ファインダーの中の君   作:しゃもじん

4 / 10
執筆したのはここまで6/13です。いわゆる書き溜めを小出ししているやつ。



第四話

「そういえば、朝ハルとなにか話してたみたいだけど、どうしたの?」

「えっとね、昨日ちょっと千歳くんとあったんだけど、そのときに怪我させちゃったみたいでね……」

 

 昨日の事の顛末について、隠し切ることは難しそうだった。眼の前には葵ちゃんとヒメちゃん。親友なだけにこういう時の嘘はつけない。実際、写真を撮っていたら自転車に轢かれそうになって、そして千歳くんに助けてもらったのだから。

 簡単に説明すると、葵ちゃんは驚いているようだったけれども、ヒメちゃんは意外と平然としていた。もしかしたら昨日のうちに、何があったか聞いていたのかもしれない。確か千歳くんの家に住んでるんだったっけ。

 

「なるほどな……。朝あやつがやたら目覚めが悪そうにしてたのはそういう事じゃったか」

「もしかして、ヒメちゃんは千歳くんから何があったか聞いてたの?」

「うむ、まぁ、まさか朋花を巻き込んでいたとは聞いてなかったが……」

 

 一瞬言いよどむヒメちゃん。しばしの間をおいて、そして次に口を開いたとき、まさかの質問を返された。

 

「そうか、朝からお主が挙動不審だった理由がようやくわかった。朝からハルキをずっと見ておったじゃろ」

「なっ、そ、そんなこと、ないって」

「そうか……。まぁ、昨日の命の恩人ともあれば、意識しないわけもないか」

 

 命の恩人なんてそんな大げさな、とは思ったものの、ボクにとってこの新しいカメラは生きがいとも言える。それだけではなく、あのスピードの自転車に轢かれたらただじゃ済まなかっただろう。それに、なんとなく気になって千歳くんの様子を伺っていたのも事実だ。どれをとっても否定する要素はなかった。

 

「それで、ハルったら自分が怪我するのも気にせずに助けちゃったんだ。やっぱりハルったらそういうところ変わらないんだから」

「なるほどのぅ……。突然の自転車、身を挺して守るクラスメイトの格好いい一面を見て、胸キュン。といったことか」

「ちょ、ちょっとそこまでは言ってないよ!」

 

 ひどく演技がかったヒメちゃんの言葉ではあったが、事実あのときの千歳くんはボクのために文字通り体を張って助けてくれた。正直、格好良かったというのも事実だ。もしこれが千歳くんじゃなかったら、好きになっちゃっていたかもしれない。でも……

 

「朋花とハルかぁ、良いんじゃない?」

「ちょっと葵ちゃんまで何言ってるのさ!?」

「ハルキはああ見えても中々芯のある男じゃからな。妾から見ても良い男だと思うぞ」

「だからボクを置いてそんな話を進めないで!」

 

 それにしても、そんなにボクは千歳くんのことを見ていただろうか。確かに、ちょっと気になって様子を伺い続けていた。2限の数学で消しゴムを落としていたことや、3限の現代文でひたすら芯が出ないシャーペンを振っていたところまで覚えている。そう言われてみたら、今日って一日、ずっと千歳くんを見ていたのだろうか。でも、きっとこれは昨日の今日だからで、本当に気になるのとは違うはず。

 

「えっ、いいんじゃない。朋花ならハルみたいな怠けっぽい男でもビシバシ行けそうだし」

「その言い方じゃと、おすすめしているのか、ただハルキを貶したいのかわからんのう」

「そんなこと言ったって、だって千歳くんは……」

「ハルがどうしたの?」

 

 きょとんとした顔でこっちを向く葵ちゃんを前に、何も言えなくなってしまった。親友を自負するボクだから言える、葵ちゃんは千歳くんのことが好きだ。同じ幼馴染でも浅葱くんに向ける目と千歳くんに向ける目じゃ全然違うのを、一番近くで見せられているのだから。色んな人の色恋に首を突っ込んで、そして面白おかしく書いてきたからよく分かる……って、この言い方はなかったかな。でも、葵ちゃんが千歳くんのことを好きだと思っていることは確信を持っている。

 それなのに、今目の前で葵ちゃんは、ボクに千歳くんを薦めるかのような発言を続けている。本当に、それでいいの?

 

「ううん、なんでもない。とにかく、千歳くんにはもっとボクよりいい人が居るって。それこそ葵ちゃんとか、ヒメちゃんだってお似合いだと思うよ」

「妾はその、一応あれでも親戚じゃからな」

「あたしは、ハルにそもそも女の子って思ってもらえてないと思うよ」

「……それ、ボクもじゃないかな」

 

 それからは話が変わり、昨日のテレビみたいな他愛のない話をしているうちに昼休みが終わった。結局千歳くんは、昼休みが終わるまで東雲くんと二人だったようで、チャイムが鳴る寸前に駆け込んできた。

 

 

 

 昼休みは結局男二人で寂しく飯を食っただけだった。それから教室に戻る最中、まとめて老竹先生に見つかって細々したことの説教を受けたおかげで、授業に遅れかけるとは思ってなかったが。午後も妙な目線は変わらず。後ろからずっと見つめられるというのもやはり気になる。前にルリがずっと監視してきたときのような刺々しさはないものの、それでもくすぐったいような感じで、午後の授業も集中できないまま放課後を迎えた。

 

「よし、帰るか」

「ハルはこのあとどうするの」

「俺は早いところ家に帰るよ。今日は別に用事もないし」

「そっか、またねハル」

「じゃあね、千歳くん」

 

 目線の主が木賊なことは知っているが、変に触れると何が起こるかわかったものじゃない。まぁ、大方のところ昨日のことを引きずっているのだろうが、あれぐらい俺からしたらいつものことだというのに。校門で佐奈と出会い、そのまま二人で帰路へ。卯ノ花とルリとは深い意味はないが、なんとなく別に帰った。

 

「兄さん、今日はなんだか疲れてるようなの」

「そうか? 別にそんな気はしないが」

「それなら良いんですけど……。何かストレスフルなことってありました?」

「天罰の影響はまぁ……って、それはいまさらストレスにもならないけど」

 

 そう言えば佐奈は昨日の話を知らないんだっけ。大事にしたくないからここは無理に言うまい。それに痛みのほうは卯ノ花に取ってもらったから、黙っておけばバレることも無いはずだ。

 

「そういえば、今朝洗濯物を見てたら兄さんの服が泥まみれだったんですけど、もしかして喧嘩にでも巻き込まれました?」

「あー……まぁそんなところだな」

 

 なんて思っているフシから、早速例の件について聞かれた。もしかして、俺の天罰って心の中で思ったことを読まれて、当てられることも含まれているのか? そんな冗談はさておき、土手から落ちてコンクリで背中を打った、というよりは喧嘩で軽く土をかぶったという方が良い。

 

「ダメですよ、喧嘩するならもっとコテンパンにしちゃわないと。もし兄さんが勝てないような相手だったら……その時は私がこの身を捧げてでも兄さんを助けますから、いつどんなときでも兄さんのために」

「ちょっとまて、妹の身を売り渡さなきゃならないほど俺は弱くないぞ」

「良かったです、せめて私の純潔は兄さんに渡してからじゃないと心の準備が」

「だからその思考から離れろ!」

 

 全く何を言い出すことか。ともかくごまかし切ることには成功した。それにしても、なんで俺はこのことを隠そうとしているのだろうか。別にこの程度の天罰、隠さなくても日常茶飯事だというのに。

 

「……あれ、何でだ」

「どうしたんですか」

「いや、気にしないでくれ」

 

 ふと口をついて出た言葉だったが、結局のところ、それは木賊を巻き込んであんな顔をさせてしまったから、という他なかった。ただのクラスメイトの女子だというのに、そこまで気にするようなことなのだろうか。

 

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