【雷霆】ガンヴォルト 作:ガンヴォルトはカッコ可愛いMk-2
三人称side
活気で賑わうとある町の市場。其処では町の住人たちがその日の夕食を買う声や、仕入れた新鮮な野菜をその日のうちに完売させんとする商人たちの客引き声、さらには日が暮れ初めていると言うのにまだ遊んでいる
治安が特別いいと言うわけでもないので時たま強盗や野盗の類は現れるが、そこに目を瞑れば平和な町。
そんな夕食まっしぐらな時間にその男は歩いていた。
その男の髪の毛は黄金を溶かしたかのような綺麗な金髪で、そんな髪の毛を男は煩わしそうな後ろに短く纏めている。買い物した後なのだろうか、男はその細腕からは想像も出来ないような量と重さがある紙袋を汗ひとつもかかずに持っていた。
普通に考えれば周りの人達から忌み嫌われそうな光景だが、町の人々は平然としていた。何故ならその光景は彼ら町の住人からして
「日用品は……これで全部買えたか?」
男は時折紙袋の中を覗き込んでは、それを抱えている方とは逆の手に握られているメモ用紙を交互に見やりながら首を傾げていた。
そんな時……
「おーい
そんな時、恰幅の良い肉屋の主人が、自身が切り盛りしている店から大声をだして男を呼び止めた。
「なんだい!?」
「良い肉が入ったんだ!見てくれよこのツヤ!この油!この赤身!!」
成る程確かにその肉は非常に美味しそうであった。だが残念な事に男は既にその日の買い物を終えていた。それに男は必要最低限以上の金銭をあまり無闇に持たない性格であり、その日も男は
「すまないね!生憎と、今は手持ちがないんだ。また今度あったら購入させて貰うよ!!」
「じゃあしょうがねぇなー!今は経営カツカツだから無理だが、安定したらその時に割引するぜー!!」
「感謝するよ!」
そのまま会話を打ち切った両者は別れ(既に分け隔たれていたようなものだが)、男は口の中の
(うし。言質は取った!今度あったら目一杯割引してもらおう!!)
男は別に肉に興味がないわけでも無かった。
『キャーーーーーーーー ッ!!?』
だがそんあ平和なやり取りの後、突如として街に悲鳴が響き渡った。
男は条件反射的に腰の
やっぱり引き抜いておけばよかったよコンチキション。
男はそう後悔した。
「だっ、誰も近づくんじゃねぇ!?この女がどうなってもいいのか?アァン!!?」
そこにはいかにもな悪人面している粗暴そうな男が、女性の喉元にナイフを突き付けながら周りを牽制していた。手には
「み、道を開けろォ!じゃねぇとこの女の首を掻っ切るぞ!?」
『……ッグ!』
自警団の青年たちが悔しそうな顔を浮かべながらも、その剣を納め今も女性の喉元にナイフを突きつけている犯人に向かって道を開けた。
「へ、ヘヘッ!そうだよ…それでいい……オラァ!てめえもこっちに来い!」
「キャッ!?」
男は自らに開けられた道を歩きながら、今現在もナイフを突きつけている女性を乱暴にエスコートしていた。
あぁ、このままでは街でも評判だったあの女性は連れ去られてしまう。あの女性が辿る末路は強姦かそれとも奴隷落ちか……いずれにせよ確かに不幸ではあるが、ここら一帯では然程珍しくもない事だった。女性がこのまままんまと男に連れ去れきられたとしても、明日になれば『あぁ、あれは不幸な出来事だったな』で片付けられる。
町の人々もそれを理解してしまっている為か、特別悲しそうな顔をしているのは、ここに来て日が浅い者か、その女性の肉親や兄弟達だけだった。
そんな時ヒュン!という風切り音と共に、男の手首に一本の
「あん?なんだこりゃ――――」
同時にバチィ!という音と共に男の手首に極小の【魔法陣】が形成され、蒼雷が走った。
「ッ―――ギャアア!?」
雷によって感電した男は女性とナイフを取り落とし、痺れた片腕を抑えながらも蹲った。女性は急に離された事によって蹌踉めき、あわや躓いて転びそうになってしまうが、そんな事実を嘲笑うかのように女性は宙に浮かび始め、針金が発射された方向に向かってフヨフヨと浮遊した。
そんな不思議現象に警戒した粗暴な男は、女性の浮かんで行った方向を仰ぎ見た。
「……大丈夫?」
そこには先程男も見かけた金髪の男が浮かせた女性を優しく受け止めていた。
「あ、あ、ああ………」
「…そうだよね。急にこんなこと言われても混乱して受け答えなんか出来ないか。」
男はそっと女性を下ろし、腰を抜かして立てない女性のためにどこからとも無く取り出したハンカチを地面にしき、そこに女性を座らせた。
「でも、安心して。」
金髪の男は180度反転して、今も蹲っていた男と向き合う。その男の目は正しい正義による怒りの目で、彼と同職の者達からすれば、まずしないような目をしていた。
「君を害した男を……今から僕がボコボコにするから。」
そのまま彼はゆったりとしたペース――着実には近付いている――で男に歩み寄った。
「これは魔術師ほぼ全員の思想だが…奪うのなら当然。奪われることも覚悟しているんだろうな?アナタは」
己が装着している手袋に描かれている魔法陣から発生した雷でさらに大きな魔法陣を描きつつ、男はそういった。
「ヒッ!ヒィィ!!?」
男は急に後ずさりを始めた。
何故なら男―――この世界の一般人達にとってはまさに「恐怖の代名詞」のような存在だと理解したからだ。
「お、おい!?コイツ【魔術師】だろ?お前ら助けてくれよ!!?」
【魔術師】とは読んで字の如く、まさに魔術を嗜む者達のことである。基本的には自身の【領地】に引き篭もり、魔術の深淵を極めんと切磋琢磨しているが、魔術の中には生贄を使用した方が大規模に出来る物もあるため、街へと赴き奴隷を購入したりはたまた勝手に誘拐したりするので、この世界では
一転して自身を弱者に仕立て上げたと
「…………へ?」
市民からの視線は白々しいもので、その表情は「コイツは一体何を言っているんだ?」という奇異な者を見るかのような顔だった。
「バカ言ってんじゃないわよ。確かに魔術師さんは悪いのが多いけど、この人だけは別よ。」
「そうだそうだ!町の奴らが攫われたり襲われたりした時も、教会の奴らよりも早く来てくれる!」
「お布施や救出金だって要求しない!!」
あーだこーだと己を援助する発言をする者たちに向かって金髪の男は困ったかのような表情をし、「…別に、無償ってわけじゃないんだけど。」と静かに呟いた。
この世では絶対的な悪と言われる魔術師を、町の住人が庇いに庇いまくっている。そんなまるでこの世ならざるかのような光景を見せ付けられた強盗の男は、自身の近くに転がっていたナイフを半ばヤケクソ気味に掴み上げ、金髪の男へ向かって走った。
「―――クッソ、死ねぇ!!?」
異常な光景を見たことによる若干の精神異常を引き起こした男の斬撃を、最低限の動きで危なげもなく避けていく金髪の男。
「太刀筋が乱れ過ぎている……もうちょい鍛えてから来た方がいいんじゃないの?これなら自警団の新入りさんの方がいい線いってる。」
そう評価を下したのちに男は強盗の手首を捻り上げ、強盗のナイフを見つめる。
「ナイフも、もうちょっと手入れしたら?こことか、刃の部分歪みまくってるし。」
そのままおもむろにナイフの刃を握り締め――不思議と血は流れなかった――叩き折った。
「ヒェ―――」
「……フンッ!」
直後金髪の男から放たれた首を刈り取るような蹴撃―ブラジリアンキック―を……寸止めで放たれた。
男はそのことへの衝撃によって腰を抜かし、そのままズボンからひどい匂いを漂わせた。
「ったく、大の大人が小便垂らしてんじゃない。」
あきれた様子で男が歩み寄った。
男の左手には先程男が放った謎の針金が発射された筒状のもの。右手には円状の幾何学的な美しさを持った魔法陣を手で弄んでいた。
「う、うあ…ウゥ‥‥……」
誘拐(未遂)の男はその場で男が放つ極限のプレッシャーに宛てられすぎたのか、その場で泡を吹いて気絶した。
「―――計画も技術も度胸も無し、呆れた実行犯だね。」
呆れを通り越して無関心にまで冷え切った男は気絶した未遂犯の足首を掴み、その細身からは考えられないような力で男の体を片腕で持ち上げた。
「捕まえるまでが僕の仕事だ、あとは君たちに任せるよ。」
無造作に腕を振るい、男を投げ捨てた男はそう言って手をフリフリと振りながらその場を後にした。
その後来た『教会』の聖騎士たちは、その後の住民たちの嫌悪の視線と辺りに広がっている焼け焦げた跡を見て揃って歯噛みした。
ここ数年にこの港町に現れ、教会を嘲笑うかのように人々を助けることを至上とした極異端の『魔術師』。
二つ名は―――――――――
【雷霆】のガンヴォルト。