トミィ「ほっかさん」
ハルキ「ホッカ飯倉」
グラント「じゃあ薄塩たらこは?」
トミィ・ハルキ「薄塩たらこ」
北海いくら「(´・ω・`)」
第1話 北海いくらと薄塩たらこ
「……むう」
2025年、12月10日。
ここは東京都千代田区、秋葉原駅前。電化製品とサブカルチャーの街として知られるこの地を、春花は十七歳になって初めて踏んだ。
「っていうのに、そのしかめっ面は何だいハルくん」
そしてこちらはもう何度ここを訪れたのかも分からぬシテーボーイ、玄太郎である。
二人はこの日の午前中に立川駅で待ち合わせて、そこから中央線で御茶ノ水まで行ったのちに歩きでここまでやって来たのだったが、それまでに既にこの街のカオスっぷりを目の当たりにする機会があったわけで。
「……なんなんだよこの街。なんであんな……なんというか、ハレンチな格好の女性のポスターが」
「あー、まあ確かに初めてだとちょっと刺激が強いよねぇ……まあ、そういう欲望丸出しなのがこの街の特色っていうのかなぁ、うむ」
必死に取り繕っている玄太郎にジト目を向ける春花。いやコイツに怒ったって仕方ないだろ、そういう街並みなんだから。
「大体、君が言ったんでしょうが……前は奥多摩に来てもらったから、今度は東京を案内してくれって」
「まあ言ったけどさ。こうでもしないとお前、勉強してない時でもあの寮にいつまでも籠りっぱなしじゃないか。仕方なくだよ、仕方なく」
現在、昼間も冷え込みが厳しい季節であり、それと同時に玄太郎の受験勉強もまさに佳境を迎えている。そんな感じで長い事予備校の学寮に閉じこもりっきりだった彼を見かねて、たまには気分転換をと春花が引っ張り出したというのが実のところだった。
つまり、平たく言えばデートである。粉微塵に爆ぜてしまえ。
(……そういう割には、随分張り切ってるようにも見えるんですけど)
相変わらず絶望的に服のセンスが悪い玄太郎は今日も液晶画面越しから神代博士のドレス審査を受けており、やはり茶色のケーブルニットのトップスに黒のデニムパンツを合わせて、肌色のトレンチコートを肩に掛けている。
だが春花も、基本的におしゃれとは縁のない人生を送って来たとは思えないくらいにはバッチリ決めてきていた。薄紫色のニットセーターの上からクリーム色のダウンパーカーを着て、スキニージーンズで辺りを物珍しげに歩き回るその姿は、あの世界において終止洒落っ気のない武骨な体装備を身に付け続けていた彼女からは想像もつかないものだ。
「なんだよその目は。……もしかして俺の服装、どっか変だったか?」
「あ……いや、その様子だとアーちゃんかリズ姐あたりかなって」
ぎく、と動きを不自然に止める春花にやっぱりか、と玄太郎は察した。ほぼ間違いなく明日奈や里香あたりにファッションのイロハを教えてもらっているのだろう。なんだかんだ言ってこの一年間で急速に世俗的なものに影響されつつある春花である。けしからんもっとやれ。
「ま、お互い様って言うか何と言うか。とっても似合ってると思うけど、おしゃれは我慢とかそういうのは気にしなくて良いからね、あの二人ならそーゆーこと言いそうだし」
「う……まあ、善処するよ」
どうやら既に言われてたらしい。実際冬にジーンズって寒いよね。そういうコト指摘しちゃうのって良い事なのか悪い事なのかビミョーに分からんけど……まあ、春花も素直に受け取ってるっぽいしこれはこれで良いのかな。知るか。
「それで、これからどこに行くつもりなんだ? 俺はまあ、適当にぶらつくだけでも楽しそうだとは思うけど……」
「ま、ひとまずは昼ごはんにしようよ。もう十二時回ってるし、この辺りのグルメ事情はまあまあ知ってるつもりだから」
「そうだな。それじゃあ、お蕎麦とか……いや、せっかくこんな都会まで出てきたんだから、何か洋風なところの方が良いのか……?」
たぶんね、洋風な店って別に奥多摩にもあると思うんだ。君があんまり行ってないってだけで。
内心でそう思いながらも、真剣に悩んでいる彼女をあたたかーな目で見守りながら、玄太郎はひとつ息を吐く。
あのALO事件からはや一年近くが過ぎて、世間のVRゲームに対する認識は随分と変遷を見せた。
具体的には、キリトとエギルによって全世界に拡散された「世界の種子」……ザ・シードによる影響で、世界中にて数多のVRMMOゲームが運営を開始し、空前絶後のVRゲームブームが巻き起こったのである。それだけ一斉に一つのゲームジャンルが発展を遂げれば、当然ユーザーも少なからずの興味を示さざるを得ない訳で。
その様な経緯から、玄太郎が前に神代博士に尋ねた「フルダイブ型VR技術が、今後再注目される可能性」は、彼等の予想を裏切ってかなり早いタイミングで現実世界に訪れたのだった。
(神代さんもびっくりしてたよねぇ。流石は茅場君だーって、私も頑張らないとーっていつになく張り切ってたもんなぁ。
……いいなぁー)
だが何度も言うように、玄太郎は現在バリバリの受験生であって、そんな多用化したゲームを満喫しているような暇がある筈もない。実際に彼がこの一年で仮想世界でやったことと言えば、ギルメンとちょろっと他のゲームに手を出した後、すぐALOに戻って大掛かりなクエストを数個こなした程度であり。
それ以外では新生アインクラッド第三層に存在するギルドホームにて仲間とまったりしたり、春花の道場の提携先をみんなで探したり、未だSAOクリア以降の動向が掴めないオルスがログインしていそうなVRMMOのタイトルを漁ってみたり……と、基本的にはグラント帝国内における、パーソナルな活動しかしていないのである。
ちょっとなぁ。グラント/玄太郎はこっそり思う。あの日、ハルキ/春花の誕生日にALOプレイヤー達に向けて盛大に「アインクラッドの王」として宣言した身ではあったものの、それ以降目立った動きをしていない為に、その存在をぶっちゃけ忘れられつつあるのだ。
だから、受験が終わったらすぐに何としてもアインクラッド攻略において、あるいは攻略型に対して何かしらのアクションをしないといけないのだ。そうして、新生アインクラッドというコンテンツをALOの中で盛り上げないといけないのだ。それは、茅場晶彦から、あのかつての浮遊城から受け継がれたアインクラッドだからとか、そういう事ではなくて。
(……一応は、誕プレだからなぁ。あげたからには、ちゃんと手入れをしてあげないとねー)
……今目の前で、ツンケンしながらもどこか楽しそうな彼女の為という、やはりどこか個人的な理由で、玄太郎はその決意を新たにするのだった。
「こら、聞いてるのかゲンタロー」
「え? ああ、ごめんごめん……えっと、何だっけ?」
まあしかし、今はひとまずこの秋葉原巡りを楽しもうかな、と気持ちを切り替えて、玄太郎は話を聞いていない自分に詰め寄る、大層ご立腹な様子の春花に意識を向けて……。
「あの……もしかして、グラントさんと、ハルキさん……ですか……?」
……唐突に掛けられたその言葉に、二人とも目を点にして声の主に顔を向けるのだった。
「お帰りなさいませ〜! ご主人様〜! 三名様ですか〜!?」
「うむ、苦しゅうない苦しゅうない」
「はい、三名様ご帰宅ですぅ〜!」
「うむうむ、眼福眼福」
「……おい」
ドアを潜ってすぐに威勢の良い挨拶をするメイドさんに、こちらはニヒヒと分かりやすく口元を歪ませるキモい落武者男である。そして案の定春花に小突かれるところまでお約束。
と言うわけで、玄太郎達は現在、秋葉原の駅近くに存在するメイド喫茶にやって来ていた。この街の露骨なサブカル要素に若干引き気味の春花も、むしろ逆にそれを前面に押し出したこーゆーところに来てしまえば慣れてしまうのではないか……という、何とも暴論によるものである。
それと、もう一つ。
「あっ、ご主人様〜! また来てくれたんですね〜! いつもありがとうございますぅ〜!」
「あはは、いえいえ……こちらこそいつもお世話に……あの、ハルキさん? そんなに睨まないでくださいよ……?」
今度は玄太郎が春花を小突く番である。なぜなら、彼女の眉を潜める先には……細身で髪を綺麗に七三に分けた、推定三十代前半くらいの男性が立っていたのだから。
「すみませんね、彼女まだこういうのに疎くって。
まあ、多めに見てやってくださいよ……北海いくらさん」
そう、あの北海いくらである。
かつてSAO世界において、第一層はじまりの街にてグラント達と一緒に軍に反乱を起こした、トミィの親代わりのプレイヤーの、あの北海いくらである。
「いえいえ。まあこんな大の大人が、こういうお店の常連になっているなんて……一昔前じゃあ大っぴらには言えませんでしたから。今日は私が奢りますので、沢山食べていってくださいよ。
それにしてもハルキさん、随分と雰囲気が変わりましたね。すごく女性らしくなった」
「んなっ……あ、そう……なのかな……えっと」
さっすが大人である。冷たい目線を華麗にスルーして、ちょっとおだててしまえば、ほーらこの通り。このおバカ煩悩少女はすぐに顔を赤くして、両手で自分の顔をベタベタと覆う始末である。
まあでも髪もついに肩に掛かるようになって、今じゃあもう立派な黒髪の美少女である。相変わらずあるのかないのか微妙なのがちょっと残念なくらいで。それも特に玄太郎は残念がってないっぽいし。
「でも、こんな所で会うなんて奇遇ですね。ハルキさん達も、リアルでもこうやって会うあたり、随分と仲のよろしい事で」
「あの、あんまりこの子をいじめないであげてくださいね。もしかしてさっき睨まれたの、根に持ってます?」
もう絶対交際関係だって分かってるはずの旧友に突っ込む玄太郎は、案内された席に辿り着くと、隣でプンスカとショートしてる春花の羽織っているダウンを脱がせて椅子にかけてあげる。こんの剣客少女、いくら免疫がないとは言え、いつからこんなにポンコツになったんだ?
「と、とんでもない! ただ、私にもそういう気の知れたネット仲間がいましてね。
……ちょっと、当時の事を思い出して懐かしく思ったというだけです」
そう言う北海いくらは現在、黒スーツに黒ネクタイと、いわゆる葬儀用の衣服に身を包んでいる。その出で立ちからのその言葉に、春花はもちろん流石の玄太郎も、彼の言う「気の知れたネット仲間」が既にこの世を去っている事実を、暗黙のうちに理解したのだった。
「……ご冥福を、お祈りします」
「ええ。ありがとうございます。あいつも浮かばれる事でしょう。……あ、この面子で何ですが、SAOの被害者ではありませんよ?」
やがてテーブルにやってきたメイドさんにそれぞれが注文をすると、北海いくらは目を細めてそれを語り出したのだった。
「私がまだ学生だった頃からの、昔馴染みの友達でしてね。同じMMORPGゲームをプレイする際には、約二人揃って変な名前をつけたものです。幸運なことに彼はSAO事件には巻き込まれなかったのですが……その後にVRMMOに大分嵌まり込んでいたみたいで。
先月の末に、自宅でアミュスフィアを被ったまま……心不全で亡くなっているところを、新聞の勧誘員に見つかったとか」
いささかメイド喫茶内で話す内容としては不謹慎な気もするが、まあ彼も友を亡くして間もないのだから許してあげよう。だが春花はその「VR機器を被ったまま死亡した」と言う状態に当時のSAO事件を思い出してしまい、愕然として立ち上がろうとして……それを玄太郎に止められる。
「その、大変失礼な事をお聞きするんですけどね。……死因は、何だったんですか」
「あ……はい、違いますよ。ナーブギアの様に人の脳を焼き切る機能は、アミュスフィアには付いていないそうですから。
心不全だそうです。どうやらまともに食事や運動と言った日常生活を取っていなかったせいで、リアルの身体の健康が損なわれた事による衰弱死なのではないか……との事でした」
ふむ。隣の春花の肩を押さえて何とか落ち着かせて座らせながら、玄太郎は考える。
実際、最近VRMMOゲームのヘビーユーザーが衰弱死するケースというのは珍しくなくなってきているそうだ。何せ、現実世界で何も食わなくても、向こうで仮想の食い物を詰め込むと偽りの満腹感が発生し、それは数時間持続するからだ。そのまま二日に一食、三日に一食、終いには一切食事を取らなくなり、最終的には……と言った案件が、ネットニュースは愚かもっと一般的な報道でも広く世間に伝えられて、もう久しい。
「最近、連絡が取れないとは思っていたんですよ。久しぶりに会って、命の危険とは関係のない、古いネットゲームをやらないかって誘うつもりだったんですけどね……」
この作品においても意外と泣き上戸な一面を見せている春花が、今回も瞳を少しうるつかせている一方で、玄太郎はやはり顔を少し顰めながら思索にふけっていた。
「ねぇ、北海いくらさん。まさかとは思うんですけど」
……そして、それを尋ねたのだった。
「……その彼が最後までプレイしていたって言うゲーム。
それって……GGO、ガンゲイル・オンライン、じゃないですよね?」
だが、答えは……然り、であったのだ。
「よ、よく分かりましたね、グラントさん。
私の友達……『薄塩たらこ』が入れ込んでいたゲームの名は、確かにGGOと言う名前でした」
ガンゲイル・オンライン。
それは、現在ザ・シード規格で展開中の全VRMMO中で唯一、ゲーム内通貨現実還元システムを採用している、ガンゲームの名前である。
「……おい、大丈夫か?」
「……」
メイド喫茶を出て、北海いくらと連絡先を交換して……そして、別れて数分後のこと。
秋葉原の街並みを歩いて、高層ビル前のベンチにてひと時。サブカルの温床として以外にも、電気街やオフィス街としての一面を持つ秋葉原の中心で、二人は先程の北海いくらの言葉を少し神妙な面持ちで考えていた。
『弔い合戦って訳じゃないんですけれどね』
「薄塩たらこ」と呼ばれたかつての友の葬儀の為に、ここ秋葉原の式場に今から出向く予定の彼は、やがてメイドさんから100万ドルの笑顔と共に配膳されたオみゅ〜ライスを頬張りながら、しかし静かに言ったのだ。
『ちょっと、GGOに私自身もログインしてみようと思うんです。
彼はそのゲームの中ではそれなりに名の知れたプレイヤーだったそうですから、もしかしたら彼の事を色々聞くことができるかも知れない』
「どうしたんだよ。あれからお前、少し気分が悪そうだぞ?」
「……え? あ、そう?」
困惑と心配の感情を半々に混ぜた様なその春花の声に、玄太郎は我に帰ったかの様に相槌を打つと、色のない顔で作り笑いを浮かべる。
「ち、ちょっとね。……気になる事があるような、ないような」
ゼクシード。
それはかのGGOにおいて、最強のガンマンを決める大会、BoBの第二回大会においての優勝者である。
……そして、彼は先月の11月14日に、現実世界の自宅において死亡が確認されている。その死因は、心不全。
だが、たった一つ、その衰弱死に関する状況には、不審な点があった。
「……とある動画サイトにね、ゼクシードって名前のプレイヤーに向かって、『裁きを受けろ』とか何とかいいながらゲーム内で銃を撃ったやつの音声ログが一時期上がっててね。
それ以降、撃たれたそいつはGGOに一度もログインしてなくて、音沙汰ないんだとか」
「――――――っ!?」
ゼクシードと薄塩たらこ。
その二人が重度のゲーマーであり、いずれもそれによる心不全で死んだ。それ自体は、特に彼らに限った話ではない。
だが、彼らに存在するもう一つの共通点は。
「二人とも
「お、おい。待ってくれ、それって、つまり」
「……うん」
春花も一つ思い当たった様である。その血の気の引いた顔を見て、玄太郎も低い声で続ける。
「多分、あの人自身も不審に思ってるんだ。
彼の真の目的は、友達の思い出集めじゃなくて、事件の再調査。GGOで起きているかも知れない殺人事件を……一人で解き明かそうとしてるんだよ」
「そんなのって、ダメだ」
力強くそう言ったのは、我らが純傑、ハルキ/春花である。
「……なあ、ゲンタロー」
「ダメ」
春花が次の言葉を言う前に、玄太郎はそれを否定する。
「君の事だから、そう言うと思った。
ダメだよ、そんな危険のあるGGOにコンバートするなんて、俺が許さないから」
「何でだよ、危険なのは北海いくらだって同じじゃないか!
俺に、あの人がたった一人で命の危険に晒されているのを……黙って指咥えて見てろって言うのか?」
いつになく強い口調の玄太郎に気圧されながらも、春花は負けじと詰め寄った。助ける事のできる人間がいれば、出来る限りの力になる……それは、春花にとっては譲れない信条である。そして彼女のそういうところを一番理解しているのは、他ならぬ玄太郎な筈なのだ。
「お前は勉強があるし、今はこっちにかまけてる暇がないのはよく分かるよ。
だから、俺が北海いくらと一緒にそのGGOってところに行ってみる。それで、経過をお前に逐一報告するよ。無茶は決してしないから……でっ!」
「……ダメなもんは、ダメだよ」
そう必死に捲し立てる春花の頭に力を加減してこつり、と拳骨をかましてから、その手を彼女の頭にふわり、と乗せる玄太郎。
「あ……」
「GGOってさ、確か銃で撃ち合うゲームでしょ。そんな場所に、ギルメンを一人で送り込む訳にはいかないなぁ」
「……そんなの、ALOだって同じじゃないか。剣で斬り合って、魔法をぶつけて。モンスターやプレイヤーとヒットポイントを削り合う。
そこに、何の違いがある、んだよ……」
「あるんだなぁ、これが」
前も言ったが、春花はこの頭を撫でられるという一手にめっぽう弱い。今もちょっと彼女の口調が弱くなっており、ここでマジ煩悩少女とか言って春花をからかってもいいんだけど……問題はそこではない。
つまり。だからといっていつもそんなイチャつきをしているかと言えば、むしろ滅多にしない筈のその行為を……今回は照れもせずに玄太郎が行使したという、それはつまり。
……つまり、彼がそれだけ本気で彼女を止めようとしている、という事なのだ。
「……マソップ辺りに相談して、北海いくらのデータと連動するような方法がないか、聞いてみようよ。それで、みんなで安全なALOから、彼の動向を確認すればいいよ」
そう言う玄太郎の目は、普段のお馬鹿落武者男としての彼の目の光を完全に失っていた。
そこにあるのは、怯え。今ある平穏が壊されてしまう事への、そしてそれによって、大切な物を失う事に対する、怯え。
「……グラント?」
その仄暗い瞳の光に呑まれて思わず春花は、玄太郎をプレイヤーネームで呼んだ。あの世界で彼女が知るあの、あのロングヘアー男の名を。
そして、その場の喧騒を全て取り去ったかのように静かになった二人だけの空間で、日暮れ時の薄暗い曇り空の中で……ぼそりと呟くのだった。
「