センリはエンジェを抱きかかえながらも建物の屋上や屋根を飛び移りながらブルーブルー教会に向かっていた。途中、強盗竜団の竜人と何人か遭遇したがまるで蟻を踏むかのごとくあっさり殺して進む。
3分もしない内にセンリ達はブルーブルー教会の扉の前まで来た。いや、この表現は正しくないかもしれない。
「無惨にも扉は粉々に大破してますね」
「無抵抗な扉を一方的に壊すなんてヒドい人ね。強盗竜団頭領ドラゴンドライサーは」
「ドアさん可哀想……」
扉だったものを見て三者三様の感想を述べる。しかし、センリは人の事を言えない。
扉が壊れているため、センリ達の場所から強盗竜団頭領ドラゴンドライサーは今まさにブルーブルー教のシンボル(正式名称不明)を盗ろうとしていた。
センリは1本だけ剣を背を向けているドラゴンドライサーに向けて投げる。
お互いの距離間は相当あるがセンリの投擲がギリギリ届く距離ではある。
センリはエンジェを抱きかかえて神速でその場から離れる。するとセンリ達がいた場所に雷が落ちた。そして、センリの投げた剣は飛んでいる最中に雷に打ち落とされた。
センリはブルーブルー教会内に入ると神速でドラゴンドライサーに近づく。そして、後少しというところで止まる。するとセンリの目の前に雷が落ちた。
センリはドラゴンドライサーの声が聞こえる距離まで近づいていた。
「まさかこの世界に雷を避けるような奴がいるとはな……」
ドラゴンドライサーはセンリ達の方に体を向けながら言う。
「エンジェ、リン。離れてなさい」
センリの肩に掴まっていたリンは離れ、センリに抱きついていたエンジェはしぶしぶながら離れた。
「いいのか? 俺様の能力は雷。離れたところにいる奴も超高速で攻撃を当てる事ができる」
「関係ないわ。私は自身の勝ちは揺るぎないとは思うけど、やっぱり人を抱えながらは動きが制限されるからね。言っておくけど君は私に惨めに負けるわ。だけど今の私は機嫌が良い。ここで手を引くというなら見逃してあげるけど?」
「ふざけるな。俺様は強い。先日はあのギルドランクSの束縛天使を負かしたんだ。残念な事に殺し損ねたがな」
「そうだったね。チェルが殺されかけたんだったわ。やっぱりここで殺させてもらうわ」
こんな会話をしているがドラゴンドライサーは目の前の人間の女──センリを侮っていない。それも当然。センリは雷をすべて避けたのだ。
ドラゴンドライサーはチェルノフレイと戦った時は手加減した。正確には本気ではなかったというべきか。なぜならその時は目で見える攻撃しかしてなかったのだから。
「悪いが俺様は全開で本気だ」
「じゃあ私も全開とはいかなくても本気でやるわ。身も心も串刺しにしてあげる」
ドラゴンドライサーは額に一角を生やし、全身に自身の鱗の上にさらに麒麟の鱗を付けた。
センリは千本鞘から剣を2本取り出す。
先に動いたのはドラゴンドライサー。シャンデリアの上に飛び乗った。そして電気の束をセンリに向けて撃つ。
センリは神速する必要もなくそれを避ける。
「がんばって~! センリ~!」
センリは笑みをエンジェに返す。サービスだ。
ドラゴンドライサーはセンリが目を逸らした一瞬に雷を落とす。
しかし、センリは難なく回避。そしてドラゴンドライサーが乗っているのとは別のシャンデリアに飛び乗る。
「化け物が!」
「竜人の精霊魔導師の方がよっぽどよ」
「だが小さい人間と妖精がフリーだぜ!」
ドラゴンドライサーは雷をエンジェとリンに目掛けて落とす。
「キャーー!」
「エンジェ様伏せて!」
リンがエンジェを庇うように両手を広げる。センリはそんな2人を見やる。
しかし、雷はエンジェ達に届かない。センリは剣を投げて雷を防いだ。
「死ね!」
ドラゴンドライサーはセンリ目掛けて雷を落とす。
無論センリは易々と回避し、空中で回転し天井に着地する。
ドラゴンドライサーはセンリの目の前まで一瞬で詰める。
「あら。案外速いのね」
「電気っつうのは自分自身の神経に流す事もできるんだよ。そうする事で身体能力を極限まで上げられる!」
ドラゴンドライサーは電気を纏った大きな腕頭の上──否、頭の下から振るった。その速度はセンリの予想を遥かに上回る。
しかし、センリの速度はその遥かに上回る予想さらに上回る。センリはドラゴンドライサーが振り下ろす腕の軌道上を腕が通る前に通り抜けて地面までジャンプした。華麗に着地する。
ドラゴンドライサーは開いた口、両手の平、両肩の大砲を真下のセンリに向ける。
「麒麟要塞!」
両手の平、両肩の大砲から電気のビームが発射、口からは電気の玉が連射される。
しかし、やはりセンリにそれは当たらない。センリは壁を駆ける。
ドラゴンドライサーはセンリに照準を合わせるが当たらない。
「遊びは終わりよ」
センリは先よりさらに速い神速でドラゴンドライサーとのすれ違い様に剣を2本投げる。
「ぐぁっ!」
ドラゴンドライサーの胸と首を剣が貫く。
そしてドラゴンドライサーは地面に大きな音を立てて落ちる。
センリはゆっくりと地面に着地する。
「ば、馬鹿な。俺様は視神経にもさらに強い電気を流し動体視力も良くなってるのに……。な……
ぜ動きが見えな……い」
「自慢じゃないけど私、速さには自信があるの」
「く、てめー串刺し姫か……」
「まあね」
「不運だ……な。まさ……か、荊の塔攻略者が出はって来……るとは」
「けれど誇りなさい。君は私に剣を2本も使わせた。強くない相手には1本しか使わないんだからね」
「光栄だな……。この化け物が」
ドラゴンドライサーは絶望の色に染まった顔で死んだ。
今まで殺して来た数は決して少なくない。自分が殺される事に文句は言えないだろう。
これ以来強盗竜団が活動しているという話は聞かない。
ドラゴンドライサーの意志を継ぐ者がいない。
しかし、それ以上に生き残った強盗竜団も串刺し姫センリの強さに絶望し、自身の強さ──自信がなくなり落ちぶれて行った。