【雷霆】ガンヴォルト   作:ガンヴォルトはカッコ可愛いMk-2

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003【目と目があう〜】

ガンヴォルトside

バルバロスがザガンに女性のことについてちょっかいをかけていたこと以外は特に何事もなく会場に到着した。

 

「おぉ……貴方がかの【雷霆】様!お噂はかねがね……さぁさぁどうぞ此方に。」

 

《噂》ね…何を聞いてきたのやら。

 

案内人の薄っぺらいお世辞を聞き流しながら会場の特等席とも言えそうな場所にたどり着いた。

 

「……ガンヴォルトはかなり有名な魔術師なのか?」

 

ザガンが俺に向かって質問を飛ばして来た。

 

「…そうだね、エゴサーチ――評判を探ったことはないけど一応【魔王候補】の端くれだからそこそこ有名だっていう自負はあるつもりだよ。」

 

「オイオイ。アンタでそこそこっつうんなら大抵の魔術師は無名も同然になっちまうぜ?」

 

バルバロスが急に話に割り込んできた。

「こいつはなァ勿論【雷霆】っていう二つ名が最も有名だが、それ以外にもこうゆう呼び方があるんだぜ――――【魔王候補筆頭】――――っていうのがな。」

 

「うん?そんな呼び方は初めて聞いたんだが…」

 

得意顔で言ってきたバルバロスの発言に疑問を覚えた。

 

ちなみに【魔王候補】とは【魔王】―――【魔物の王】ではなく【魔術師の王】よいう意―――の存在に最も近い者たちのことを指している。

かという両隣のザガンとバルバロスも俺と同じく【魔王候補】の一員だということは知ってるが………俺が【筆頭】?

 

「おいザガン。お前の回路数いくつだ?」

 

「なんだ急に…19000前後といったところだ。」

 

「あぁそうだな。俺だってそのぐらいだ。」

 

「話の方向性が見えんぞ。ついにまともな会話機能ですら失ったか?」

 

「うっせ。話の繋ぎ方が下手糞な作者が―――――って俺は何を言ってんだ?」

 

…まぁいいか と気を取り直したバルバロスが話の続きを始めた。

 

「コイツの魔術回路数は30000以上だ。」

「なっ……!」

 

む、それはちょっと違うぞ。

「正確には32000ぐらいだ。魔術師だったらもっと正確なデータを出してからモノを言おうか?」

 

「……お前有名な割には自分の情報全っ然出さねぇからこれでもそこらの奴らからしたらかなりいいデータ集めたつもりだよ…………」

 

地面に『の』の字を書き始めた(丁寧に指先に『強化』の魔術を施して土に比べたら断然固い地面に書いていた)バルバロスを尻目に『まもなくオークション開始時刻でーす』と流れ出るアナウンスをBGMにしながら会話を重ねていった。

 

「つまりお前(【雷霆】のガンヴォルト)は―――――今一番【魔王】に近い魔術師ってことか?」

 

余り興味がなさそうな表情でザガンが問い掛ける。だが、俺は敢えてその問いに異を唱えよう。

「いや…………俺は多分誰よりも魔王には程遠い魔術師だと思うよ。」

「…………………?」

 

首を微かに傾げ『それはどうしてだ?』と問い掛けようと口を開くザガンだが――――――――――

『ウオオオオォォォォォッ!!!』

「―――――どうやら開始の時刻みたいだ。全部が全部かの【魔王】の品じゃないらしいからよく見分けるといい。」

 

俺はそれを言ったきり黙り切った。ふむ……なんか微弱だけど強い魔力を感じる。それにこの独特な感じ…希少種族?

三人称side

その後突如として出品されたハイエルフを百万金貨という望外な値段で買い取ったザガンを会場全体が見送り、一緒にいたためかバルバロスと一緒に行動していた。

 

「不味い――マズイマズイマズイッ!エルフなんて化け物で魔術なんて使われたら今俺が準備してる奴だって…ブツブツブツ」

 

ザガンが購入―――余りこうゆう表現は好きじゃないが―――した奴隷のエルフを連れ帰った後、バルバロスは妙にブツクサ物騒なことを呟いている………さっきから生贄だが儀式だがいってるからたぶん魔術についてだと思うが、明らかに目がヤバい。

 

アレは明らかによからぬことを考え、若しくは実行している途中の目だ。

……何かあった時は止めるか。

因みにこの時奥の手を使ってなお届かない存在を召喚されることを知っていたらこの場で頭蓋を破壊したことだろうなというのはこの時を以て始まった騒動が一呼吸ついてからの彼自身の独白だ。

三人称side

バルバロスと別れた(というかずっとブツブツ言っているうちにどこかへ行ってしまった)ガンヴォルトはこの街の教会………の裏口へと赴いていた。

 

かというのもこの教会の責任者は所謂【過激派】であり、いかに『悪』の魔術師を倒すガンヴォルトでも魔術師だから『悪』だと決め付けられる――――実際半年前この街について直ぐに『表彰しますよ~』というみねの手紙が届いたので行ってみたらほぼこの街の総戦力で袋叩きにされた――――どうしようもないクソジジ……失礼。老害なので、彼はいつも教会の情報を利用する時は裏手へと向かっている。

 

かというのもここには彼の協力者がいるからだ。

「こんにちわ。聖剣保持者」

 

「そ、その聖剣保持者(他人行事な呼び方)、止めないか…?」

 

そこにいるのは赤い髪を腰当りまで下した乙女だった。

 

「そう言う訳にも…一応魔術師と聖騎士ですので」

普段は絶対に使わない敬語を使う彼は極僅かな敵意を宿しながらも丁寧に会話を続ける。

 

「…あぁそうだな。貴方の事は聞いている―――部隊も所属もまったく違うが、その件は済まなかった」

 

「…………………………」

 

恐らく目の前の彼女が言っているのは自分の幼い頃の出来事なんだろうなぁと男は()()()()()()ことのように聞いていた。

 

ガンヴォルトにとって過去のことは過去の事と割り切るタイプの人種なので、今更(当事者でもない限り)謝られても……という心境だった。まぁ謝られたのは事実なので一応受けておこうと返答を口にする。

 

「気にしないで下さい。今更言われてもどうしようもないので」

 

「えっ………」

 

内心ガンヴォルト『しまった』と思ってしまった。少々キツイ言い方をしてしまった自分自身に舌打ちする。

 

「すみません……どうもその話題には気が短くなってしまうみたいです」

 

「あ、あぁ…こちらもすまなかった。君の気持を少しも考えずに軽々しく謝罪なんか…」

 

その可憐な顔を俯かせながら彼女はしっかりと此方の顔から眼を逸らさなかった。

 

(やっぱり彼女は【聖騎士】なんかには向いていないな)

 

彼女の純粋に過ぎる心意気を悪いとは言い切れないが、それは余りにも残酷な事があった場合簡単に折れてしまいそうに感じた。

 

 

(でも、それは許されないんだろうな)

 

 

彼女の腰に帯剣された剣―――教会の対魔術師最終決戦武具【聖剣】を見据えながらガンヴォルトは『いったい聖剣の担い手の判断基準は何なんだ?』と思いつつ会話……否、情報交換を続けた。

「なるほど…かの【マルコシアス】が崩御したのは此方も情報を掴んではいたが、それによってこのような魔術師が動き出すとはな」

 

「ムゥ……相変わらずここのトップは過激だな、降参して五体投地した魔術師を拘束して拷問の末に惨殺って…オイオイこれが聖職者のやる事か?」

 

「ソレを私に言われても……」

 

「あぁ……すみません。どうやら結構引き摺っているみたいですね」

 

(…はぁ。結構女々しいのかね、僕は)

 

どちらかというと断然清い行いの方が大好きなガンヴォルトは知らずのうちに愚痴ってしまい、思いのほか怒ってる自分を【女々しい】と評した。

そこから大体十分後………

ガンヴォルトside

…やっぱり認めたくはないけど、組織のデカさ故のこの情報量の多さはバカに出来ないな。

 

そう思いつつも俺は最近開発した文字を紙に写す魔術を使い本に投影しつつ、今日はもう充分だなと思いつつもう切り上げようとした。

 

「そろそろ切り上げよう。貴女にだって立場ち書類仕事があるはずだ」

 

「さ、さらりとイヤなことを言ってくるな貴方は…」

 

「……それは抜きにして、これ以上いたら怪しまれるのも確かだ――――これも、ここのトップが魔術師との共存説に賛同してくれたらいいんだけどな」

 

「それは…」

 

「―――すみません。無理なことを言いました」

本当になんでここのトップはあんなに俺たちに厳しくて容赦がない……過去になんかあったのか?

 

俺みたいに集落かなんかを壊されたとか。…まぁそれを加味してもあの様子はどうみても異常者のそれだが。

 

因みにさっきまで話し合っていたコチラの【聖騎士】は一応十人ぐらいいるらしい【聖騎士長】の一人もとい紅一点で………ってそういえば

「突然ですけど…いや、もうこの口調はやめよう。アンタ、前に【顔剥ぎ】に殺されかけたのは本当か?」

 

そう俺が言った途端一瞬で彼女は『やべっ』という顔になった。

 

「……貴女は仮にも一人一人が【魔王】にも比肩すること請け合いの【聖騎士長】の一員だろ…それは立場としてどうなんだ?」

 

「それがマズイ事なのは分かってるから…もう許してくれぇ……」

 

まぁこの人は自分自身でアホみたいに反省するからこうゆう言い方はいらないんだけどな(黒い笑み)

 

「もう反省してるみたいだから何も言わない――にしても、あんたが魔術師に助けられるとは………」

 

この前調べた…もといザガンによく聞いてみたら、この聖騎士長―――もといシャスティル・リルクヴィストと完全に特徴が一致したため、彼女を助け、た?

………いや、あれは投げ捨てたと言ってもいいような気がするが。とにかくシャスティルを助けたのはザガンだと判明した。

………にしても、ザガンの城に訪れた時に彼が購入(やっぱこの言い方大嫌いだ)したハイエルフの彼女はどこにいたのだろうか?

「本当に、そろそろお暇するとしよう。」

 

「うむ、そうだな。私も書類…しょ、書類を片付けるとしよう」

 

軽く顔を青くさせている彼女を見送った後、俺はそのまま自身の居城…というには狭い所だが、自分の城に帰った。

三人称side

彼……ガンヴォルトは基本どんな魔術でも使える万能系魔術使いだが、その中でも一番の見せ所はやはり『イカヅチの魔術』の種類の多さとその火力だろう。

 

元々彼の部族―――世間一般的には『雷人族(ライトニング)』と呼ばれている―――は超自然的なイカヅチを発生させさせる特異な一族のため、雷の魔術に増幅(ブースト)がかかるため、駆け出しの際は一人前な、一人前の際には【魔王候補】並みの、そして【魔王候補】の際には―――――それこそ【魔王】級の威力が出ると魔術師の間でももっぱらの噂らしい。

そんな彼は、自身の魔術の発展に邁進していた

「ふ~む…まだまだこの技の()()()()は厳しいな」

 

彼の目の前には彼がよく魔術の試し打ちに使っている野原があり、その目の前はスパーク舞い散る焼け野原と化していた。

 

「いやぶっちゃけ『クードス』の量とかとう判断するんだよって話だよなぁ…………」

 

ガンヴォルトはウンウン唸りながら手元のメモ用紙に何事かを書き込みながら地面に暇つぶしに紡いでいた魔術回路を起動した。すると魔術を書いていた紋章からパチパチと鳴いているミニサイズの龍が現れた。

 

(こうゆう魔術の使い方だったら世の中平和だろうに…)

 

そうふとした物思いにガンヴォルトが耽っていたら魔術に込めた魔力が尽きたためか雷製のチミ龍がいなくなった。そのチミ龍に勇気づけられたような気がして、彼は座っていた倒木から立ち上がり「まず一端使えるSPスキルを全部使ってみるか」と立ち上がり、自身の魔術を行使し始めた。

「…『天体の如く揺蕩え雷、是に至る総てを打ち払わん!』」

 

ガンヴォルトが使う魔術は基本的に魔法陣を使うが、この魔術群だけは口頭で使用する『呪文』と呼ばれるものを使用している。

 

「『ライトニングスフィア!』」

 

呪文の言葉を全て言い終わった彼の周りに雷球が三つ現れ、彼の周りを周回し始めた。

 

(本来この技はそのまま俺の周りをグルグル回り回ったら消えるが―――ここから…!)

 

「『マンダラ』!!」

 

追加の言葉を言うと雷球は彼が指さした方向へと向かって行き、その方向にあった岩を完膚なきまでに打ち砕いた

「精密性と速効性は上がっているんだ……まだだ…まだ先に行ける!」

彼はそう言うと次の呪文を紡ぎだした。

因みにこの後(魔術を)三日三晩打ち続けたせいで、ネフィ関連のことで尋ねて来たザガンが目撃したのは焦土と化した彼の領地に魔力切れと空腹でぶっ倒れたガンヴォルトの情けない姿だった。

因みそこそこ後に某聖騎士長の名前が出て来たのは彼の聖騎士に対する悪感情からの嫌がらせです。決して、決して名前を忘れていた訳ではないんだ…!

あとこの小説最初は彼女がヒロインの予定でしたが原作のカップリングが良すぎて諦めましたw

修正:ガンヴォルトの魔術回路数を情報修正しました。あとザガンの魔術回路数はオリジナルです。

ザガン自体が『バルバロスは自分よりも強い(現時点)』と言っていたのでバルバロスよりもちょっと下の数値にしました。


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