EIP―東諸国郡国際警察臨時特別捜査課―   作:畑渚

2 / 22
前回付け忘れたおまけ
TAC50→メープル厨→メープルシロップ=サトウカエデの樹液→佐藤楓
K5→ケイファイブ→ケフィ
AA12→原型はAtchisson Assault-12→アッチソン

地の文では銃の名前、会話中では偽名、というややこしいことをしてます。読みづらいですかね?


1-2

「私はAA12ことアッチソン。よろしく」

 

 TAC50の目の前にいる少女はそういうと、再び飴を口にくわえた。

 

「TAC50……じゃなかった佐藤楓です。よろしくおねがいします」

 

「よし、自己紹介も済んだところだし会議を始めようか」

 

 ボスがそう言うと、K5がホワイトボードに概要をササッと書いていく。

 

「よし、じゃあ楓」

 

「は、はい!」

 

「簡単に事件についてまとめて」

 

「わかりました!」

 

 TAC50は急いで資料を開き、目を通す。

 

「えっと、被害者は会社員男性、死亡推定時刻は深夜2時です。死因は絞殺で、他にも打撲痕が何箇所もあり、何かしら因縁があったようです」

 

「ありがとう。ケフィ、次お願い」

 

「はいボス。被害者は営業職で……出先からの帰りに襲われたかな。そして、これは人形による犯行みたい。捜査一課の言う通りだね」

 

 それは資料には載っていない事項だ。K5が独自に調べていたとしても都合がよすぎる。

 

 驚いているTAC50にAA12は耳打ちする。

 

「あれがウチの名物、ケフィのインチキ占い」

 

「えっ占い?」

 

「ちょっとアッチソン、新人に変なこと吹き込まないでよ」

 

「は~い」

 

 そういってAA12は口の中で飴を転がした。

 

「でもどうして営業職ってわかったんですか?」

 

「それは星が教えてくれたのよ」

 

「……はい?」

 

「楓、気にしなくていいわ」

 

「ちょっとボスまで」

 

 どうやらボスはK5のしかけを知っているようだったが、教えてくれる様子はなかった。

 

「まあまあ。それじゃあ、今後はまずこの情報を裏付けしていくことになるけど……」

 

「あっそれなら」

 

 TAC50は手帳を取り出す。取り調べをしたときにメモしていたものだ。

 

「男性は営業職だったと奥さんから聞いています」

 

「おどろいた……早速お手柄ね。それじゃあ犯行時刻と場所の検証。あとは聞き込みね」

 

 ボスはホワイトボードに近寄ると、全員の名前を情報の側へと書いていく。

 

「まずはアッチソンは私と現場で聞き込み、ケフィと楓は捜査一課のメンバーから話を聞いてきて」

 

「私と新人で……?」

 

 K5から少し不服そうな声があがる。

 

「文句言わないの。アッチソンがあなたに教えたように、あなたも楓にいろいろと教えてあげて」

 

「りょ、了解、ボス」

 

 口では了承しているものの、明らかに不満げである。

 

「アッチソン、今日はいけるところまで行くわよ。アレも持ってきて」

 

「りょーかい」

 

 K5とは対照的にAA12は少しテンションがあがっている。ガンロッカーへ向かうと、中から銃をとりだす。もちろんそれは、フルオートショットガンAA12である。

 続いてボスもアサルトライフルをとりだす。ベースはM4系ではあるが、改造されすぎていてもはや原型がない。

 

「さて、それじゃあ解散。各自捜査に尽力すること」

 

 了解と三人の声がそろう。AA12とボスは足早に外に出て行ってしまった。

 

「さて、私たちも行かなきゃ」

 

「その、至らない点もありますがよろしくおねがいします」

 

「ああ、別に楓と組むのが嫌な訳じゃないよ」

 

「それじゃあどうして?」

 

「それは……、嫌な予感がするから」

 

 そうはいいつつも、一課のオフィスへと到着する。

 

「やあやあ。花園課の子猫ちゃん達」

 

 到着するなり優男が声をかけてくる。K5が露骨に嫌な顔を浮かべているあたり、これが嫌な予感の大元の原因のようだった。

 

「花園課?」

 

 TAC50は首をかしげる。

 

「コイツの言うことなんて聞かなくていいよ、良いことないから」

 

「相変わらずケフィちゃんはつれないねぇ」

 

 優男は口を尖らせる。

 

「それで、そこの君は新人ちゃんかい?そんなかわいい顔を隠しちゃって、もったいないなあ」

 

 優男の視線がTAC50の前髪へと向く。サッと手で左目をかばうが、どうやら手を出してくる様子はなかった。軽そうな雰囲気と裏腹に、そういうところはわきまえているようだった。

 

「ウチの新人にちょっかいかけないで。私たちは捜査をしにきたのよ」

 

「ああ、件の人形事件かい」

 

「ええ、一課が担当していたのでしょう?」

 

 優男はしばらく悩む様子を見せたあと、引き出しから一つのファイルを取り出す。

 

「ありがと――」

 

「ちょっと待った。タダであげるのはさすがに嫌だな」

 

 そう言って優男はケフィから資料を遠ざける。

 

「何をしろって言うの?」

 

「そうだな~。キスしてくれたらあげよう」

 

「……セクハラで訴えられたいの?」

 

「ははっ、冗談だよ冗談。かわいい子にはイタズラしたくなっちゃうのさ」

 

 そう言って優男はファイルを投げ渡してくる。危うく落としかけながら、TAC50はそれを受け取った。K5は、TAC50の手を引いて逃げるように一課のオフィスから出ていった。

 

「ちょっと!ケフィさん!」

 

「何?」

 

「どうしたんですかいきなり」

 

「どうしたもなにも……。あいつ、キスなんて言ったのよ?」

 

「はい」

 

「……はい?」

 

「それがどうかしたんですか?」

 

「……え?」

 

「別にキスくらいいいじゃないですか、あんなのあいさつですよ」

 

「あ、あなたそういう人だったの?」

 

「そういうってどういうですか?」

 

 TAC50は不思議そうに首をかしげる。

 

「……気をつけておかなくちゃね」

 

 どうやらK5の脳内の危険人物リストに入れられたようだが、TAC50にはその理由がわからなかった。

 

「それはともかく、ファイルの中身を確認しましょうか」

 

「はい」

 

 TAC50がファイルを開くと、捜査資料が出てくる。さすがの優男も、中身をすり替えたりすることはなかったようだ。

 

「随分と……、丁寧な仕事ぶりですね」

 

 捜査資料は丁寧にまとめられている。

 

「あんなのでも一応はウチのエリート部隊、一課の人間ですから」

 

「一課……そういえばさっきの花園課って何ですか?」

 

「私たちのことよ。部下の含めて全員が女だから、花園課。つまりは軽い差別発言よ」

 

「いいじゃないですか花園課、何かいい香りがしそうで」

 

「……はぁ。そういう意味で言われているなら全然構わないのね」

 

 K5はそういいながら近くの給湯室へと入っていった。

 

「コーヒーですか?」

 

「たぶんボスもちょうど飲みたい頃合いでしょ」

 

 慣れた手付きでカップに注ぐと、スティックシュガーを一本、ミルクを2つ入れる。それとは別に、ブラックのままのも用意する。

 

「あなたも飲む?」

 

「は、はい!いただきます」

 

「砂糖とミルクは?」

 

「いえ、ブラックのままでいいです」

 

「そう、私と一緒ね」

 

「……あれ?砂糖とミルクを入れるのは?」

 

「ああ、ボスのよ。いつも同じだからいずれ覚えるわ……。いや、私が淹れるからあなたが覚える必要はないのだけどね」

 

「は、はあ」

 

 一緒に仕事をして長いのならば、その程度なら把握していてもおかしくない。そうTAC50は結論付けた。

 

 

=*=*=*=*=

 

 

「あっケフィ。帰ってきてそうそう悪いんだけど……」

 

「コーヒーですよね、ボス。淹れてきました」

 

「ありがとう、ケフィは気が利くね」

 

 ボスはそっとK5の頭を撫でる。K5は抵抗するどころか、少し喜んでいるようにも見える。TAC50には、K5がまるで喉を鳴らす猫のようにすら見えた。

 

「それで、ファイルはもらえた?」

 

「はい!ここに」

 

 ファイルを渡すと、ボスはペラペラとそれをめくる。

 

「ふ~ん、まあいつもどおりか」

 

「いつもどおり……ですか?」

 

「一課は十分に捜査した。それで犯人も人形だって見つけた」

 

「はい、そう書いてありますね」

 

「でもこの資料には重大なことが抜け落ちてるの。わかる?」

 

「……?何でしょうか」

 

「それは、出た犠牲者の数だよ」

 

「ぎ、犠牲者ですか?」

 

「あのプライドも高い一課が匙を投げるレベルだもの。1人や2人ってレベルじゃないわよ」

 

「そ、そんな危険な事件を私たちだけで捜査するんですか?」

 

「何を言ってるの?」

 

「……?」

 

「危険だから、あなたたち人形の出番なのよ。戦闘になったら期待してるわ」

 

「だから私は――」

 

 TAC50の言葉は受け取ってはもらえない。

 

「それに、解決不可能な事件を解決するのって、正義のヒーローみたいでカッコいいでしょ?」

 

 ボスは、ニヤリと笑いながらそう言った。

 




一週間に一本が目安です
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。