童顔系潜入捜査官   作:くりっぷ

30 / 45
30

【おれ氏】潜入した組織で幼馴染と再会した件について【気づかれなかったwww】

 

どっかのスレのタイトル風に現状説明してみた。まさかこんなところで巡り会うとは......

 

 

しかも不思議電波系【みりん】になりきってたから、黒歴史量産してしまった。組織の中でおれがコスプレ紛いの格好をして徘徊しているのはわりと通常運転だ。遠巻きにみられ、絡まれることが減ったけれど、何かごっそり心が削られた気がする。

 

 

気合い十分に威圧感のある音楽を垂れ流しにして、新幹部との初対面を演出した。

 

 

扉を空けると、警察学校卒業以来の幼馴染その1とその2、と目付きの悪い黒髪ロン毛がいた。

 

 

動揺してしまい、声を発したが、「......シュコー......シュコー......」という呼吸音が出てくるだけ。スコッチは若干引き気味に見てたし、ライに至っては「......crazy Japan」と呟いていた。ライは外国育ちなのか。

 

 

それにしても、バーボンはグイグイおれに質問をぶつけてくる。お前のメンタルどうなってんの?鋼かよ。ヒェ......おれだよ、おれ!と名乗り出せないのがつらい......

 

 

ジンが難癖つけてきて、うっかりアジト壊したけれど、組織の拠点がひとつなくなったことで結果オーライ。前向きに考えないとやってけない。

 

 

 

***

 

 

 

――――そのまま組織の人間として振る舞え

 

 

新しく潜入捜査官が派遣されたこと。それをジジイとおれを繋ぐ連絡員に報告すると、そんな指示が返ってきた。「何故ですか」と軽々しく聞けない......いや、聞いてはいけない雰囲気だった。

 

踏み込みすぎたら()()()()......

 

なんとなく社会の荒波に揉まれた経験と直感から、「......了解」と短く答えた。

 

 

そんなジジイの指示とアイツらの反応の面白さから、ほどほどに【みりん】らしく遊ぶことにした。

 

 

 

 

 

アジトで好き勝手して遊んで、それなりに真っ黒い仕事をすることも多くなった。足元にはカラフルなクレヨンとスケッチブックが乱雑に散らばっている。

 

「どうしてターゲットが写真じゃなくてイラストなんだ?」

 

スコッチの手にはこれから組織の仕事で始末する男の似顔絵があった。おれが描いた渾身の力作である。

 

写真ってデータに残りやすいんだけど、単なる紙ならライターで燃やすだけで処分が楽なんだよな......

 

 

「写真だったら、数時間後に遺影になるけどいいの?」

 

 

スコッチの心労も考えたら、可愛らしくデフォルメされた絵の方が負担も少ないだろう。

 

「......みりんって自由人というか、変なところで気遣い発揮するよな......」

 

 

スコッチは困惑した顔で呟いていた。

 

 

 

***

 

 

 

バーボンは送迎係りで接触する機会があった。別人のようにペチャクチャとよく口が回り、下手すると【おれ】だと気づかれそうでおっかない。

 

 

ちらりと横顔をみれば、真っ直ぐハンドルを握っていて、こちら側に似合わないと思った。何でここにいるんだ、お前大丈夫なのか......

 

だけど哀しいかな。みつめあうと素直にお喋りできない立場なのである。

 

 

 

その点、ライは悪人面すぎる。なんだあのクマ。クスリやってんのかなアイツ。長髪だし、ジンみたいなワケわからん言い回しが多い。誰か翻訳してくれ。ライフルの射程距離やべーし、早々に組織から出ていってもらいたい幹部だ。ライには組織離脱を誘導しようと目論んでいるが、あいつは結構しぶとかった。さながら黒光りのGくらいの生命力があった。

 

 

【みりん】はteenager設定なので、10代っぽく流行りの音楽をリサーチし、音楽プレーヤーを持ち歩いている。片手でスピーカーモードにする。

 

ピクリとバーボンの眉がつり上がった。

 

 

「その気の抜ける帝国のマーチはやめてください」

 

 

「バーボンの運転荒々しいし、ゆったりした曲がいいじゃん」

 

おれなりに心安らぐBGMを提供したらこのザマである。ボタンを操作し、曲を変える。

 

 

《バー バー バー バーバーナナ

バー バー バー バーバーナナ

バーナーナーアーアー

ポーテートーナーアーアー......》

 

 

「風の噂で、バーボンはゴリラだって聞いたんだ~」

 

風の噂というか、警察学校のときから同期みんなの共通認識である。拳で語り合う能筋な一面がある。語り継がれる武勇伝は数知れず......

 

 

「ちょっと待ってください。誰から聞いたんですかそれ。デマですよ」

 

 

かなり食い気味に詰問された。パッと思い付いた名前は長髪グリーンアイ。

 

「ライ」

 

「......ころす」

 

 

すまぬライ。君の犠牲でバーボンの精神は保たれているのだ。罪悪感をライへの怒りへシフトチェンジしたこいつの顔はさっきよりマシになった。

 

 

 

 

***

 

 

 

これも【必要悪】ってやつだ。悪には悪の裁きだと、この数年アンダーグラウンド界隈を駆け回って、どんなに悪人であっても、正義の刃が届かない、若しくは真っ白い正義感だけでは裁けないことを痛感した。

 

 

権力とか、金とか、クスリとか、女とか......あらゆる欲望が渦巻いて、表と裏のパワーバランスはなんとか保たれ......

 

 

 

 

おれの中であっという間に崩れ去った。

 

 

 

==============

 

to:M

 

スコッチはNOCだ。

見つけ次第始末しろ。

 

==============

 

 

今しがた送られた組織からのメールにピシャリと背中に悪寒が走った。そしてほぼ同時に新たにメールを受信した。目の前でじわりと黒い斑点が広がる。

 

 

ぎゅっと御守り代りのピンクの携帯を反対の手で握る。

 

 

嘘だろ......携帯を持つ手が震えた。

 

 

==============

 

to:M

 

舞台は整えた。

お前はその土産をもって

上へ のしあがれ。

 

 

==============

 

 

 

 

 

送信者はおれの連絡員だった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。