童顔系潜入捜査官   作:くりっぷ

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side スコッチ

 

 

 

悪い、降谷......

 

奴らに俺が公安だとバレた......

 

逃げ場はもうあの世しかないようだ......

 

 

 

 

じゃあな、(ゼロ)......

 

 

 

 

 

 

 

追手を巻き、逃げた先は廃ビルの屋上だった。呼吸を調え、バクバクと震える心臓を落ち着かせる。後はこの携帯を処分して俺の身元がわからないようにしなければ......

 

 

 

―――グオンッ

 

 

エンジン音がだんだん大きく響く。この辺りは走り屋の縄張りだったのか?......このままやり過ごすか、一般人に見られたらマズイ。

 

 

 

――――バキッ

 

 

瞬間、廃ビルの屋上の扉を破って、黒い影が俺の目の前を横切った。

 

 

 

――――キキ~ッ!

 

 

大きくバウンドした黒い影は、まるでアクション映画のように着地を決めた。

 

 

――――プシュ~......

 

 

黒い影は俺に何かを吹き掛け、俺の意識は遠退いていった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

次に目が覚めると、【みりん】が俺を見下ろしていた。ハッとなって体を起こし、彼の挙動を見逃さないように睨む。

 

 

「......ッ!......どういうつもりだ!?俺を生かしたところで、口を割るなんて毛頭ないッ!!」

 

 

 

【みりん】はいつもの変な被り物をしていてまったくその表情が読めない。組織でも【暴走すると手がつけられない】と恐れられている少年。片手で携帯を弄ってじっと俺をみている。

 

 

【みりん】はまだ幼さの残る声で俺に告げた。

 

 

「警視庁公安部 諸伏 景光。ボクに協力しろ」

 

 

俺の本名と所属まで知られている!?

 

「......何が目的だ?」

 

 

「ボクはスコッチを匿う。......条件次第でバーボンもおまけだ」

 

 

クソッ!......零のことも知っているのか!?

 

 

「......ッ!なんで、バーボンまで」

 

 

零を死なせるわけにはいかない。【みりん】は怒鳴る俺をただじっとみていた。

 

 

「ボクたちトモダチじゃんか」

 

 

当たり前のように【みりん】は言った。その言葉に嘘の気配はない。不思議そうに俺をみていた。理由はハッキリとしないが、ただその言葉は俺をひどく安心させ、涙腺がゆるみ、緊張感の解放から年甲斐もなく泣いた。

 

 

 

***

 

 

 

「......【To say Good bye is to die a little】」

 

ぽつりとみりんが呟き、俺は手を止めた。

 

 

「死が永遠の別れなら、さよならはひとときの別れ......さよならを言うことは相手の人生から少しのあいだ消える......つまり少しのあいだ死ぬんだ」

 

 

ボソボソと言葉を選んでいるようだった。それはまるで俺を慰めようとしているようにみえた。

 

 

「......だから、また会えるよ。きっと」

 

 

小さな声だが、しっかりと噛み締めるように【みりん】は告げた。

 

 

「......やっぱりお前、良いヤツだな」

 

「スコッチほどじゃないけど」

 

ぷいっと横を向いて、みりんはゲームを始めた。そのあと機嫌を損ねたみりんにオジさん扱いされてちょっとへこんだ。......この年頃は距離感がむずかしい。

 

 

 

***

 

 

【みりん】は俺の協力者となって、話す機会が増えた。俺は【みりん】から送られた情報を上層部へ届ける。表向き俺は死んだ扱いになっているため、知りあいとの接触は禁止されている。

 

 

隠れ家のようなBARで落ち合う。貫禄のある髭の蓄えた老人から突然の訃報を告げられた。

 

 

もう一人の幼馴染の死だった。

 

 

 

「......死んだよ......事故だったそうだ」

 

 

頭が真っ白になった。

 

To say Good bye is to die a little

 

みりんが教えてくれた小説の一説が脳裏に浮かんだ。

 

俺はアイツに別れを言ってない。俺の携帯の履歴の下の方にアイツからの着信があったことを示していた。......あのときは危険に巻き込まないように連絡を一切遮断していた。

 

もしも俺があのとき電話に出ていたら、アイツは............

 

 

その日はどう過ごしたか覚えてない。

 

 

***

 

 

 

それから【みりん】が俺の元へ足を運ぶ機会が増えた。みりんと会うたびに何かの既視感を感じる。懐かしい、とも感じる。

 

アイツが死んだと聞いたからだろうか......よりにもよって、死者と重ねるなんて、不謹慎 極まりない。

 

 

そっとみりんから目を反らし、右を向いて二、三度瞬きをした。

 

 

 

***

 

 

みりんが奇想天外な行動をするのは今に始まったことではない。ライがFBIだとバレたとき、みりんは自身の携帯をずっと弄っていた。

 

驚いたことにみりんはSNSのアカウントをつくっているらしい。仮にも組織の幹部だが、こういうところは今どきの現代っ子だ。

 

 

アカウント名は【みりん】だった。......もっと何かあるだろう!!本名か知らないが、彼の通り名を知っているものからしたら白目を剥く。バーボンが眉を吊り上げているのが目に浮かぶ......思えば、組織時代から、俺とバーボンとライはみりんに振り回される筆頭だった。

 

だから、みりんは愉快犯のごとくちょうど良いネタを拾ったとばかりに標的をライにしたのだろう。

 

青い鳥のSNSで早速何か書き込んだらしい。

 

【知りあいのバンドのメンバー、ワカメがアメリカへ行くみたいなんで見かけたら お見送りしてみて~

#拡散希望

#音楽留学

#ウスターソーストリオ】

 

ライの顔写真の添付付きで。

 

 

みりんが書き込むと続々と反応が集まる。

 

【目があっちゃったw 空港なう】

【たしかエアバンドだったけ。#ウスターソーストリオ】

【ビジュアル解禁したんだ~】

【今、銀髪のビジュアル系風の方といましたよ!】

【うわ、ドリフトすげー!何かの撮影ですか??】

 

 

......ライ、達者でな......

 

「うわ......白のマツダってこれバーボンのことじゃん」

 

 

みりんは呑気にネットの反応をみている。

 

 

......ゼロ、ほどほどにしろよ......

 

 

 

***

 

 

 

 

 

後に俺は後悔する。悔やんでも悔やんでも、悔やみきれない。

 

 

 

どうして俺たちに何も告げなかったのか。一人で秘密を抱え込んでいたのか。

 

 

 

 

そんな俺の叫びを訴える相手はもういない。

 

 

 

結局のところ、俺はアイツの一番近くにいたのに、気付く機会はあったのに、俺は何も出来なかったのだから......

 

 

 

 

 

 

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