EIP―東諸国郡国際警察臨時特別捜査課―   作:畑渚

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お久しぶりです。執筆リハビリ中につき、もう少々お待ち下さい


3-3

 すやすやと寝息をたてるボスの隣で、TAC50は静かに本のページをめくる。新月の夜らしく、サイドテーブルのランプを消してしまえば何も見えなくなるだろう。

 

 カタリ

 

 些細な物音であったが、TAC50は立ち上がる。ボスの寝顔をちらりと見た後、サイドテーブル上の拳銃を手に取り部屋を出る。

 

 カチャ

 

 弾が装填されていることを確認し、物音の方へと歩く。音の出どころは、台所の方だった。

 

「……何をしているの?」

 

「あっお姉ちゃん」

 

 まるで悪戯がばれた子供のように、驚いた顔をした少女がいた。

 

「こんな時間に何をしてるの?」

 

「ごめんなさい……喉が乾いて」

 

「謝らなくていい。ほら、飲んだらすぐに寝てね」

 

「うん」

 

 少女は行儀よくコップを洗ってから、部屋へと戻っていった。TAC50はとっさに隠した拳銃にセーフティをかけて、耳をすませる。少女が部屋へと戻っていったことを確認して、自分も元の部屋へと戻ろうとした。

 

 しかし、ダイニングテーブルを見て足を止めることになった。正確に言うならば、ダイニングテーブルの上においてあった端末を見たことだった。おそらく少女が勝手に使っており、TAC50が来たことでそのままになっていたのだろう。

 

「これは……、明日になったらボスに報告しないと」

 

 TAC50はそうつぶやきながら、立てこもり事件について書かれたニュース記事を閉じた。

 

 

=*=*=*=*=

 

 

「おはようございます、ボス」

 

「おはようケフィ」

 

「連れて帰るって言ったときは心配しましたよ」

 

「安心して。楓も一緒だったから、夜は彼女に任せっきりよ」

 

「それなら良いんですけど」

 

 通勤するなり話し始める二人に割り込み、TAC50はコーヒーをボスに手渡す。

 

「それがそうとも言えませんよ」

 

「あれ、少女は?」

 

「入り口でアッチソンさんを見つけてついて行きました」

 

「えぇ……」

 

 意外な組み合わせにケフィが思わず言葉を漏らす。

 

「それで楓、そうとも言えないってどういうこと?」

 

「昨晩なんですけど……」

 

 TAC50が昨晩の出来事を話すと、ボスとK5の顔が険しくなる。

 

「ケフィ、いますぐアッチソンに連絡を。絶対に目を離すなって」

 

「はい」

 

「楓は私と来て」

 

「わかりました。ですがどこへ?」

 

「……着いてからのお、た、の、し、み」

 

 含ませた言い方をするボスを見て、TAC50は首をかしげた。

 

 

=*=*=*=*=

 

 

「あの、ボス……?」

 

「どうしたの、楓」

 

「ここ、会議室ですよね」

 

「まあ、そうね」

 

 にやりと口角があがるボスを見て、TAC50はため息をつく。またこの人はやるつもりだと、理解したのだ。

 

「たのもー!」

 

 勢いよく開かれた扉の先では、各部署のトップが卓を囲んで会議をしていた。突然の乱入者に、コーヒーをこぼしている者もいる。

 

「……!?なんだねいきなり」

 

「いえいえ、捜査協力ですよ」

 

「……また1課か?」

 

 情報漏えい元であろう一課の方を、司会の男が睨む。

 

「渡したつもりはないんだが?」

 

「ええ、今回は捜査資料はもらってないもの」

 

「……どういうことだ?」

 

「うちは先日の事件の重要参考人を保護している。その調書を見て、この事件と関連があると思ったのよねぇ」

 

 そういって机に投げ捨てられたのは、保護している少女についての資料だった。

 

「そもそも今している会議は別の事件で——」

 

「とも言えないでしょう?少女が誘拐され、傷一つついていないワンピースの少女が見つかっている。今回とそっちの事件との違いは、少女が生きてるか死んでるかだけね」

 

「しかし、そちらの件は街のチンピラが実行犯だっただろう?」

 

「待ってください」

 

 TAC50は思わず口を出す。会議室中の視線が一気に集まり、少しうろたえる。

 

「なんだね、話したまえ」

 

「えっと、実行犯は確かに街の住人でしたが、少女の証言によって電話越しにもう1人と会話したことがわかってます。さらに、少女がなつくほどに実行犯たちは少女を甘やかしていたようです」

 

「つまりはなんだね。あのチンピラどもが少女を確保し、誰かに売り飛ばそうとしていたと?」

 

「可能性は低くないかと」

 

「なるほど、わかった」

 

 司会役の男は立ち上がり、TAC50たちに近づいてくる。

 

「捜査協力感謝するよ。だが事件のシマは譲ってもらう」

 

「待ちなさいよ。少女は警視総監の指示で私達が保護しているのよ?」

 

「なに、構わんさ。それに私達は捜査官で、子守は得意じゃないのでね」

 

「私達は子守でもしてろってわけね」

 

「お似合いだろう?見た目も親子に見えるだろうしな」

 

「……、わかりました。それでは失礼します」

 

 珍しくボスが引き下がるのを眺めていて、慌ててボスの後に続いて退室する。

 

「あの……ボス」

 

「ん?何」

 

「どうするんですか?」

 

「どうするもなにも、全力で子守をするわよ」

 

「子守を……?」

 

「ええ、対象の要望に最大限則った子守をね」

 

 

 

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