EIP―東諸国郡国際警察臨時特別捜査課―   作:畑渚

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今回は少なめ


1-5

「ボス、あの新人はどこに?」

 

「こらケフィ、新人じゃなくて楓ってよんでやりなさい」

 

「はい、すみません。それで楓はどこに?」

 

「射撃訓練」

 

 ボスはぼそりとつぶやいた。

 

「あいつが……?」

 

 驚くK5を見て、ボスは一枚の紙を出す。

 

「これを見て」

 

「これは、射撃訓練のスコアですか?」

 

「ええ、楓のここ数日のね」

 

「……でもこれって白紙ですよね」

 

「撃ててないのよ、一発も」

 

「はぁ、時間の無駄では?」

 

「そう言わないであげて」

 

 ボスはコーヒーをすする。

 

「楓は……何があったんですか?」

 

「珍しいわね、ケフィが私に聞いてくるなんて。いつもの占いはどうしたの?」

 

「ボスは知ってるでしょう。そんなのはないって」

 

「まあね。それで……知りたいの?楓の過去を」

 

「それは……」

 

 K5の表情を見て、ボスはメモ帳に何かをサラサラと書きなぐる。

 

「これは渡してあげる。見るか見ないかは自分で決めなさいな」

 

 メモ帳から切り取られた紙には、書庫の整理番号が書かれていた。分類上は、存在しないはずの書棚である。

 

「わかり……ました……」

 

 K5はそのまま退室した。その迷ったような姿を眺めて、ボスは呆れたようにため息をはいた。

 

 

 

 

 K5は廊下を歩いていく。その顔はあまり良い表情をしていなかった。

 

「まったく、なんで私がこんなことをしなきゃなんないのかしら」

 

 K5はそう言葉をもらしながら、廊下を歩いていく。

 

 チン、とエレベーターの到着音がする。

 

 のってから回数のボタンを押す前に、一度動きを止める。

 

「……はぁ、まったく」

 

 ケフィはため息をついて、書庫室ではなく訓練所の階のボタンをおした。

 

 

=*=*=*=*=

 

 

 銃声が響き渡る。しかしそこは戦場ではない。

 

「はあ、やっぱりダメ……」

 

 TAC50は銃を置いて、後方のベンチへと座り込む。

 

「どうして……撃てないの……」

 

 コンディションは万全で、システムも正常である。ここ数日ずっとここにいて、ずっと一緒に半身であるTAC-50と過ごしている。

 というのに、引き金は引けないままだ。

 

「ほらっ、差し入れよ」

 

「ケフィさん」

 

 K5は飲料水を投げ渡してくる。危なげなくそれを受け取るのを見て、K5は自分の分を開けて飲みはじめる。

 

「どうしてここへ?」

 

「私だって訓練したくなるときもあるわ」

 

 K5はそういって射撃場の方へと歩いていく。

 

『ケフィ捜査官、認証成功。拳銃訓練メニューを開始します』

 

 合成音声が響き、トレーニングが始まる。

 K5は素早いサイティングから正確に引き金を引いていく。

 

『訓練メニューを終了、スコアシートを発行します』

 

 K5はスコアシートを見て、すぐに丸めて捨てる。明らかに興味がない様子だ。

 

「さすがですね……」

 

 TAC50には、そのスコアシートの結果が一瞬見えていた。結果は満点である。

 

「べつにコレくらい、あなたでも出来るでしょう?」

 

「私には……無理です」

 

 そういってTAC50はうつむく。

 

「あのねぇ……これくらいもできないの?」

 

「無理ですよ……引き金が引けないんですよ」

 

「……そう。じゃあ銃を貸して、スポッターになってくれない?」

 

「す、スポッターですか?」

 

「いいから、とにかく」

 

 断れるような雰囲気でもなく、TAC50はとりあえず頷く。

 

 

 

 

「どう?」

 

「左に0.3度、上に0.4度です」

 

「こう?」

 

「大丈夫です……多分」

 

「まったく少しは自信を持ちなさいよ」

 

 そう言ってケフィは躊躇わずに引き金を引いた。ライフルは正常に作動し、射撃場内にひときわ大きな銃声を響かせる。

 

「ケフィさん、さすがですね」

 

「私はあなたの指示通りに撃っただけだから」

 

「でもさすがです」

 

「はぁ……。まあ良かったじゃない」

 

「何がですか?」

 

 K5はTAC50に背中を見せる。

 

「烙印はうまく機能しているわ。だからあなたは引き金を引けば外さない。そこだけは自信を持ちなさい。でないと押しつぶされるわ」

 

「押しつぶされる……?」

 

「気にしないで。それじゃあ私は行くから」

 

 そういってK5は出口の方へと歩いて行った。

 

「あっありがとうございました!」

 

 TAC50は深々と頭を下げるが、K5は一瞥もせずに、手をひらひらとだけ振ってからでて行ってしまった。

 

「外すことは……ない……か」

 

 TAC50のつぶやきは、ほかの人の銃声でかき消された。

 

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