それから、長い夏休みの間、朋花の部活が忙しくないときはデートをしたり、お互いの家で遊んだりした。当然すぐにこの関係は露呈したが、卯ノ花は今更驚きを見せることもなく、佐奈も当初はショックを受けていたみたいだが、すぐにいつもの調子に戻った。
「へぇ……まさかハルが、朋花と付き合うなんてねぇ。おめでとう」
「ありがとう、ってなんで知ってるんだ!?」
「そりゃ、朋花のことだもん。あたしが知らないわけないでしょ」
胸を張ってみせる葵だが、いくら親友でもその交際情報を知ってなければならない、なんてのは聞いたことがないぞ。ましてや朋花が言いふらすとは思えない。
「朋花から直接聞いたのか?」
「さぁ、ここは女の勘、ってことにしておこうかしら。とはいえ、まさか朋花に先を越されちゃうなんてね」
「言うて葵も告白とかされてただろ」
「それは、前言ったじゃん。そういうのはあたしに似合わないって」
「それでも先に越された、っていうんだ」
「ハルくん、深入りし過ぎはダメよ。女の子はそういうものなんだから」
割って入った渉さんに、それ以上の詮索は止められる。ふいにドアが開き、お客がやってくる。振り向くと、そこには一番好きな人が。
「いらっしゃいませ……って朋花ぁ! おめでとう!」
「うわっ、葵ちゃん危ないって」
「だって朋花に恋人なんて、嬉しくないわけないじゃない」
「だからっていきなり抱きつかなくても、ボクもびっくりしちゃうよ」
朋花に恋人が出来て一番喜んでいるのはどうやら葵らしい。さっきから店番を放棄して、朋花にあれこれ聞いてみては嬉しそうにしている。
「コホン……葵くん、そろそろ接客に戻ってもらえるかな。ところで春樹よ、ひ孫の顔はいつ見れそうかの」
「高校生にそんなことを期待するんじゃねぇ! しかも本人も目の前にいるってのに」
「えっと……ひぃ、ふぅ、みぃ」
「祖父さんの話を真面目にとるな!」
ふざけて指折り数えてみせた朋花の頭を軽く叩く。あうっ、っと声を出しておとなしくなったが、彼女に手を上げた、と周りからこっぴどく叱られたのは言うまでもなかった。
「それじゃ朋花、行こうか」
「うん、ハルくんが連れて行ってくれるならどこへでも!」
あの夏から幾度かの季節が過ぎ、卯ノ花たちは試練に合格して家から去っていった。事情を知らない彼女には、実家に帰るとしか伝えてなかったが、送別会のときに名残惜しそうにしていたのを覚えている。
今日は車で、少し遠出してデートに行く。桜の時期ということで、郊外の神社に花見をしつつ写真を撮りたいという朋花の希望を聞いてのことだ。きっとこれからも、彼女とならどこにだって行ける。
END
共通ルートでも、個別ルートでも存在感を放っていた彼女をどこかで救いたい、というのはまぁ大げさな言い方ですがそんなつもりで書きました。
とりあえず今回は非R-18ということで全編投稿しましたが、またこの物語のアフターだったり、幕間のお話は普段のところ(オムニバス形式のアレ)にでも投稿しますね。
それでは、読了ありがとうございました