ローズクイーンと千本剣   作:天井舞夜

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988年後のお姫様のお父さん

 エルエル・ベル。

 その名を知らない者の方が多い現ギルドオーナーであり、間違いなくエンジェことエンジェティーネ・ベルの父親だ。

 なぜ名を知られていないかというとエルエルはギルド幹部しか知られておらず表に出ない人だからだ。

 そもそもエルエルはギルドどころか大陸唯一の魔法学校や世界一有名な騎士学校のオーナーでもある。

 もちろんこれらを経営してる理由は荊の塔を攻略し、エンジェを助け出すためだった。

 エルエルのエンジェ救出は善の魔導師のようにゲーム感覚ではない。チャンスがある限り勇者を荊の塔攻略に送り出した。

 仙人となった吸血鬼──吸血仙鬼のライトブルーがそうだ。かく言うセンリの前に荊の塔に挑戦した男もエルエルが送り出した勇者である。

 送り出した勇者は1000人。ほぼ1年毎に1人荊の塔に送っていて、偶然で成り行きとはいえセンリはその1000人目である。

 そんなエルエルはギルド本部のどこかにいた。

 誰の目にも止まらず誰もたどり着く事などできない部屋。

 そこでエルエルはエルエルの部屋に入る事を許された数少ない1人──センリに荊の塔の依頼を紹介したロズモンドのギルドの受け付け係をしていた女と話しをしていた。

「エルエル様、センリ様が荊の塔を攻略しました。それがその証拠の品です」

「剣……? ふむ、なかなかの業物だ。これだけか?」

「センリ様から渡されたのはそれだけです」

「後何かなかったか? 女の子とか」

「そういえば一緒に黒髪の女の子も連れて来てましたね」

「それだ!」

「うわっ! ビックリしました。急に大声出さないでくださいよ」

「す、すまん。それでその女の子はどうした?」

「その女の子なら女の子がセンリ様と離れたくなさそうだったので……今頃2人で旅してるんじゃないかと……。もしかしてエルエル様はそちらの女の子が目当てでしたか?」

「そうだ」

「エルエル様はロリコンだったんですか」

「違う! そういう意味ではない!」

「ああ、そうですね」

「誤解だ。憐れみの目で俺を見るな!」

「そうですか」

「わかった。俺がしっかりその辺の説明をしておけば良かったな」

「何がですか?」

「その女の子エンジェティーネ・ベルは俺の実の娘だ」

「そうでしたか」

「驚かないのか?」

「いえ、むしろ疑惑が確信に変わったという感覚です。あの国を1つ買えるような高い依頼報酬金、あの進路を辿るのを予想して私を1年も前から配置してましたしね」

「良かったじゃないか。お前はセンリのファンなんだろう」

「まあ、そうですけど……」

「それで、センリは今どこにいるんだ?」

「センリ様はブルーブルーで強盗竜団を撃退後、吸血鬼村に現れた魔物の討伐を失敗し、現在は大陸に戻る船に乗ってる途中かと」

「吸血鬼村の魔物討伐を失敗?」

「なんでも魔物を殺せたのに見逃したとかどうとか……」

「相変わらずデタラメな女だ。しかし今大陸はあのよくわからない機械人形が現れて危ないんだよな。ドラゴンの国を壊滅させて、ペガサスの国を壊滅させて、昨日は精霊の国を襲ったんだろ?」

「ええ。あの精霊の魔法が機械人形に効かないなんて思わなかったですね。しかも私達の知り得ない科学ですしね。腐っても荊の塔にエンジェ様を眠らせて閉じ込めた悪の魔導師ですね」

「出所掴んでのかよ」

「まあ、私はギルドファクト幹部である前に善と悪の魔導師の研究家ですから」

「それも建て前だろ?」

「さすがエルエル様、わかってますね」

「これでも伊達に1000年以上生きてない」

「はいはいそうですね。それでどうするんですか? ギルドランクSSの称号に惹かれたて挑戦した人達はすべて死亡。最高政府のお抱えである大陸最強の魔導師も挑戦して一応生きて帰って来ましたがどうしようもできず、最高政府は打つ手なしと諦めモードです。裏社会を牛耳る最大裏会社も打つ手なしと諦めています。もっとも、センリ様が壊滅に追い込んだ最強秘密結社があれば話しは別だったのかもしれませんが」

「希望があるとすれば……」

「異例のギルドランクSSにして荊の塔攻略者センリ様……」

「センリは勝てると──いや壊せると思うか?」

「間違いなく無理ですね。それこそ覚醒でもしない限り」

「まったくもって無茶苦茶だ。ギルド自慢のセンリですら勝てるか怪しいとか」

「エルエル様はどうなんですか?」

「俺にわざわざ死に行けと? ヒドいなお前」

「負ける前提ですか」

「確かに実力はあると自分でも思ってるが、あの機械人形どころかセンリの足下にも及ばないな」

「しかし……このまま野放しにもできませんよ?」

「当たり前だ。一応は最高政府と手を組んで手は打つつもりだ」

「というと?」

「悪の魔導師か善の魔導師を見つける」

「なるほど……確かに1番現実的な考えですね。ですがその2人はこの988年間表舞台に出てません。確かに善の魔導師は荊の塔に

 100年目に善の魔導師の弟子。

 200年目に最強の妖精剣士。

 300年目に善の魔導師が錬成した氷の精霊。

 400年目に東方の秘境の仙人。

 600年目に不死鳥の鳥人。

 700年目に神の子。

 800年目に最凶の海賊。

 900年目に全身武装の男。

500年目に誰を送り込んだかは不明ですけど、確かに送り込んではいます。それでも善の魔導師もまた荊の塔に挑戦者を送り込むだけで表舞台には一切現れてませんよ」

「手詰まりか……」

「諦めるの早いですね。しかし着眼点はいいと思います。確かにどちらかを味方に付ければあの暴走殺戮兵器を止められるでしょう」

「そうだな。とりあえずお前はセンリにその剣を渡して来い。そしてエンジェを俺の元に連れて来い」

「わかりました」

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