SAO (シールドアート・オンライン)   作:ニモ船長

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マソップ「緑で、ちっちゃくて」

オルス「老人で、銀河の騎士なエイリアンって言ったら誰っスかね。いやマジで」


グラント「分かんないよーダ」
 


第14話 デスゲームより恐ろしいもの part1

 

 

 私が父親と血の繋がっていないという真実を知ったのは、ちょうど州立大学を卒業する間近の時期の事であった。

 以前から身体的な特徴の差異には気が付いていたのだ。両親と兄は揃って金髪碧眼であったにも関わらず、一方の私は黒髪黒眼であり、その事をよく少年時代には揶揄され、学友には指摘されて一度は真剣に自身の出生調査を検討するべきだと指摘された事もある。

 ……いざその通りに探りを入れてみると、やはり予感は的中していた。自分は実は母親の不倫相手との間に産まれた子供であり、その為父は自分の会社のすべてを実の息子である兄に―――数年前には世紀のVCに巻き込まれたというのに、未だに自堕落な生活を送る兄に―――託そうとしているのだという事実が、そしてあぶれた私の事などあの男はまるで興味がないのだという真相が、突然変えられない現実となって当時の私に叩き付けられる事になったのだった。

 

 

 (影にいた。私はいつも兄の影で、惨めに生きる事しか出来ず、これからもそう生きて行く事を約束された様なものだった。

 だから私は敢えて普通の社員として、ザスカーに就職する道を選んだのだ。そうして、兄が会社を継いだところで、父が築き上げた全てを私が潰して踏みにじる為に)

 

 

 ()()()が現れたのは、その時だった。

 GGOのアップデートの際の、人間工学及びモーションキャプチャー(生体のリアルな動きをデジタル的に記録、再現する技術)に基づくゲームデザイン設計の打ち合わせの際、その動作データの提供者として提携先の某大手ハイテクPMCから派遣されて、彼はやって来たのだ。

 

 

 (気さくな男だった。わざとらしさのない、映画のように綺麗で楽しそうな笑い方をする男だった。

 彼と話をしているだけで、自分の抱えている多くの事が、実はそんなに深刻な事ではないのではないかと……どういうわけか当時の私は、本気で思った。

 本気で思って、行きつけのバーにて偶然会った彼に、私は洗いざらい白状してしまったのだ。自分とザスカーの社長である父親は血が繋がっておらず、他ならぬ私自身も両親と兄を憎んでいると)

 

 

 その途端、彼は豹変した。

 ザスカー社長の子息のうちの一人が、実は公になっていない密夫の子供であるという事が世間に知られれば、社長はスキャンダルで立場を危ぶまれる上、その長男たる兄にも影響が及ぼされるだろう。だが、それ以上に他ならぬ偽りの息子であった私自身も、一生の晒し者とされてしまう。

 それが嫌ならば、俺に従え。彼は言った。そうすれば、俺は自分の目的を果たし、お前は目障りだった父親と兄を追いやる事が出来る。

 

 

 (これが、正しい選択の筈なのだ。これで、私は因縁のある家族と決別して、人生の次の一歩を踏み出せる筈なのだ)

 

 

 それは、客観的に考えてみれば十分に脅迫された状況であったにも関わらず、当の私にはそんな覚えは微塵にもなく。

 かといって私が進んで計画に乗ったというわけでもなく、何もかもが、為されるがままに流れるかのように感じたのだ。この男が私の目の前に現れた事自体が、神の与え賜うた運命のようなものであり、私はその大いなる思惑の中に、流されているだけ。そう思わせるだけのカリスマのようなものが、その男にはギラギラと存在していたのだ。

 そう感じて、気付けばいつの間にか私は彼とGGOの中で合流し、()()を練り、そして昨日のうちには、同僚に気付かれぬように日本サーバーにアカウントを移して。

 

 

 (そして今、()()にいる)

 

 

 ……そこは運営を司る人間しか知り得ない、ザスカー社員用の管理コンソールの存在するグロッケン地下迷宮型ダンジョン、秘匿エリア。

 現在私は「彼」と本国にて匿名掲示板で募った有志のプレイヤー達と共に、その限定ダンジョンの最深部まで足を踏み入れていたのだ。

 

 

 『アカウントID、承認完了。「キルオ」様の管理者権限の行使を許可します』

 

 

 システム音声が鳴ると、私の目の前の巨大なモニターの表示が緊急用のレッドカラーから安全状態を示す青色に変わり、また周りで散開して待機している総勢二十名近くの同志達も、周囲に存在する補助モニターのある席へと着席した。

 

 

 「こちらアルファチーム。目的地に到着、これより作戦の第一段階に移行する。

 一分以内にそちらに認証コードを送信する。ブラボー、チャーリーチームもそれぞれ同様の手順により潜入し、運営スタッフの介入を阻止し秘匿エリアを防衛せよ」

 

 

 それと同時にコンソールパネルを操作し、他の面々が今の私達のように侵入に成功するタイミングを見計らって、同僚への認証コードの送信、続けてここ秘匿エリア……いや、()()()()()()()()G()G()O()()()()()()()()()とアメリカ側とを繋ぐ限定回線開放の準備を整える。

 ……そしてその上で更に、この作戦本来の目的遂行の為に、私は更に両手でパネルを弾くのだった。

 

 

 (これが、正しい事なのか)

 

 

 手が止まる。だが、直ぐに意識を切り替えて、再び動かす。

 私が何のために多額の奨学金を抱えてまで、州立大学に入ったと思っているのだ。あの時は兄弟揃って大学に通わせるだけの金銭的余裕がないと言う言葉を信じたからこその行動であったが、いずれにしても私が経営学を専攻した理由は正に、身に付けた知恵と技能をザスカーに捧げる為のものだったのだ。

 だが、ザスカーは、父は、兄は。全てが、私を不要だと切り捨てたのである。その上で家から放り出すと自身の汚点が露呈してしまう為に、父は私を手元に置いて飼い殺しにするつもりなのだ。

 

 

 (これで、全てが変わる。

 GGOは終わる。ザスカーも終わる。

 ()()()()()()()()()()()

 

 

 ―――そう。

 G()G()O()()()()()()()()()()()()()()。それが私の目的。

 これが私の、叛逆の始まりなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『そういう訳で、向こうで纏めてきた俺の仮説を、今からご拝聴くださいな!』

 

 

 二話続けての作戦会議タイム、加えて最後にはリア充シーンという誰☆得☆展☆開が続いた第11話と第12話である。なのでそれ以降は取り敢えず以後の展開を進めながら随時回想シーンをぶっ込んでいるのである。

 と言うわけで、時を戻そう。第12話直後、グラントがツェリスカのホームでその場の面々の前に立って完全復活宣言をした直後、オルスがハルキに専用チューンを施したSPAS12を渡す、直前の出来事である。

 

 

 『ズバリ予測しちゃうと、相手の目的は多分、S()B()C()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だと思うんだぜ!

 強制バトルロイヤルイベントがどーこーってハナシだけどさ、基本的にそういうのをゲリラ的にやりたいんなら、なるべくプレイヤーが多くいる場所で、なるべく誰もが行われる事を予測出来ない場所で決行するのが、一番インパクト的には重要になってくるんじゃないかなって』

 

 

 なんと、この落武者くんは敵側より早く、その目的に対してほぼ正解の回答を叩き出していたのである。さすが我らが変人プレイヤー、その思考回路はどっちかと言うと常人よりも悪役のそれに通じているフシがある。コイツ主役でいいのか。

 だけど、そんな突拍子もない事を言えば、運営サイドであるオルスやツェリスカは困惑するに決まっている。

 

 

 『ちょ、ちょっと待ってグラントくん。

 グロッケンの、つまりここの圏内設定の解除って……そんな事出来るわけがないわ!』

 

 『ほーお、そうなの?

 この際丁度いい、どうして出来るわけがないのか、教えてよ』

 

 

 柄にもなく声を捲し立てるツェリスカに、しかしグラントも余裕を崩さずにエッヘンと説明を求める。お前それちびアバターだからギリギリセーフだけど、玄太郎とかALOグラントでやったらマジキモいぞ。

 

 

 『……ザ・シードの世界的普及によって、ザスカーもVRMMOゲーム市場に乗り出す事にしたのだけれど、その決行に当たってどうしてもクリアしなければいけない問題があったのよ。

 つまり、当時のALO事件で浮き彫りになった、「管理者権限における絶対性の分散」を行う必要があったの』

 

 

 SAO事件の原因は、茅場晶彦のアーガス内での権限集中性。

 ALO事件の原因は、須郷や芹沢などの管理者たるレクトスタッフの、ゲームに対する過度な絶対性。

 その様な意見は今も根強い。つまり、従来のゲームに比べれば安易に犯罪に転用可能なフルダイブ型VR環境において、運営側に必要以上の全能性を持たせてしまうと、それを悪用された際の対処が極めて困難になってしまうのではないかという意見が、世界的なVRMMOブームに伴って無視できない程に広まって来ているのである。

 そんな中でザスカーは対策として、「いかに運営側の暴走を抑制するか」という問いに対して、彼らなりの答えを出したのだ。

 

 

 

 『私達ザスカーの社員は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のよ。だからこそ私もオルス君も一般のアカウントでログインしているのであって、普通のプレイヤーは勿論、運営側の人間だったとしても……無断で設定をいじる様な真似は出来ない筈なの』

 

 

 

 つまりだ。

 ()()()()()G()G()O()()()()()()()()G()G()O()()()()()()()()。現実世界にオフィスを構えている訳ではないのでハッキング等の対象にもならず、また通常の会社が構えているセキュリティ以上の複雑な手順を踏まないと内部の人間ですら介入できない仕様を、運営側が自ら課す事を確約しているのだ。

 これによって、GGO内に居たとしてもオフィス内にいなければシステム干渉は出来ない為、運営スタッフ個人による安易なシステム介入は不可能であり、また外部による干渉からも隠れる事が出来る。

 それがGGOが世界に提案した新たな仮想世界の管理スタイルであり、それこそがザスカーを企業形態及び所在地を不明たらしめている所以なのである。

 

 

 『だから、オレ達スタッフはGGO内に通勤するっていう、少し前までは時代的にありえない様なムーブをかましてる訳なんスよ、いやマジで。

 で、日本サーバーのスタッフ達の勤務状況は、そのままデータとしてアメリカの本部に送られて監査を受けるって感じっスね。いやマジで』

 

 『迷惑プレイヤーへのペナルティ付与くらいの簡単な操作なら各自支給された簡易デバッグ端末から執り行えるけど、グロッケンそのものの仕様変更なんて……そんな大掛かりな改変を内部の人間がしようとしたら』

 

 『複数人の社員が手を組んで行う必要があって、自然と大掛かりな計画になる。仮想世界の中に開発室を置いているザスカーで誰にも気付かれずに密会するなんて非現実的だし、結果的にそんな事は不可能……ってところかしら』

 

 

 オルス、再びツェリスカと解説は続く。つまり、ALO事件で須郷の一味がやらかした様な、規模の大きい陰謀行為はGGOでは起こり得ない筈なのだ……と、最後にシノンが纏めて締める。

 だけど。それまで気恥ずかしくて相棒の顔もまともに見られなかったハルキが、その時思いついた様に口を開くのだった。

 

 

 『……なあ。俺そんなに頭も良くないし、詳しくないけどさ。

 だったら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()場合はどうなるんだ?』

 

 

 ……とても核心的な指摘である。

 そう、それがザスカーの運営形態に存在する、明確な弱点なのだ。日本と比べても国内人口が圧倒的に多いアメリカである、それに比例して現在フルダイブ型VR環境に於けるサイバーテロ集団は世界でも群を抜いて多く、ネット社会も相まって人員だけなら運営陣で無ければどうとでも確保のしようがあるのだ。

 だからこそ、一人か二人程度の少数の内通者が手引きして、それなりに腕に覚えのある匿名のプレイヤー達がGGO内で動けば、それは仮想世界内に拠点を構えるザスカー側にとっては致命的な脅威となる。

 

 

 『うむうむ、流石ハルくん。良い着眼点だねぇ。

 そう考えれば、近日中に増えた海外サーバーからのプレイヤーって言うのにも納得がいくよね。まあそれにしては数が多い気もするから、もしかしたら「コレコレこういうイベントが起きるから、みんな日本サーバーにしゅうごー!」って向こうのコミュニティサイトで告知したのかもしれないねぇ』

 

 

 そういや初めからそういう話だったよね。元々アメリカサーバーでの攻略サイトに載っていた奇妙な情報から話は始まったんだし。

 相変わらずエッヘンしながら内心ビックビクで相棒にウインクしたグラントだったが、やはりツーンと彼女に顔を背けられてガーンとなった。踊るオノマトペである。因みにハルくんも内心ドキドキだったりする。

 

 

 『ええっと……話を整理するわね。

 つまりグラントさんは、そういうごく一部の内通者組んだ複数の一般プレイヤー達が、このグロッケンを戦闘領域に変える事で突発的な大規模バトルロイヤルイベントを引き起こそうとしているって言いたいのね。

 それじゃあ、その人達が日本サーバーに来て、向かう場所は』

 

 『うちの職場……ザスカー日本支部、GGO担当部門のオフィスその場所って事になるっスか。いやマジで』

 

 

 良い感じに纏め役になりつつあるシノンであった。実は案外難しい話に加わるのが苦手だとか、そんな事はない筈だ、きっと。

 

 

 『うん、今の推測がどこまで当たってるかは、そりゃわからんけどさ』

 

 

 ……そして、話を始めたのはグラントなんだから、最後に締めるのもグラントである。

 つまり、向こうが何をしでかそうとしているのかについての、大まかな結論として。

 

 

 『いずれにしても間違いなく、今GGOは深刻な危機に晒されてるとは思うんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 ―――それも、恐らく。

 世界初の、 仮想世界に於けるテロ行為(バーチャル・テロリズム)に』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「―――隊長、侵入者が―――ッ!!」

 

 

 その時だった。

 私がパネル操作を終えた直後に、重い銃声音と切羽詰まった声が響き渡った。思わず振り返ると、この秘匿エリアの入り口を警備していた部隊のプレイヤー二人が、全身に稲妻の様なエフェクトを迸らせて倒れ込んでいたのだ。

 

 

 「うわっ、運営スタッフ専用のスタン弾って強力なんだねさぁ」

 

 

 続けて、そう言って入り口から中に入って来たのは、私の腰よりも低い身長を持つ、全身にローブを纏った正体不明のプレイヤーだった。その場に居た二十人近くの仲間が、一斉に乱入者に向けて銃口を向ける。

 だがそんな私達をぐるりと見渡した後、怖気もせずにそのプレイヤーは肩をすくめる様にローブを揺らして、乾いた笑いを漏らした。

 

 

 「……相変わらず新しい部下達を揃えてるみたいだなぁ、あのPoHさん」

 

 

 PoH? こいつは何を言っているのだ?

 そもそも、この侵入者は誰に向かって話をしているのだ。誰とも目を合わせずにこちらを一度ちらりと見やったかと思えば、直ぐに目を逸らして、現在私の目の前に広がっている特大モニターを向けて大声を張り上げる。

 

 

 「そんで、そいつがお前さんの今の弟子って訳かい。

 出てこいよ! お前の腹積りは大体わかってんだぞ!!」

 

 

 

 

 

 『キルオ、ここは一度、俺が代わるぜ。オマエらも一旦、銃を下ろせ』

 

 

 

 

 

 直後。先程私がシステム操作によって開いた、アメリカ側との通信回線から、()()()の声が聞こえて来た。

 

 

 『その口調、忘れもしねぇよ。

 言っただろ、また会おうってな。俺からの愛しのラブレターはどうだったよ……阿修羅』 

 

 「なーにほざいてやがる。イマジェンの陰に隠れてコソコソ送っておいて、よくもまあそんなエラソーな事言えたもんだよ、ふんっ」

 

 

 会話の内容にはまるでついていけないが、どうやら目の前のローブ男とあの男の間には浅からぬ因縁があるようである。普段のあの男の人を酔わす様な口ぶりが、今はどこか嬉しげに、興奮した様に余裕を無くしているのだ。

 ……そんな人間が、ザスカーの社員の中に存在しただろうか。

 

 

 「大体、阿修羅の俺を招待したかったのは結構だけどね、PoH。

 このサーバーには何もありゃしないぜ。おおかた死銃事件があった事だし、お前さんはG()G()O()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、それをオフィスを占拠する事で解明、グロッケンの戦場化と合わせて発動させる腹積りでいたんだろうけどさ。

 だけど、あの事件は数日前に解決した。まだ公になってないから知らないだろうけど、そのカラクリはGGOのシステムとはまるで無関係だったんだなぁ、これが」

 

 

 その言葉にあの男は返事を返さなかった。

 当然だ、何故なら。

 

 

 「だからね。残念だけど、お前さんの計画は総崩れだぜ。

 グロッケンを戦場にしたところで、デスゲームは発生しない。何故なら、このGGOには、いかなる手段を持ってしても!

 お前の好む様な、人の命を軽んじる様なシステムはないんだからな!!」

 

 

 

 ……それは確かに事実である。

 アミュスフィアの安全装置を始めとした多くのVRMMOゲームに採用された安全策によって、私達にはどう画策しようと人の命を奪う手段はない。

 

 

 

 『……ククッ』

 

 

 

 

 だがそれは。

 ()()()()()()()()()()()()()、だ。

 

 

 

 

 『こいつは……こいつは傑作モンだな! 同胞達よ、分かるか!? これが日本人ってヤツだ、これが軟弱な日本人(ジャップ)の本性だ!!

 アメリカにいつまでも守られて、すっかり平和ボケしたコイツらには、戦争が何たるかがまるで分かってねぇ!!』

 

 

 そのモニター音声の声に合わせて、私達も口から思わず笑いを溢していた。目の前にいるあのローブ男は、そんな、そんな短絡的な理由で我々が、わざわざ日本サーバーにまでやって来たと思っているのか。

 

 

 

 「……何がおかしいんだい?」

 

 『ハッ……なら阿修羅、俺の質問に答えろ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 問いを投げかけられたちびアバターは、一瞬だけそのダボついた外套を揺らすと、間を開けずに答える。

 

 

 「……人が沢山死ぬに決まってるじゃないか。やり取りされるのは、命じゃないのか」

 

 『ノー! アブソリュートリィ、ノー!!

 カーッ、だからオマエらは分かってないって言うんだよ!!』

 

 

 そう。私の目的は、ザスカーを潰す事。それのみである。

 そして、あの男がそれ以上に何かを考えている事は明白だ。そうでもなければ、向こうが私に協力するメリットが何一つない……最も、そんな事は私の知ったところではないのだが。

 だが、まあいい。ちょうど良い機会だ、この際に手土産として、あの男が今回の作戦についてどう考えているのか、改めて聞き及ぶのも悪くはないだろう。

 

 

 『デスゲーム、デスゲームって、お前らSAOプレイヤーは散々人の命がどうこうって騒いだけどな。本当の戦場で大事に扱われているのは、命じゃねぇ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――― 、だよ』

 

 

 

 だからこそ。

 私達は、ここを占拠した。

 

 

 

 

 『全てのGGOプレイヤーのアカウントを、装備やアイテムを始めとしたあらゆる観点から金額化させるんだよ。

 んで、倒された奴は、倒した奴にアカウントごと奪われる。ストレージ内の物品から武器、アバターそのものの価格までが金になって、倒した奴に渡るって寸法さ』

 

 

 

 

 「……む」

 

 

 ―――ほう。

 思ったより神妙な反応をするじゃないか。もっと、「そんなもの意味あるのか」と言いたげな顔をすると思ったのだが。

 

 

 『……まァ、オマエが初めからそれを聞き出すつもりでいた事くらいは、察しがついてたけどな。

 分かったんなら、もう無駄話は終わりといこうぜ。おい』

 

 

 そして。次の瞬間、彼の号令に合わせて私達は一斉に、腕に抱える銃器を侵入者に向けた。

 

 

 『腐っても阿修羅だ。こんなピンチの一つや二つくらい、簡単に乗り越えられるよなぁ?

 こんな所でくたばってくれんなよ? 俺のショウ・タイムは、これからなんだからな』

 

 

 

 

 

 

 「モニター越しに威張られても、全く響かないよね」

 

 

 それでも、その男は臆さなかった。

 そんな圧倒的危機に晒されながらも、ゆっくりとその外套を翻すと、その内を露わにする。やはり少年型のアバターであった事は間違いないが、左手に装着している拳銃……VP70の専用ストックを、あろうことか腕の外側に付けているのが明らかに異質だ。

 だが。それだけではなくて。

 

 

 「偉そうにくっちゃべる前に、まず自分から打って出たらどうなんだい」

 

 

 その右手に持つのは、この銃の世界に唯一存在する、近距離専用の武器。

 先日の日本サーバー第三回BoBにて前代未聞の活躍を見せた、銃弾すら断つ刃。

 

 

 『……オイオイ、阿修羅ともあろうものが、そんなオモチャでオレ達に対抗するつもりなのかよ。

 そのちびアバターと同じように、オマエの脳みそもガキ同然になっちまったのか?』

 

 「ものを見た目で判断すると、後悔するぜ?」

 

 

 起動スイッチを入れ、色としては珍しい緑色の光刃を伸ばす。どうやら長さは通常のモデルのものよりかなり短く、そのちびアバターの体格に合わせて調節されているらしい。

 ……その姿は、まるで古いSF映画に出てきた、緑色のエイリアンの騎士の様な。

 

 

 『ケッ、まあいい、俺を殺したけりゃ……この戦争を、最後まで生き残ってみろよ、グラント』

 

 「戦争は、人を偉大にしない、だっけか」

 

 

 そして。

 くるり、とそのヒルトを持つ手を裏返して逆手に持ち、左手のVP70のストックと合わせて、まるで()()()()()()()()()()様にして構えると。

 

 

 「……フォーヌと共に、あらん事を」

 

 

 ―――私達が銃の引き金を引く直前に、ニヤリと笑うのだった。

 

 

 

 

 

  

 (part2に続く)

 

 

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