「「「茅場ァ!!」」」(責任放棄)
オルス「※#□%×……」
「たーいまー、帰ったぞーい」
「□&○%$■!」
「お、ご苦労さん。
随分遅かったじゃないか、大丈夫だったのか?」
『(^o^)』
このぷろぐれっしぶ!は時系列が飛び飛びになるので、初めに時期を明記しなきゃならないのである。もうちょっと上手いやり方があったような気がして後悔しているこの頃である。
と言うわけで、時は2023年の春初め。オルスがグラント帝国に加入して暫く経った後の事。たまたまズムフトで話題になっていた隠しダンジョンの噂を確かめようと、グラントとオルスの二人は目的地の五層まで出向いていたのだった。
そして、その彼らの帰宅を出迎えたのが、居残り組のハルキとトミィである。
「っていうか、いくら翻訳ウィンドウがあるからって、お前よくオルスと二人きりで連携取れたな。何か方法を見つけたのか?」
「まさかぁ。んな事しなくたって簡単な話だよハルくん。
まず俺が突っ込むでしょ? モンスターにフルボッコにされるでしょ? オルスが助けに来てくれるでしょ? ハイ連携完成」
「それは連携じゃなくて勝手な行動とその尻拭いって言うんだぞ、覚えておいてな?」
いくらなんでもランボーだろ。これでオルスがそこそこ強かったから何とかなったものを。……というかむしろ、ぶっちゃけこの落武者男、今までハルキと二人で行動していた時も似た様な事やってたんだけど。
「まあ、無事なら何よりだけどさ。
それで? お目当てのダンジョンの方はどうだったんだ?」
「えっとですね、まずあそこが、攻略に大事な狩場になったり重要アイテムのある場所ってワケじゃーないみたいっすね。フツーに敵はそのまんま五層レベルだし、他のクエストと連結してるって事も無さそーだったし」
おや、残念。
今後もいわゆる中層の、攻略組が取りこぼした隠しダンジョンの類をよく散策する事になるグラント帝国だったけど、その全てに成果があるかと言えば、むしろ逆で……ほとんどの場合がレベル的にもトレジャーハント的にも無用になったエリアなのである。そんな中でほんとにたまーに、数か月後にキリトとサチの二人と探検したあそこみたいな、その層の安全マージンを大きく超えた初見殺しダンジョン(SAO編第九話と第十話のアレね)が存在するのである。
しかし今回はよくある外れ、つまりグラント達の実力ではレベリングにもならない、純粋に最前線だった当時に発見されなかっただけのダンジョンだったようだ。あとでアルゴ辺りに連絡を取って、プレイヤー達に情報を伝えないとな、と思い立つハルキだった。
「……ところがどっこい、こんなもんも発見しちゃったんだよねん」
『( ゚Д゚)ナニカ?』
と、そこでグラントが何やら言って、ハルキとトミィに後ろに来るように合図する。
今しがた無駄足だったっぽい事を言っておいて何だなんだ……と首を傾げながらも、二人はグラントの背後に回って、彼のシステムウィンドウに映ったそれを覗いたわけなのだが。
「えっと……? 何これ? フルアーマーなのか?
って、はあ!? 一度装備すると三分間しか実体化出来ない……?」
思わず声を上げたハルキに、グラントが解説をする。
「隠し部屋のトレジャーボックスにあったんだよね。これに関しては例外で、明らかに五層のレベルを大きく超えたプロパティの装備なんだけど……どういうわけか三分間しか戦えないみたいでさー」
なにそのカップラーメンみたいな設定。一回実体化したらそれっきりって、まるで攻略に組み込まないクソ装備じゃねーか。だからその分設定値が高めなんだろうけど。
そんな訳でアイテムの説明欄に思いっきり「三分間しかオブジェクト化不可」と書かれているそれを、グラントとオルスは何か釈然としない気持ちを抱きつつ……ここまで持って帰って来ていたのだった。
「まあ強いて言うなら? 五層が最前線だった時の攻略組に引き渡せば? フロアボス相手に切り札になったかもだけど?
まあ明らかにコレクター向けのエンドコンテンツアイテムだし、攻略には不要なヤーツだよねぇ。結局当時も、キリト達が有志でメンバーを募ってボス倒しちゃったって話だったしなぁ……」
2022年、12月31日。アインクラッド第五層は攻略された。
「フロアボスの討伐報酬として『ギルドフラッグ』なるものが存在して、それを手にしたギルドは範囲バフの恩恵を受けられる」という情報が出回った当時、攻略組の二大ギルドであったDKBとALSがそれを巡って抗争を繰り広げないようにと……何とキリトやアスナを始めとした数名のプレイヤーが、攻略組を出し抜く形でフロアボスを倒してしまったというのだ。
と、言う訳で、ぶっちゃけ今グラントの持っているそれは完全に需要が無くなっている。今の最前線のプレイヤーに寄与する程のプロパティがある訳でもないし、そもそも仕様が仕様すぎて話になんないよね。
「○%×$☆♭#……?」
何言ってんのか分からなくてもオルスが何言ってんのか大体察した残りの三人は、それぞれ後頭部を搔いてみたり、顎に手を当てて唸ってみたり、よく分からんけど自分関係ないわーって鎧ガチャガチャ鳴らしまくったりとそれぞれ思いを巡らせる。
……しかし残念トミィ。今回の生贄は君である。
「……まあ、仮にコレを装備するとしたらトミィ氏だよねん。フルアーマー装備って意外とお金嵩むし、ドロップ品で事足りるなら越した事は無いよねぇ」
『(´・ω`・)エッ?』
「……うーん、何かしっくりこないって言うか……。
俺ゲームの事はよく分かんないけど、隠しダンジョンの奥底にあって、それで時間制限付きの装備なんだろ? もうちょっと何かありそうなもんだけど……?」
そこなのである。時限があるって言うのが趣味装備としても実用品としても致命的すぎて、そんじゃあ一体コレは何を考えて作られたのって話になる。まあ全ては装備したら分かるんだろうけど、よく考えよう。
三分経ったら装備が外れて、あら不思議インナー姿だぞ。そんなの誰もやりたくないに決まっているわけだ。
「もう少し何かなかったのか? それがあった隠し部屋とかにヒントが書かれてたりとか」
「うーん、どうだろ。オルスー、なんかあったっけー?」
「△#?%◎&!」
「うん。何言ってんのかさっぱりわからん」
「向こうも何言ってんだコイツって顔してるけどな?」
よく考えれば、こっちが向こうの言葉が理解できないという事は、それそのまま向こうもこっちの言葉がワケワカメなのである。
だがよーく見てみよう。よくわかんないこと言いながらも、オルスは身振り手振りで何かを伝えようとしている。右腕と左腕をそれぞれ上下に上げ下げしてアピールするそれは、まるで。
「……あー、そういえば、あの隠し部屋、やけに天井が高かったよう……な……?」
あのダンジョンは地下遺跡型であり、地下である以上天井は低めであった。まあ迷宮区とかみたいな、高級ホテルのロビーくらいの天井の高さがある場所もアインクラッド内には無くはないけれど、それにしてもそんな中であの部屋だけは、まるでアニメに出てくるメカの格納庫みたいな……。
「あっ」
「遺跡」をテーマとした、アインクラッド第五層。
格納庫の様な隠し部屋。
三分間という、制限時間。
「……にひひ」
そんなキーワードからまーた何かを思いついてしまったらしく、いつものキモいニヤケ顔を浮かべ始めたグラントに対して……毎度尻拭いをさせられているハルキ達がげんなりしたのは、まあいつも通りの話である。
次の日。
「崩塔の遺跡群」と呼ばれる五層のとあるエリアにて、グラント帝国の四人は一堂に会していた。因みにマソップはまだ仲間になっていない。
「うひゃー、ここも随分さびれちゃったもんですねぇ」
レイドボス。
五層のフロアボスは、今は亡きかつての古代王国の民によって造られたという設定なのだが、その末裔によって発掘された巨大兵器……フロアボスの試作品が一族の復権の為に利用されプレイヤー達に立ちはだかるという、いわば五層の裏ボス的なアレである。
六層へのアクティベートが完了した後に発生したこのイベントは、しかしそのストーリーとは裏腹に一日に一度挑戦できる周回可能な仕様となっている。それを利用して一時期攻略組やそこそこ実力のある中層プレイヤーが、低層プレイヤー達の活性化の為にいわゆるエキシビションマッチを開いていたのである。
全盛期にはレイドバトル会場周辺には出店や商人プレイヤーがぞろぞろと現れて、一種のお祭りの様な様相を呈していたのだが。
「まあ、最前線がもう何十層も上に行ってるし、今更五層でどうこうって感じじゃないよな……」
……それも数週間前までの事。
当時以上に攻略のスピードが激化し始めているこの頃、もはやこのイベントをクリアする実質的なメリットもない事から攻略組は周回を放棄、やがてそれまでは活気あふれていたこのエリアも、今では人もまばらで閑散としてしまっている。
後にグラントが茅場もどきに訴えかけた「過度な攻略への推進力で起きる実力格差」の弊害の一端とも言える。
「まだだ、まだ終わらんよ!
さっきアルゴに頼んで情報を拡散してもらったから、これから人が来る可能性もあるぜー?」
「頼んだって……俺達が戦うってだけで、そこまで目新しい事をする訳じゃないんだろ?
人を呼んだところで、逆に
確かに、ハルくんの言う通りである。
察するに今回のグラントは、自分のギルメン達にこのレイドバトルに参加させる予定みたいだけども……たった五人で戦っても何と言うか、盛り上がらないんじゃないかな。
ところがどっこい、そのおバカ盾男には考えがあるようで。
「ふふーん、そこでだ。
トミィ氏、出番だぜ! アレの準備をよろしく! で、
『(꒪ཫ꒪; )』
「は、はあ? 俺達は? これからボスと戦うんじゃないのか?」
「□&○%$■☆!!」
いよいよ訳がわからず混乱するハルキを、しかし言葉通じない割に意外と空気を読める外人オルスが引っ張っていく。そして取り残されたグラントの号令を受けて……嫌々トミィは自身のシステムウィンドウを開くのだった。
「……なんなんだ、なんだってんだよ……あれ?」
さて、一方でオルスと戦線から退散したハルキだったが、気が付くと目の前の観客スペースである遺跡の大階段に……ぽつねんと一人、フードを被ったプレイヤーが腰掛けている。
「……えっと、あなたもレイドバトルを見に来たんですか?」
他に殆ど客が居ない中で、お互い黙っているのも気まずいかな、と思ったハルくんは、恐る恐るそう声を掛けてみる。
すると、それに反応して微かにフードがぴくりと動いたかと思うと。
「……私はヒースクリフではない」
「え? ヒース……? 突然何を……?」
「私はヒースクリフではない」
「あっ……うん、そうなんだな……?」
良くその誤魔化し方で誤魔化せると思ったな。
とはいえ、この段階ではハルくんはかの「生ける伝説」ことヒースクリフとは面識が無いし、多少攻略組としての噂を聞いた事があるだけの完全に赤の他人である。
とにかく。突然そう念を押すように言い放った
と、その時。背後からクエストの開始を知らせる音と振動が聞こえて、ハルキ達も慌ててその隣に座って、ひとまずはグラントとトミィの様子を見る事にしたのだった。
「我らの王国を、過去の遺物などと語る不届き者ども! その技術力を自らの身で知り、消えゆくがいい!!
この魔導巨人の鉄槌をもって、我が復讐の時を告げる……!!」
黒幕役のNPCがそう叫ぶのと同時に現れたのは、第五層フロアボスこと「フスクス・ザ・ヴェイカントコロッサス」の色違いのゴーレム。全体的に暗色の見た目だったあちらとは正反対に、白を基調とした明るめ外観が、午後六時現在のくらーい空の中で目立っている。
なんでもこのボス、基本行動パターンはフスクスと一緒なのだが、そのステータスは十層のフィールドボスレベルにまで引き上げられているらしく、五層を攻略したからって図にのって挑むと大惨事になってしまうのだとか。……でもまあ、今のグラントとトミィのレベルを考えればそんな事にはならないと思うけど。
「お、おい、本当に二人で大丈夫なのか……?」
とはいえ、ハルくんが心配する様に、だからと言ってあくまで
「……というわけで!
いくぜトミィ!! それを使えば、お前は神にも悪魔にもなれる!!」
……しかし。グラントがそう叫んで。
『(*´□`)ァ゙ー』
それに、トミィが微妙に乗り気じゃない風に頷きながら、ウィンドウをタップすると。
「トミィ、ゴー!!」
「お……おお!?」
「$■☆♭*……!!」
―――ハルキとオルスが驚きの声を挙げる中、トミィの身体が光に包まれて……なんと、次の瞬間には目の前のゴーレムと遜色ない、全身鎧の巨人となっているではないか!!
その容姿もただの全身鎧だった頃とはかなり異なっている。冠の様な造形の兜に目の部分が三白眼に光っており、全身も上腕と腹と大腿部が白、それ以外は黒といういかにも伝統的なデザインである。おまけにその胸には大きく「Z」の形をしたプレートが備わっており、その中央には宝石が埋め込まれている。
色々と恐れ知らず過ぎる。色々と。
「なんだ、あれ……!? あんな装備、トミィは持ってたの……あっ、そうか……!!」
「……ニッポン!? ロ↑ボット↓!!! ア、ニ〜メ!!!!」
横のオルスが相変わらずのカタコト日本語を発しながら、興奮して首をブンブン縦に振る中で、ハルくんは気が付いたようである。
オルスとグラントが探索して見つけてきたあの装備。その入手場所に関してその落武者男は言っていたではないか。「あの隠し部屋、やけに天井が高かったような」と。
それはつまり、アレをその場で装備した時に……天井に頭をぶつけて死ぬ様な事故を防ぐ、救済措置だったのではないだろうか。
「なっ……なんだ、その巨人は! まさか、我らに匹敵する兵器を持っているとは……!?」
「へっへー、やっぱコレに対応してたか。
巨大化する装備なんだったら、このレイドバトルにぶつけりゃなんか起きると思ったぜ!!」
……確かに、五層のテーマは「遺跡」であり、
よく見なさい。向こうの黒幕NPCさん、予想外の出来事にドン引きしてんじゃん。まあ専用セリフがあったってことは運営側も想定内なんだろうけど。
「ふ……ふふふ、そうだ、その力を使えば、神となり人類を救うことも、悪魔となり世界を滅ぼすことも出来る―――」
「……なぁオルス、横の人大丈夫かな、さっきも自分をヒースクリフだって言ってたし」
「□&◎&@●……」
お前が言うと洒落にならんのだヒースクリフよ。元ネタのスーパーロボット造った博士に負けねーくらい、オメーもマッドサイエンティストじゃねーか。
「さーて! お披露目といこうじゃねーか!
トミンガーZ、やったれー!!」
巨大化したトミィの膝下にも届かない大きさのグラントが、やたらめったらに興奮して跳ねまくりながらそう号令を下す。すると、暫し自身の視界や図体の変化に固まっていたトミィが、やがて彼も男心をくすぐられたらしく、大きく両腕を上げて力瘤のポーズを作る。
……この時のみんなは知る由もないけど、トミィはまだ十歳未満の少年なのだ。本来ならこういうのに一番テンションが上がるお年頃なのだ。自重しろ落武者男。
「く……そんな、そんなものが何だと言うのだ!!
いけ、我らが魔導巨人よ!! ひねりつぶせーっ!!」
だが、相手も黙って負けてくれるはずもない。すぐに小物感あふれるセリフと共に命令を下すと、彼のゴーレムも合わせて駆動して、じわりじわりと歩き出したのだった。
対してトミィも負けていない。迫る巨大兵器に向き直り、やや緩慢な動作で腕を振りかぶると……そのままえいっとパンチを繰り出したのだ。
第五層のフィールドを震わす程の轟音が辺りに鳴り響き、次の瞬間、敵のレイドボスはその巨躯が嘘であるかの様に吹っ飛んで、近くの遺跡群に激突。破壊不能オブジェクトでもぶっ壊れんじゃないかってくらいの振動がエリア全体を揺るがした。
「おお……ド迫力だな……!!」
「ロボット↑タイセン↓!? ニッポン、&@%※#□×▲!!!」
スーパーを付けなかったオルスは偉かった。いや普通か。
とにかく、今までで間違いなく大規模なそのレイドバトルに、ソッチの素養のないハルキでさえ完全に夢中になっている。
「……なんだ、何が起こってるんだ……!?」
そして、だ。
気付けばレイドバトルのエリア周辺には、そのどんちゃん騒ぎを聞き付けた現地プレイヤー達が駆け付けていて、そしてトミィとレイドボスのバトルを目撃しているではないか。
「おい! アレ見ろよ!! どう見てもロボットじゃねーか!!」
「スーパーロボット同士の対戦……!? なんか面白いことになってんじゃん!?」
「マジかー!! こっち来てからロボット系はご無沙汰だったからなー!! 茅場もロマンが分かってんじゃねーか!!」
……っていう会話を聞いて、またハルくんの横の
とにかく、まあデスゲーム開始以来、現実世界におけるサブカル的娯楽からは離れざるを得なかったSAO民である。加えてコイツら、トンデモ倍率を潜ってナーヴギアを手にするくらいには筋金入りのゲーマー、インドア派である訳で……中にはロボットアニメ愛好家なんて人々も少なくない。
もうお分かりだろう、観客は瞬く間に増えていった。トミィが敵のレイドボスに一発浴びせる度に歓声が上がり、逆に攻撃を受けた時には応援が沢山寄せられる……そんな、エキジビジョンマッチ開催当時と遜色ない一大イベントとして返り咲いていたのである。
「……完全にあいつの思惑通りじゃないか、なんか悔しいぞ……あ、あれは、アルゴか……?」
結果としてグラントの読み通り、再び活気の戻ったこのエリアの片隅で、ちょっと面白くなさそうにぼやいたハルキだったが、やがて視界の端に映った見覚えのある影に目を凝らそうとして……。
「さあさあ、寄ってらっしゃい見てらっしゃイ! 『鼠のアルゴ』も太鼓判、そこのあんたも見なきゃ損ソンってナ!
空にそびえるくろがねの城、アインクラッド!! その第五層にて、一世一代の巨大ロボットバトルが開催中だヨ〜!!
迫る古の魔導巨人に対抗するのハ、我らがスーパーロボット、トミンガーZ!!
無敵の力はぼくらのためニ!! 正義の心をパイルダーオ#運対」
個人情報と同じくらい著作権も大事にしろ情報屋。まあ二次創作だし今更だけど
とにかく、そんな感じで客寄せ&みんなと合わさってどっかの主題歌を歌っているアルゴの図である。まあ男心を掴んで客を引き込む辺りはさすがと言ったところだけども……結果としてハルくん、なんか嫌な予感がして直ぐに彼女から目を逸らしている。
「よーし、いいぞいいぞトミンガーZ! かっちょいい上に集客効果バツグン、お主はうちの新たな広告塔じゃー……およ?」
しかし。そんな男子にとっての夢のような時間は、永くは続かなかった。
「ヤベッ、そろそろ時間制限が……!!」
突如として、トミンガーZの胸部にある、Zの字のプレートの真ん中に嵌め込まれた宝石が、赤く点滅し出したのだ……って、あれ?
「む、むむ? なんだ、あの胸のピカピカは……?」
「説明しよう、あれはカラータイマ#運対だ」
「こ、今度は何だよ。なぁ、オルス助けてくれ……って、聞いてねぇ……」
運対で隠せてねーよ。まあアイテム説明の三分間制限の時点で、そっちの可能性も察してはいたけども。
ともかく再び息巻いて喋り始めた
「トミンガーZを支える魔導エネルギーは、アインクラッドでは急激に消耗する。
魔導エネルギーが残り少なくなるとカラータイマ♯運対が点滅を始める。そしてもしカラータイマ♯運対が消えてしまったら、トミンガーZは二度と再び立ち上がる力を失ってしまうのである!
トミンガーZ頑張れ、残された時間はもう僅かなのだ……!!」
……だいぶ古いぞそのナレーション。わかる人いんのか茅場よ。
っていうかそれ以前に、やっぱオメー自分がGMだって隠す気ないだろ。
「……うわぁ、ちょっとな……」
「スーパーロボットにカラータイマーはねぇな……」
大体、特撮巨大ヒーローとスーパーロボットアニメは完全に別の分野なのだ。ここをごっちゃにするとか、どっちのファンからも総スカン喰らうに決まってるだろ。
「何でも混ぜればいいってもんじゃねぇぜ……まあそれでも楽しいからいいけど」
「コレはあれだな、茅場多分リアルロボットとスーパーロボットの違いとか特撮モノと戦隊モノの違いとか、そういうのも分かってねぇヤツだろーな。エセだエセ、シロートカブレ」
「……トミンガーZ頑張れ」
「あ、あれ? ……何だかよくわからないけど、これ飲んで元気出せよ?」
と言うわけで、案の定観客達にフルボッコにされた
「よーし、ここらで必殺技だー!!
そろそろあいつをぶっ倒さないと、そのアーマーが解除されちゃうぜトミンガーZ!!」
一方で、トミィのスーパーアーマーの時限が迫っている事を悟ったグラントは、直ぐに眼前で大暴れしている巨大ギルメンに向かって大声で指示する。実際、レイドボスの体力は三割以下にまで落ち込んでおり、あと一、二発殴る事が出来れば倒せそうなのだが……既にカラータイマ♯運対が鳴ってしまっており、悠長に攻撃を加えている暇は無さそうだ。
「よーし! じゃあトミンガーZ、ブレストファイヤ♯運対!!」
しかーし。
トミィの奴、思いっきり首を傾げている。
「こらー! 何しとーん!! 胸のプレートからビーム出すんだよー!!
もー、じゃあルストハリケーソだ!! 格子状になってる口から思いっきり風を出せー!!」
……しかーし。
トミィの奴、必死になって口から息を吹こうとしてるけども……何も出てこない。
なんか妙だぞ。さっきまで殴る蹴るは出来ていたのは良いとして、その見た目でそれしか出来ないというのはちょっと……このアイテムをデザインした人間のセンスが問われるというか。
おい
「んん? 何か様子が変だぞ……?」
ハルキもいよいよ不審がった。それまでは割と順調だった筈のトミィが、しかし今はオロオロと何か上手くいかないかの様にもたついていていて……。
その時だった。
「まだだ、我らはまだ、終わらんよ……!!」
先程までの口調を無視した、ロボットアニメの安っぽいオマージュみたいなセリフを吐きながら、黒幕NPCが大手を振って号令を下したのだ。
それに応じて、レイドボスは両腕を前に突き出す。するとその周囲に何やら魔法陣のようなものが複雑に組み合わさって……その中心に、何やらエネルギーのようなものが溜まっていくではないか。
「おーいグラント! あれってなんかマズいんじゃないのかー!?」
「×$☆♭#▲、%△#?%◎ー!?」
たまらずに観客エリアから立って、トミンガーZの後ろにこじんまりといる盾男に叫ぶハルキとオルス。
だけど、そんな事言われてもグラントも困ってしまう。とにかく相手が何やらドでかい必殺技を放ちそうな雰囲気なのは分かるけど、今から鈍足全身鎧男にあれを阻止させようと向かわせるのは悪手だろう。
ここは何とかして、トミンガーZに今すぐ何かしらの技を放たせて、相手のが発動するまでにその体力を削り切らないといけない。
「んー、でもブレストファイヤ♯運対もルストハリケーソも出ないとなるとなぁ……じゃあ、籠手をもぎ取ってロケットパソチは……いや、なんか絵面がもうヒドイからやんなくていいよ、うむ」
トミィも仕方なく自分の手首を引っこ抜こうとするけども、まあその中に巨大化した素手が出てきたらそれはそれで色々ヤバい訳で……結局ロケットパソチも失敗である。折角だから鉄拳を飛ばしてほしかったな。
うーん。グラントは考えた。まあ目からビーム出したり耳から冷凍レーザー放ったりなぜか腹からパンチを出したり、元ネタのロボットは他にもいっぱい技を持っていたりはするんだけど、有名処が一切発動しないんだからそれはないよなあ。
こうしている間にもレイドボスの魔法陣がどんどん大きくなっていて、トミンガーZの
―――カラータイマ♯運対が、鳴り続けて。
「…………トミィ氏、十字に腕を交差させて」
エッと、一瞬硬直するトミィ。
しんと、静まり返る観客たち。
キラリと、目を光らせる
「……いいから。俺もすっごい不本意だけどトミィ氏。やったれ」
そう告げるグラントの顔は、珍しくげんなりしていた。
その内容を知ってか知らずか、しぶしぶトミィも敵に向けて両腕で十字を作って―――。
……トミンガーZの両腕から放たれた光線は、見事発動していた魔法陣ごとレイドボスを粉砕したのだった。
だが結局、そのレイドバトルイベントが人気を取り戻す事はなかった。
理由はただ一つ。「時間制限はバランス調整的にまあ仕方ないとして、スーパーロボットがスペシウム♯運対とかマジないわー」という苦情が相次いで、以後まともに観客が寄り付かなくなってしまったからである。
だが、そんな中でも、定期的に必ずやって来る
「ダーッシュ、ダーッシュ!!」ダンダンダダン♫