童顔系潜入捜査官   作:くりっぷ

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「モバイル端末とはいえ、律が乗っ取られたときはヒヤリとしましたが......あぁ、その辺りは心配無用です。爆薬、毒薬、ドローン......多種多様のスキルを持った生徒がいますからぼくのハッキングごとき、おかしくありませんよ。【律に教えてもらった】と証言しましたから。何も嘘ではありませんし」

 

 

ポットでお湯を沸かし、持ち手がパンダのマグカップを用意する。事後報告になったとはいえ、わざわざ優雅にティータイムしながら電話だなんて、暇か?と尋ねたくなる。某警部のように高い位置から注げば、手にほわんと熱がつたわる。

 

 

 

「あの超生物が防衛省に【暗殺によって生徒を巻き添えにすれば賞金は支払われないものとする】と条件を追加しましてね......抑止になりますし、生徒の命の安全という点では我々に好転ですよ」

 

 

耳と肩の間に携帯を挟み、スクバを準備する。今日は文化祭準備のため、学校に登校しなければならない。すっかりおれも学生生活が板についたものだ。

 

 

 

「既に各国共同で最終暗殺計画の準備......最近の椚ヶ丘周辺の都市開発はその計画の一端でしたか.....了解しました......」

 

 

ピッと通話を切り、履歴を削除する。通話相手は非通知だが、みてわかる証拠は消しておくに限る。

 

 

――――ピンポーン

 

 

呼び鈴がなる。インターフォンを覗くと、見覚えのある男が映っていた。

 

 

 

「......なんでここにアイツがいる?」

 

 

 

 

***

 

 

目の前のチャラ男は軽装であるが、職務中らしい。対するおれは、グレーのブレザーにスクバ、今ではすっかり着なれた中学生スタイル。

 

「............」

「............」

 

 

お互い言いたいことはいろいろある。視線ををあちこちへさ迷わせると、見覚えある集団が目に入る。背中に警視庁とプリントされた作業着に身を包んでいる。この目の前の男の所属から察するに彼らはおそらく爆発物処理班だ。ということは、ここに爆弾が仕掛けられているというわけだ。呑気にティータイムしている場合じゃない。

 

「わかりました。避難しますね」

「えっ!いや、その、爆弾ならさっき解除したところだ―――」

 

 

飛鳥君ーーー!大丈夫ですかァァア!!

 

見慣れた黄色い触手が飛んできた。チャラ男は「は!?」と絶賛混乱中。おれは棒立ちになってる。何故なら、触手がへばりついているから。

 

 

「ニュースをつけたら、飛鳥君の住んでるマンションに爆弾が仕掛けられているときいて!!マッハで駆けつけてきました!!」

 

 

「え?だから、爆弾なら大丈夫だって......てか、宇宙人!?はじめてみた、すげー」

 

 

途端にカチカチと音がなる。音の方向をみると、爆弾のタイマーが作動していた。チャラ男とおれはマンションの廊下の端に追いやられ、何かの膜が毛布のように被せられた。

 

 

「え?俺、死んだんじゃ―――」

 

 

「安心してください。私が解除しました。遠隔操作のタイプだったようですねぇ。それより、貴方、どうして防護服を着ていないのですか?警察官としての自覚が―――」

「......スミマセン」

 

 

そして説教が始まった。ガシャンと床に落ちたおれの携帯にはヒビが入っていた。にゅっとおれの手元から携帯をとり、高速で作業し始める。

 

 

「カバーにヒビが入ってみたので直しました。手触り、防水加工、その他諸々。殺せんせー印のマスコットをつけてアクセントで、こだわりはこの――――」

 

返されたおれの携帯は可愛らしいピンクのカバーがつけられ、黄色い殺せんせーのキーホルダーがぶら下がっていた。ストンとおれの表情が抜け落ちる。こ、この年齢で、成人済み男性、職業:警察官でピンク............

 

恐る恐るおれと殺せんせーを見比べ、おいてけぼりになっている同期に、ハッと殺せんせーが向き直る。

 

 

「はじめまして。殺せんせーと言います。地球生まれ地球育ちです。宇宙人ではありません。......あの!くれぐれもこのことはご内密に!お願いします!!」

 

見事に綺麗なDO・GE・ZAを決めた殺せんせーは床に大きな頭をすりつけている。

 

 

 

「そっか~、いいよー。どうせ誰も殺せんせー?がやったって分かんないだろうし」

 

 

あっさり承諾し、超生物をものともせず受け入れている同期に口がふさがらない。......お前、もっと言うことあるだろうが!何でそんなお気楽思考なんだ!?その緩さ、何とかしろ!

 

 

 

***

 

 

じろじろとした視線に穴があきそうだ。疑惑の目を向けられている。

 

「そういえば、少年。俺の知り合いに似てるね。年齢と髪色以外ソックリだよ」

 

似てるも何も本人です。髪は染めました。

 

「......あぁ、たまにいるんですよね。絡まれることがあって。身に覚えがなくて困ってるんですよ」

 

ホント、このカオスをどう切り抜けよう......しゅんとしおらしくいう。......説明するのも国家機密だから言えないし、他人でいくか。

 

 

「まじ!?アイツ何やってんの!?うわー、うわー......少年もアイツの被害者か。顔が似てるばかりにカモで目をつけられたんだな......アイツならやりそう。ありえるわー。だから最近、連絡ないのか。どっかに高飛びしてんのか?

何かあったら、いいなよ?俺、これでも警察官だから」

 

 

チョロすぎだろ。

 

途端に同情的に態度を改める露骨な手のひら返しに、あっぱれ。と言いたくなる。

 

ご本人目の前にして、酷い言い草だな。やらかした前科はありすぎるけれど、おれ!いま!ちゃんと仕事してるから!!

 

 

 

=============

 

報告書

 

爆弾事件に巻き込まれました。引っ越しの手配をお願いします。米花が格安物件だからってあんまりです。任務に支障をきたします。

 

 

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