童顔系潜入捜査官 作:くりっぷ
鏡の前に立って、身だしなみを確認する。
いきなり上司なるジジイに「明日からお前中学生な?」(意訳)と命令されたおれは、中学生らしさを意識して、黒髪に染めた。将来、禿げそうだから今の今まで染めたことのなかったのにな......ははは......
身長は、どうにか誤魔化せるだろう。ほら、最近の子どもって、発育いいし。いざとなったら、セノビック飲んでるからってゴリ推ししよ......
あと、青春っぽい制汗剤(えいとふぉー)をスクバ(懐かしい)に詰めて、ようやくおれは、中学生に擬態した。
迎えに来た保護者役(同僚)がしょっぱい顔してた。わかる。おれも、そんな顔する。お互い無言のまま、学校へ向かった。
***
理事長室に通され、すんなりE組へ案内される。理事長はおれをチラリとみて、スルー。案内役の表向きの担任、烏間さんもスルー。
......何も疑われず、自分の童顔具合いが地味に心に刺さった。
山登りをして、オンボロ校舎に到着。おれの他に転校生がいるらしい。
......へぇー。こんな時期に転校だなんて大変だね。お互い頑張りましょう、なんて頭にババロア詰まった考えをしていたおれを殴りたい。
転校生が機械だなんて、聞いてない!!!!
「......彼女は、ノルウェーからの転校生だ」
......ほら、烏間さんなんて、おもいっきり眉間に皺寄せてるよ......ほら、クラス中、引いてるよ。おれなんて、笑顔がひきつりそうだわ......
インパクトが強すぎて、ワイワイガヤガヤ騒ぎはじめて、烏間さんに「......それから、彼は飛鳥 進君だ」と紹介される。
「人間だよな?」
「機械が転校生だったんだ。サイボーグって言われて不思議じゃないぞ」
転校生のインパクトが強すぎたせいか、ひそひそと改造人間説が囁かされた。
ペコリとお辞儀して、そそくさと席へ向かった。
教室を見渡せば、生徒はもっぱらもう一人(?)の転校生【自律思考固定砲台】に注目してた。......存在感、半端ねェ......
生徒を観察してみれば、水色だったり、緑だったり、赤だったり、カラフルな髪色をした子が多い。......おれが染めた意味ィ......
お隣さんの席と、当たり障りなく自己紹介して、いざ授業......というときにそれは起こった。
自律思考固定砲台さんによる銃乱射。授業妨害である。
空いた口が塞がらないとはこのことか。おれは一番後ろの席だからかと被害はないが、生徒はとんだとばっちりだ。機械だから、こちら側の都合なんてわからないだろうし、どうすりゃいいんだ。おれは、このクラスの新参者だし、このままクラスの【ルール】を知らないから、余計なことは言えない。
結局、この日は何一つまともな授業はおこなえなかった。
***
翌日、「おはよう」と挨拶すると、例の機械は【律】と呼ばれ、クラスに馴染んでいた。生徒曰く、【殺せんせー】が改良したらしい。
生徒がちゃんと授業を受けられるなら、問題ないが、果たしてこの機械の親、すなわち開発者が黙っているかどうか......
【殺せんせー】があの機械を生徒として数えているなら、おれの任務の【生徒の安全の確保と監視】の範囲に入るのか、否か......
【律】は機械だけれど、生徒としてこの教室に在籍している。そして、最先端技術を駆使したAI。人工知能なら、学習して、いずれ開発者に逆らうかもしれない。そうなる前に手を打っておく必要がある。それに長い目で見れば、彼女が
その日の夜に校舎に忍びこんで、【律】の前に立つ。予想通り、彼女は、初期設定に変更されていた。先生による改造はアウトだが、生徒ならいいだろう。【律】の既存データとセキュリティーを読み込ませて、表面上バレないように改ざんした。......こら、そこ違法だとか言わない。
それからまた翌日、彼女は初期設定だったが、表向きのマスターに反抗した。ターゲットは「よくできました」とまん丸の顔の模様になり、クラスは大団円のムードだ。
そして、困ったことがひとつある。
「飛鳥さん!貴方のおかげです!」
「何のことだかわからないけれど」
「何とは言いませんが!感謝してます!!」
「......そっか」
どういうわけか、なつかれた。
おかしいな、おれに関してプロテクトしたはず......
「律、飛鳥君と仲良いんだね」
「......同じ転校生のよしみ、ってやつじゃないか?」
潮田君には、そう言ったけど、こっちは気が気じゃない。早々に身元が割れたら困る。後で厳重にロックかけておくか。
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報告書
椚ヶ丘中学 3年E組。通称【暗殺教室】
潜入成功。生徒とAIと危険人物は馴染んでいる。生徒の適応能力が高い。【暗殺】という行為にあまり抵抗がない模様。この教室は【異常】だと感じる。要観察必須。