童顔系潜入捜査官   作:くりっぷ

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まさかロケットに乗ってデータを盗むと言い出すとは......それを実行しようとするのをクラスの誰も止めないなんてな......止めなかったおれも同罪だけど......おれも大概毒されてきたな。

 

烏間さんはといえば、青筋をピキピキと浮かばせていた。...デスヨネー。

 

そんなわけで案の定、おれはジジイによびだされた。

 

「表向き【殺せんせーが生徒を脅した】となっていますし、それに関しては烏間さんが謝罪回りにいってます。......今、彼らを敵に回すことは得策ではありません」

 

重苦しくズンと威圧の籠った眼差しに自然と早口になる。額縁には達筆な文字で『勇往邁進』と書かれている。

 

 

「君のことだから、何か企みがあってそうしたんだな......省庁は大荒れだぞ」

 

「でしょうね。......ひどいしっぺ返しされるんじゃないですか?あることないこと、ね」

 

澄ました顔でそう言うと、ジジイは「例の生徒たちはどうなっている?」と顎で促してくる。

 

 

 

「彼らは【殺せんせーを救いたい】と結論付けたんです。......実は最終暗殺計画があるってガラスのハートの10代のいたいけで先生思いの心優しい子供たちに言ったら可哀想ですし。だったら、はやく本業の勉学や受験に専念させるために()()する方が早いと判断した次第です。」

 

()()()()か。まさか怪物(モンスター)を恩師と慕っているとはな。少々危ういな...」

 

その言い草にピクリと肩眉が上がる。まずい。口が滑りすぎたか。ぎゅっと拳を力ませていると窓際に近づいたジジイは外の高層ビルへ視線を移し、低い声をあげた。

 

「ここから先は各国と防衛省の独壇場だ。当然、警察(われわれ)が動けないように足止めされるだろうな......【飛鳥】......リミットは3月13日だ。任務を遂行しろ」

 

 

ガチャンと、重厚な扉を閉めた。フゥと息を吐く。

 

おれがあの教室に居られるのも、残り僅か......

 

 

 

 

 

***

 

 

 

受験シーズンもピークをすぎ、ひとまず全員の進学先が確定した。あのタコは写真のタワーをつくり、【卒業アルバム】を作るといい始めた。

 

写真......卒業アルバム......

 

 

それは【飛鳥 進】がいた証を残すこと。これからもしもまた【飛鳥 進】になるのだとしたら、経歴が何も見えてこない人間は怪しい。【飛鳥 進】のカバーにこれともない機会だ。

 

そもそも【飛鳥】とおれは年齢も経歴も異なる。同一人物だと追求されても、【飛鳥 進】の辿った人生――例えば卒業アルバムや中学時代の知り合い――を示せば、顔が似てるだけのそっくりさん。別人だと言い逃れできる。

 

【飛鳥 進】になるとしても、椚ヶ丘から離れたところ......そう簡単に知り合いに会わない。

 

 

 

―――カシャカシャ

 

 

ぐるぐる思考に浸っていると、殺せんせーがおれの携帯でクラス写真を撮っていた。......桃色のカバー(殺せんせーマスコット付)のアレだ......

 

な に や っ て ん だ !!

 

 

 

「......そういうのは心のメモリーに仕舞っておくから」

 

さっと携帯を抜きとり、じとりと殺せんせーを睨んだ。ふざけた写真だったり、ご丁寧にこれまでの沖縄旅行や文化祭のデータまで送信されていた。マッハの無駄遣いばかりまったく困ったお人である。ポチポチと携帯の画面を操作する手にぷにっとした黄色い触手が添えられた。

 

 

 

「君は、自分の身辺を悟らせない。現に君の携帯の履歴や写真はひとつもない。......それは周囲の人間に危険が及ばないようにするため......だから、君は教科書も制服も、卒業アルバムも、もしかしたら思い出もすべて処分するつもりじゃないですか?」

 

そう。このヒトが言う通り、おれには何も足枷がなく、おれ自身もつくるつもりがない。律やクラスグループの連絡先は今のところ手元にあるが、いずれは消えてしまうだろう。こんなことは職業柄、致し方ないとわりきっている。やんわり触手を払いのけて、反論する。

 

「そこまで知っているなら―――」

 

知っているからです。何も残ってないなんてまるで死に急いでいるようで、とても危なっかしい。この写真だけでも手元に残してくれませんか?君自身が唯一離さないE組との繋がりとして......そして君が守りたい世界の象徴として......」

 

 

 

 

 

  消去しますか  

▼はい

      いいえ    

 

 

 

―――結局、おれはボタンを押せなかった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

3月6日

 

超生物の最終暗殺計画が発動。日本政府は殺せんせーを危険生物と公表し、それを大々的にマスコミは報じる。

 

 

【これは我々に害を為す特定危険生物を閉じ込めるためのものです】

 

学校関係者のコメントがまたそれに拍車をかける。独特の甲高い機械音で取材を受け、証言する。

 

「E組の子どもたちは危険生物に脅され、人質にされていた」と。

 

ワイドショーでは特集が組まれ、何処かの大学の名誉教授やUMA専門家というような事情通が持論を展開する。

 

「こんなこと前代未聞ですよ!教育者としてあり得ませんね。1年間も生徒は人質にされていたのですよ!政府黙認で」

「そもそもこのような事態が起こるなんて誰もわかりませんよ。聞けば、この生物はアメリカの研究所から流れ着いたのでしょう?こういうときのための憲法改正や法整備が必要であると思いますけどねェ」

「月が爆発したってことはこの生物は宇宙空間を移動できるなにかしらの能力がある。さすがにあの米花でも月まで爆発させた犯人はいませんね」

 

また、ネット上ではワイドショーのコメンテーターの動画がアップされ、それらにネット民が書き込み、日本全国へ殺せんせーの情報が駆け巡った。

 

月爆発の犯人ってマ?

月が爆発しようが、地球が爆発しようが、どうでもいい目の前のカップル爆発しちまえ

米花民のワイに爆発といわれたところでwww

この生物こそが1年前月を崩壊させた元凶

 

 

 

椚ヶ丘では、学校は自主休講。学校前には新聞、テレビ、週刊誌などのマスコミが群がり、授業どころではなくなった。警察は住民の避難誘導のために自衛隊とともに駆り出されている。

 

「周辺の住民はただちに避難を!」

「われわれの避難誘導に従って焦らず、落ち着いて従っていただきますように何卒ご協力を」

「F地区、住民の避難を完了しました」

 

 

 

......ほらみろ。ひどいしっぺ返しだ。

 

 

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