童顔系潜入捜査官   作:くりっぷ

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時は少し遡り、ターゲットが真っ黒黒にこんがり皮膚が焼けていたころ。サービスドリンクを提供したウエイターの男に近づき、携帯の画面に鷹岡の顔写真をみせる。

 

「この男知ってる?」

 

「......さぁな」

 

「皆に毒を盛ったのにシラバッくれるんだ」

 

「なんでそれを!?」

 

カマをかけたら、案外早く引っ掛かった。

 

......本当に仕掛けてくるとは。つまり、こいつの雇い主は鷹岡というわけか。

 

「どっちについた方がいいか......アンタならわかるだろ?」

 

ニンマリ笑って問い詰めると、信用問題とかボスに連絡とかゴチャゴチャ喚いていたので、鷹岡が現状どういう立場で、今後どういう扱いになるか懇切丁寧にお話した。トドメに「裏の業界で動きにくくなって、雇い主もろとも道連れですね」と言い切った。そしたら、あっさり計画を吐いてくれた。

 

ざっくり要約すると、この男――スモッグ――が準備したウイルスに生徒を感染させ、人質にするらしい。

 

ウイルスという単語に「研究員から盗んだのか」と聞くと、スモッグの自作だという。だが、ウイルスというにはお粗末で、【なんちゃってウイルス】らしい。それっぽい未知のウイルスの症状をするが、死に至るものではないらしい。

 

 

治療薬を寄越せと言おうにも相手は殺し屋。そう簡単に応じてくれるはずもなく......

 

「アイツは殺るぜ?頭が狂ってやがる。オトモダチのためを思うってんなら、ウイルスで大人しくさせてアイツの眼中から外した方が良い」

 

悪党なのに変な気遣いをされた。難しい顔をしていると、「アイツにダミーの治療薬を渡しておく。それに治療薬なんざなくとも、数時間経てば勝手に治る」と堂々と寝返り宣言された。

 

それで良いのか、暗殺者。

 

つまり、生徒はここで安全に(病人という形だけど)待機するということ。この男の様子から()()で生徒を殺しにかかって来ているわけではない。

 

 

【今の話は互いに聞いてもないし、喋ってもいない】ということを口約束ながら交わした。

 

あくまでおれの任務は監視であり、この暗殺者はテロリストを狙っていての犯行。ターゲットの殺害現場になってもここは暗殺が黙認されているのだから、口を出せない。

 

 

でも、生徒に手を出すということがどういうことかわかっているのだろうか。おれは茶番に付き合わされるってわけか......超生物だぞ、あのタコ。そう簡単に殺られるわけないだろ、と鷹をくくっていたら......

 

 

 

【完 全 防 御 形 態】だと......!?

 

 

 

まじかよ!?前から思っていたけれど、不思議生体すぎる。こんなときにかぎって......チベスナ顔になって、無心で漫画を読む。現実逃避したくなる。

 

案の定、犯行電話が烏間さんに届くし、バタバタ生徒が倒れていくし......

 

オイ、何がなんちゃってウイルスだよ。本物っぽい症状だし、暗殺失敗でドヨーンとした空気がさらに重くなった。これ本当に食中毒なんだよな?

 

 

どうしたら、手っ取り早く解決できるか。頭の中で考える。犯人=鷹岡は確実......あの電話口はE組を知っている内容だった。

 

あのタコがどうにかできる状況じゃないし......厄介な所に潜伏しているせいで、防衛省もあのホテルに介入できない、ときた。

 

犯人の要求に応じるフリをして、鷹岡を捕まえたら解決する。

 

でも要求に応じるにはもれなく生徒があの闇ホテルに行くってことになるわけで......

 

 

荒ぶる内心をおさめるために、グルグル指で水晶になった殺せんせーを回した。

 

 

***

 

 

律の情報処理能力は圧倒される。崖を上り、ホテルへ入った治療薬奪還隊は、最上階を目指した。ビッチさんはエントランスで抜けたが、まだ烏間さんがいる。待ち構えた暗殺者は奇しくもおれが接触した男だった。律に「皆のサポートに集中して欲しい」と言い聞かせて、「あぁ!【お仕事】ですね!了解しました」と奪還隊についていかせた。律には最大優先はE組生徒の安全第一と教えたので、おれが不測の事態でいないときでも彼らを守ってくれるはず。

 

見張りという(てい)で居残ったおれはグルグルに縄で縛られた男にぺちぺちと叩いた。

 

 

「......」

 

ジトリとした目を向けられ、「......仕事は選べよ」と呟いた。

 

当初は、殺せんせー本体が殺し屋を【手入れ】すると予想していたが、そういうわけにもいかなくなった。ヤツの体はまんまるい水晶。介護がないと動けない身なのである。この男もまさか中学生と烏間さんが出てきて、呆気なくやられるとは思いもしなかっただろう。これもまた因果応報ってやつか......

 

 

このスモッグという男と出会した烏間さんは容赦なかった。予備動作が見えなかった。殴り付けられたが、スモッグは烏間さんのヤバさに危機感を感じたのだろう。毒ガスを吹き掛けた。

 

 

この次点であちゃ~とこめかみを押さえたくなる。

 

 

ゾウを倒すガス浴びてまだ気力が残っている烏間さんは人間やめてると思う。バケモノだ。

 

 

スモッグを叩き起こしたおれは、皆に遅れてホテルの内部へ進んだ。

 

 

***

 

 

さすが政府からマークされているホテルとあって、違法のオンパレード。違法取引、ドラッグ、黒い交際......

 

 

しかし現行犯逮捕できない。なにせ今のおれは【飛鳥 進】だ。警察手帳もなければ、手錠も持ってない中学生。だが、上司は「偶然見てしまうこともある」と言ってたし、たまたま未成年の中学生がこのホテルにいただけだ。遠慮なくリークさせていただきます。

 

 

スモッグを番犬代わりに引き連れニコニコ飛鳥君スマイルで歩いていたら、殺し屋連中を発見した。ガムテープでグルグルに縛られ、赤羽君にやられたのか......わさびとからしの強烈な匂いに顔を歪める。拘束をといてやる代わりに鷹岡が宿泊していた部屋を聞き出した。

 

 

殺し屋連中はリーダー格のガンマンと合流したいと言ってきた。ついでに勧誘された。日本人特有の「考えておきます」とお断りをしたのに何故かスモッグの連絡先を押し付けられた。曰く、「お前なら裏で生きていける」とのこと。......これでもお巡りさんなんだが(困惑)

 

「オトモダチが必死こいて駆けずり回ってるのに、お前は平気な顔をして、すべてを知った上で計算して動いている。あの教師もバケモノ染みていたが、お前の腹の真っ黒さには敵わないだろうよ......」

 

 

......返す言葉もない。チッと舌打ちすれば、「ほらな」と肩をすくめられた。

 

 

 

 

***

 

 

 

部屋に入ると、誰も人の気配はしない。

 

乱雑に散らばった何かのスイッチを避けて歩く。複数のモニターには寝込んでいる生徒が映っていた。罪悪感がずーんと落ちる。......もう少しだけ堪えてくれ......!

 

カタカタとキーボードをならし、ヤツの情報を洗っていく。こればかりは律を巻き込むわけにもいかず、自力でやらないといけない。

 

ヤツがどういうルートでここにたどり着いたのか......ちょうど剥き出しにパソコンが置いてあったので防衛省の内部情報を抜き取る。

 

......これも捜査のため。やらないと、おれが殺られる......まったく上は上でいがみ合っているから、おれみたいな下っぱがこんな面倒くさい作業しなきゃいけない......

 

 

 

***

 

 

結局、おれが最上階につくころにはちょうどすべてが終わっていた。殺し屋連中はリーダー格を回収し終え、ちゃっかり防衛省と帰りの足について取り付けたらしい。

 

 

鷹岡を確保できていたようだが、心なしか全員、テンションが低い。そんなときにぞろぞろと殺し屋連中が出てきて、「治療薬がなくても治る」と暴露。おれは明後日の方向をみて、彼らのやり取りを聞き流していた。

 

ナニモキイテナイシ、シリマセン......

 

 

そんな自分にやっぱり上司が上司なら部下も部下だなと不本意ながら納得した。

 

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