いっそファンボあたりに先行公開しちゃったほうが良いのかな?とも思うけど、そのあたりはコメントなりツイッターなりで意見くれれば喜んで聞きます。
それから数日、今度は俺ひとりでお使いに駆り出された。佐奈は店番に、卯ノ花たちは遊びに出掛けて行ってしまっているから、必然的に俺に仕事が回ってきたわけだ。幸い、卯ノ花から扇子を借りているから少しは不幸の度合いも減っているとは思うが……。
「で、お使いと称した厄介払いだったってことだったんだ」
「厄介払いって言うなよ、散歩だ散歩。孫の健康に気を配った祖父さんのありがたいお言葉だ」
やけに含みのある笑顔でメモを渡した時点で、気付いておけばよかった。強引に送り出された後にメモを開くと、そこには品物はひとつも書かれていなかった。確かに夏休みも間近、テストも終わってすることがなくなったからとゲームに没頭していた俺も悪かったが、だからといってこの猛暑の中、長男を外に放逐する家族も考えものじゃないか。
そんなわけで、川べりを歩いていたらカメラを持った木賊に出会った。手にはこの前ショーケースの中にあった黒く光るカメラ、あれだけ高いカメラだったが、結局許可は降りたらしい。そしてようやく、今日手元に届いたということでいつも以上のハイテンションな木賊と駄弁ることになった。
「まぁまぁ、結果的に千歳くんは買ったばかりの新品ピカピカなカメラを見ることができたんだから。それだけでも外に出た意味があったでしょ」
「それ、俺に旨味あるのか?」
「あるんじゃない、ボクは試写対象ができて、千歳くんはこのカメラの被写体第一号になれる!」
平然と言ってのけたなこいつ……。これ以上突っ込んでも、きっと俺が一方的に劣勢だ。程々に切り上げて、今度はカメラの話に切り替える。流石にこの天罰体質で自分のカメラがほしい、とは全く思えないし、思っても買えるわけがない。だが、やはり目新しいもの好きなのは男の性で、あのときも木賊のことが少し羨ましかった、といのは嘘じゃない。
「それで、そのカメラってどう凄いんだ?」
「えぇ、前も同じ事聞かなかった? 仕方ないなぁ千歳くんだから2回も教えてあげるんだよ」
少しもったいぶってみせたものの、むしろ話したくてたまらない、という表情は隠す気もなさそうだ。せっかくなので改めて、そのカメラの良さについて説明してもらおう。それに、俺としても一人でぶらつくよりは遥かに気が楽というものだ。今までのパターンだと、一人で歩いているところを不審者として通報され、職質ルートもないとは言えない。
「えっとね、千歳くんは、フィルムカメラを使ったことあるかな」
「一応、突然蓋が開いて感光しちゃったから写真はおじゃんになったけど」
「そう、それ! デジタルはそういうことが起きないんだ」
「というと、現像しなくて大丈夫ってことなの?」
「普通のカメラはフィルムに絵を写し取るんだけど、このデジタル一眼は画像として記録するんだ。だからそういった事故が起こらないんだ」
「じゃあ、撮った写真はどうやって」
「パソコンとか、お店に持っていたたらちゃんと印刷してくれるよ。あとは……ほら、データだからすぐにどんな写真が撮れたか確認できるんだ」
そう言って俺のそばに寄り、カメラの裏面を見せる。モニターがついていて、そこにデカデカと画像が映し出されていた。おそらくさっき撮ったと思わしき、土手に咲いていた花がそこには写っていた。
「これ、さっき撮ったの?」
「そうそう、撮ってすぐに確認できるから便利なんだよね」
次々と写真を見せてくる木賊は更に俺の近くによってくる。本人は興奮もあって気付いていないのだろうが、腕と腕が触れ合い顔も近くなっている。カメラを操作するたびに揺れる綺麗な青髪が、少し頬を撫でた。普段はこの調子だからそういうことを意識したことはなかったが、これでも女子なのだから近寄られるとそれなりには俺も緊張して身構えてしまう。
「でね、デジタルだからこういうことも……って千歳くん、ちゃんと聞いてる?」
「ちゃんと聞いてるよ。とにかくデジタル一眼ってすごいんだな」
「あっ、ごまかした! まぁでも、論より証拠って言うし千歳くんを撮って見せれば良いんだ」
そういうなり、操作をやめて俺にカメラを向けてくる。あまり人から写真を撮られるというシチュエーションに慣れていないもので、どういう顔をして良いのかわからないまま、何度かシャッター音が響く。機械的だが小気味よい音で、結局木賊が飽きるまで好きにさせることにした。
「そういえば、そんなに撮って大丈夫なのか。別に俺の画像なんて何も使えないだろうに」
「大丈夫だよ。フィルムと違って、あとで消せばまた保存できるし」
「そっか……まぁそうだよな」
なぜ残念そうにしてしまったのか、自分でも不思議な気持ちにはなる。とはいえ、変に残って後から佐奈の手に渡ったらそれはそれで困るな。それに残らないなら、そこまで肩肘張って少しでも格好良く写ろうとする必要もないか。
「あっ、今の表情良いね! 千歳くん、意外と格好いいしモテたりしないの?」
「意外は余計だ。今まで彼女がいた事なんてないわ」
「そっかー。そうだよね、近くにあんな良い女の子が3人もいるんだから、必要ないか」
「具体的な数値で言われると気になるからやめろ! それにそいつらをカウントに入れるな」
おそらく、その3人とは卯ノ花と、あとは佐奈と葵だろうか。卯ノ花はともかく、葵は幼馴染でそんなことを思う対象にはならないし、佐奈に至っては妹だ。流石に親族をそういう目で見るほど変態ではない。
「そんなこと言っても、ボクから見たら千歳くんはもっとモテてもおかしくないよ。ほら、あの校舎屋上の」
「ちょっと待て、それ以上は言うな」
「えっ、もしかして図星?」
墓穴を掘った、とはまさにこのことだろうか。言われるまで忘れていたが、ちょっと前に手紙をもらい、そして告白を断ったのは事実だ。壁に耳あり障子に目あり、とはよく言ったものだがこの学校においては市内に新聞部あり、とでも言ったほうが良さそうだ。
「ともかく、あれはあんまりおおっぴらにしないでくれ」
「分かってるよ、ボクもそこまで無節操な報道をする気はないし、たまにはボクだけが知ってる千歳くんの秘密、なんて良いかな」
「その心は」
「いざという際の交渉材料に」
小悪魔めいた笑みを浮かべて言ってのける。まぁ、流石に俺だけじゃなくて相手の女の子の心まで傷つけかねないことはしないと信じているが。
その後も好き勝手に写真を撮られ続けること数十分、そろそろ飽きてきただろうかというときに事件は起こった。ファインダーを覗いたまま俺と並んで歩く木賊の後ろから、猛スピードで自転車が迫ってくる。今から声をかけても、撮影するためにしゃがみこんだ今の状態だと、立ち上がるのが精一杯だ。考えるより早く、俺の体は動いていた。
「危ない!」
「えっ、うわっ」
木賊を抱えて、土手の端まで飛び退く。自転車はかわせたが、今度は足をついたところが悪かった。そこだけ舗装が剥がれて、木賊を抱えたまま川へと転げ落ちていく。走り去った自転車から「危ないだろ!」との怒声が聞こえるが、それよりもこのままでは2人とも川へ落ちてしまう。何とかしなければ、と考えようとした瞬間、背中に鈍い痛みが走る。川には落っこちなかったが、どうやらコンクリートの地面に叩きつけられたらしい。幸い俺が下になっているおかげで、木賊は大怪我していないようだ。
「あいたたた……千歳くん、大丈夫?」
「けほっ、こほっ……大丈夫だけど、声が」
背中を強打したことで、声がでない。そうだ、さっき木賊が手にしていたカメラは大丈夫だろうか。買ったばかりなのに、こんなことで傷つけたら本当に申し訳ない。痛む体を引き起こし、見ると木賊の手元にはしっかりカメラがあった。
「それより、カメラ壊れてない?」
「それは大丈夫だけど、それよりって千歳くんの怪我のほうが心配だよ」
「俺は大丈夫だから。それに落っこちたのは俺が原因だし」
おそらく天罰の影響もあるだろう、ここで川に落ちなかったのは卯ノ花の扇子効果だろうか。ともかく、俺以外に被害が及ばなくてよかった、そう安堵していると泣きそうな声で怒鳴られた。
「そんな事言わないでよ、ボクが気をつけてなかったから、千歳くんに怪我させちゃったし……本当に、ごめんなさい」
「怒ってるのか、謝ってるのかわからないけど……まぁ、心配してくれてありがとう」
痛みもおさまって、ようやく木賊の方を見ると多少の擦り傷はあったが怪我はなさそうだ。それよりも今にも泣き出しそうな顔で俺を見てくることに困っている。巻き込んだのは俺とはいえ、女の子に泣かれてしまうと男は弱いものだ。とりあえず慰めようとするも、何をして良いのかわからない。
誕生日に更新する小説は和奏ちゃんではないのか?といわれそうだけど、たまにはこういうのもいいかなと。
流石に10年前のゲームで、ヒロインですら無い子が主役の小説はなかなかUA伸びないっすねぇ......。でも楽しいから続けちゃう