及川光成は走者である   作:水上竜華

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前半はバトルパート。
そして、後半は……。





第七話 再起の大地

 

 

 2016年 6月末

 

 

 春に埋めた作物の種が実り始め、そろそろ収穫の時かと歌野たちと話し込んでいた最中にバーテックスが襲来してきた。

警報が鳴ったのは丁度俺達が昼食のソバを食べ終えたところで、タイミングよくやって来たバーテックス共を早急に返り討ちにせんと俺と歌野は神社へと着替えを取りに行き、出撃する。

 

 そして今、俺達はバーテックス共と交戦状態にある。

 俺達の戦いにおけるスタンスは広範囲攻撃が可能な歌野が前に出し、諏訪の結界の要である御柱に近づいてくる敵を無理のない範囲で潰してもらい、歌野の打ち漏らしを俺がフォローするといった形になっている。

 安定した戦闘力を発揮できる歌野と違い、直接攻撃することを意識してしまうとたまに力が出なくなる俺ではメインで戦うのに適していないのがこれまでの戦闘で判明したため、こういった形を取ることになった。

 

 しかし、俺のバトルスーツが去年の末に完成してから俺達の状況は変わりつつあった。

 俺のバトルスーツには以前説明したように俺の体から漏れでていた余剰エネルギーを強制的に体に留め、これまで以上の身体強化をすることができる機能が搭載されている。

 ただ、元々体に押し留められなかったエネルギーを使っている関係上、体への負担が大きいため切り札としてこの機能を使ってきた。

 予想以上の強化倍率に最初は驚いたがやはり使い過ぎると体が自壊し始め、骨に罅が入ったり体の節々から血が出たりと体が持たないため短時間の使用しかできないものの期待以上の性能だった。

 

 しかも、数回ほど使用してみて分かったことなのだがこの機能を使うたびに俺の体が壊れないようにするためか急速に体が成長し、今ではそれほどの走ることへの執着心がなくても力を引き出せるようになってきている。

 バーテックス達と戦うにはまだ不十分な出力ではあるが、このまま俺の強化が進んでいけば安定した戦力として戦えるようになり歌野の負担も減らせるようになるだろう。

 

 とりあえず、今回はバーテックス達の集合体である進化体が出てきたら機動力と瞬間火力に限って言えば歌野よりも優れている俺が叩くといった流れで役割分担し戦闘を行った。

 今回の襲来は前回から少し間が空いた所為か敵の数も倍以上は多く、今までの攻防で敵も学習したのか俺達を無視して御柱に向かっていくため歌野のうち漏らしも少しだけ多かった。

 まあ、おそらくこれまで経験してきた中で一番多いと思われる敵の進行を本当に少しだけで済ませているのが歌野のすごいところだろう。

 

 さらに言えば、やろうと思えばそれらの個体も殲滅していたのだろうが、ある程度の余力を残すためにあえて俺に任せている節さえある。

 歌野の場合、個の戦闘能力も凄まじいがこういった瞬時に下せる状況判断力が小学生にしてはずば抜けている。

 これでまだ成長期なのだから、戦う相手にとっては恐ろしいやつと言えるだろう。

 

 俺は迫りくるバーテックス達をシャトルランをするかのように戦場を右に左にと駆け抜けながら踏みつぶしていく。

 篭手やシューズ、パンツと胸部の装甲以外ダイバースーツのように体にぴっちりと張り付いた全身真っ黒のバトルスーツは風の抵抗を最小限に抑え、頭部につけられたバイザー付きのヘッドバンドは風や雨、宙に浮かぶ粉塵などから俺の視覚を守っていた。

 このスーツが出来るまで自前のジャージで戦っていたが特殊な機能を抜きにしても、今の方が段違いに走りやすい。

 ぶっちゃけ普段使いの許可が下りれば毎日ランニングで着用したいくらいだ。

 

 そんなアホなことを考えながらも、後方から戦場全体を確認していると一部の敵の行動に変化が生じたことに気付く。

 どうやら進化体を形成し始めたらしく、歌野も気が付いてはいるが敵の数が多すぎて形成を妨害することができないようだ。

 歌野を素通りし御柱に近づいてきた最後のバーテックスを踏みつぶすと、そのまま止まらずに歌野が戦っている前線へと加速した。

 

 移動ついでにバーテックス達を踏み砕き、進化体の下へと進んでいく。

 俺の姿が見えた歌野は鞭を振るうペースを上げ、これまで素通りにさせてきたようなバーテックス達もその鞭の餌食にしていった。

 

「ここから先は農業王の名に懸けて一匹も通させないわ。」

 

 これ以上先には進ませないという気合が声を聴くだけで良く伝わってくる。

 歌野の頑張りを無駄にしないためにも、俺は全力で戦場を駆け抜けた。

 そして、何やら棒状の形状をした進化体が丁度完成したところで俺は目的の地点に到着し、攻撃を始める。

 

 攻撃と言ってもすれ違いざまに敵を数回踏みつけるだけなのだが、全てに通じるわけでは無いが進化体によってはこれだけで撃破が可能な場合もある。

 しかし、どうやら今回の進化体は防御力に特化しているのか、棒の側面から板が出現し攻撃を完全に受け止められてしまう。

 しかも、若干衝撃が反射されているらしく、足に自分の蹴りの衝撃が伝わり少し痺れていた。

 

 このまま持久戦になっても不利なのは体力に限りのある自分達の方だ。

 敵の数にも終わりが見え始めたことを確認すると、俺は短期決戦を狙って切り札を使用する。

 バトルスーツに搭載された機能は頭の中で思念を送るだけで発動し、発動した途端体全体に何かしらのエネルギーが逆流するという独特の感覚を覚える。

 それと同時に全身にただ力を発動させた時以上の力が漲り、感覚も一回り強化される。

 

 活動限界は十秒を超えた辺りでそれを過ぎると体が負荷に耐えられなくなり動けなくなるため、早急に敵を倒さなければならない。

 進化体と一旦距離を取ってから切り札を発動させた俺はより一層強化された脚力で大地を蹴り、進化体に再び攻撃を仕掛ける。

 瞬間的に音速を超えた蹴りは進化体の板に直撃し、甲高い金属同士がぶつかり合うような音を鳴らす。

 

 さらに俺の攻撃はそのままでは終わらず、その場にとどまり連続で板に蹴りを食らわせ続ける。

 これもバトルスーツに搭載された機能の副産物なのだが、切り札を発動している最中であれば俺の執着心が弱くなっても数秒間であれば力の維持が可能になり、通常攻撃も出来るようになったのだ。

 この貴重な数秒間を使い、俺は全力の蹴りによるラッシュを進化体に叩き込む。

 

「おらぁぁぁぁあああああああ!!!」

 

 一秒間に十数発のペースで蹴りを叩き込んだ結果、蹴りを始めてから五秒後くらいで板に罅が生じ始め、六秒に達したときには本体の棒ごと蹴り砕いた。

 進化体を倒した頃には足は既にボロボロになり、蹴りに使った方の脚部の装甲は完全に破損し痛々しくケガをした生足が見えていた。

 丁度最後の蹴りを加えた辺りで力の維持ができる限界に達したのか既に一般人よりも少し上の身体能力に戻ってしまったが、どの道この足では戦いを継続するのは難しい。

 

 敵の最後尾に近い位置に進化体がいたおかげか幸運にも俺の周囲に敵は居らず、取り敢えず戦線を離脱するためにもう一度だけ力を使いバーテックス達を避ける形で結界まで逃げ切ってみせた。

 流石に傷ついた足で走るのはかなり堪えたが未だに戦い続けている歌野の足を引っ張る様な事にならないようにするため、痛みを我慢して必死に走った。

 

 進化体を倒してから数分後に全ての敵を殲滅した歌野は結界内の木の下で腰を下ろして待っていた俺の下へと駆け寄る。

 

「光成さん、大丈夫?今回は結構派手にやられちゃってるみたいだけど…。」

 

「ーーああ、相手が予想以上に固くてな。肩貸してもらっていいか?」

 

「もう、ショルダーなんて言わずに私がおぶってあげるわよ。」

 

「……すまんな。」

 

 小学生に背負われることに抵抗感はあるものの肩を貸してもらうより速く移動できるため、言葉に甘えることにした。

 

「ふふ、私が光成さんをおぶってるのって結構新鮮なものね。」

 

「俺だって好きでおぶられてるわけじゃない。」

 

 いつも出撃の際、俺達は機動力が歌野よりも上である俺が歌野をおぶって移動しているが、こうして歌野に背負われるのは実は初めての体験なのだ。

 今までは進化体を倒すのにそれほど手間もかからなかったため、酷い怪我を負うこともなく終えられていたが今回は俺の自爆もあり、結構な痛手を負ってしまった。

 諏訪に来てから半年以上戦い続けてきたが、だんだん敵が手ごわくなっているのは確かだと思う。

 早く体作りを急がねばと考えていると移動中の歌野から声を掛けられる。

 

「光成さん、あんまり無理しないでくださいよ。私だっているわけですし。」

 

 いつも俺に対してフランクな感じで話す歌野だが、真剣な話をする時にはこうして丁寧な口調で話すことがある。

 つまり、今回の俺は歌野が真剣にならざるを得ないくらいに無茶なことを仕出かしたのだろう。

 だが、俺にも譲れないものはある。

 

「今回に限って言えば自分の判断に誤りはないと思うが。」

 

「まあ、確かにそうなんですけどあんまり派手にやりすぎると私以外にもみーちゃんとか恵那さんが心配するんですよ。」

 

 いったんここで話を区切ると歌野は移動を続けながら横目をこちらに向けて話を続けた。

 

「焦る気持ちも分からなくはないけど、もっと自分の体を労わってください。私達は戦うために生きてるわけじゃないんですから。」

 

「……ああ、善処する。」

 

 確かにこれからも走り続けるためにも、もっと先のことを考えながら戦った方がいいのかもしれないな。

 今回の戦いだって別にわざわざ短期決戦に持ち込まなくても、歌野が他のバーテックスを倒すのを待って二人で倒せばよかったのだ。

 歌野の強さを信じていたのなら、なおさらだ。

 相変わらず小学生離れした歌野に脱帽しながら今回の件について少しだけ反省した。

 

「ーーさて!それじゃあさっさと光成さんを病院にポイしたら農作業に戻るとしますか。」

 

「……お前なぁ。」

 

 余りの言い草に何か言おうとしたが、無駄な体力を使うだけだと思い取りやめた。

 ……最近、周りの俺に対する扱いが雑になって来てる気がするのはなぜなのだろうか。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 歌野は先程の宣言通りに俺を病院で放り出すと農作業をするために神社に着替えに行った。

 まさか本当にポイされるとは思ってもみなかったが、あれも歌野なりに俺の回復力を信頼しての所業なのだろう。

 ……そうじゃないと心が持たない気がする。

 

 と、取り敢えず、恵那が来る前に医者に診てもらおう。

 俺は病院でケガの様子を見て診てもらい、処置を受けた後に待合室で恵那が迎えに来るまで待機していた。

 ちなみに着替えが手元にないためバトルスーツのままである。

 

 俺のケガはそれなりに酷く、蹴りに使った右足には罅が入っており今はギプスで固定されている。

 当分の間は松葉杖での生活をしなければならず、医者が言うには大体2週間前後は覚悟した方がいいらしい。

 と言っても、左足は問題なく動くし激しい運動さえしなければいいと考えればまだいい方か。

 

 農作業などは当分できないにしても日常生活に支障は出ないだろう。

 俺が負傷したままの状態でバーテックス共が襲撃してくることが一番面倒な事態なのだが、奴らは周期的に来ることがこの約一年の戦いで分かってきたため、今日、明日で来ることはないと考えられる。

 まあ、奴らに関して言えばまだ情報不足であることは否めないし、もしもの時は俺が無理をしてでも出撃するしかあるまい。

 

 そんなことを閑散とした待合室で考えていると、入り口とは反対側の廊下から見知った顔が現れたのを見つけた。

 

「ゲンさん。御無沙汰です。」

 

「……おう。」

 

 俺の呼びかけに対し、年季を感じさせる白髪の混じった角刈りヘアーに古びたシャツを着たご老人はぶっきらぼうにそう返した。

 この人は俺と歌野が畑作りをする際に何度か助言をくれた元農家の方々の一人で、今でも会いに行けば直接手は貸してくれないけどちゃんと話をしてくれるいい人だ。

 

「おめぇ、その足……。」

 

「ああ、今日の戦闘でちょっとやらかしてしまいまして。まあ、見た目ほど酷くはないので気にしないでください。」

 

「そうか…。ならいいだが。」

 

 視線を包帯でぐるぐる巻きになった俺の右足に落とす。

 見ようによってはかなりの重症に見えなくもない包帯の巻き方であるため、ゲンさんが心配するのもおかしくないだろう。

 

「それで、おめぇがここにいるってことたぁ、……あのバケモン共は。」

 

「はい、今回も無事に倒してきました。僕以外に死傷者はいません。」

 

 報告を終えるとこれまで何処か緊張した面持ちでいたゲンさんは安心した表情になり、安堵の息を吐く。

 基本的に勇者たち以外の一般住民は警報が鳴った後、指定された地域まで避難し敵の進行によって結界に負荷が見られた場合、まだ結界の損傷が少ない地区に逃げるといった動きが求められている。

 しかし、病院で寝たきりになっている病人や、例の空に対し異常なまでに恐怖心を抱く精神病、最近決まった正式名称は「天空恐怖症候群」の人達は自力で移動することが非常に困難であり、そういった人の場合親族と話し合った上で避難地域に残ることになっていた。

 

 ゲンさんの奥さんは天空恐怖症候群、通称「天恐」の患者であまりの症状の酷さに今では病院でカーテンの閉め切った部屋で過ごしている。

 ゲンさんは外に出ることができない奥さんを一人にしないために警報が鳴っても避難せず、奥さんと共に病院でバーテックス共の進行が終わるのを毎回待っていたらしい。

 今日、俺が病院に残っていたお医者さんに治療を受けている間に歌野が神社に報告を済ませてきたので避難警報はすでに解除されており、避難していた人たちは元の日常生活に戻っている頃だ。

 ゲンさんも奥さんの下を離れても大丈夫になり、何かしらの理由で外に出ようと思ったら負傷した俺と遭遇したのだ。

 自分で言うのもなんだが俺はこの諏訪でたった二人しかいない貴重な戦力の一人だ。

 そんな人間がケガを負っているのを見たら、色々と不安に思ってしまうだろう。

 

「白鳥の嬢ちゃんは畑か?」

 

「ええ、相変わらずです。収穫の時期も近づいてますし。」

 

 俺の足のことから歌野の畑についてへと話は移り、今回の収穫を終えたらこれまで手をつけられなかった元畑である荒れ地を開墾しようと考えている歌野に賛同していいか悩んでいることをいい機会だったので相談してみた。

 今回、荒れ地を開墾するにあたって俺が懸念していることは単純に人力が足りないのではという点についてだ。

 

 去年の秋から今年の夏にかけて、俺達は畑の範囲をだいぶ広げてきた。

 しかし今の俺のように、いずれ畑仕事をしている歌野や俺が戦闘によって負ったキズで力仕事を控えなければならない状態になったとき、畑の状態を維持するのが非常に困難になることは間違いない。

 このネガティブな思考でこれからの畑の回し方を考えるとこれ以上範囲を広めるのは得策に思えないのだ。

 

 ゲンさんは息子夫婦をあの災害時に亡くしており、唯一残された奥さんとの時間を大切にしたいということもあって俺達に直接手を貸すことはなかった。

 その気持ちは痛いほど分かるので無理矢理手伝わせる気はなく、自分の判断に間違いがないか。

 ただそれだけを確認したくて、相談を持ちかけてみたのだ。

 

 俺の話を聞いたゲンさんは何故かその場で深い溜め息を吐くと、呆れたような表情で俺を見つめ直す。

 

「おめぇなぁ。元々あんだけ広大な畑を小学生と毛の生えたばかりの青二才の二人で切り盛りしようってのが土台無理な話だったのを実現させといて今さらそんなこと心配してどうすんだ。」

 

「……あれはそもそも歌野が始めたことですし、僕も成功するとは思ってもなくて。」

 

 言い訳じみたことを言う俺に対してゲンさんはすかさず言葉を続ける。

 

「だけどよ、おめぇはちゃんと自分で体動かしてそうなるように嬢ちゃん達と頑張ってきたんだろ?」

 

「……はい。」

 

「なら、今更考えても分かんねぇ先のことなんか考えてねぇでおめぇがしたいことをやんな。俺から言えるこたぁ、こんくれぇのことだけだ。」

 

 そう言うとゲンさんは一度出てきた病室の方へと足を動かしていき、途中で振り返ると最後にこう言い残していった。

 

「おめぇらのやってること見て、勇気を貰ってる奴らだって居るんだからよ。そんだけは忘れんなよ。」

 

「ーーはいッ。」

 

 その言葉に対し返事をするも既にゲンさんの姿はなく、誰もいない待合室で呟いたその一言は誰に聞かれることもなかった。

 

 

 

 

 

 

 俺がケガをしてから3日が経ち、依然として足のケガが治らない俺は巫女組二人と共に木陰に座り、一人畑を動き回る歌野を見ていた。

 しかし、見ているだけだとつまらないため俺は無事な片足だけで上下運動をしたり、バランストレーニング紛いのことをして退屈をまぎらわせていた。

 巫女の二人は農作業をしている歌野を見ていたり、読書をしていたりとそれぞれが思い思いのことをしている。

 

 ここまではいつも通りの光景なのだが、今日になってこの光景に変化が起きた。

 

 木陰にいた俺達に近づく数人の集団が現れたのだ。

 その集団は三十代から六十代の男女が入り交じっており、その中には何人か見知った顔もいた。

 ゲンさんと同じように農作業について助言をくれた元農家の人達である。

 

 今まで通りすがりに挨拶をされることはあったが、こちらが出向いた時以外にこうして面と向かって話をするのは初めてのことだった。

 一体何事だろうかと考えていると、集団の先頭にいた顔見知りのおじさんが話しかけてくる。

 

「あ、あのよ。……俺達も畑、手伝ってもいいか?」

 

「「「え?」」」

 

 そのお願いに嬉しさやら困惑やらで俺達は目を見開き驚く。

 念のため確認するように俺は聞き返す。

 

「本当にいいんですか?」

 

「ああ、今更虫のいい話だと思うかもしれんが、大人の俺達がこのまま何もしないのもどうかと思ってよ。……やっぱり迷惑だったか?」

 

「いえいえ、むしろ人手はウェルカムですよ、皆さん。」

 

 こちらの様子を見てか畑仕事を一時中断し、やって来た歌野が手伝いに来た皆を歓迎した。

 それからは歌野と俺以外の皆でも畑を回るようになり、俺の足のケガが治った頃には懸念していた人手不足の問題は解消しつつあった。

 

 

 

 

 

 

 この人達の行動が日切になり、諏訪の人々は立ち上がり始めた。

 畑仕事を手伝う人は増え、魚を取りに船を出す人達も現れ、他にも今まで閉めていた店を開く人や、老人や天恐の人の介護を進んでする人なども出てくるようになった。

 皆の胸に宿った小さな勇気は少しずつ、でも確実に希望を失った人々に伝染していき、次第にその小さな勇気は諏訪中に広まり希望になっていた。

 周りの明るい空気に触発されてか天恐になっていた人達も徐々に症状が回復していく人も出てきて、ゲンさんの奥さんも自宅で生活が出来るくらいには回復していた。

 

 まだ、結界の外には俺達の日常を奪ったバーテックス共がウジャウジャいる。

 でも、最後まで諦めなければ人間は何度でも立ち上げれるのだと、俺はこの諏訪で学んだ。

 

 だから、例えこの先どんなに絶望的な状況に追いやられても最後まで戦い続けようと俺は心に誓った。

 

 

 

 

 

 






主人公の存在によって住人達の結束が早まり、原作の諏訪と今作の諏訪とでは状況が変わっていきます。


ゲンさん
今作のオリジナルキャラクター
主人公がケガをしたことを機に、自分にもできることをしようと奮闘し知り合いの農家を走り回り、協力してくれるように声を掛けて回っていた。
彼が声を掛けに来たことが切っ掛けで手伝いに行こうか悩んでいた数人の人間が集まり、実行に移すことが出来た陰の功労者。
二年後には奥さんと共に畑仕事に勤しむことになる。


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