童顔系潜入捜査官 作:くりっぷ
わかばパークの事故の目撃者を調べると、花屋の男だった。色素の薄い髪と印象に残りにくい顔立ち。偶然を装っていたのか、ただの一般人なのか。
クラス総出でビッチさんと烏間さんをコソコソとつけ回してる。......あれはまた何かしら企んでる。
「楽しんでくれた?プロの殺し屋が踊らされて舞い上がる姿みて......」
案の定、余計なお世話だったようで。ビッチさんはキレて帰っていった。
「そこまで俺が鈍くみえるか?非情と思われても仕方ないが、あのまま冷静さを欠き続けるようなら他の暗殺者を雇う。色恋で鈍る刃なら、ここで仕事をする資格はない。それだけのことだ」
烏間さんのその言葉におれは内心同意する。愛憎や憎しみに振り回されることは、この教室に必要ない。
所詮、【殺せんせー】を始末するために派遣された職人が集まってできた関係。平和で愛に包まれた子どもに絆されることはあっても、大人はそう上手くいかない。だから、おれが【中学生】に擬態してこの教室に溶け込むことになった。
純粋にまっすぐ気持ちをぶつけて、拳で語り合って仲直り、となるのは子供の間だけ。
理不尽な社会に埋もれて、しがらみの中で人の顔色を窺いながら生きるのはよくあること。気持ちに蓋をして、自分を騙して生きる。
君たちのような素直な想いで行動できたらいいのにね......
やっぱりそういうところはまだまだ子どもだな......
「女心は秋と空.....うつろいやすいっていうのに。このままご退場......なんてね」
ぼそりと呟く。残された赤い薔薇の花束に引っ掛りを覚えた。
***
ビッチさんは無断欠席が続き、殺せんせーはブラジルまでサッカー観戦に出掛けた。そして花束を持った男は何でもないようにこの教室に入ってきた。
「僕は死神と呼ばれる殺し屋です。今から君たちに授業をしたいと思います」
ビッチさんを捕え、E組を誘き出す。あからさまな罠だ。罠だとわかっていても、この子たちは助けにいく。この状況で【助けにいかない】のはむしろ悪手。冷酷、非道、悪魔と非難されるのは目に見えている。せっかくこのクラスで築いた人間関係をこの程度のことで壊すのは癪だ。
......良かったね、ビッチさん。あんたが罵った『平和ボケた日本』の子供は、助けたいってさ。
あの男――死神――の口ぶりからみるに、E組をずっと監視していた。クラスメイトの名前は頭に入っているだろうし、監禁されたビッチさんの画像は何か仕込まれているだろうし、律にすでに死神が介入されている。ウイルスを仕込んで律を行動不能にして、生徒たちは殺せんせーのための餌にするつもりか......情報戦で律がいないのは戦力不足だな......
こちらの動きが把握されているとみていいだろう。
ビッチさんと死神が手を組んだのか、死神がビッチさんを手引きしたのか......二人がどういう協力関係か不明。女は強かっていうし......
真っ暗闇の中で地図に示された場所へ向かう。真新しい体操着に手を通す。
......殺られっぱなしは性にあわない。子どもを利用したつもりだろうけれど、おれはこれでも【警察官】なのでね。
せいぜいお巡りさんに目をつけられたことを後悔するといい。なに、心配要らない。おれはオヤサシイのだから。