プロローグ
これは物語が始まる1000年前──正確には物語の988年前の事。
大陸の人間達、それぞれの大陸や島国の人間達は互いにほとんど交流を持っていなかった頃。
後に皆が知る事になるが世界で一番大陸での出来事。
その大陸には有り余る程強い魔導師が2人いた。彼らを便宜的に『善の魔導師』と『悪の魔導師』としよう。別に2人とも善でもなければ悪の存在でもない。あくまでこの名称は記号に過ぎない。なぜなら2人は歴史に名を残さなかったからだ。
さてこの2人だが真剣な勝負か、それとも単純に暇つぶしかのどちらかだけれどゲームを始めた。魔術で互角ならばそれ以外で競おうと考えた。例えるなら知恵、知識、人脈、肉体、心、精神力、お金、運……etc。そして2人は総合力と信念によるゲームを始めた。
そのゲームは1000年という普通の人間からしたらありえないくらい膨大な時間を使う。
まず悪の魔導師はありえないくらい高い塔を作った。後にこの塔は『荊の塔』と呼ばれる事になる。
ここでその時代の不運な少女が巻き込まれた。齢5歳の少女でとある国のお姫様だった。その少女は多くの犠牲を払ったにも関わらず、不運にも悪の魔導師に連れ去られてしまう。不幸な少女はありえないくらい高い塔の最上階で2人の魔導師に魔法をかけられ眠らされて閉じ込められた。
さてこのゲームのルールだが至極単純。少女を閉じ込めたその時からちょうど100年毎に善の魔導師はその目に適った人間、育てた人間──云うならば『勇者』を1人だけ塔に送り込み登らせ、その勇者が生きて登りきり少女を目覚めさせる。そして無事に塔を脱出できるか。勝敗を決するはただそれだけ。そして2人の魔導師は眠りと閉じ込めの魔法以外にそれぞれ1つだけ少女に呪いをかけた。それもゲームのルールの一環。
悪の魔導師が閉じ込めた少女を善の魔導師が10回のチャンスを100年毎に1回『勇者』送り込み少女を助けるゲーム。少女を助ける『善の魔導師』と少女を幽閉した『悪の魔導師』とのゲームの火蓋が切って落とされた。
不運な少女の不幸で理不尽なゲームが……。
しかし、彼らは知らない。
少女が塔に閉じ込められる正に直前だ。2人の魔導師の魔法には遠く及ばないが幸せの妖精と呼ばれる妖精が少女に幸運を与えた事を……。その幸運は少なくとも少女にとって永遠の眠りという不幸を変えて先の幸せを与え、そして悪の魔導師の勝利という運命をねじ曲げた。
この988年後。不可能な運命をねじ曲げて1つの奇跡が少女の元に舞い込む……。