TAC50→メープル厨→メープルシロップ=サトウカエデの樹液→佐藤楓
K5→ケイファイブ→ケフィ
AA12→原型はAtchisson Assault-12→アッチソン
地の文では銃の名前、会話中では偽名、というややこしいことをしてます。読みづらいですかね?
「私はAA12ことアッチソン。よろしく」
TAC50の目の前にいる少女はそういうと、再び飴を口にくわえた。
「TAC50……じゃなかった佐藤楓です。よろしくおねがいします」
「よし、自己紹介も済んだところだし会議を始めようか」
ボスがそう言うと、K5がホワイトボードに概要をササッと書いていく。
「よし、じゃあ楓」
「は、はい!」
「簡単に事件についてまとめて」
「わかりました!」
TAC50は急いで資料を開き、目を通す。
「えっと、被害者は会社員男性、死亡推定時刻は深夜2時です。死因は絞殺で、他にも打撲痕が何箇所もあり、何かしら因縁があったようです」
「ありがとう。ケフィ、次お願い」
「はいボス。被害者は営業職で……出先からの帰りに襲われたかな。そして、これは人形による犯行みたい。捜査一課の言う通りだね」
それは資料には載っていない事項だ。K5が独自に調べていたとしても都合がよすぎる。
驚いているTAC50にAA12は耳打ちする。
「あれがウチの名物、ケフィのインチキ占い」
「えっ占い?」
「ちょっとアッチソン、新人に変なこと吹き込まないでよ」
「は~い」
そういってAA12は口の中で飴を転がした。
「でもどうして営業職ってわかったんですか?」
「それは星が教えてくれたのよ」
「……はい?」
「楓、気にしなくていいわ」
「ちょっとボスまで」
どうやらボスはK5のしかけを知っているようだったが、教えてくれる様子はなかった。
「まあまあ。それじゃあ、今後はまずこの情報を裏付けしていくことになるけど……」
「あっそれなら」
TAC50は手帳を取り出す。取り調べをしたときにメモしていたものだ。
「男性は営業職だったと奥さんから聞いています」
「おどろいた……早速お手柄ね。それじゃあ犯行時刻と場所の検証。あとは聞き込みね」
ボスはホワイトボードに近寄ると、全員の名前を情報の側へと書いていく。
「まずはアッチソンは私と現場で聞き込み、ケフィと楓は捜査一課のメンバーから話を聞いてきて」
「私と新人で……?」
K5から少し不服そうな声があがる。
「文句言わないの。アッチソンがあなたに教えたように、あなたも楓にいろいろと教えてあげて」
「りょ、了解、ボス」
口では了承しているものの、明らかに不満げである。
「アッチソン、今日はいけるところまで行くわよ。アレも持ってきて」
「りょーかい」
K5とは対照的にAA12は少しテンションがあがっている。ガンロッカーへ向かうと、中から銃をとりだす。もちろんそれは、フルオートショットガンAA12である。
続いてボスもアサルトライフルをとりだす。ベースはM4系ではあるが、改造されすぎていてもはや原型がない。
「さて、それじゃあ解散。各自捜査に尽力すること」
了解と三人の声がそろう。AA12とボスは足早に外に出て行ってしまった。
「さて、私たちも行かなきゃ」
「その、至らない点もありますがよろしくおねがいします」
「ああ、別に楓と組むのが嫌な訳じゃないよ」
「それじゃあどうして?」
「それは……、嫌な予感がするから」
そうはいいつつも、一課のオフィスへと到着する。
「やあやあ。花園課の子猫ちゃん達」
到着するなり優男が声をかけてくる。K5が露骨に嫌な顔を浮かべているあたり、これが嫌な予感の大元の原因のようだった。
「花園課?」
TAC50は首をかしげる。
「コイツの言うことなんて聞かなくていいよ、良いことないから」
「相変わらずケフィちゃんはつれないねぇ」
優男は口を尖らせる。
「それで、そこの君は新人ちゃんかい?そんなかわいい顔を隠しちゃって、もったいないなあ」
優男の視線がTAC50の前髪へと向く。サッと手で左目をかばうが、どうやら手を出してくる様子はなかった。軽そうな雰囲気と裏腹に、そういうところはわきまえているようだった。
「ウチの新人にちょっかいかけないで。私たちは捜査をしにきたのよ」
「ああ、件の人形事件かい」
「ええ、一課が担当していたのでしょう?」
優男はしばらく悩む様子を見せたあと、引き出しから一つのファイルを取り出す。
「ありがと――」
「ちょっと待った。タダであげるのはさすがに嫌だな」
そう言って優男はケフィから資料を遠ざける。
「何をしろって言うの?」
「そうだな~。キスしてくれたらあげよう」
「……セクハラで訴えられたいの?」
「ははっ、冗談だよ冗談。かわいい子にはイタズラしたくなっちゃうのさ」
そう言って優男はファイルを投げ渡してくる。危うく落としかけながら、TAC50はそれを受け取った。K5は、TAC50の手を引いて逃げるように一課のオフィスから出ていった。
「ちょっと!ケフィさん!」
「何?」
「どうしたんですかいきなり」
「どうしたもなにも……。あいつ、キスなんて言ったのよ?」
「はい」
「……はい?」
「それがどうかしたんですか?」
「……え?」
「別にキスくらいいいじゃないですか、あんなのあいさつですよ」
「あ、あなたそういう人だったの?」
「そういうってどういうですか?」
TAC50は不思議そうに首をかしげる。
「……気をつけておかなくちゃね」
どうやらK5の脳内の危険人物リストに入れられたようだが、TAC50にはその理由がわからなかった。
「それはともかく、ファイルの中身を確認しましょうか」
「はい」
TAC50がファイルを開くと、捜査資料が出てくる。さすがの優男も、中身をすり替えたりすることはなかったようだ。
「随分と……、丁寧な仕事ぶりですね」
捜査資料は丁寧にまとめられている。
「あんなのでも一応はウチのエリート部隊、一課の人間ですから」
「一課……そういえばさっきの花園課って何ですか?」
「私たちのことよ。部下の含めて全員が女だから、花園課。つまりは軽い差別発言よ」
「いいじゃないですか花園課、何かいい香りがしそうで」
「……はぁ。そういう意味で言われているなら全然構わないのね」
K5はそういいながら近くの給湯室へと入っていった。
「コーヒーですか?」
「たぶんボスもちょうど飲みたい頃合いでしょ」
慣れた手付きでカップに注ぐと、スティックシュガーを一本、ミルクを2つ入れる。それとは別に、ブラックのままのも用意する。
「あなたも飲む?」
「は、はい!いただきます」
「砂糖とミルクは?」
「いえ、ブラックのままでいいです」
「そう、私と一緒ね」
「……あれ?砂糖とミルクを入れるのは?」
「ああ、ボスのよ。いつも同じだからいずれ覚えるわ……。いや、私が淹れるからあなたが覚える必要はないのだけどね」
「は、はあ」
一緒に仕事をして長いのならば、その程度なら把握していてもおかしくない。そうTAC50は結論付けた。
=*=*=*=*=
「あっケフィ。帰ってきてそうそう悪いんだけど……」
「コーヒーですよね、ボス。淹れてきました」
「ありがとう、ケフィは気が利くね」
ボスはそっとK5の頭を撫でる。K5は抵抗するどころか、少し喜んでいるようにも見える。TAC50には、K5がまるで喉を鳴らす猫のようにすら見えた。
「それで、ファイルはもらえた?」
「はい!ここに」
ファイルを渡すと、ボスはペラペラとそれをめくる。
「ふ~ん、まあいつもどおりか」
「いつもどおり……ですか?」
「一課は十分に捜査した。それで犯人も人形だって見つけた」
「はい、そう書いてありますね」
「でもこの資料には重大なことが抜け落ちてるの。わかる?」
「……?何でしょうか」
「それは、出た犠牲者の数だよ」
「ぎ、犠牲者ですか?」
「あのプライドも高い一課が匙を投げるレベルだもの。1人や2人ってレベルじゃないわよ」
「そ、そんな危険な事件を私たちだけで捜査するんですか?」
「何を言ってるの?」
「……?」
「危険だから、あなたたち人形の出番なのよ。戦闘になったら期待してるわ」
「だから私は――」
TAC50の言葉は受け取ってはもらえない。
「それに、解決不可能な事件を解決するのって、正義のヒーローみたいでカッコいいでしょ?」
ボスは、ニヤリと笑いながらそう言った。
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