追い詰めた敵が最後の手段で世界をやり直したので今度こそ確実に殺します   作:カラー・ロザリオ

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リセット

「はあ……はあ……やっと……やっとだ……長い道のりだった……いや…長くない……短かった…でも…………そう感じた……気分なんて……全く良くない」

 

そよ風でさえ傷口に染みる。痛いなんてもんじゃない。体はあちこち傷だらけ、血だって止まらない。立つことだって本来やってはいけない程に。

 

それでも、それでもだ。立つし握っている手を緩めない。振っている腕を止めない。

 

当たった『骨』が奴を後ろの壁まで飛ばす。壁は崩れ奴を下敷きにするも瓦礫は一瞬で『消滅』する。

 

「どんな気分だ……確かにお前は『選ばれた』……でも『勝ち取った』のは俺だ……『聖なる武器』はもう……俺しか使えない……お前はもう『世界の先』へは……いけない」

 

勝てる、でも正直言って敗北だ。殺せる、でも既に殺されてる。

たとえ奴に、『ワード』に勝っても、いや、どんな結末を迎えても俺にはハッピーエンドなんてない。

 

「この……こんな人間に!なぜ!『聖なる武器』は何故お前のモノになった!答えろ!」

 

ワードは目の前で起こったことなのに何故その事に質問する。事実も、答えも、正解も見ただろうに。

 

「『勝ち取った』……そう言ったそれが事実だそれが正解だ……ああ、最悪な気分だよ……とても最悪だ。反吐が出る……その反吐を踏みつけても、砂に埋めても、口に残った味は消えない……」

 

俺は青白く光る2つの『骨』を両手に握りしめる。一歩ずつ、ふらつきながらでも、とどめをさすために。

 

「口に残るで思い出した……一週間前に奮発して高い焼き肉屋に行ったんだ。そこの店はマツサカ?と言う地域で育った牛の肉を使っていたんだが、最高に美味かったよ。あまりに美味かったから食い終わっても何も飲まずにいたんだ。いつまでも口に残って、幸福だった」

 

ここまで、奴1人の為に、何人もの人が犠牲になったんだろう。ジャイロ、アトラル、カリオル、ああ、『仲間』は、皆殺された。仲間だけじゃない。立ち向かった警官、奴を裏切ったまだ名前も知らない人。

 

そして…………不知火。

 

わからねえよ不知火。せっかく託してくれた能力。使えねえよ。使い方がわからねえよ。『不死鳥』の能力。どうやって発動させてたんだ……いや、もう関係ないや。

 

だって、もうとどめなのだから。『聖なる武器』でもう終わる。終わるんだ。

 

「私は……絶対に『目的』を果たす。たとえ、どんなに時間がかかろうと遠回りしても。どんな手を使おうと人を殺そうと……私は果たさねばならない!!」

 

「何を……しているんだ」

 

何故ワードは自分の心臓を貫いた!何故だ!言っていることとやっていることが違うぞ!奴の目的は生きていなければ果たせない!彫刻や漫画とは違う!生き続けなければならないのに!

 

「何を……するきだ」

 

「人間の『魂』が一番……力が強くなる瞬間は……ごばぁ!……く、いつだと思う!それは目的を果たす寸前と!果たせずに怒り狂うときだ!私は怒り狂っている!!そしてもう1つある!」

 

何かする!だが何故自殺行為で何をするんだ!『魂』が一番強くなる時?……そうか、わかった。

 

「それは……死ぬ寸前の走馬灯だ!最終手段だ!!」

 

「…………もう遅い」

 

2つの『骨』をくっつけ、『弾いた』硬い絃をはち切れそうになるまで引いて放った矢のように、真っ直ぐに喉を貫いた。

 

「『骨』はお前に『くっつき』能力を『弾いている』……能力は完全には離れないがこれでもう何をしようと…………俺の勝ちだ」

 

終わった……これで、だけど……もう力が入らない。死ぬことに後悔はない。それほどに俺は後悔している。仲間が、親友が、大切な人が死ぬんだったら……いや、もう遅い。

 

 

この戦いは、全員死亡で終わる。ハッピーエンドでも、バッドエンドでもない。いや、終わりは誰かが認識して初めて終わりなんだ。でも、認識するやつがいない。書き残す奴も、語り継ぐ奴もいない……滅ぶだけだ。

 

「ちくしょうめが」

 

もう、何も言うまい。何を言ったところで、誰にもこの声は届かない……ならば祈ろう。神様何て、いないかも知れない。いるかも知れない……いるかもしれないで思い出した。河童、探して見つけたいなぁ。見つけたら1000万円みたいだし……『聖なる武器』探しは楽しかった。次生まれ変わるときは冒険家になりたいな

 

そう思いながら、薄れていく意識のなか、最期に瞳に映ったのは……ワードの生首だった。生首だけだった。

 

「…………?」

 

その意味を理解した時は意識を手放す寸前だった。生首だけ。『骨』から離れた。つまりはワードは最終手段を発動させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………?」

 

ここは……どこだ?

 

見慣れない格好だ。これは俺が着ているのか?これは、寝床なのか?何でわざわざ段差をつける必要がある?寝相で落ちたらいたいじゃないか。『クリーンベッド』?ベッドってなんだ?枕と掛け布団。明らかに寝床だ。窓がある。外はどうなっているんだ?

 

「どうなって……やがる?」

 

外は知らない家ばかりだった。道路もアスファルトじゃない。見慣れない服の人が沢山いる。活気がある。でもこんなに沢山人がいるのに3階建て以上の家が見つからない。あってもデカイ建物だけだ。アパートらしきものものし横に長いだけ。家の作りも木造だ。今時古い……馬車が通った?!馬は禁止されている筈だ!

 

「よく見たらこの家の壁、木造なのに耐震加工がされてないじゃあないか。欠陥住宅だ」

 

いや、ここまでとなるとここは違う国か?いや、あり得ない。布団とうにある文字は俺の国の文字だ。俺の住む国特有の文字だ!

 

カレンダーがある。20××年。俺の住む国のカレンダーだ。もう一度外を見よう。耳を澄ませよう。うん。聞こえてくるのは知っている言葉だ。ここは外国じゃない。

 

それ以前に俺は死んだ筈だ。あの場所には俺とワードしかいなかった。ワードは最終手段を発動させた。ならワードは生きていると考えた方が自然だ。そして、果たせなくなった『目的』がまた果たせる状態になったと考えて良い。だがそうなると俺が生きるには奴から助けてもらうしか方が無い。

 

「『世界の先』にいけなくなった奴はどうする?」

 

『世界の先』に行くには『聖なる武器』を全てを集めてその力を我が物にして能力を使わなければいけない。だが不知火が自分の命をつかって『骨』以外の『聖なる武器』は『不死の炎』で永遠に燃え続けている筈だ。誰も手出しができない。

 

『選ばれた』奴は力を、『無限に限りなく近い生命エネルギー』を手に入れた。だが『能力は』燃えて使えない。ならその無限のエネルギーを何に使ったかだ。『不死の炎』は消すことはできない。ならばどうする?……使うようにするには燃えた事を無かったことにする必要がある。だが真実は書き換えられない。だが過去に戻れる事ができれば無かったことにできる。だがそれだとこの状況の説明がつかない。

 

「……とんでもねえ発想だけど、これぐらいしか」

 

平行世界から『聖なる武器』を持ってくる。これじゃあ説明がつかない。平行世界に行くでも説明がつかない。俺が生きているからだ。俺を殺すことができなかった。それを踏まえた理由……それは

 

「世界をやり直す」

 

そうすれば納得が行く。世界をやり直せば真実は必然的に変わる。『無限に限りなく近い生命エネルギー』で全ての生き物をリセットしたんだ。そして前の記憶を残すにはそこから『自身が生きたその時まで進ませる』。つまり20××年の今日まで進ませる。そうすれば記憶を保持したままになる。

 

「となるとこの世界で生きてきた18年の俺がいたって事か。知り合いとか誰だろう」

 

そこまでしたなら『無限に限りなく近い生命エネルギー』はもう使いきった筈だ。もし残ってたらあれやこれやで簡単に殺せる。しかも『聖なる武器』また各地に散らばった。集めた事さえなかった事になったからだ。

 

「なかった事……か」

 

この世界はこうやって俺がいる。ならどこかに不知火やカリオル達がいる筈だ。でもその人は、俺の知っている不知火やカリオルじゃない。同じ存在で、全く違う人間。

ふざけあったことや、共に戦ったこと。楽しいことから悲しいことまで、一緒に背負ってくれた。一緒に立ち向かった……それも無かったことになったんだ。

 

ジャイロがいなければ、『能力』の使い方を知らないままだった。

 

アトラルがいなければ、ワードにたどり着く事ができなかった。

 

アトラルがいなければ、ワードに攻撃が当たらなかった。

 

そして……不知火。お前がいなければ、俺はきっと、1人で戦っていた。そして意味なく死んでいた。俺の身勝手を『正義』にしてくれた。ワードを追い詰めることもできなかった。

いや、それ以前に『仲間』と会うことさえ、楽しいことをすることさえなかったかもしれない。

 

 

 

でもそれはもう無いんだ。無くなってしまった。ワード、お前のせいだ。

俺1人がそれを知っていてもそれは思い出でじゃない、ただの幻だ。証明なんてできない、真実じゃないただの妄想だ。

皆がいたからこそ、お前を追い詰められた。皆が生きた幻を思い出に、妄想を真実にするために、次は殺す。殺してやる。

 

「ここからは、皆の『正義』の戦いじゃない。俺1人の、『復讐』だ」

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