童顔系潜入捜査官 作:くりっぷ
俗に言うキラキラネームに悩む木村君に、1日コードネームで呼び会うことになった。全員のコードネームを考えるのは、地味に大変な作業だ。悪乗りしてジブリ縛りで考えようか。パッと思い付いたものを紙に書いていく。
前原君はリア充だから【バルス】でいいよな。
岡野さんの意地っぱりなところは【コンクリート・ロード】
磯貝君は金魚が好物って言ってたな......よし、【崖っぷちのポニョ】かな。
倉橋さんは王蟲平気そう。ナウシカのハミングとかどうだろう......【ラン ランララ ランランラン】
殺せんせーは......子供のときにだけ訪れる不思議な出会い......【となりの大タコ】で、名付けの茅野さんは【貴方、大タコっていうのね!】とか......
赤毛繋がりで【不良狩りのカルマッティ】
......ふざけすぎたか?まぁいいか、適当につけたものだし。おれが考えたものは見事に圏外で、特に影響なかった。茅野さんは【永遠の0】に憤慨してたけれど......
くじで決まったおれのコードネームは【スマイル0円】......飛鳥君スマイルがデフォルトになりすぎた弊害がここに......!
山に生い茂る木々に隠れ、耳元のインカムへの通信を起動させる。
「【堅物】がBポイント通過した。ご注文は以上でよろしいでしょうか?」
「了解!【スマイル0円】も援護を頼む」
「スマイルチャージですね。がんばって★」
「「「「お前もやるんだよ!!」」」」
......当社比1.5倍で対応したらこの扱いである。遺憾の意。......ラストの【ジャスティス】に繋ぐため、【堅物】の足元へ発砲する。シュタッと【堅物】が避けた場所には、【ジャスティス】が2丁拳銃でパーン!でフィニッシュ!
***
親につけられた名前、か。
「親がくれた立派な名前に正直たいした意味はない。意味があるのは、その名の人が人生で何をしたか。名前は人をつくらない。人が歩いた足跡の中にそっと名前が残るだけです。もうしばらく、その名前、大事に持っていたらどうでしょう......少なくとも、暗殺に決着がつくまでは、ね......」
殺せんせーは木村君にそう諭した。
【飛鳥 進】は本来、
ふと、ジジイに呼び出された日を思い出す。当時おれは潜入任務での偽名を考え、パラパラと何十冊に重なった本を手に取り、紙を捲っていた。中学三年生になる子供たちが生まれた年の名付けランキングや姓名判断から小説まで、ズラリと揃えられている。
「【飛鳥】か......万葉集からとってきたのか?」
飛鳥の 明日香の里を置きて去なば君が辺は見えずかもあらむ
―――飛ぶ鳥の明日香の里を後にしていったなら、あなたのいる辺りを目にすることができなくなってしまうのだろうか。
「えぇ......1年の短い付き合いですから。【明日香】だと中性的ですし、鳥らしく去っていくつもりなので」
「君がロマンチストだったとは......人間らしいところがあって安心した」
「馬鹿にしてますよね?ついにボケましたか?なら、おれにその椅子を譲ってください」
「息を吸うように毒を吐くな。君のその素直なところは長所だけれども、まだまだ譲る気はないのでね。......そうか、【飛鳥】か......名前は【進】だな。......よし、君は【飛鳥 進】だ」
満足気にジジイが腕を組む。「ゴーイングマイウェイだって言いたいんですか?」とムスッとしながら、記入をする。
「『去る』より『進む』方が前向きだろう?明日へと進む......死ぬなよ【飛鳥】」
願掛けのつもりなのか。ジジイの鋭い眼光に飲み込まれそうだ。パチリと瞬きして、「そういうのフラグって言うんですよ」と、ケラケラ笑った。
なんて、教室のしんみりした空気も相まって補正がかかっていい思い出のようになっているが、このジジイは新米のぺーぺーに無茶を言い渡すヤツだということを忘れてはならない。今にして思えば、玉砕覚悟!猪突猛進!の精神で押しきれというあの人なりのエールだと思う。
そんな懐古をしていると、【バカなるエロのチキンのタコ】がブーイングを四方八方から受けていた。帰り際に名前の由来についておのおの口を開く。やがて自分の番になり、ちょっとむず痒くなる。陰険で卑劣なジジイのくせして、なんだって今、こんなことを思い出したんだか。
「toward the future......未来に向かって進む......たしか、そんな意味」
長月も残りわずか。そろそろコスモスが満開を迎えそう。【暗殺教室】はまだまだこれから。
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報告書
コードネームをつけた暗殺訓練を行った。生徒たちの成長が見てとれる。烏間教官に当たる確率が高くなっている。
追伸
ところで、自分のコードネームが【スマイル0円】やら【笑うせぇるすまん】やら【フォローの飛鳥】だったのですが、おれの本職って営業マンでしたっけ?