童顔系潜入捜査官 作:くりっぷ
ジジイに事のあらましを伝え、緊急対応することになった。
スコッチ改め景光はおれとジジイを繋ぐ連絡員になること。前任者がクズだったから、信頼できる人物がいいと話し合った結果、そうなった。
情報がどこから洩れるかわからないため、表向き【おれ】は潜入した組織で【みりん】に殺されたとデータ上で書き換えた。景光も同様に【みりん】に殺されたことになっている。
前任者は降谷が連れ帰って、【みりんが諸伏を始末した】と証言したのを確認してジジイに真相(諸伏やおれの生存)は揉み消された。前任者はお縄付き、監獄ライフを送っているらしい。
―――このままお前は【切り札】としてそのまま身を潜めていろ。お前が潜っていることを一部の人間しか知らなかったのが幸いだった。
......なるほど。バーボンがおれに刺々しい態度なのはそういうわけか。おれは超極秘扱いでトップシークレット。だから、
でもライに対しても刺々しいけどな。なんか景光を追うときに揉めたらしい。おれもびっくりドッキリバズーカ砲がなかったらマジで命の危機だった。
***
【みりん】は景光の協力者としておさまっている。元とは言えおれの連絡員の裏切りのせいで命の危険に見舞われただなんて言い出せなかった。あわせる顔がない......いろんな意味で。
「......ッ!......どういうつもりだ!?俺を生かしたところで、口を割るなんて毛頭ないッ!!」
景光が目覚めたら、警戒心がMAXでお話し合いどころじゃなかった。携帯の【ドッキリ大成功~!】という画面を表示させ、ネタバラシの音楽を流す空気じゃなかった。......折角、用意したのにな......というわけでプランB【人質をとって協力を取り付ける】に変更だ。
「警視庁公安部 諸伏 景光。ボクに協力しろ」
「......何が目的だ?」
「ボクはスコッチを匿う。......条件次第でバーボンもおまけだ」
「......ッ!なんで、バーボンまで」
「ボクたちトモダチじゃんか」
ポロリと景光の瞳から雫が落ちた。そのまま涙腺が決壊して、ボロボロと泣き崩れた。......その日は景光が落ち着くまで傍にいた。おれは景光のカウンセリングのためにアドバイスブックを読み直すことにした。
***
「......なぁ、バーボンはどんな様子だ?」
「白のスポーツカーに乗って爆走してた。酔いそう......はい、これ。ヨロシク」
「あぁ......水、いるか?」
天然水とUSBを物々交換した。やっぱり景光は良心ポジションだな......レイ・フルヤは嫌がらせとばかりに無茶苦茶な運転をする。ハリウッド映画かよ。
***
ある日、景光の元へ情報を渡しに行くと、塞ぎ混んでいた。......あれ?メンタルチェックするべき?
「......幼馴染が死んだって聞いて......」
「......」
え?嘘だろ。犯人は【みりん】ってなってるんだけど。どういうことだ!?
「......事故で亡くなったって......ただ死んだって伝えられたんだ......」
「......」
たしかに事故案件だな......不思議電波系少年になって、組織に馴染みすぎてキャラ路線を変更できず、今に至る。地雷埋まりすぎて
「俺......全然連絡取ってなくて......ぐすっ......」
「......」
ますます【おれ】だと言い出せなくなった。
***
「またゲームしてんのか?」
「......これだから頭の堅いオジさんは......」
「......オジさん......そうだよな。みりんからみたら俺なんてオジさんだよな」
【みりん】は引きこもり少年で、若者らしく流行に敏感。平日の昼間はラノベを読むか、SNSを巡回するか、ゲームするか......ほとんど外に出ない。年中ハロウィンコーデはアラサー手前のおれにはきつい。おかげで景光のカウンセリングチェックと友好関係をつくる時間がとれたけど。
***
いつのまにかライはFBIだと組織で出回って「まじか」と5度見した。採用基準とは......?バーボンが修羅の如く追っかけてたけど、あれは「何やってんだFBI!僕の日本で違法捜査しやがって!」みたいな心情だと思う。
「ライがFBIだって~」
「......えっ」
「ライがFBIだって~......ジンが激オコだからしばらく引きこもろ」
「......まじか......ライがFBI......」
景光もライショックを受けて、しばらく二人して放心した。
***
顔が隠れていてよかった。仮面を被っていてよかった。
沖縄リゾートで出会った暗殺者の言葉が重くのしかかかる。
「オトモダチが必死こいて駆けずり回ってるのに、お前は平気な顔をして、すべてを知った上で計算して動いている。あの教師もバケモノ染みていたが、お前の腹の真っ黒さには敵わないだろうよ......」
おれはかつてスモッグにそう評された随分なロクデナシになった。