童顔系潜入捜査官 作:くりっぷ
side 潮田 渚
殺せんせーを殺したくない......
はじめはこわかった......失敗もしたし、まちがえたこともあった。でも、楽しかった思い出もいっぱいあって......
「僕らが殺すことなんてしなくていい。優しくて温かい世界に【殺し】なんていらない」
そう言った飛鳥君は迷わずに青い箱から装備を受け取った。
自分と同じ【殺さない派】に飛鳥君がいて、正直、ホッとした。彼は僕らからそっと離れていることが多く、元々暗殺に積極的ではなかった。勉強面はあまり目立たない彼だけど、やる気になった飛鳥君はとんでもなく厄介なことはわかる。ミステリアスで穏和な彼は、正直何を考えているのか底知れない。
サバゲーで決着をつけようと始まったが、もうほとんどの人がドロップしている。
「渚君、飛鳥君出てきなよ」
カルマ君が堂々と僕と飛鳥君を呼んだ。僕が出てこようか迷ってるうちに、先に飛鳥君がカルマ君の前に出てきた。
「これは赤羽君と潮田君の決着で決めるべきだよ、きっと後悔する」
「......ふぅん。やっぱり、飛鳥は戦わないか」
「そだね。離脱するよ」
あっさりと降伏宣言した飛鳥君は、潔すぎて唖然となる。ちょっと裏切られたような気持ちになったけれど、飛鳥君は「元はといえば君たちのケンカだったでしょ」とすっかり殺せんせーの隣を陣取り、観客になっている。
確かに僕とカルマ君が殴り合いのケンカになって、クラスを巻き込んだサバゲーまで発展した。だから、そこをつかれるとぐぅも出せない。
口ぶりをみるにカルマ君は飛鳥君がそういう行動をとると予想してたみたいだ。
決着がついて、和解をした
「飛鳥は事勿れ主義なとこあるからねー......このサバゲーもアイツにとって些細なことなんだよ。飛鳥って、
教室で飛鳥君は相変わらず本を手に取っている。タイトルは【謎生物の飼育方法】だ。帯には【ウーパールーパーの再来か!?マニア飼い主は読むべし!】......僕は時々、飛鳥君の本のチョイスがわからないときがある。
......ああいうときの飛鳥君には近づかないに限る。これは僕たちE組の暗黙の了解だ。アイコンタクトを交わし、飛鳥君から距離をとって、どうやって殺せんせーを救うのか、話し合った。
そこに、殺せんせーが近寄って飛鳥君を説得し始めた。それをみた皆はギョッとして、論点は殺せんせーを飛鳥君から救うに入れ替わった。
「誰か止めにいけよ」
「お前がいけよ、岡島」
「バッカ!触らぬ飛鳥に祟りなしだ。俺の
「......あぁ。ゴミ箱にホールインワンしてたな。竹林の爆薬といっしょに」
「本人は『汚ねェ花火だな』って、普段の温和な性格から想像できないくらいえげつなかった......」
「アレ絶対闇落ちしてたわ......」
「......仕方ねェ、狭間。あのタコ止めろ」
「はぁ!?寺坂何言ってんだ!!やっぱりバカだろ!知ってたけど!」
「当たり前じゃん。......狭間さんと飛鳥を組合わせるなんてさ......【混ぜるな危険】って忘れたの?」
「テメェ、カルマ!お前も人のこと言えねェからな!」
......カオスが出来上がった。
「......なに?」
「生徒のためを想って、力を貸してくださいよ」
「そっか......その気持ちは尊重したいけど、ぼくにも色々立場があるんだよね」
「そこをなんとか!!お願いします!!責任は烏間先生が持ちますから!!」
「もう一声」
「先生も責任持ちますから!!」
「はじめからそう言えばいいんだよ......いいよ。取引成立だね」
僕らがギャイギャイ騒いでいる間に二人はコソコソ言い合い、史上稀にみるいい笑顔をした飛鳥君はパソコンを持ち出した。殺せんせーは疲れた顔して「......悪魔の手を取った気分です」と不貞腐れていた。......変なタイトルの本を読んでるときの飛鳥君は、ちょっと闇があるから......もう皆、慣れてきたけれど......
そして、律と飛鳥君の調査によりISSで反物質に関する研究が行われていることを知った。そのデータを知るために、僕とカルマでロケットにダミーの人形にすり替わる形で乗り、ISSに潜入し、データの入手に成功した。帰還後に解析を行った結果、殺せんせーが地球ごと爆発する可能性は1%以下と判明して、僕らは一安心した。
ただ、地球に戻ってきたとき、飛鳥君は浮かない表情をしてた。
「大丈夫?」
「いや、それより潮田君こそ。さっきまで宇宙にいたんだろ?」
「僕は平気だよ......飛鳥君浮かない顔してたから」
「......そうか?......ロケットをジャックしたなんて、親にバレたらなんて言い訳しようかな~って......」
「そのときは僕もいっしょに謝るよ......僕が殺せんせーを救いたいなんて言ったから......」
「いや、潮田君のその気持ちは大事に持ってて。ここまでやったんだし、ぼくも腹くくるから」
飛鳥君は僕を安心させるようにニッコリ笑った。「ほら、皆が呼んでるよ」と皆がいる方へ促され、僕は駆け寄った。だから、飛鳥君のぼそりと呟いた声は聞こえなかった。
「ヤベー......ジジイになんて報告しよう......」