんて考えてでもそれでお兄ちゃんに嫌われちゃったら嫌だから仕方なく一人で悶々と〇て翌朝おはようのキスしようとしたら緊張しちゃってできなくてそのうちお兄ちゃんが起きてでも寝起きの表情がこれまた素敵で何度襲いかかろうとしたことか分からないのにお兄ちゃんときたら駄目だって止めるから最近はもう焦らしプレイとしか思えなくなっちゃって(ry」
龍とエリカは既にあきらめているのか、ベラベラと喋りまくる彼女を止めようとしない。
その代わり、仕切り直しとばかりに龍が手を差し出してきた。
「俺の名字は戸籍上『南海』だから、兄妹共々よろしく頼む‥‥‥‥」
「あ、ああ、こちらこそ‥‥‥‥」
一人で暴走している氷華をわきに、達也と龍は握手を交わしたのだった。
いかがでしたでしょうか。
話の収拾を収めることが難しく、少々強引な終わり方になってしまいました。
今後の課題といたします。