うそつきダーリン   作:茜崎良衣菜

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デュアリズム

 

 

 

ライブはいつだって気合が入るけど今日はいつも以上だった。

芹沢くんが見に来る。とっても近くにいるアタシのファンに最高の演奏を見せてあげたかった。

普段ならそれなりにする緊張も今日はしていなくて、芹沢くん効果かな、なんてよくわからないことを思う。

 

 

 

「あなたたち、準備はいいかしら」

 

「もちろんだよ~」

 

「ええ」

 

「ばっちりです!」

 

「……はい……」

 

 

 

ステージ袖で友希那がアタシたちの気合を入れる。それを聞くのがアタシは好きだ。だって楽しいステージが始まる合図なのだから。

 

 

 

「今日はPoppin'Party、Pastel*Palettes、Afterglow、ハロー・ハッピーワールドの四バンドとの合同ライブ。とは言え、合同ライブだからと言って特別なことは何もないわ。私たちは私たちの演奏をするだけよ」

 

 

 

アタシたちの出番は三番目。Poppin'PartyとAfterglowが場を盛り上げた後がアタシたち。そして今回は少しだけAfterglowのステージに少しだけお邪魔させてもらう。

 

歓声が上がった。Afterglowもそろそろ終盤らしい。つまりアタシたちの出番だ。

 

 

 

「それじゃあ、行くわよ」

 

 

 

友希那が舞台に上がる。その後にアタシたちも続いた。

 

ステージは十分に温まっていた。上がっていた歓声が困惑に変わって、そしてまた歓声に変わる。観客からしたらアタシたちの登場は予想外だろう。

一方のアタシたちの心臓はバクバク動いていた。緊張はもちろんしている。同時にワクワクしているメンバーもいることだろう。なんせ初めての試みなのだから。

 

 

 

「湊さん」

 

「美竹さん、あなたたち盛り上げたりないんじゃないかしら」

 

「はい?」

 

 

 

珍しく放たれたのは友希那が誰かを煽るような言葉。それを聞いた蘭の表情が変わる。その顔にアタシは笑みが零れた。

 

 

 

「まさかそんなことを言うためだけにあたしたちのステージに入ってきたんですか?」

 

「ええ。確かにあなたたちの音楽はレベルアップしている。けどまだまだ観客を盛り上げるのには力が足りていないわね。そんなんじゃ私たちの足元には及ばないわ」

 

「へぇ、そんなこと思ってたんですか。いくらRoseliaの音楽がすごいと言ってもその発言は認められないですね」

 

 

 

蘭と友希那がライバル、と言うか、蘭がよく友希那に噛み付いていることは最近ファンにも知られ始めている事実。前にやった対バンに来た人たちならよく知っていることだろう。一部のファンが怯え気味なのがステージ上からでもわかる。

 

 

 

「AfterglowはRoseliaの音楽に負けてません」

 

「あら、そうかしら?」

 

「証明して見せましょうか」

 

「余程自信があるのね」

 

「それは湊さんもでしょう」

 

 

 

蘭がギターのストラップを肩から外して袖にいたスタッフさんに渡す。

スタンドに刺さっていたマイクを蘭が外せばスタンドをスタッフさんが回収していった。

その行動に所々で声が上がった。何をやるのかみんな楽しみのようだ。

 

 

 

「後悔しても知りませんよ」

 

「それは私たちのセリフよ」

 

 

 

友希那がアタシたちを見る。

蘭がAfterglowを見る。

 

頷いて、メンバーを見渡して。

Afterglowの同じ楽器担当と視線を合わせる。

 

ドラムのカウントが聞こえる。

それに合わせてアタシたちは楽器をかき鳴らす。

 

蘭から始まりすぐさま友希那が歌い出す。元々男性と女性のデュエット曲なのだからパートで高低差がある。二人は地声が低めだけど音域が広いからどちらのパートでも問題なく歌えただろう。ただ二人に決めさせるとキリがなかったからアタシたちが適当にくじを引いて決めた。今思えばそれでよかったと思う。

 

 

観客の盛り上がりは先ほどと比べ物にならない。きっとアタシたちの演奏だけではここまで盛り上げることはできないかもしれない。RoseliaとAfterglow、二バンドの力が合わさってできている。

段々大きく早くなっていく歓声とコールにビリビリと痺れる。

 

これが友希那と蘭のアイディアだと知ったらファンはどう思うんだろう。驚いて倒れちゃうかな。

 

横目で合わさる目線。蘭はわかりやすく楽しそうに口角を上げていた。アタシは友希那の横にいるから友希那の表情は見えないけど、多分似たような顔になっていると思う。だってなんだかんだ二人って似た者同士だから。

 

 

 

歓声が上がる。それに混じる黄色い悲鳴。これはファンが増えちゃったんじゃない?

アタシのそんな冷やかしはボーカル二人の拳を合わせるという行動でかき消された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はっきり言ってライブは大成功だった。バンドの演奏も今まで以上に楽しくて、観客もアタシたち的にもどきどきするライブだったと思う。

特に蘭と友希那のデュエットは好評でライブ終わりの楽屋でもその話題で持ちきりだった。

 

 

 

「蘭ちゃん!すっごくかっこよかったよ!」

 

「うん。とってもかっこよかった!」

 

「あ、ありがとう……香澄たちも演奏よかったよ」

 

 

「友希那!あなたの歌声とってもかっこよかったわよ!」

 

「ああ。さすがは歌姫、と言ったところだろうか。儚い」

 

「まだまだ改善するべき点は多いのだけれど、ありがとう」

 

 

 

蘭と友希那は他のメンバーに囲まれていて動けなさそう。いつもはぶっきらぼうな二人も今日は素直にみんなからの言葉を受け取っている。二人としても手ごたえはあったんだろう。ノリノリで拳合わせてたし何よりも楽しそうだった。ファンの見方も少し変わったんじゃないかな。

 

 

 

「今井さん、いつまで衣装のままでいる気ですか?」

 

「紗夜」

 

「あまり長い時間居座り続けるのはよくないと思うわ」

 

 

 

制服姿の紗夜がアタシに声を掛ける。その後ろには同じく制服姿のあこと燐子がいた。パスパレのみんなもほとんど着替えている。

紗夜の意見は正しいしアタシも着替えることにした。

 

 

全員が着替え終わって、解散して外に出ればそこには芹沢くんがいた。何やらAfterglowのメンバーと話している様子。アタシの存在に気付いた彼はひまりにお礼を言ってから近づいて来た。

 

 

 

「今井さん一緒に帰ろう」

 

「芹沢くん。もしかして待っててくれたの?」

 

「もちろん。女の子だけで夜歩くのは危ないからね。お供しようと思って」

 

「ありがとう」

 

「あとはライブのこと話したかったから」

 

 

 

そう話すアタシたちを見て、友希那が呆れたようなため息を吐いた。ため息を吐く理由がわからなくて首を傾げる。

 

 

 

「翔。リサのことちゃんと家まで送り届けて」

 

「言われなくてもそうするつもりだよ。というか、友希那も同じ方向でしょ。送って行こうか?」

 

「結構よ。二人のその空間に私を入れようとしないで」

 

「あいかわらず僕に冷たいね」

 

「普通よ」

 

 

 

なんだか険悪な雰囲気が二人の周りに漂っていた。

あれ?友希那って芹沢くんのこと苦手だったっけ?ていうか名前呼び?いつの間にそんなに親しくなったの?前話したときは湊さんって呼んでたのに……。

 

 

 

「今井さん、行こうか」

 

「え?う、うん。みんなまたね~」

 

 

 

芹沢くんの声に反応してアタシはみんなと別れ帰路に着いた。隣を歩く芹沢くんはいつも通り微笑んでいてさっきまでの友希那とのやりとりが見間違いだったように感じる。

 

 

 

「芹沢くん、友希那と知り合いだったんだね」

 

「まあね。僕が知り合いというよりは僕の父親と彼女の父親が知り合いだって方が正しいけど」

 

「芹沢くんのお父さんと友希那のお父さんが知り合い?」

 

 

 

そんな話初めて聞いた。あ、けどそこで知り合ったんなら名前呼びなのは納得かな。

でも友希那から聞いたことはなかったしそもそもアタシが初めてRoseliaの練習の帰りに芹沢くんを紹介した時も普通だったはず。なのになんで友希那は芹沢くんにあんな態度……。学校でも芹沢くんが話しかけて嫌そうな素振りはなかったのに。

 

 

 

「ま、その話はいいとして。今日のライブすごくよかったよ」

 

「ホント?それならよかった」

 

「うん。特にAfterglowのステージに乱入して披露した曲なんて今日一番の迫力だったんじゃない?会場、とっても熱くなってたよ」

 

「あははっ。そう言ってもらえると嬉しいなぁ。あの曲をやるって言いだしたのは友希那と蘭なんだけどさ__」

 

 

 

ライブの話。ライブの準備期間にあった出来事。

どれも芹沢くんは相槌を打ちながら聞いてくれた。感想もこれからRoseliaを続けるうえで励みになるものでとても嬉しかった。

心が温かくなったのは多分気のせいじゃない。

芹沢くんに話を聞いてほしいと思っているのもきっと、気のせいではないはずだ。

 

 

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