童顔系潜入捜査官 作:くりっぷ
暗殺までの期限はだんだんと迫っている。生徒たちはA組相手に棒倒しで勝利し、自信がついてきたのだろう。
己の慢心と焦りが事故を引き起こした。
フリーラーニングで下校した際に、一般人に怪我をさせてしまったのだ。
......あぁ。なんてことだ。いつかやらかすと思った、では遅い。
迫り来る暗殺期限。技術アップの向上心。自分たちならできる、大丈夫だという慢心。残り少ない日数がそれに拍車をかけ、普通ならあり得ない選択をしてしまった。同期の言葉を借りるなら【焦りは最大のトラップ】か。3年E組の生徒たちは、その思考や判断が暗殺教室が基準となっていた。
それこそ日本警察が危惧していた事案......
【モンスターによって洗脳された子供が事件を起こした】
【訓練し獲得した技術を悪用した】
そんな見出しの記事が頭に浮かぶ。おれたち大人は彼らを英雄として担ぎ上げている反面、未来の犯罪者を国の方針で育て上げている。暗殺教室は非常に危うい立場なのである。
これは見逃せないし、その前兆かもしれない。彼らにそんなつもりがなくても、ただ純粋に暗殺のためであっても、何も知らない一般人に危害を加えてはいけなかった。
上層部はどうおれが取り繕って報告しても、きっと前述のような解釈をする。
児童養護施設【よつばパーク】に呼び出されたおれは深い、深ーいため息を吐いた。
烏間さんは示談......ぶっちゃけていうと、口止めに奔走。E組皆で迷惑かけたからよつばパークのお手伝いしよう、という説明をいましがた承けた。もちっとした触手パンチを添えて。
「未成年だからって何をしても許されるって本気で思ってる?」
「「「「......面目ない......」」」」
「園長さんに一生恨まれても文句言えないね。下手したら命の危険もあったんだから......2週間とはいえ、ここの子どもたちの『家族』を奪ったも同然のことをしたんだ」
正座でズーンとした様子を見ると、反省はしているらしい。......一応、釘を刺しておいた。こんなことが何度も続くようなら、彼らも危険人物とみなされてしまう。そんなことになったら、生徒の安全のために潜ったおれの捜査が無駄になり、本末転倒だ。ぱんぱんと手を叩いて、「誠意の態度は仕事でみせてよ」と切り替えさせた。
***
なんということでしょう。before afterもビックリな匠のリフォーム。......リフォーム代、防衛省の予算から出てるんだぞ?ほんのちょっとだけど。烏間さんはどうやってもぎ取ってきたんだか......
2週間タダ働きの労働なんて、実質ボランティアだ。群がる子供たちをだっこし、ぽんぽんと優しく触れ、頭を軽く撫でる。
「すげぇ。秒落ちしたぞ。」
「ゴッドハンドかよ」
寝落ちした子供たちを布団に運び、おやすみタイム。おれの仕事はやりきった。
......まぁ、このお手伝いもあのタコなりの【教育】なんだな。信じられないことに、ホンットに信じられないことに、あの超生物はそこらの教師より、生徒をよく見ているし、道標になっている。
こんな信頼と親しみを抱えて、いざとなったとき【恩師】を殺せるのだろうか?
......きっと、もう戻れないところまできている。
国や政府がどうであれ、あの子供たち――E組生徒――は本気で【暗殺】に取り組んでいる。
彼らが【恩師】に少なからず情を持っていることはたしか......確認するまでもない。
最悪、世界を敵にまわすか。あるいは地球を救った英雄になるか。......どっちに転ぶか。いや、
決断次第で彼らの人生が激変するし、ヘマをしたら凝りが残る。
......なるべく穏便におさめたいのだけれど。どうなることやら。
そう簡単にいかないのが世の運命なんだよな......
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報告書
民間人に接触事故。被害者の防衛省の示談は成立し、表沙汰にはなっていないが、通報した目撃者あり。内々で処理できているか未確認。
生徒は深く反省している様子。