童顔系潜入捜査官 作:くりっぷ
side 工藤 新一
「子どもの頃から憧れはシャーロック・ホームズだった。ホームズになるのは叶わぬ夢だと思ってた。でもやっと今日叶います。それでは言っていただきましょう。工藤 新一君で【真実はいつもひとつ!】」
長ェよッ!
最近、阿笠博士の家で居候している【飛鳥 進】だ。こうして俺と会うたびに満面の笑みを浮かべてからかってくる。おかげで推理に集中できやしない。
俺が顔を真っ赤にして怒ってもニヤニヤ笑う始末。性格に難がある。かなりひねくれている。父さんと母さんと同じくらい頭があがらないお兄さんだ。
蜂蜜色の滑らかな髪に緋色の瞳。色白で華奢な体躯で儚げにみえ、園子が王子と呼んでいた。中身は鬼畜、外道、悪魔のイイ性格をした謎に満ちた男だ。
年齢を聞けば、
「じゃあ、22でいいよな」
明らかな嘘をつく。じゃあってなんだよ!適当に答えただろ!?
宅配では【南瞬】という名前で受け取ったり、レストランでは【伊角】という名前で予約していたり、偽名を挙げたらキリがない。本人曰く、その場のノリらしいが......
【飛鳥】も偽名なのではないかと疑ったが、保険証と免許証を提示され、その疑惑は打ち消された。
だから、俺にとって【飛鳥 進】はどことなくミステリアスな存在で、目が離せない人物だ。
***
そんな彼との初対面は俺が【探偵】と名乗り始めたとき。偶然、事件現場で出会った。
「犯人は貴方―――」
「あ、君に答えは聞いてない。ダメだよ、事件現場ウロウロしたら。ヒーロー気取りか知らないけど、君も もう高校生だろ?幼稚園児が『仮面ヤイバーになる!』っていうのは可愛くて微笑ましいけどさ......よく考えてみなよ。『高校生探偵だ!』って自信満々に宣言しちゃったら......アイタタタ。わかるかい?痛々しくて、友達いないのか心配するよ」
こんな風にマシンガントークで弄られ、ディスられ、俺のメンタルはポッキリ折られた。
「目暮警部に頼られて推理してる?それは頼りない警察官だから、何とかしないとって勘違いしちゃってるんだよ。これだから仕事ができない大人は......これだから米花町は......」
刑事たちに囲まれた中でズケズケと物申していく。正面切って警察に喧嘩を売って、こっちがヒヤヒヤする。
「信用してないんだろ?警察を」
グサッと突き刺さった。心の奥底にあった本心を当てられた気分だ。
「だったら、君が信用できる警察になれば良いんじゃないか」
何の気なしにサラリと彼は言った。目から鱗が落ちたようなその提案はストンと響いた。
そういい残して彼は去っていった。周囲の人間はハッと表情を切り替えて、てきぱきと動き始める。目暮警部は俺に申し訳なさそうに謝罪した。
***
それからお隣の阿笠博士の家に行けば、彼――飛鳥 進――がいた。
「ひょっとしてストーカー?」
違うッ!!
再会してこの一言だ。彼は「お茶準備するよ」とキッチンへ引っ込んだ。出されたお菓子はレモンパイだった。
好物に喜んで手を伸ばして、口へ運ぶと、
「ヴッ!!?!?」
――――ハバネロ入りだった。
「不用心だな君。君の死因は毒薬かもね。警戒心なさすぎる。......でもその崩れた顔は癖になって面白いよ」
犯人はケロッとした顔で悪びれもせずに宣った。
「好奇心は猫も殺すっていうだろ?......ときには
にっこり笑った飛鳥さんは有無を言わせない圧があった。
だから、俺は蘭といっしょに出掛けたトロピカルランドで怪しい黒ずくめの男を見かけたが、飛鳥さんのいう【危険信号】に従ってスルーした。
翌日、それを話せば、飛鳥さんは「......へぇ」と低い声で相槌を打っていた。
***
毛利探偵事務所の下の喫茶店ポアロに新しいバイトが入った。金髪褐色のイケメンで【安室 透】だ。
最近のポアロは大学生の層が多い。会話の中で就活という単語が聞こえたから、恐らく大学四年生。年齢は22歳あたりか?......そういえば、飛鳥さんの年齢が本当だったら、この大学生と同年代だと気づいた。
飛鳥さんは博士の家に引きこもってばっかりだし、たまには外出に誘ってみるのもいいかもしれない。
余計なお節介かもしれないが、飛鳥さんの人間関係が広がって、ちょっとあの性格が矯正されたらいいな......なんて本人には口が裂けても言えねェけど......