荊の塔の最上階の半分、それより1階下の部屋を覚えているだろうか?
知識と武器とお金が置いてある部屋だ。攻略者の欲望を問う部屋。
100年目、善の魔導師の一番弟子。
200年目、妖精界最強の剣士。
300年目、彼が作った氷の精霊。
400年目、東方の秘境の仙人。
500年目、怪力自慢の虎の獣人。
600年目、最速の鳥人。
700年目、ブルーブルー教の神の子。
800年目、史上最悪の海賊。
900年目、数多の銃と装甲を武装した男。
これまでに善の魔導師が荊の塔に送り出した勇者9人の内6人がその部屋を攻略できずに死亡した。もちろん9人の他にもいた攻略者も大半はその部屋に来るまでに脱落したが、その部屋に来るも攻略した人数は脱落しなかった中でも僅かである。
今までの物語の中で確認された人物でその部屋を攻略したのは東方の秘境の仙人、ブルーブルー教の神の子ハート・ブルーブルー、センリの前に攻略を試みた男、そして荊の塔攻略者センリ。
ひとまず攻略者の話は置いておくとする。
その部屋には武器がある。
その部屋の武器は少なくともセンリが生きる時代には確立されていない科学技術で作られたオーバーテクノロジーな武器が多数あった。もちろん、センリが生きる時代には既に確立された科学技術で作られた武器もある。しかし、それはセンリが生きる時代では既存のテクノロジーであるだけでそれより昔ではやはりオーバーテクノロジーな武器であった。
この事からわかる通り『悪の魔導師』は魔法だけではなく科学にも精通している事がわかる。
センリが生きるこの時代には動くロボットはいない。動く人形はあるがこれはあくまでも魔法で動いているだけ。
しかし、悪の魔導師は1000年も前に科学技術だけで動くロボットを完成させている。
オーバーテクノロジーな科学兵器を装備したオーバーテクノロジーなロボット。
しかもそのロボットには心がある。殺戮に快楽を覚える心を宿したロボット。
無論、これを1000年も前に使えばどうなるか? 答えは簡単だ。簡単に国を滅亡に追い込む事ができる。
そしてこれがセンリが生きる時代に起動したらどうなるか?
この時代でもそのロボットはオーバーテクノロジーの塊である。答えは簡単。先と同じく国は簡単に滅亡するだろう。
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それは地中に眠っていた。
正確には988年前に役割を終え、ここに無造作に隠された。
それは偶然と言っていいかもしれない。大地が揺れたのだ。地震だ。
しかし、その地震は自然災害における地震ではなく、あくまで人工災害における地震である。
それが眠っている地中の上には1つの国がある。ドラゴンが住む国ハワボルイだ。
ドラゴンというのは非常に強力な技を使う種族であり頭が良い。その種族的強さは二足歩行で怪力高速な吸血鬼、あらゆる生物より一歩先へ行く魔法を操る精霊と並ぶ程である。
さて、それが眠っている上で今が何が起こっているかというと、ドラゴン同士の喧嘩だ。
お互いが偶然にも相手に逆鱗に触れるというある意味頭の悪い喧嘩だ。
片方のドラゴンが空から思いっきり地面に叩き落とされたために大地が揺れた。
この地震が原因でそれは起動した。
それは寝起きから不機嫌だった。
それは体の間接部に備え付けられた発射口をすべて震源地──つまり地上に向けるとレーザーを発射した。
地中から発射されたレーザーは地中を地上に向けて走り、地面に落とされたドラゴンの体に無数のレーザーが貫通して殺した。それどころか落とされドラゴンのちょうど真上を飛んでいた落とした方のドラゴンの半身も貫通して、そのドラゴンも地面に落ちる。
それは地中を上に向かって進む。地面の中からその馬力でドラゴンをぶっ飛ばした。
それは大柄の人間よりも一回り大きく、緋色のボディカラーは使われている金属の色そのものである。人型のボディは全体的なパーツは丸っぽく、スラリとした細いラインは女性を思わせる。膝や肘、首などの間接部は人間と同じであるが発射口がある。しかし、手足の指の構造は人間の指と何ら遜色ない。
それは思い出すように手の指を動かす。
そして思い出すように独り言を言う。
「確か俺は創造主の命令でパールミリオとかいう国の民を殺戮したんだったな。その後、創造主によって止められここに埋められた。それで今俺は運良く起動したというわけか。で、俺は現在ピンチという事か」
それは周りを見渡す必要もない。4方6方8方、前後上下左右、物影すべてが見える。
それの現在の状況は数多のドラゴンに敵意を持って囲まれている。
「ちょっと運動するか」
それは1体のドラゴンに手の平を向ける。
するとそれの手の平から光線が出る。
一筋の光線はドラゴンの体を貫いて絶命する。
他のドラゴンが真後ろからそれを切り裂く。それは勢い良く壁までぶっ飛ぶ。
それは不敵に立ち上がる。ボディには傷1つ付いてない。
「やっぱあいつは天才だな。ドラゴンの攻撃で傷付かないとはな。もし俺に創造主の命令を無視できる機能があれば創造主も殺せるんだけどな」
それはドラゴンの目にも止まらぬ速さで切り裂いてきたドラゴンに近付き殴る。切り裂いたドラゴンは目に見えて悶絶する。
「無駄に頑丈なドラゴンを悶絶させるパワー。そして……」
それの右手が手刀になると光を帯びて光が剣のように伸びる。
その光の剣で切り裂いたドラゴンを切り裂いた。
そしてそれは背中から円筒形の何かを無数に出す。円筒形の何かはあえて言うなら遠隔操作のできる光線を発射する銃だ。
その銃は高速で飛び回り光線を発射しドラゴン達を殺して行く。
僅か数分の間にドラゴンの住む国ハワボルイのドラゴンは全滅した。
それは悲惨で無惨極まりない光景を見て興奮気味に叫ぶ。
「やっぱり殺しは最高だぜ!」
それはそれだけ言うと歩き出す。
新たに殺戮を行うために……。
「さて、現代人……殺戮ゲームの始まりだぜ!」
それの悪の魔導師が作った『殺戮専用人型破壊兵器ディスペアー』。
センリが生きる時代でも尚オーバーテクノロジーの結晶。
それはドラゴンの住む国ハワボルイを滅亡させた約12時間後、ペガサスの獣人が住む国ドラフライを滅亡させる。
その時から約4時間後。
それぞれの国はそれを破壊した報酬に多額の懸賞金を出すと提示した。
また、ギルドでも依頼として出された。多額の報酬金とランクSSの称号とともに。