ローズクイーンと千本剣   作:天井舞夜

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バージョンアップ

 エンジェを荊の塔に閉じ込めた魔導師をエンジェやセンリは悪の魔導師と呼ぶ。

 また、エンジェを閉じ込めた役の魔導師を悪の魔導師と呼ぶならと──エンジェを助ける役の魔導師は自身を善の魔導師と呼んだ。

 センリがギルドランクSSとなって表彰された日、エンジェは善の魔導師と接触した。

 それはそれとして悪の魔導師はどうしているか?

 それはセンリとエンジェがウッドの依頼を手伝いをして果樹園で収穫を行っている時である。

 悪の魔導師は荊の塔の最上階の半分にいた。

 守護者としていたアルラウネ──キリーとセンリが戦闘した場所だ。正確にはその階より上で戦闘していたが……。

 悪の魔導師は宙に浮き塔の壁が見える位置まで飛んだ。

 そこには数多の剣で串刺しにされて絶命したキリーがいた。

「ふむ……。キリーを殺す奴がいるとは……。この具合からすると最近か」

 悪の魔導師は最上階にワープした。

 そこで見た光景はベッドで寝ているはずのエンジェティーネ・ベルはいなくて、悪の魔導師が作った剣・荊薙もなくなっていた。

 悪の魔導師は植えられている木々の心を読んでここで何があったかを探る。

「なるほど、私が予想した──それどころかアイツが送った挑戦者ですらないな。ただの人間か……あのキリーを殺すとは化け物並みの強さだな。少なくとも吸血鬼よりは強い。ああ、だから欲望の間にも捕らわれなかったのか。恐らく相当浮き世離れした奴だな」

 ちなみにセンリはお金の欲に捕らわれそうになったが運良く突破していた。

「あの荊薙の鞘のバラの色は攻略者の気質によって変わる。青色という事は花言葉は不可能──この場合は奇跡か? 何が奇跡なのだろう? この塔を攻略した事か? それともその強さか? 私の予想した善の魔導師が送る10人なら800年目の8人目──海賊が有力だったんだがアイツはベタにも欲望の間のお金に溺れたんだったな。なんというか良くも悪くも海賊だな」

 悪の魔導師は溜め息を吐いてから続ける。

「なんにしても偶然復活した殺戮専用人型破壊兵器ディスペアーでは分が悪いな。あれは所詮殺戮のみに特化した量産型兵器だからな。アイツとの勝負に水を差した攻略者を殺すには実力不足。ならば簡単だ。パワーアップしかない」

 悪の魔導師はディスペアーの居所を探る。

「ふむ……ドワーフの住む国を襲撃した後、今は竜人の住む国を襲撃しているのか。今の時代の下等で頭の悪い生物共なんてディスペアー1機で絶滅させられるだろうが攻略者が荊薙を持ち出したというなら話は別だ。荊薙ならディスペアーのボディを切れるからな。じゃあ早速ディスペアーを回収に行くか」

 悪の魔導師は荊の塔から消えた。

 

■■■■

 

 ディスペアーは竜人の頭を握り潰した。

「雑魚が!」

 ディスペアーはその竜人の後ろの2人の竜人を見る。

 1人は女性の竜人、もう1人は子供の竜人。つまり親子の竜人であり、頭を潰された竜人は父親だった。

「やめてください! 私はどうなってもいいからこの子だけは──」

 ディスペアーは光線の剣で母親の竜人を縦に真っ二つ。

「あっそ」

「お前ー! よくも母ちゃんを!」

 子供の竜人はディスペアーに体当たりする。

 しかしディスペアーには傷どころか動く事さえなかった。

 むしろ全力でぶつかった子供の竜人の方がダメージが大きかった。

「ガキは勇ましいな。だけどそういう奴らに絶望を与えて絶命させて、やがて絶滅させるのが俺なんだ。褒めてやるぜガキ、お前がこの竜人の住む国で最後の生き残りだ。あえて言うならお前が生き残るのはこの国の希望だろう。だから俺はお前に絶望を味会わせてやろう。泣くなよ。喜べよ」

 ディスペアーは子供の竜人の腕をもいだ。

 子供の竜人は断末魔の叫び声を上げた。

「絶望の始まりだ」

 

 

 

 ディスペアーは子供の竜人だったものを蹴る。

「あまりにも可愛い声で泣くから途中からサンドバックにしちゃったぜ。不幸にも竜人として強靭な体を持っていたばっかりになかなか死んでくれないから手間がかかったぜ」

 ディスペアーの言う不幸とは時間をかけ過ぎてしまった事であり、この場合の不幸は子供の竜人がなかなか死ねなかった事だろう。

「で? 貴様な俺に何の用だ?」

 ディスペアーは悪の魔導師に言った。

「やはり俺が作った兵器だ。1000年近く放置していたのに劣化がない」

「自画自賛かよ」

「私は天才だからな。現に988年経った今でもお前の科学技術に追いついてない」

「で? 俺に何か不満でもあんのかよ」

「不満はないが不安はある。この時代には化け物がいる。あまつさえその化け物はお前を唯一切断できる私が作った剣──荊薙を持っている。だから荊薙で斬られないように988年経った私の科学技術でバージョンアップしてやる」

「それはありがたい事ではあるが──相手が化け物だろうが人外だろうが俺は負けない」

「そうだな」

 悪の魔導師が杖を振るとディスペアーは倒れてしまった。

「お前は自分より私の方が弱いと決めつけて油断したな。それは事実だろうが私は隙さえあれば相手がどんなに強かろうと関係ないんだ。さて、さっさとコイツを持っていて改造するか」

 悪の魔導師はディスペアーとともに壊滅した竜人の住む国を後にした。

 

 

 

 それ以降、数ヶ月の間──殺戮専用人型破壊兵器ディスペアーが大陸に姿を現す事はなかった。

 しかし、数ヶ月後には大陸全土を絶望に染めるためパワーアップ版ディスペアーが殺戮の限りを尽くす為に現れる。

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