童顔系潜入捜査官 作:くりっぷ
宿泊先へ戻った彼らは泥のように眠った。極度の緊張感と慣れない環境。プロの暗殺者相手にあれだけの立ち回りができても、やっぱり中学生なんだなと思う。
夕陽が赤く映える。遠くで聞こえた爆発音。黄色いシルエットがシュタッと砂浜に立っていた。
「殺せんせーは......あぁ、ぴんぴんしてますね」
波打ち際で分身して、はしゃぎ回っている。
ぎゅっと眉を寄せた烏間さんは、苦虫を潰したような顔をしている。
「君は、......こうなることをわかっていたのか?」
「珍しいですね。烏間さんからぼくに話しかけてくるなんて」
烏間さんは積極的に生徒と交流を図る教師じゃない。鷹岡の暴力事件以来、少しずつ教師らしくなってきたが、教師である前に彼は国家を守る自衛官であるから。そしておれもまたE組の生徒である前に警察官なので、ある意味似たような立場。おれの任務は内々の極秘のため、彼はおれの事知らないだろうが。おれが烏間さんに勝手に親近感を感じているだけだ。
ぽつり、ぽつりと言葉を選びながら返す。
「今回の騒動の原因のひとつは貴方ですよ。......貴方が鷹岡に何か行動していたらこんなことにならなかったかもしれませんね」
それが和解のきっかけになるか、さらに溝が深まるかは別として。
「以前言いましたよね。貴方の影響を受けて、わるい方向で鷹岡は
名前を呼ばれたのでへらりと手をふって立ち上がる。
殺せんせーの言った【殺意の絆】
子どもだけのその輪に大人も引き込んだら、それは強固なものになる。現に今回の緊急事態の動きに烏間さんは指揮官として、子どもたちはそれにちゃんと応えていた。
その絆にビッチさんを加えたら......
まだ【恋】の始まりであるなら、引き返せる。【恋】がやがて【愛】に膨れ上がったら、ややこしくなる。
愛の反対は憎しみで、表裏一体。ビッチさんが烏間さんにそこまでの感情を抱くかは、どう転ぶか分からない。
どういう過程を踏まえるにせよ、【殺意の絆】にヒビが入るだろうな......
だが、烏間さんは見ての通り、人の機微に疎い。人間関係におけるすれ違いを招き、それが回りに回って思わぬ災いの種になる。鷹岡の劣等感に気づかなかった。生徒の純粋な好意もわかっていない節がある。
......鈍感すぎるのも大概だな......
ほぼ毎日のように殺せんせーやビッチさんに振り回され、任務とはいえ、中学生の教師も兼任している。
殺せんせーの思い付きの肝試しに付き合わされ、その餌食になっている。果てに殺せんせーのゲスさが生徒にまで染まって、お節介なセッティングを準備している。
「......最近の中学生の考えることはよくわからん」
わかる。わかります。激しく同意します。
あんたも苦労しているんだな......
ちょっと胸の奥がつんとした。......素性を明かせたら、酒でも呑んで愚痴りたい。......なんて考えてしまうほどおれは疲れていたらしい。
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報告書
沖縄暗殺旅行。生徒全員による暗殺は失敗。だが、最もターゲットを追い込んだ。完全防御形態という水晶に変化することが発覚。
思わぬアクシデントで偶然乗り込む形になった。その件に関しては後日、詳細を送る。
生徒の能力値は確実に向上している。その能力は目を見張るものがあり、プロの暗殺者に噛みつく度胸もある。