童顔系潜入捜査官 作:くりっぷ
side 潮田 渚
木村君経由で教えてもらった飛鳥君のお墓参りに来ていた。ポツンと墓石が置かれてあるのは、彼に身内がいないからと萩原さんが言っていた。
日射しが照りつけていて、蝉の鳴き声がこだまする。
ムスッとした顔のカルマにどうしたのかと尋ねた。
「不破さんが飛鳥を【少年漫画なら、衝撃の展開のキーマン的なキャラ位置】だっていうのはあながち間違いじゃないと思う」
......たしかに。と、納得してしまった。クラスメイトの正体が実は潜入捜査官だったとは、今でもびっくりする。
「木村があのお巡りさんから聞いた飛鳥の本性はかなり癖がある人物らしいじゃん」
「......うん。たぶんカルマと浅野君を混ぜて煮詰めたような感じだと思う」
カルマは「渚、それはいい過ぎ」とペシと音をたててデコピンをした。
「......まぁ、そんな男がこうもアッサリ死んだなんて納得がいかないんだ......俺に言わせれば、それこそ【衝撃の展開】だよね」
煮オレジュースをストローで啜りながらカルマは言う。
「俺たちが付けたアイツのコードネームは【童顔詐欺師】だ。詐欺師なら騙しの
それって......パッと顔を上げると、カルマはにんまりと笑っていた。
***
まだ飛鳥が生きているという確証が曖昧で、皆を混乱させないように僕とカルマで調査することになった。
「子どもの頃から憧れはシャーロック・ホームズだった。ホームズになるのは叶わぬ夢だと思ってた。でもやっと今日叶います。それでは言っていただきましょう。工藤 新一君で【真実はいつもひとつ!】」
「長ェよ!!飛鳥さんは黙ってろ!バーロー!!」
遠目で高校生探偵の工藤新一が見える。顔を真っ赤にしてる彼をにっこりというよりニヤニヤした笑みで煽っている男がいた。帽子を被り、黒ぶち眼鏡をかけている。蜂蜜色の髪が帽子の隙間からちょこんと出ている。色白でイケメンオーラがたれ流しになっていた。
「......カルマ。今のって......」
「あの高校生、黒ぶち眼鏡に向かってキャンキャン吠えてるね」
思わず半目になった。今までの苦労はいったい......
「あの.....」
キョトンとした表情で彼は僕をみて
「はじめまして!南瞬と言います」
ヒラヒラと手を振った。
「「「え?」」」
でも、たしかに【飛鳥】だって呼ばれてたはず......だよね?とカルマと顔を見合わせる。するといち早く立ち直った工藤君がギョッとした顔で彼をみる。
「アンタ何堂々と......!」
「今からおれは【南瞬】なんです~」
「はぁ!?」
「気分だよ。南の方角に不幸オーラがありそうな......」
「南って、出口しかありませんけど」
ポンポンとリズムよく会話が進む。
「じゃあ、南さん。ちょっと俺たち聞きたいことあるんだけど」
渋々といった様子でカルマが彼らの会話を打ち止めた。「僕たち、人探しをしていて」とカルマに続けて紡いだ。
「人探し?俺、手伝いますよ!」
ズイッと僕らにサムズアップした工藤君をみてカルマはにんまりと笑った。
「【飛鳥 進】君っていうんだ」
工藤君は隣の彼を指差して、「え?飛鳥さんの知りあい?」と僕らと彼に視線を交互していた。南さん改め、飛鳥君はゴンッといい音をたてて、工藤君の頭にたんこぶをつくった。
涙目の工藤君に飛鳥君は「守秘義務も守れないなんて、探偵とは言えないよ」とプレッシャーを感じる笑顔だった。
彼らの力関係を察した。
***
気不味い雰囲気で飛鳥君が「......久しぶり」と本人であることを認め、僕らの空気を感じ取った工藤君が「ウチに来て話しますか?積もる話もあるだろうし」という提案に乗って、今に至る。
工藤君の音痴ぶりを目の当たりにした飛鳥君はケラケラ笑う。
「んなこと言うんなら、飛鳥さんは何が苦手なんだよ......」
「そうだなァ......『おまわりさん』かなァ」
「はぁ?正面から喧嘩売ってたじゃねぇか」
「厄介な身の上だからな......あまり顔を合わせたくないってのは本心だよ」
「......どーだか」
疑わし気に工藤君は飛鳥君をみた。
僕もカルマも、あまりに普通に生きて喋っている飛鳥君をみて、言いたかったことが吹き飛んでしまった。
それよりも、この事態をどうするか、E組の皆で話し合いたいし、僕もカルマもケロッとしている飛鳥君をなんとかギャフンと言わせたい気持ちがつのってきた。