童顔系潜入捜査官   作:くりっぷ

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本日、【転校生暗殺者】がこの3年E組にやって来るらしい。朝のホームルームでそう言われた。

 

ターゲットの【殺せんせー】はビビりまくって、天井にしがみついている。生徒たちは、【転校生暗殺者】に興味深々で自然と律に全員の視線がいく。

 

律が言うには、本来この【転校生暗殺者】と律が同時に来るはずが、調整と互いの能力差のため、流れたらしい。......なるほど。その空いた一枠がおれの潜入へあてられたのか。なんとなく裏の事情を察した。

 

 

「そういえば、ずっと気になってたんだけど、飛鳥君も転校生暗殺者なの?」

 

 

クラス中の視線がおれに集まる。......今まで、とくに誰にも聞かれなかったけれど、おれってそういう疑惑があったのか。

 

......そうだよな。よくよく考えてみれば、中途半端な時期の転校だし、このクラスは【暗殺教室】だし、ありえる可能性だな。

 

 

「やだなァ~。僕が暗殺者だなんて、そんなつまらない冗談よしてよ」

 

 

今日もニコニコ飛鳥君スマイルで答える。そう答えると、「だよなぁ」「飛鳥君、おれたちと変わんないし」「飛鳥ってば、優しさの極み、みたいなやつだし」と、口々に言い、話はまた例の【転校生暗殺者】に戻った。

 

 

でも、不破さんの「少年漫画なら、衝撃の展開のキーマン的なキャラ位置なのに残念」っていう感想に内心ギクッとなった。......妙に鋭いところあるんだよな、この子たち。目立たないように気を付けよ......

 

 

 

***

 

 

そして、やって来た転校生【イトナ】君。大胆に壁を突き破って来ました。保護者同伴での登校だ。

 

保護者は教室の入り口で、マジックを披露し、全体を一瞥したかと思うと、じっと潮田君と茅野さんをみていた。......彼らに何かあるのか?

 

 

それにしても、兄弟って......たしかに衝撃の展開になったけれども......

 

 

一応、接触を試みるために昼休憩におにぎりをお裾分けした。お菓子ばかりじゃ、栄養が偏るし、あの保護者はマトモな食事与えてなさそうだし......

 

 

それから、【シロ】とかいう全身白装飾の怪しさ全開の不審者とか、【イトナ】君が【殺せんせー】と同じ触手を持っているとか、教室で二人が暴れまわってただでさえボロいのに一部損壊したとか......

 

 

 

もう情報過多でパンクしそう。

 

 

 

おれは、様子見に徹する。【殺せんせー】は生徒に危害を加えないが、【イトナ】君はわからない。聞けば、触手は精神状態に左右されるらしい。おれの判断は、生身の人間が下手に手を出せない。むしろ、出さない方がいい。おれ自身、触手が何なのか把握できていない。クラスで 事情通の潮田君も知らないみたいだし......正直、これ警察がタッチしていい領域なのか?

 

 

まず、【イトナ】君は人間なのか。人工的につくられたモノなのか。あの触手の能力は潜在的なものか、後天的なものか。

 

 

【殺せんせー】の「自分は人工的につくられた生物」という証言が本当ならば、それを造った研究施設があるということだ。その場合、人攫いか誘拐か人身売買か、どのルートかわからないが、何らかの形で人体実験をして、その結果、【殺せんせー】が産まれたことになる。

 

あの危険人物はペラペラ言語を理解するし、教師をするくらいだから知能もある。そして一応、生徒たちへの対応から道徳心もあると想像できる。......月爆発させたテロリストだがな......

 

 

もしも、【イトナ】君がその実験体で成功例だったら、彼はこの先、ずっとその対象になり、【殺せんせー】と同様に暗殺対象になる。

 

 

【イトナ】君の素性が不明な今、下手に報告したら彼の身が危険だ。彼はまだ正式にこのクラスに迎えられたとは言い難い状況だったし、あの危険人物がめずらしく黒い顔をして、怒りを露にした。

 

 

 

不安要素が多い。

 

 

報告は、裏付けができてからで、一旦保留にしよう。

 

 

結局、【イトナ】君は【シロ】によって休学宣言して帰ってしまった。

 

 

 

***

 

 

 

生徒たちは、暗殺により、やる気になったらしい。ターゲットを暗殺できる可能性のある3年E組の生徒。地球の爆発を阻止するために、彼らの積極性、行動力、やる気の上昇は喜ぶことなのかもしれない。今回の【転校生暗殺者】はそのきっかけになったようだ。

 

 

でも、おれの個人の感情としては......

 

 

 

彼らを止めたい、暗殺なんて覚えなくていい、のびのび豊かに成長してほしい、平和に安寧な生活を送ってほしい......

 

 

 

そんな言葉がぐるぐると頭の中でまわっている。

 

 

「おや、飛鳥君。どうしましたか?」

 

 

木の木陰で腰をかけていると、ターゲットが話かけてくる。......改めてみると、この超生物はひとりひとりの生徒をよくみているんだなと感じる。

 

 

「......せっかくみんなが暗殺(やる気)になったところなのに、僕はそれに水を指しそうな心境なんだよ」

 

 

困ったように笑うと、ターゲットはおれの頭をその黄色い触手で一撫でする。

 

 

「君はやさしいですねぇ。その気持ちは君の長所ですよ。今は大いに悩んで結構です。その悩みが君自身の成長につながりますから。君の決心や覚悟......君が求めている『答え』がみつかりますよ。この学び舎でね」

 

 

その言葉は、ストンと不思議なくらい受け入れられた。......そうか。その『答え』がおれの『正義』になるのだろうか。

 

 

フッと笑って、「そうだね」と肩の力を抜いた。

 

 

 

 

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報告書

 

椚ヶ丘中学 3年E組 通称【暗殺教室】

 

【転校生暗殺者】の介入によって、生徒たちの暗殺のやる気に火がついた。【暗殺】行為は積極性を増した。生徒が自発的に行動し、防衛省の担当教師が放課後訓練を始めた。

 

 

 

 

 

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