童顔系潜入捜査官 作:くりっぷ
この教室で、抱いていた違和感。
それはクラスマッチで判明した。
はじめてこの椚ヶ丘中学に来たとき、新校舎から離れ、山の上にある木造平屋の旧校舎。国家機密の為に隔離されたとおれは解釈した。傍迷惑なテロリストが要求した「3年E組の教師」によって、巻き込まれたものだと思っていた。
事前に読んだ学校案内のパンフレットには、進学校を謳うだけあって、設備や教育カリキュラム、理事長の応援メッセージ。よくある完璧なものだった。
だからこそ、ここに来るまでは、おれは3年E組を一般的な普通の中学生だと認識していた。
ところが、実態はそうではなかった。
まず、超生物が懇切丁寧に教壇に立っている。そして、生徒はその教えを勉学と【暗殺】も含めて受け入れている。
呆然としたおれに「やっぱり違和感あるよね。僕らも殺せんせーに慣れるまで大変だったよ」とヘラリと笑う潮田君に「君たちって、結構肝っ玉あるね......」と返した。子どもは怖いもの知らずっていうけど、まさにその通りだな......
わすれないで、君たちの前にいる教師、国際的指名手配犯なんだぞ!!
***
学校らしいイベント、クラスマッチが開催されるらしい。男子は野球、女子はバスケ。野球経験者の杉野君をリーダーに練習する。クラスの悪ガキ組は早々に「やってられるか」って、出ていった。
......青春だ、あつい。おれは1回その通過儀礼やってるから、竹林君とともにマネージャーに立候補した。......ほら、中学生の試合に警察官混じったら、アウトだろ?子どもの喧嘩に大人が仲裁しても、加担するのはよくない。
そして、その判断は間違っていなかった。
竹林君が敵情視察に行っている間、E組男子は殺せんせーに、しごかれていた。
マッハ20の豪速球で。
やめてやれよ、生徒たちヘバってるぞ......こいつは手加減というものを知らないのか。
憐れに思ったおれは「お疲れさま」とスポドリとタオルを渡していく。殺せんせーに「選手を故障させる気ですか?」とチクリと苦言を言う。それから、ちょっとマシになったけれど、やっぱり人間と超生物じゃ、元のスペックが違うから、無理があった。
そしてクラスマッチ当日。
サッカーの試合でたまに見るけど、なんだこのアウェー感。君たち、中学生だよね?E組に対してヘイト強すぎないか?
こそっと近くにいた委員長、磯貝君に聞いてみると、「飛鳥は転校してきたから知らないか......」と、ワケ知り顔で納得され
「この椚ヶ丘じゃ、E組はね、こういう扱いが当たり前なんだよ」
と返された。
こういう扱い、か......罵詈雑言浴びせられて、ガチモンの野球部と試合させられて、公開処刑みたいだ。だが、磯貝君曰く、【殺せんせー】のおかげでちょっと改善されたという。
でも、これ外部にバレたら問題ありまくりの事案だ。学校全体で大っぴらにやってるのに、世間で糾弾されないのはどうしてだろうか。......と考えてみれば、監督が理事長に交代し、一気に形成逆転された。彼が登場しただけで、場の空気が変わった。
......なるほど。あの理事長、遣り手だな。問題になる前に理事長が手を回しているのか。国と交渉して、E組を提供した強者だ。
試合をみてわかった。学校全体からE組が無いもの扱い、誹謗中傷の的にされている構図はこの理事長がつくったものだろう。学校の教育方針という名目で......
今日は試合に勝利して、クラスもお祝いムードだったが......
もしも、このE組から反発・抵抗する生徒が出たら、真っ先に狙われそうなのは、元凶の理事長ではないだろうか?理事長でなくても、一般人もあり得るかもしれない。
中学生とはいえ、暗殺技術をかじっている彼らが束になって襲いかかったら......
タラリと冷や汗が流れる。
そんな事態になったら、間違いなく、おれは責任を取らされ、ついでにあの警察の偉いジジイの責任も押し付けられ、おれの人生、ゲームオーバー......
......マジかよ。
ジジイ、あんたって人は!!!
そういう事態を想定して、それも含めて、【E組生徒の安全の確保】か。暴走しないように子どもを懐柔して、コントロールできるようにしておけ、と......
ふざけんな!!!
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報告書
超生物が言う『殺意が結んだ絆』を目の当たりにした。現状、チームワークが強くなっている様子。だが、このクラスがすれ違いや仲違いによって分断し、崩壊したとき、その『殺意』の矛先がどこに向かうのか。とりあえず、理事長にSPをつけることを上層部から掛け合ってもらいたい。