ぶっちゃけ過去に衝動的に思いついた話を書いてる感じなので、色々と穴もあるかと思いますが温かい目で見てもらえると幸いです。
プロローグ 異端の歯車の誕生
今がいつで、ここが何処なのかが俺には分からない。
何しろ俺が目を覚ました時には目の前には灰色の空間が広がっており、それ以外何も存在しないからだ。
そう、俺の体さえもだ。
何を言っているのか分からないだろうがこれが本当のことなのだから仕方ない。
自分の体を見ようとしても眼球を動かして見ているのでなく、景色だけが動くという言葉では表現しづらい状態にあり特に体が拘束されているわけでは無いのだがどんなに視点を移しても自分の体が見えないのだ。
視線を下に落としても、足も、腕も、胴体も見ることができず、いつも視界の端に存在している自分の鼻でさえも見えないのだから自分には体がないと考えてしまったもおかしくはないだろう。
では、なぜ体がないのに視覚があるのかと言われると返答に困るが、眼球と脳だけ残っているというグロテスクな想像はしたくないので現状が正しく分かるまでは""魂""がそこにあると思わせてもらいたい。
で、現在俺は魂だけで何処までも灰色の景色が続く謎の空間に独りぼっちなのだが誰かが現れる気配が全くなく、変わり映えのない景色が続いている所為か時間の感覚もおかしくなり、ここに来てまだそこまで時が経っていないようにも感じるし長い時間をここで過ごしているようにも感じるのだ。
この時間の概念すらおかしく感じるこの空間に来てしまった俺は現状を説明してくれる存在が現れないことを確認すると、一先ずここに来る前の記憶を辿ることにした。
俺はいつものように俺が一人暮らしをしているアパートを出てから自転車でのんびりとしたスピードで今通っている大学に向かっていたはず。ここまでは覚えているのだが、その途中で高層ビルの工事現場の近くを通った頃で記憶がぶっつりと途切れているのだ。ここで何かしら起きたと思うべきなのだが周囲に人はいなかったし、暴走した車が突っ込んでくるようなこともなかった。体はすこぶる元気だったし、この前受けた健康診断でも異常はなかったから病気で急死したってのもないだろう。
あと、思い当たる節があるとすれば記憶が途切れる直前に強いビル風が吹いていたくらいだろうか?
ま、まさかとは思うがあの強風でクレーンにつるされていた鉄骨が外れて、そのままの勢いで俺の頭を一撃で粉砕して意識が保つ間もなく即死したっていう超不幸な最後を遂げたとか、……ないよね?
そんな漫画みたいな最後絶対にありえないけど工事現場の上の方で鉄骨が持ち上がってる所とか見えてたし、もし死んでここにいる場合だとこれが一番わかりやすい死に方なんだよなぁ……
記憶が途切れるよりも前の記憶を辿っても何の変哲もない日常を過ごしていただけだし、誰かに恨みを買うようなことはしたことがないし、神様とかにも失礼なことはしてこなかったと自分では思っている。むしろ今年の元旦の賽銭じゃあ他に小銭がなかったから五百円玉を放り投げたくらいだし、神様に恨まれてたらあの時の五百円玉返せって感じだな。
……うん。これ以上は陳腐な考えしかでてこないから考えるのを止めよう。
結局ここに連れて来られた理由が全く分からん。死んでるんだとしたら""鉄骨で一撃説""が最有力かな?
『ーー大変お待たせ致しました。条件が達成されたため次の段階へと移行します』
うぇ!?何か頭の中に変な声が聞こえる!?まあ、頭無いけどね!
ていうか、条件ってなんなの?俺、何したの?これから何が起こるの?
『質問への返答義務を全うするため、お答えします。一つ目、死者の中で行われる転生者選定の抽選に当選した貴方には転生に必要な条件である「生前の記憶の完全な復活」と「自身の死因の特定」がありました。』
『二つ目、貴方は先程貴方が想像した通りの死に方でこの世を去り死者になりましたが、高位の存在によって貴方の魂は貴方の意思とは関係なく転生者として生まれ変わることが決まりました。この決定に関して貴方が何かをしたということは全くなく、偶然選ばれただけです。』
『三つ目、先程述べたように貴方には本来の「輪廻転生」の理から外れて記憶を持った状態で""転生""してもらいます。さらに貴方には転生に際して貴方が望むモノを一つだけ授けた状態で転生することになります。』
……なんか、突拍子もないことを一辺に言われたもんだから呆然としてしまった。
やっぱり、俺、死んでたんだな……。
人生辛くても家族を悲しませないために自殺だけはしなかったのに、俺、死んじまったのか……。
まあ、あのまま人生過ごしてても真っ当な生活ができるとは思えなかったし別にいいか。もう死んでるんだし。
このままグダグダと前の人生を引きずったまま転生しても仕方ないしな。これ、絶対次に生まれる世界違うパターンの奴だし。断れないタイプの案件だし。
『はい。転生に関して言えば貴方に拒否権はありません。また、転生する世界はこちらで決めさせていただきます。』
やっぱりそうだった。まあ、最初の説明の時点でなんとなくお察しだったけどさ……。
というよりも、今頃だけど俺が考えてることナチュラルに読み取られてるよなぁ、これ。
別に自発的に話せないし、基本的にコミュ障だから問題はないんだけどさ。
『では、おおよその疑問点にお答えしたところで転生を開始します。貴方が転生に際して欲するモノ。例えば才能や技能、環境、特殊能力、アイテムなどを思念として伝えた時点で転生は始まります。では、貴方が望むモノを一つ思い浮かべてください』
いきなり始まったな、転生の案内!?もうなの!?もう始まるの!?
展開の速さについてけねえよ……。てか、さっきから俺のテンション不安定過ぎかよ……。
さてと、現実逃避もいい加減止めるか。時間かけても無益だしな。
所謂「転生特典」を何にするのかなのだが、いざ「選べ!」と言われると非常に悩ましいところだ。
超能力系の力だとうまく使いこなせるか分からないし、同様の理由で某青ダヌキの秘密道具系の特典も全部却下。
生活環境も転生して直後に死ぬみたいなヤバい場所じゃなきゃある程度順応できる自信があるからスルー。
あとは才能とかになるけど、今一ついいモノが思いつかない。
万能の才能とかは思いついたけど別に完璧超人に生まれ変わりたいわけじゃないし、何でも最初からできちゃうと何かをやり遂げた時の達成感も薄れるからやめておいた。
生前だってなんでも卒なくできたから今一つ本気で熱中できることが見つからなかった訳だし、わざわざ人生をつまらなくしても意味はないだろう。
ここまで色々と考えてみたがいい感じの特典が思いつかん。
よし、少し考え方を変えてみよう。
まず、俺が前世で後悔したことは何か?何事もつまらないと言って直ぐに投げ出してしまったことだ。
では、なぜ投げ出したのか?物事に対して執着心が足りなかったから。
ーーそうだ、俺はどんな時だって楽しいことをしていてもそれに付きまとう面倒なことばかりに目が行って、勝手に自分の中でつまらないと思い込んで投げ出してきたんだ。
割と感覚に頼って生きてきたから努力を本気でしたことがないのも要因の一つではあるが、周りから強制される以外では自分で何かを続けたことがないというのは事実だ。習い事だって拒否権があれば直ぐにやめたし、人間関係ですらなまじ一人遊びに慣れ過ぎた所為か特に作る気もしなかった。
何というか、冷めているのだ、俺は。
今だって自分が死んだことを受け入れたわけじゃなくてそれしかすることがないから身を任せているだけなのだ。この場で反抗的な態度をとっても現状が何か変わるわけでもないから大人しく相手の言うことを聞いているわけだし、もし万が一自分の態度で相手の気分を害して自分がこれから辿る運命が最悪のモノになるとしたらと考えると流されて動くのが最適であり、楽な選択だと本能的に判断してしまっているのだ。
生きていた頃もずっと似たような考え方ばかりしていたから友達と呼べる人間は出来なかったし、どんなことでももっと上を目指そうといった上昇志向になることはなく投げ出してきた。
そんな自分が嫌で嫌で仕方なかったけど自力で変えることができずにダラダラと無駄な時間を消費し続けていたのだ。
そして、死んだ今でもそれが変わっていないというのだから、全く持って救いようがないとはこのことだ。
このまま俺が転生したとしても考え方が変わらない限り、俺はどんな世界に生れ落ちようとも自分が理想とする人生を歩むことができないだろう。
ならば、俺は自分で変えることができない""自分""を変えるために特典を選ぼう。
俺に足りないモノ。それはどんなことでも続けるために必要な""執着心""だ。直接的に関係性がなくてもただ一つだけでも誰にも譲れない何かを持ってる人間の行動力はすさまじいものだ。
俺の周りにはそんな""執着心""を持てるだけの何かを持つ人間がたくさんいたからそれが良く分かるのだ。
アイツらが目標のために頑張っている姿はいつも眩しく見えていた。
そんなキラキラと輝いているアイツらと何も持たない自分を見比べて劣等感を抱く自分が、本当に嫌いだった。
自己嫌悪に陥っている俺を見て両親は「考えすぎだ」、「周りと自分を見比べるな」と、言ってくれたがその言葉で俺の本質は変わることがなく、むしろ自覚したが故にひどくなった。
もうこんな冷めた気持ちで生きていきたくない。もっと単純な自分でいたい。
どんなに馬鹿なことでもいい。俺は何かにがむしゃらになりながら生きている実感が持てる、そんな""執着心""を持てる自分になりたい。
だから、こんな俺でも俺が理想とする自分になれるだけの""執着心""を、俺に授けてくれ!!
『貴方の願いを聞き届けました。""ーーーーー""を付与します。』
『付与完了。これより魂の転生を開始します。』
『貴方の第二の人生に幸有らんことをお祈りします。』
その言葉を最後にして俺の目の前から灰色の世界は消え去った。