謀っ子世にはばかる〜織田信奈の野望   作:☆蛇☆

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遅れを取り戻すべく、覚えている範囲で書かせて頂きました。
長らく更新が無かった中、この小説を待っていましたと言う読者様のお声が大変嬉しく、モチベが爆上がりしたため、一気に書ききることが出来ました。
原作の面影を残しつつ、オリジナル展開を交えた話となっており、とある武将も・・・とこの先は読んでお楽しみください。
また、今話から、あとがき欄に、小説【謀っ子世にはばかる〜織田信奈の野望】のキャラ紹介文を追加する事を決めました。
平均的に2キャラづつ紹介していこうかなと思っております。
では、お楽しみください。


美濃の義将と美濃の毒

 

 

 

 

美濃・金華山〜稲葉山城二ノ丸斎藤義龍居館

 

登城した半兵衛主従一行は、本日行われる対尾張防衛戦の会合の為、斎藤義龍の居る館を訪れていた。

 

幼き天才軍師・竹中半兵衛を筆頭に、戦国きっての槍の又左幼き勇・前田犬千代、幼き天才忍者・蜂須賀五右衛門、尾張織田家家臣・小早川皆光、北近江の若大名・浅井長政。

 

前半が全て幼きとなっているのはご愛嬌。ロリコン大歓喜である。

 

そろそろとまるで忍び寄るかの如く怖がりながら、半兵衛が門を潜ろうとした時。

 

門の上に男が立つ。

その男の腕には、柴犬が抱えられていた。

 

「何者・・・」

 

ですか?と皆光は問おうとした。

だが、問うことは叶わなかった。

次の瞬間には、五右衛門が半兵衛を門から引っ張り皆光の腹に押し付けた。

 

「ック!?」

 

「・・・きゃぁ!」

 

たたらを踏むが、何とか転倒することなく半兵衛を受け止めた皆光は、消えた五右衛門を探し辺りを見回すが、程なく見つかった。

五右衛門は、門の上の男に忍者刀を突きつけた状態で静止していた。

 

皆光は、放心している半兵衛の頭を撫でながら、門の上の男を睨みつける。

 

「大事は無いですか?半兵衛殿・・・」

 

「ふぇ・・・皆光さん・・・大丈夫です・・・大丈夫ですから・・・いぢめないで・・・ください・・・くすん・・・くすん」

 

「誰も半兵衛殿をいじめたりしませんよ。さて・・・どういう事か説明して頂きましょうか?」

 

この門の上の男は、半兵衛が門を潜る際に抱えた柴犬に小便を引っ掛けさせたのだ。

忍びとして目を光らせていた五右衛門は、それを察知。

五右衛門は、半兵衛を後ろにいた皆光へと投げ飛ばし、自分は門の上の男を抑えた。

 

「くっ・・・我が主君に阿(おもね)る分弱の徒が・・・正体を表しおったか・・・」

 

「何者か・・・と聞いているのです。それともそれは・・・辞世の句と受け取ってもよろしいか?」

 

「殺すならば殺せ。謀反人共が!」

 

皆光は殺気立つが、この場の半兵衛の顔を潰す事は望ましくなかった。

この事を上に報告しようにも、この場には嘘偽りの者たちばかり。

そして間の悪いことに、男が叫んだせいで少々騒がしくなってしまった。

 

なんだなんだと顔を覗かせる斎藤家家臣達。

 

(ちっ・・・やってくれやがりますね)

 

斎藤家家臣達は、門の上の状況と、皆光達を目で何度か往復すると、一斉に刀を抜き放った。

そしてその中、一際目立つ巨体を揺らし、顔を覗かせた。

 

美濃国・国主・・・斎藤義龍

 

「貴様は何者だ?」

 

その巨体に見合った野太い声は、皆光が抱えている半兵衛を萎縮させるには十分な程だった。

 

皆光の額に冷や汗が浮び上がる。

 

「これは失敬。私は、竹中半兵衛が家臣・・・皆光と申します。此度は会合故の登城・・・とさせて頂きましたが、どこぞの馬鹿が我らが主・・・竹中半兵衛に犬の小便を引っ掛けようとした次第・・・。ついつい忍びをけしかけてしまいました」

 

「ほう・・・それは誠か?飛騨守」

 

義龍の問いに、してやったりと口元を歪めた齋藤飛騨守。

 

「それは違いますぞ。拙者は、外で何やら物音がしたので見回りをと思った次第、犬を囮に気付けば忍びに背後をとられていたのです。殿!これは竹中半兵衛が謀反を企てていた証拠でござりましょう!」

 

(ちっ・・・余計な事を言いやがりましたね・・・。証拠である犬の小便は・・・斎藤家家臣達に踏みつけられ跡すら見られないでしょう・・・。どうする?これは流石に逃げるしかないか・・・いや・・・逃げるにしても兵を集められ追われれば尾張に辿り着く前に切り捨てられるか・・・)

 

「謀反などと!竹中半兵衛は謀反なぞ考えておりませぬ!言い掛かりはやめて頂きたい!」

 

斎藤義龍は、互いのその様子に・・・・・・。

 

 

「どちらを信ずるかは自明の理・・・こやつらを縄に繋げい!」

 

 

斎藤飛騨守の発言を信じた様だ。

とは言え少し考えれば分かる事。

普段から側仕えをしている重臣の発言を信じるか、類稀なる才覚を持ち、軍師として兵の指揮権を与えられたとは言え、仕官してから日が浅く、また本日初出仕であり、叔父の安藤伊賀守は謀反の疑いがあると中枢から弾かれている状態。

 

簡単に言えば、皆勤で出社してくる者と休みがちな者が病気で休むとなった時、どちらの方が信憑性が高いと取るかである。

 

簡単だ。

積み上げられた信頼度の高い方の言い分を信じるだろう。

だが時代が悪かった。

カメラも無ければ診断書もない。

この時代は目とその者への信頼が全てである。

でなければ謀殺や暗殺など起こらないだろう。

 

あまりの急展開と、思えば納得な理由。

この時代、有りもせぬ罪で消えた人間なんてのは掃いて捨てるほど居たはずだ。

 

家臣達がにじりにじりと半兵衛一行を取り囲み始める。

先程から黙ってついてきていた犬千代も槍を構え、皆光も思わず腰の刀を抜き放つ。

 

半兵衛は皆光の腰の後ろで震えているばかり・・・安藤伊賀守は拳をキツく握りしめていた。

 

「いいでしょう・・・。馬鹿の言う言葉は鵜呑みにするが、才ある者の言葉は聞けぬと見える。大軍を率いても道三殿を逃がす訳だ。思慮が足りませんな」

 

「半兵衛殿、申し訳ありませぬ。せっかくの初出仕を潰してしまったようです」

 

青筋を浮かべる義龍を無視し、皆光は振り向き半兵衛を撫でながら謝罪する。

 

「そんな・・・皆光さん達は悪くないです・・・私がもっと周りを見ていれば・・・」

 

「とにかく、ここはお逃げなさい。猿夜叉丸殿、犬千代・・・半兵衛殿を頼みます。安藤殿もご一緒にお逃げ下さい」

 

「皆光殿・・・」

 

「ダメ・・・皆光。犬千代も戦う」

 

ジリジリと近付いて来る家臣達に取り囲まれぬように刀で牽制しつつ後ろへ下がる。

 

「ふん、逃げられると思うてか?」

 

「誰が逃げると言いました?少なくとも、馬鹿のお命と何人かは、私の共をして頂きますよ」

 

皆光がそう言い放った時、家臣達の足元に苦無が突き刺さった。

偵察に出ていた四忍衆が帰ってきたのだ。

 

「この場は私と・・・私の忍び衆が相手を致しましょう。ひとつ言っておきますが・・・」

 

皆光は刀を構える。

 

サシュッ・・・という何かを裂く軽い音と共に、声を上げることも無く門の上にいた飛騨守が崩れ落ちる。

 

「ここから先は進めると思わぬ事です」

 

「飛騨守・・・っ。貴様ぁ・・・者共!こやつらを斬れい!」

 

ハッ!と言う声と共にこちらへ殺到する斎藤家家臣達。

 

「早くお行きなさい!大口を叩いたとはいえそう長くは持ちません!」

 

「そんな!皆光さん!ダメです!」

 

「皆光っ・・・!」

 

「行けっ!」

 

皆光は強く言い放った。

そんな皆光にすがろうとする半兵衛を、引き離したのは・・・猿夜叉丸こと、浅井長政である。

 

「感謝はしませんよ・・・。この際北近江でも何処でも構いません。皆を頼みましたよ、浅井長政っ・・・」

 

「皆光殿・・・・・・。あいわかった。信奈殿は・・・いや、今は辞めておこう」

 

「はっ・・・最後の最後まで・・・。姫様に何かあれば、殺しますよ」

 

「ふっ・・・ならば生きる事だ・・・」

 

そう言い残して、半兵衛の手を引いて走り去る。

 

難しい事を言ってくれる・・・。

そう呟いた皆光だったが、そう簡単には死のうとは思っていない。

 

むしろ背後の者達さえいなくなれば、あとは忍び達と逃走するだけである。

 

館を守護する兵達が伝令へ走ろうとするが、苦無が喉に突き刺さり絶命する。

 

「さてと・・・やりますか」

 

皆光の瞳から・・・光が消えた。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆光と忍び達を置いて走る四人。

 

殿(しんがり)をしている皆光達のおかげか、追っ手は来ない。

流石の浅井長政も、思う所があるのか時折背後を振り向くもそこに皆光の姿はない。

 

犬千代は真っ直ぐと、皆光を信じて進んでいた。

しかしそこで、元より病弱で体力のない半兵衛が転倒する。

未だに館からの距離はそう離れておらず、殿を残して来たとはいえ少数。

しかし、半兵衛は立ち上がろうとしない。

 

「ぬぅ・・・わっちが背負おう」

 

・・・・・・

 

「わた・・・しのせいで・・・・・・」

 

安藤伊賀守が半兵衛を背負おうと腕を伸ばすが、半兵衛の悲痛な声に伸ばす腕が静止する。

 

「わたしの・・・せいで・・・皆光さんや、五右衛門さんが・・・」

 

半兵衛は泣いていた。

安藤伊賀守は、伸ばした腕を力なく下ろし半兵衛を撫でる。

いつも泣き虫で、何かあればすぐに泣き出す半兵衛だが、悲痛な涙を流す半兵衛に思わず安藤伊賀守も浅井長政も目を伏せる。

 

半兵衛は無駄な殺生を好まない。

それでも、織田軍を倒さなければ、美濃がどうなるか分からなかった。

尾張には、落ち延びた美濃の蝮、そして第六天魔王と恐れられる信奈がいる。

そんな悪名高き者達がいる尾張に美濃を渡す事が、半兵衛は怖かった。

だから義龍に手を貸したのだ。

それが、こんな事になるなんて、半兵衛は予想もしていなかった。

 

皆光の素性を、半兵衛は知っていた。

それと同時に、同じ軍師として皆光が半兵衛を尊敬するように、半兵衛も皆光を尊敬していた。

初めてその名を聞いたのは、義龍軍敗北の一報だった。

最初は、どんな怖い人だろうと思った。

子栗鼠のような人だったらいいな、なんて思っていた。

しかし、自分の前に現れたのは、自分と同じ年頃の女の子を連れた優しそうな男だった。

だが優しそうに微笑む顔の裏で、どんなやり方で自分をいじめるのだろうかと半兵衛は怖かった。

それも、心を試し、目で見て語り合い半兵衛は安心した。

皆光も、五右衛門も犬千代も、皆いい人達だった。

一緒に着いてきてくれると聞いた時は、心から安堵した。

 

何故もっと考えなかったのか。

叔父である安藤伊賀守から、半兵衛は己に対する家臣団の評価を聞いていた。

一言で言えば、悪かった。

半兵衛の用いた奇策により、半兵衛を重用しようとする義龍。

そんな突き出た杭を打とうとする輩が居る事は、容易く想像できる事だった。

 

 

(なのに・・・なのに・・・神様・・・お願いです・・・あの方達を・・・)

 

 

困った様子で立ち竦む二人。

そんな中幼い少女、犬千代は静かに半兵衛に近寄り、その泣き震える肩に手を置いて語りかけた。

 

「・・・皆光達を助けたい?」

 

「な!犬千代殿、何も申されるか!皆光殿の覚悟を無駄にされるおつもりか!」

 

犬千代のその言葉に驚き、すぐさま否定的な言葉を発したのは、浅井長政だけだった。

安藤伊賀守は、静かに目を伏せながら、まるで行く末を見守ると言っているかのように、静かに黙ったまま。

 

半兵衛は、地に伏せたまま、こくり・・・と頷いた。

 

「皆光は、頭がいい・・・きっと残されても、生きて帰ってくると思う・・・。それでも・・・行く?」

 

そう呟いた犬千代に、半兵衛は黙ったまま。

 

「泣いているだけなら、無理・・・。それこそ時間の無駄」

 

そう言っても、動く気配のない半兵衛に、犬千代は時間の無駄と判断し背を向けた。

 

「進む。皆光達が逃げる前に・・・稲葉山城を脱出する」

 

どこか安堵した様子の浅井長政を後目に、犬千代は走り始めた。

安藤伊賀守が、半兵衛に手を伸ばす。

 

すると半兵衛が自分の足で立ち上がった。

足は子鹿の様に震え、泣きはらした目は真っ赤だ。

 

「大丈夫か?半兵衛や」

 

「半兵衛殿、この私が背負って差し上げます」

 

そう言って半兵衛に近付く男二人。

しかし次の瞬間。

 

「ま・・・待ってください!」

 

犬千代は足を止める。

 

「早く行く・・・」

 

「わたしは・・・弱いです!」

 

「だから・・・何?」

 

まるで腹立たしいと言った様子の犬千代を真正面から見据える半兵衛。

 

「確かに・・・皆光さんや五右衛門さんは織田信奈の家臣です。こんな事を言うのは、間違っていると思います」

 

半兵衛はそこで少しばかり深呼吸する。

 

「それでも・・・今は皆光さん達は私の家臣達です!偽りの罪で見捨てるなんて、私の義に反します!」

 

そして、静かに頭を下げた。

 

「私は弱いです。ですから、お願いします。私と一緒に・・・皆光さん達を助けてください」

 

そう言い放った半兵衛は、もう涙も、震えも止まっていた。

 

その顔は、天才軍師としての顔ではなく、【義将】としての顔であった。

 

(皆光さん達の義には、私の精一杯の義を持ってお返しします)

 

半兵衛は皆の返事を聞くまでもなく、来た道を戻り始めた。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ・・・はっ・・・はっ・・・」

 

刀を持つ腕が重い・・・。

 

殿(しんがり)をしている皆光達は、ボロボロだった。

この場にいる斎藤義龍以下家臣達と、そこらの雑兵では話にならなかった。

 

戦場を生き抜き、兵を率いてきた歴戦の猛者と、現代のぬる湯に浸かってきた皆光とでは、天と地の差だった。

それでも、忍び達の援護もあって誰一人として進ませていない。

 

仕留めたのは斎藤飛騨守のみだが、それでも手傷は負わせた筈である。

 

ちらりと周囲を見る。

 

五右衛門は、さほど怪我もないようだが、珍しく息が上がり、肩で息をしていた。

 

四忍衆も、何とか奮闘してくれてはいるが、ボロボロになっていた。

 

「まだでござるか・・・。このままだと逃げる体力も残らぬでござるぞ」

 

「耐えてください。馬を使われれば終わりです。せめてあと四半刻は・・・」

 

するとその時、奏順が吹き飛ばされてきた。

背中で一度跳ねながらも、その衝撃を使って上手く皆光の隣に着地する。

しかし、片膝を落とし、地に片手を付いている。

「大将・・・流石に冗談きついゾ・・・。これ以上・・・持たせろ・・・だ・・・て・・・」

 

とさっ・・・と静かに地面に崩れ落ちた奏順。

それと同時に、右衛門、治宗、定保が皆光の近くに着地する。

 

右衛門が、折れた忍刀を投げ捨てる。

 

「主・・・撤退・・・」

 

「ここまで・・・ですね。治宗・・・奏順を頼みます」

 

奏順を持ち上げる治宗を後目に皆光は忍び達に撤退路を聞く。

 

「中々・・・敵ながらやりおるわ。だが・・・終わりだ」

 

義龍の言う通り。

 

「囲まれたか・・・」

 

忍びの跳躍ならば問題は無い人の壁。

しかし、皆光は忍びではない。抱えて飛ぼうにも、いっせーのを待ってくれる相手ではないことなど容易く分かる。

戦場では一瞬の気の緩みが命取りになる。

その事を失念していた皆光は、奏順が吹き飛ばされてきたのを皮切りに、気を抜いてしまった。

 

「ふん、半兵衛なんぞに仕えるからだ。儂に仕えればそれなりに重用したかもしれんぞ?」

 

「ふん・・・半兵衛なんぞと馬鹿にしない方がよろしいですよ。あなたが大軍を率いても勝てなかった織田の軍師・・・彼女はその更に上を行く。精々足元を救われぬよう」

 

「ふん、戯言を!」

 

義龍は、そう言って皆光へと刀を振り下ろした。

しかし、皆光は生きる事を諦めてはいない。

以前ならば・・・諦めていたかもしれないこの状況。

だが、様々な人達との会話を経て・・・戦を経て、この時代を生きていくと誓った、武士である。

 

「ふふふ・・・戯言になるかどうかは・・・お楽しみです」

 

皆光は勝家に教えて貰った事を思い出す。

 

(皆光にとっての刀は打ち合うものでは無い。受け止めるものでもない。そうだな・・・こう・・・なんだ・・・ああぁ!分からん!斬れ!)

 

(分かるわけないでしょ!)

 

皆光は、義龍の刀のすれすれに、自分の刀を這わす。

てっきり打ち合うと思っていた義龍は、ぎょっとした。

 

(私にとっての刀は、知恵ですよ!斎藤義龍!)

 

ぎょっとした義龍は、皆光の刀を避けるために半身を逸らし、それにより義龍の刀は大きく皆光を外す。

しかし、以下に不意打ちとは言え、歴戦の猛者。

皆光の刀は、少しばかり義龍の頬を掠っただけだった。

 

その時・・・背後が光った。

 

「な・・・何事だ!」

 

「これは・・・まさか・・・」

 

「皆光さん達を・・・いぢめないでくださああああい!」

 

その光の正体は、半兵衛だった。

眩しく光る五芒星の輝きが、辺り一帯を照らす。

 

「ふん、我が主に感謝せよ。皆光」

 

気付けば目の前には、狐の姿の前鬼が皆光達を守るかの如く立ちはだかっていた。

 

周りを見ると、明らかな異形達が、義龍の家臣達を追い回していた。

 

「なんだこれは・・・妖か!」

 

「ひっ!妖怪だぁぁぁ!」

 

「人喰いじゃあぁぁぁぁぁ!」

 

先程の戦いが嘘のように、悲鳴をあげながら逃げ惑う家臣達。

 

「おのれぇ・・・竹中半兵衛めがぁぁ」

 

ギチギチと、耳障りな音がするほどに、刀を震わせ怒りに染まった義龍は、前鬼に斬りかかるが、前鬼はふわりとそれを避け、大きく牙を見せて威嚇した。

 

「こんな所で・・・・・・ぬううぅっ!!!」

 

何かを耐えるように、大きく唸った義龍は、刀を納め、射殺すような目付きと共に皆光達の目の前から去っていった。

 

「なんですかね・・・これ・・・」

 

「拙者に聞くな・・・でごじゃる・・・」

 

今度こそ、本当に気を抜いてしまった皆光達は、地面にへたりこんでしまった。

 

「ふん、情けない人間共だ」

 

どことなくドヤ顔を炸裂させながら、前鬼が人の姿に戻る。

前鬼以外の式神達は、なおも義龍や守備兵を追いかけ回している様子。

そして、先に逃がした残りの三人も姿を現す。

 

「にしてもまぁ・・・随分呆気なく城が落ちましたね・・・」

 

「あわわわ・・・わたし・・・謀反してしまいました・・・」

 

「半兵衛!無事か!」

 

ふと我に返り、慌てる半兵衛と、半兵衛を心配して慌てて走り寄る安藤伊賀守。

そんな二人を微笑まそうに見つめる皆光。

そんな皆光を甲斐甲斐しく手当をする五右衛門。

忍び達も互いに互いを気遣い、治療を施している。

 

「五右衛門・・・あなたも少し休憩した方がいいですよ」

 

「拙者はこの程度・・・どうとでもごじゃらん。それよりも小早川氏の方が重傷でござる・・・全く・・・手のきゃきゃるしゅくんでごじゃるな」

 

全く・・・やれやれでござるよ。と口では文句を垂れながらも優しい手付きで皆光の治療をしていく五右衛門。

そんな皆光の背後から、犬千代が顔を覗かせた。

 

「・・・皆光・・・大丈夫?」

 

その姿は、少しばかり申し訳なさそうに心做しか弱々しく見える。

 

「大丈夫ですよ。だから・・・こうして生きています」

 

安心させる為に放った皆光の言葉・・・だったのだが、その言葉を聞いた犬千代は、目尻に涙を溜め、口を開いた。

 

「ごめんなさい・・・。犬千代は・・・すぐに動けなかった・・・半兵衛どのが助けに行った時・・・犬千代は迷ってしまった・・・」

 

俯いた犬千代・・・。

皆光はそんな犬千代を優しく抱きしめた。

驚いた犬千代だったが我慢していた涙が溢れ、皆光の胸元で泣き始める。

 

「ごめんなさい・・・・・・ごめんなさい・・・」

 

「犬千代」

 

「・・・・・・」

 

「助けに来てくれて・・・ありがとうございます。犬千代が謝る必要なんてありませんよ。犬千代は・・・正しい事をしたのですから。少なくとも、泣くよりは・・・誇るべきだと思います。私はそんなあなたが・・・大好きですから」

 

そう言って犬千代を撫で撫でしていると、ここにはいない・・・第三者の声がこの場に響き渡る。

 

 

「あらら・・・稲葉山城が落ちちゃったよ」

 

「落ちましたね。それもこの人数相手に、随分あっさりと」

 

 

「ひっ!だ・・・誰ですか・・・」

 

「ぬぅ・・・半兵衛。わっちの後ろに隠れておれ」

 

その声は、館の門からだ。

一人は中性的な喋り方をしている女の声。

もう一人は、何処と無く油断してはならないような、妙にしっとりとした女の声。

 

「全く、お兄様も情けない限りだ。ま、そんなお兄様だからこそ、尾張勢の付け入る隙があった訳だがね」

 

「私の成した策はまるで手のひらとばかりに尾張勢に潰されました。特にそこの・・・男に」

 

姿を現したのは、少女と、どうだろうか・・・丹羽長秀と同じくらいの女性。

少女の方は、半兵衛や、犬千代と同じくらいだろうか。黒く真っ直ぐな髪は腰まで美しく伸び、淡い青と白の着物が、何処と無く知的な雰囲気を醸し出す。

もう一人は表情が読めない。

一切の表情も感情も映らない顔。

紫色の髪色をした頭髪は、肩口で揃えられており、あほ毛が目立つ。

 

「にしても半兵衛の謀反か。これは、美濃・斎藤家も少しばかり危うくなってきたかな」

 

「・・・あなた様は・・・」

 

そう言ったのは、安藤伊賀守。

安藤伊賀守は美濃三人衆の一人、数多いる美濃武将の頂点に立つ三人衆の一人なのだ。

つまり、その安藤伊賀守が様をつけたという事は、それ以上の人物。

そして、斎藤義龍を兄と呼んだ。

 

 

 

 

「・・・斎藤龍興様・・・長井道利殿・・・」

 

 

 

その二人の名前を呼んだ安藤伊賀守の表情は暗い。

 

「これはまた厄介な・・・」

 

この二人を歴史を通じて知っている皆光は、二人を警戒した。

 

 

 

 

 

 

 

 

特に片方・・・・・・・・・道三と義龍の親子喧嘩。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歴史通りであれば・・・・・・【美濃動乱】を手引きした人物である長井道利を。

 

 

 

 






キャラクター紹介〜謀っ子世にはばかる〜



キャラクターNo.001


小早川 皆光(こばやかわ みなみつ)



信奈の天下布武を支える為、その下地となり得る天下布情を掲げる現代から、過去である戦国時代へ飛ばされた男子高校生。
現代を切り、戻るつもりは無いと言いこの戦国時代を生き抜くと誓った黒髪、黒目の優しい顔立ちをした少年。
助けを乞うたり、親しくあるもの達へはとことん甘いが、一度敵と看做した者達への容赦は一切ない。
飛ばされた先が合戦場であり、派手な格好をしていた為武将として今川兵に追われるも、当時今川方の足軽だった木下藤吉郎に命を救われる。

その後、木下藤吉郎の死によりこの世界の在り方に疑問を持つも、木下藤吉郎との約束、(モテモテ大名)の為に織田家へ仕官。

様々な戦を経て、見事若家老として出世を果たした。
役職は軍師。
直近の配下に、蜂須賀五右衛門(はちすかごえもん)・伊賀崎奏順(いがさきそうじゅん)・望月治宗(もちずきはるむね)・篠山右衛門(ささやまうえもん)・藤林定保(ふじばやしさだやす)の忍び五人衆がいる。

軍師としての腕は、織田家家臣団の中でもかなり期待されており、東海一の謀将と言う通り名を持つ(広めたのは斎藤道三と美濃衆)。
兵を用いた急な陣形変更と一兵卒足りとも無駄にしないと言う戦い方で、野戦の指揮を得意とするが、美濃侵攻戦では竹中半兵衛の奇策により敗北している。

織田家家臣団からの評価は良く、真面目に仕事をこなす姿は評価が高いが、信奈曰く「一言多い」。
メキメキと頭角を現す皆光に嫉妬や偏見を持つ者たちもいるが、丹羽長秀や柴田勝家と言った者達により沈静化している。

本人は否定しているが、周囲からは幼女好きと思われており、一素浪人から、若家老まで出世した皆光に幼女を送り付けてくる農民が後を絶たないらしい。
農民曰く(嫁)との事。
皆光は毎夜その事に頭を悩ませては、五右衛門に頼み返してもらうように頼むも、両親からはうちの娘が気に食わないのか・・・と言われ、困らせられている。
皆光の屋敷は近隣住民から幼女屋敷と呼ばれており、義妹のねね、前田利家(犬千代)、忍び五人衆と共に住んでいる。
実はきちんとメリハリあるボディーが好き。
本人の出自については、まだ明かされていない。







キャラクターNo.002


蜂須賀 五右衛門(はちすかごえもん)

ロリコン集団、川並衆の頭領であり、白い髪の毛に赤い大きな瞳が特徴の美幼女。
元々は木下藤吉郎の相棒だったが、木下藤吉郎がなくなった際の遺言により、皆光を主君と仰ぐようになった。
皆光の最初の配下であり、唯一皆光の秘密を知っている人物。
諜報活動、暗殺、身辺警護など様々な分野で皆光を助けるハイスペック忍者。
しかし、三十文字以上の長ゼリフは苦手。
唯一聞き返すことなく、また、それも個性と受け入れてくれた皆光には気兼ねなく長々と喋る。(しかし噛む)
皆光の容赦ない忍びの使い方を気に入っており、何かあればすぐに皆光に報連相する家臣の鏡。
皆光の秘密を唯一握る存在として、少し優越感を感じていたりする。
皆光との絆は固く、一方的ではあるが少しばかりの恋心を皆光へと抱きつつある乙女。
皆光が他の少女や女性と仲良く話している姿を見たあとは必ず機嫌が悪くなる。
しかし、そんな恋心とは裏腹に自身も大きな秘密を抱えており、皆光に話すべきかと悩んでいたりする。
最近の悩みは、増えつつあるライバルたち。
とくに、サボりがちな五右衛門の配下、奏順には手を焼いており、よく皆光の元へサボりに行く奏順とは、皆光の知らないところで忍びアルティメットバトルが繰り広げられる。
ちなみに五右衛門の寝る位置は皆光の顔の真上。
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