ファインダーの中の君   作:しゃもじん

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第一話

 テストが終わって、本格的な夏がやってくる。暑さも本格的に厳しくなってきて、できることなら家を出たくないというのに、俺は今、家電量販店の前で待ちぼうけだ。

 

「兄さん、暑いですし中に入りませんか?」

「そうしようか。それにしても、あいつらはいつ戻ってくるんだろうな」

「まぁまぁ……。突然呼び出された、って言っていましたから、仕方ないですよ」

 

 元は俺たち4人で家電を買いに来た。確か、掃除機の寿命が来たとか何だとか。普段俺が使うときに電源がつかないのとは様子が違ったから、佐奈に使わせてみても動かず、卯ノ花が見ても天罰とは関係ない故障というからここまでやってきた。目的自体は俺たち二人で果たしても問題ないのだが、卯ノ花たちがこういう店に来たことがなかったようで、一応待ってみようかということになった。

 

「掃除機って何階?」

「ええと、たしか5階なの」

「エレベーター……はいいか。エスカレーター使おうか」

 

 先に登っていても卯ノ花たちならきっと見つけて追いつくだろう。とりあえず俺たちは目的のフロアめざして、混雑したエスカレーターに乗った。

 

「あれ、兄さん。たしかクラスの人ですよね」

「木賊か、何してるんだろ」

 

 時間もあるので、途中下車して話しかけてみる。確かここのフロアはオーディオとカメラのフロアか。ショーケースの中身はふたけた万円以上の物ばかりだから少し気をつけないと。天罰の効果はいつドコからやってくるやらわからない。

 

「よう、何してるの」

「こんにちは、朋花さん」

「千歳くんに、佐奈ちゃん。こんなところでどうしたの?」

「ちょうど通りかかったら見かけたから、何してるのかなって思って」

 

 話しかけるとちょっとびっくりした様子でこっちを見る。何を見ていたか……は言うまでもなかった。目線の先にあるショーケースには、黒くて大きな一眼レフが鎮座していた。確かに新聞部でカメラは使うと聞いているし、少し本格的なのも欲しくなるのだろうか。

 

「えっとね、これ買おうかなって」

「これ……って、カメラだよね」

「そうそう、新聞部でもそろそろデジタルカメラに切り替えたいなぁって話があってね。せっかくだからデジタル一眼に手をだしてみたかったんだ」

 

 値札には数字が6桁。俺のお小遣いじゃ届くわけもないし、多分佐奈もこれだけの額は動かせないだろう。一体どこからそんなお金を出すのだろうか。

 

「にしても、流石にこの値段は高すぎないか。木賊ってアルバイトとかしてるわけじゃなかったよね」

「そうだね、だからちょっと無理言ってお年玉引き出してこようかなって」

 

 お年玉、か。そう言えば毎年もらってはいたけれどもこの体質もあって、自分で管理したためしがない。祖父さんも佐奈も、勝手に使い込むことはしてないとは思うがはて、今いくら溜まっているのかすら知る由もない。そんなことを考えてちらっと佐奈を見るも、当然のことながら不思議な顔をされるだけだった。

 

「高校生でもこういう高いカメラ買っちゃうんですね」

「あはは……。それにボク、新聞以外でもカメラ使ってるからね。そういう意味でも買っちゃおうかなって」

 

 カメラを見ている木賊の表情はひときわ明るく、見ているこっちも少し気分が良くなってくる。そういえば、確か前にカメラを持っていたような気がしたが、あれとこれは何か違うことでもあるのだろうか。

 

「そう言えば、前持ってたカメラは?」

「あれはフィルムだから、焼き増しとか困るんだよねぇ……。デジタルなら焼き増し代そのままでもっと安価に……」

「ちょっと待て、新聞部ってそんな裏稼業やってたのか」

「そうですよ! 盗撮はいけないことですよ、見逃す代わりに兄さんの写真は私が買い取ります」

「いや佐奈にも売るなよ」

 

 逆に言えばその瞬間に取り上げて、写真を消させることも可能になる気がするが言わないでおこう。それに俺がそんな実力行使をしようものなら、確実に壊すビジョンが見える。まずはそんな写真を撮られないようにするべきか。

 

「っと、千歳くんは何しに来たの?」

「家の掃除機が壊れちゃって、佐奈と……あとは卯ノ花とかもいるけど、まだ来てないみたい」

 

 そこからは軽く雑談をしつつ、カメラを見ることにした。レンズ1つとってもびっくりするほど高価なものばかりなことにも驚いてしまうが、それ以上にびっくりしたのは木賊の知識量だ。もちろん、新聞部でいつもカメラを持ち歩いているのだから多少は知っていると思っていたが、その話の熱量は生半可なものじゃない。

 

「でね、このレンズが……って、千歳くん。元の用事は大丈夫なの?」

「流石にそろそろまずいかも」

「そっか、それじゃここらで解散かな。ボクもそろそろ決めて、メモってから帰ろうかな、それじゃまたね!」

 

 流石にそろそろ卯ノ花の用事も終わっただろう、俺たちもこれ以上お使いに時間をかけるわけにはいかない。木賊と別れて上の階へと向かう。登ってすぐに卯ノ花たちが待ち伏せしていて、少し不機嫌そうだったのをなだめるのには苦労した。

 




さて10周年ですが需要はあるのでしょうか......
励みになるので、もしよかったらコメントや感想のほどよろしくお願いします。
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