ファインダーの中の君   作:しゃもじん

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第七話

 やってしまった。あまりに突然すぎて、あんな答えしか出来なかったのもあるけれど、やはりボクは千歳くんには相応しくない。だって、葵ちゃんや佐奈ちゃんのあの様子をみて、ここでボクがしゃしゃり出るなんてことは許されないはずだ。ただ、あんなに落ち込んだ千歳くんを見るのは初めてで、正直なところ心が痛くて仕方ない。

 

「どうして、どうしてあんなことを」

 

 答えは出ている。ボクが千歳くんと付き合ったら、他の皆から取り上げることになってしまうから。自分では納得して断ったつもりなのに、それでもまだ葛藤は続く。明日からどんな顔して学校で顔を合わせれば良いんだろうか。それに今度の海だってあるのに。

 

「好き、か……やっぱりボクにはわからないよ」

 

 もちろん、千歳くんのことは友達としてはとても大事だし、そういう意味では大好きなぐらいだ。それは今も変わらない。ただ、最近のボクは千歳くんに別の好きを見つけてしまっていたような気がする。あの日撮った千歳くんの写真を事あるごとに見返しては、妙ににやけてしまうし、学校に行く理由の一つに千歳くんに会えるからというのもあった。普段の生活に彼がどんどん入ってくるような感覚は初めてだったけれど、むしろ幸せな気持ちになれていた。

 人の恋愛事情は部活の方でちょくちょく盗み聞きすることはあったが、自分が当事者になってみるとなんにもわからないものだ。今のこの心境を上手く説明できるわけもなく、そして思いと行動は一致しない。鬱屈とした思いを抱えたまま、その日はよく眠れそうになかった。

 

 

 

 翌朝、いつも以上に気が進まない学校へと向かう。昨日の今日で、どんな顔をして会えばいいのか。教室に入ると、木賊はまだ来ていないみたいだ。何故か心の中で少し安心してしまう。

 

「おはよ、ハル。さっきから暗い顔してどうしたの?」

「おはよう。男にはこんな日だってあるさ」

「気が沈むのは男も女も関係ないけどね。どうしたの、あたしで良かったら相談に乗るよ」

「……いいや、大丈夫」

「そっか、無理に聞くのも悪いし、いつでも相談してね」

 

 葵に昨日のことを話してしまおうか、とも思ったがあくまで俺たち二人の問題だ。ましてや今度の海を楽しみにしている葵に、こんなことを伝えて素直に楽しめなくしてしまうのも悪い。事情を知ってしまった卯ノ花はともかく、これ以上巻き込む人間を増やす意味はない。

 

「あれ、朋花はまだ来てないのかな」

「……そう言えば、まだ来てないな」

「普段ならこの時間にはもう来てるはずなのに。って、ハル。もしかして朋花をいじめたりしたの?」

「何でそんな発想に飛躍した!?」

「だって、さっき朋花の名前が出たときにすっごく苦々しい顔しちゃってたし」

 

 普通、昨日フラれた相手と顔を合わせるとなればそんな顔にもなる。なんて言いたくもなったが、そんなことを葵に伝えるのは何か違うような気がした。あくまでこれは俺たちの問題だ。

 

「別に木賊と何かあったわけじゃないから。気にしないで」

「そっか、まぁ、ハルのことだしそんなひどいことはしてないと思うけど」

 

 それからしばらくして、始業間際に木賊は滑り込むように教室へと入ってきた。いつもどおりのあの元気な挨拶をするもんだから、俺もとりあえずは合わせて返事をする。昨日のことは気にしてないのだろうか。これ以上他の人を巻き込みたくない、というのは事実だし、彼女がそういう姿勢なら俺もできる限り忘れる努力をするほうが良い。とはいえ、一度ああまで思ったのをすぐ忘れられるかといえば、難しい話ではあるが。

 

 

 

 昼休み、千歳くんが教室から出ていくのを見送った。明確に避けていることについては間違いないだろうが、断っちゃったのはボクの方だから何か言うわけにもいかない。そして、そのことを他の皆に知られちゃうのも良くない。

 

「……朋花?」

「えっ、うん、どうした?」

「ボーっとハルを見てどうしたの。それに今朝、千歳くんもあんな感じだったし」

「それはまぁ……ちょっと、ね」

「まぁ、人には人の事情というのがあるじゃろうから、妾は深入りせぬ」

 

 今朝、やっぱり千歳くんもそんな感じだったのか。悪いことをしちゃったかな、なんて思うけれども、仮にここでボクがOKしちゃってたら、葵ちゃんはどう思うんだろうか。

 

「朋花、ちょっと良いか」

「どうしたの?」

「お主、後悔するようなことはするでないぞ。これは妾からの助言じゃが、人に理由を求めるときは納得出来ていない証拠じゃぞ」

「えっと、何のこと?」

「ほう、これでもわからぬか……。それはもちろんハル」

「わーっ、わっ! 大丈夫、もう理解したから!」

 

 危ない危ない。そうか、千歳くんと姫ちゃんは同じ家に住んでいるからあのことを知っている可能性もあった。にしても、あの千歳君がわざわざこのことをバラしたとも思えないけれども。

 

「ともかく、お主が後悔することはないようにな」

「……えっと、ふたりとも、何の話?」

「葵ちゃんには関係ない!」

 

 むしろ関係大アリな気もするが、さっき言われたとおり葵ちゃんを理由にするのは卑怯な気がした。結局、ボクはああやって断ったのに、千歳くんのことがまだ気になるし、諦めきれていないのかもしれない。自分でフッて、諦められないなんてあまりに自分勝手だけれども。

 

「え、えっと……ごめんね。あたし余計なこと言っちゃったみたいだね」

「ああっ、ごめん、ゴメン葵ちゃん! むしろボクのほうが謝らないと」

 

 葵ちゃん、ごめん。ボクはやっぱり千歳くんのことが……。

 

 

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