忙しながらもなんとか投稿に漕ぎ着けたと作者自身・・・少しばかりの安堵を感じました。
史実を入れながらも、織田信奈の野望の世界観を壊さない程度になんとか書くことのできたオリジナル展開。
正直に言いましょうか・・・。
難しすぎまする・・・!
ですが、既にメモ書きの詳細は出来上がっており、伊勢の話は終わっておりますので、ご安心ください。
(すぐに投稿出来るとは言えませんが・・・)
伊勢平定戦
翌朝、皆光は一人陣の中で五右衛門達の報告を聞いていた。
「伊勢の半分・・・北と中の伊勢国は既に平定済み・・・ですと?」
「どうやらそのようにござる・・・北伊勢に跋扈する伊勢四十八家とよばれりゅ豪族ちゃちは、既に恭順・・・中伊勢のにゃがの(長野)家すりゃも、滝川一益のいいなりでごじゃれば・・・」
なんと、滝川一益は、伊勢の半分・・・北伊勢と中伊勢と呼ばれる地域を跋扈する伊勢四十八家と呼ばれる乱立豪族に加え、伊勢では二番目と言えども、幾度と無く名門でありこの地域最大の勢力を誇る北畠家と何度も衝突を繰り返した伊勢長野家(長野工藤家とも呼ばれる)を支配下に置いていると言うのだ。
更に・・・である。
「滝川一益配下の海賊衆・・・九鬼嘉隆率いる九鬼海賊衆が既に志摩をじゃっかん・・・だ・・・だっきゃん・・・しているちょ」
何故ここまで来て報告しないんだ・・・と言うレベルである。
「それともうおひとつ・・・どうやら滝川一益は伊勢神宮をにょっちょっちゃと…うにゅうにゅ…」
「あ〜・・・頭痛くなってきた・・・」
もうこの時代訳分からん・・・。
皆光の率直な意見である。
伊勢神宮・・・戦国時代の宗教勢力は下手な武士や大名よりも位が高く、戦や一揆の背後ではそう言った宗教勢力が糸を引いていた事もあると言う。
つまり、なにが言いたいかと言うとだ。
滝川一益は、その一勢力である伊勢神宮を使って伊勢に乗っ取りをしかけたらしい。
しかも成功していると来た。
皆光が頭を抱えていると、陣の中に一人の少女が顔を出した。
斎藤龍興・・・美濃斎藤家の姫武将である。
見事な寸胴に赤紫の姫衣装、腰には刀といった出で立ちの少女が、開口一番・・・厄介事を持ち込んできた。
「随分と手回しの早い事だね。来てるよ・・・件の滝川一益が」
いえ・・・呼んだつもりはありません。とは言えなかった。
なるようになれ・・・である。
皆光の陣の中に、一人の少女・・・いや、どちらかと言えば幼女だろうか・・・が入ってきた。
皆光の予想は、鉄砲の名手でクールで知的な女性を想像していたが、全く持って真逆。
小柄な体躯に巫女装束、黒く光沢のある艶髪を肩口で切りそろえ、幼い顔立ちはどこか、忍び衆の奏順に似た小悪魔的な笑みを称えている。
唯一皆光の予想の範囲に入ったのは、彼女の右手に握られている種子島のみ。
「お初にお目にかかります・・・。尾張国織田家が家臣、小早川皆光と申します。態々国境近くまで足を運んで頂けるとは…」
「初めましてじゃな。姫への援軍ご苦労。ひとまずは礼を言おうかの・・・余計な事をしてくれてありがとう・・・とでも申せばよいか?」
いきなりの大暴投。
見た目以上に不遜な言い方に、皆光は織田家臣の面子の濃いさを改めて認識した。
「あなたが・・・その・・・失礼ながら滝川一益・・・で宜しいのですね?」
「いかにも。この姫が滝川左近将監一益(たきがわさこんしょうかんかずます)であるぞ。やはり陸は土臭いのう・・・お肌が荒れてしまうのじゃ」
正しく自由奔放・・・と言った言葉がお似合いな姫武将、滝川一益のその姿に、皆光は思わずため息が漏れる。
ひとまず、皆光は彼女に問いを投げかける為に、口を開いた。
「では、一益殿・・・おひとつよろしいですか?」
「なんでも聞くがよいぞ。まぁ、話は大方予想できるが、のぶなちゃんもせっかちよのう〜。高々十日程度連絡を寄越さなかったくらいで軍を動かすとは」
「・・・十日ですと?」
「うむ、ひとまずはこの伊勢の現状を・・・恐れ多くもこの姫が説明してやろうかの」
伊勢の平定に向け、美濃攻めと並行して行われた伊勢侵攻。
その侵攻は、当初・・・僅か二人と言う所から始まったのだという。
一人目は、言わずもがな・・・滝川一益であり、もう一人は志摩の海賊の頭目であった九鬼嘉隆であった。
九鬼嘉隆は、織田信奈より幾らか金銭を借り受け、それを元手に九鬼海賊衆の仲間達を集めながら、徐々に勢力を拡大・・・そうこうしているうちに、伊勢神宮の乗っ取りを計画する。
伊勢最大の勢力であり守護代でもある北畠家の後ろ盾である伊勢神宮を後に乗っ取ることに成功し、各豪族や長野工藤氏を恭順させることに成功した。
未だ反発する勢力もない訳では無いらしいが、その時はどうやら、信奈本人が軍を連れてこの地の平定を手伝っていたらしい。
こうして北と中伊勢を手中に収めた滝川一益であったが、それと同時にある問題が浮かび上がった。
南伊勢・・・伊勢の正当な国主であり守護代である北畠家である。
北畠家がここに来て伊勢神宮の権威に靡かなかったのだ。
とは言え、伊勢神宮に対してあまり事を荒立てる事も出来なかった北畠家は、現状傍観状態・・・滝川一益の必死の説得(と言う名のお願いらしい)により、一時は歩み寄る姿勢を見せていたという。
しかし、間が悪い事に皆光率いる織田軍が表立って伊勢に進行してきた・・・それも、一豪族の鎮圧どころか国を攻めるほどの規模・・・大将が、かの長良川の英雄ともあれば戦を仕掛けに来たと取られても無理はない事だろう。
つまり、皆光達は滝川一益の国盗りの邪魔をしたということである。
「既に北畠家は戦の為に各地より兵を集っておると言うがの」
最後にそう締め括った一益の言葉に、皆光はふと違和感を覚える。
その違和感がなんなのか・・・皆光には分からなかったがあまり宜しくない・・・所謂嫌な予感と言うものを皆光は感じ取っていた。
「誠に申し訳ございません・・・。考えが至らぬばかりに・・・」
「ま、そう気にするでない。姫は寛大であるからの!過ぎたることは忘れておけばよい。それよりも・・・今北畠家に挙兵されては姫の手勢では無理無茶無謀も良いところじゃ。汚名返上・・・みっちーが北畠家の相手をせよ」
くすくすとこちらを悪戯げに笑う一益のその姿が、また可愛らしいが、このタイプに録な人はいないと皆光は知っている。
皆光は思わず盛大なため息を吐いた。
「まぁ・・・そうですね。と言うよりみっちーとは?もしかして私の事ですか?」
「そうじゃ。みっつーにしようかとも思ったが・・・みっちーの方が可愛かろ?」
「まぁ・・・はい・・・もうそれでいいです」
皆光は再度・・・脱力気味にため息を零したが、少しばかり目を鋭くすると直ぐに軍を動かす為の指揮をとるために床几から立ち上がる。
「時間はあまりありませんからね。相手が準備をしているならば、その隙に一気に進軍します。既に移動に一日・・・本隊と合流するにしても猶予は三日程度。ご協力願えますか?」
「ふん・・・そう言うと思っておったのじゃ。安心せよ、既にくっきーを長野家の元に向かわせておる。後程援軍を率いて合流してくるはずじゃ。姫は戦は嫌いじゃからのっ。直接の指揮はみっちーに任せるのじゃ」
明らかに不機嫌な声色で戦が嫌いと言う部分を強調する一益。
そんな一益を見ながらも、皆光とて容赦は出来ない。
此度の伊勢侵攻・・・皆光の胸中には何やら引っかかる部分が少しばかりある。
とは言え、ほんの少し・・・喉元に魚の骨が引っかかっている程度の物だが。
だが、戦に絶対はない・・・負けないとは思っているが、相手はかの北畠家当主・北畠具教である。
剣術の達人であり、兵法を嗜む謀略主である。謀略を駆使して伊勢での勢力を拡大させた・・・言わば中国の毛利元就の様なもの。どのように仕掛けてくるかわからない以上有能な将を遊ばせておくことは出来ないと見ていい。
皆光はひとしきり考えを纏めると、一益へと視線を向けた。
皆光の視線を受けた一益は、きゃぴっと顎に手を添えて皆光を上目遣いで見つめる。
「お願〜い♡今回の戦は姫を休ませてぇ〜♡」
途端にぶりっ子である。
紛うことなきぶりっ子である。
そして、一仕草、声色、表情、どれをとっても可愛い。
だがしかし・・・しかしである。
この男には・・・通用しなかった・・・と思う。
おもむろに皆光はその場で膝を下ろし、一益に目線を合わせ、頭に手を乗せ微笑みながら口を開いた。
「大変愛らしい姫のお願いを聞いて差し上げることの出来ない私を許してくださいな。ですがあなたの力が必要なのです。あなたの力がなければ、伊勢の平定はまた格段と難しくなるでしょう。無理に・・・とは言いませんが、出来れば一部隊の指揮を・・・あなたにお任せしたいのです。駄目ですか?」
まさかの返しに流石の一益も目を点にして皆光を見つめる。
陣の中に、何やら淡い桃の色が心做しか色付き始めるが、そんな中・・・ひとつの咳払いが場を凍りつかせた。
「んんっ。旦那様・・・一応妻である僕がいることを忘れてはいないだろうね?それになんだい?その臭い物言いは。おかしいね・・・僕はそんな囁きを聞いたことがないよ。あぁそうさ。分かったらとっととその巫女娘から手を離せ。僕の手が刀に伸びる前に」
陣の入口に鬼が出た。
ゆらりとどす黒い雰囲気を周囲に撒き散らす・・・斎藤龍興。
陣内の桃色は・・・全て一瞬で駆逐された。
「ひっ!鬼が出たのじゃ!みっちー!助けてたもう!」
思わず背後のどす黒い殺気に恐れをなした一益が正面にいた皆光へと抱き着く。
しかし当の本人は、表情を変えずに首を傾げるだけであった。
とりあえず、ねねにやるようにゆっくりと一益の頭を撫でる皆光。
その正面には、青筋を立てた龍興が仁王立ちしている。
(あれ?なんですか。このカオスな状況は・・・)
とりあえず、龍興を諌めるところから始めるか・・・と皆光は小さく本日何度目にもなるため息をこぼしたのであった。
そんな皆光の背後から、殺気と言うよりもどこか怒気に近い雰囲気を皆光は感じ取る。
背後を見た皆光は後悔した。
後ろにも鬼がおる・・・と。
皆光に対して無表情で刺すような視線を向ける五右衛門から極力不自然にならないように顔を背ける。
ゆ〜っくり、慎重に・・・しかし、パシッっと自身の襟首を捕まれ皆光の背筋が凍った。
何やら後ろでぶつぶつと何事かを呟く五右衛門・・・呪いではなかろうか・・・と皆光の背に嫌な汗が吹き出す。
「竹中氏の時は致し方なしと許したでござる・・・龍興氏のちょきは思わずしゃっきを感じられじゅにはいりゃれなきゃっちゃでごじゃるが・・・今度は滝川氏でござるか・・・そうでござるか・・・ふふふふ」
途中まで噛み噛みだった五右衛門の言葉が徐々にしっかりとしたものになっていく。
皆光はその不味さを十分に理解していた。
いわゆるマジ怒である。
「いつまでその娘を抱き締めているんだい?」
ど・・・どうすればいいのだ・・・。
皆光の脳は素早く回転するも・・・全く持って解決策を見出すことは出来なかった。
かくなる上は・・・。
逃げるが勝ち!である。
「また置いていくんですね・・・くすん・・・」
急いで陣の中から飛び出す皆光・・・その懐には一益が抱かれており・・・彼女は未だ放心状態である。
更に襟首を掴んだまま微動打にしない五右衛門が必然的にくっついており、龍興が皆光を止めるために皆光の腰に腕を回している。
傍から見れば・・・どんなハーレム?であるが、変わりたい人がいれば是非変わってあげたいくらいである。
陣の外に出た皆光・・・その外では非常に白熱した議論が繰り広げられていた。
その内容は・・・自分達の主君や推しについてある。
「大きい胸より小さい胸!永遠の幼女こそまさに至高である!っと俺達は考える訳よ」
そう言いながら前野某は拳を握り熱き瞳で語っていた。その背後ではやんややんやと川並衆達が沸き立っている。
「ああそうだ。清楚で可憐・・・穢れなきその存在はどんな至高の宝をも凌駕する・・・さては貴様・・・話が分かるな」
名前も知らない・・・だがどこか川並衆に似た雰囲気を醸し出す女性が、うんうんと頷いている。その背後ではこれまた川並衆に似た連中が、同じように沸き立っている。
「愛らしくも儚い・・・しかし何処か力強く・・・また芯のしっかりとした御様子。正しく・・・高嶺の花・・・そんな花を愛でるのが我々の役目ですから」
無表情ではあるが、何やら瞳を怪しく光らせているのは・・・長井道利。
「神算鬼謀・・・弱々しいがそれ故に保護欲が湧く・・・。ふん、不思議なものよな」
何処か悟った様子の義龍。
その瞳には・・・何処か後悔を孕んでいた。
「我らが親分は最高だぜ!」
「姫さまこそこの世の至宝!」
「姫様こそ正義・・・です」
「ふん。半兵衛こそが最も儚い存在であろう」
最後の一言・・・どうやら互いに互いの人物が違うと各々気づいた様子だ。
ぎらり・・・と目を光らせる各々。
「何言ってんだ!噛み噛みで恥ずかしがりながらも恥じらいを産むその表情・・・俺らはそれを見る為に生きてるってもんだ!」
「なんだと?我らの愛を侮辱するか!姫さまこそ至高の御方・・・その愛らしさこそが最高であろう!」
「違います・・・幼くも聡い。賢くも気高きそのお姿こそが至高と存じますが」
「幼くも賢い・・・それを言うなら我らが軍師・・・竹中半兵衛であろう。正しく守られる為の存在よ!」
「あんだとてめえ!新参者が偉そうに!親分が一番に決まってらァ!」
「貴様こそ目が腐っておるのではないか?姫さまこそが一番だ!」
「目を通り越して頭までとは・・・救いようがありませんね。我らが姫・・・斎藤龍興様こそが一番です」
「貴様らの愚考には些か呆れる。我らが半兵衛こそが一番に決まっておろう」
お互いがお互いに額を付き合わせ・・・。
何やってんだお前ら・・・と皆光は呆れ顔である。
どうやらうちの陣営にはまともな人間はいないらしい。
「うちにはロリコンしかおらんのか貴様ら・・・」
皆光は思考を捨てた。
それと同時に、その場にいた全員の目が皆光へと向かう。
「てめぇ!親分に触れてんじゃねぇ!」
「姫さま!?貴様・・・二度と日を拝めると思うなよ!」
「龍興様?何故あなたは手を出しておられるのですか?手をお出しにならないと仰られていたではありませんか」
「何故半兵衛がおらぬ!貴様・・・半兵衛を放っておいたのではなかろうな!」
議論を交わしていた者たちが一斉に皆光へと殺到する。
九鬼の海賊衆らしき女性にはケツを蹴り上げられ、川並衆には首を絞められ、道利には軽蔑の視線を向けられ、義龍には頭を掴まれている。
皆光の中で・・・なにかがキレた。
「いい加減に・・・しろ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
南伊勢北畠家攻め・・・ひと騒動あったが、皆光の説得?のかいもあってか滝川一益は少しばかり頬を染めながら渋々と承諾したものの受け取った兵は鉄砲隊百のみ。
先触れとして長野家に文を送ったが直ぐに快諾され領内の通行許可を得た織田軍はその自慢の進軍速度で早くも南伊勢へと歩みを進めていた。
既に津城(安納津城とも呼ばれる)のそばを抜けた織田軍。
既に敵の領地へと足を踏み入れ始めていた。
背後では、未だに馬に乗りながらやいのやいのと言い合いをしているが・・・もうどうでもいいレベルである。
戒めようにも・・・彼ら彼女らのロリコン度は群を抜いており、放っておけばおのずと議論が始まるのだ。
ならば放置してこちらに矛先が向かぬように傍観するしかない。
そんなどうでも良い事に思考を割いていた皆光の前に、偵察に出していた四忍衆のうち二人が戻ってきた。
奏順と右衛門である。
しかし、その姿は血に濡れ、土や葉っぱを身体の至る所に付けており、どこかで戦闘でもした様な有様だった。
「っ!?何があったのですか!?」
思わず軍を止めて馬から降りた皆光。
治療をさせるために人を呼ぼうと皆光が手を挙げようとしたその腕を、奏順が掴む。
なんだなんだと各諸将がその場に集まってきた。
そして、将が集まった時を見計らって・・・奏順が口を開いた。
「安心しロ。全部返り血ダヨ。それよりも・・・・・大将、早く軍を引き返すんダ」
「主君・・・鈴鹿山脈より・・・敵を補足・・・数は三千程度・・・」
そう言って、右衛門がこちらに何かを見せる。
それを見た皆光の目が大きく見開かれた。
「そんな馬鹿な・・・何故・・・何故・・・」
史実と違うではないか・・・と言うのをなんとか我慢した皆光は開いた口を閉じた。
右衛門の掌にある物・・・それは印籠である。印籠とは、様々な用途を持つが・・・そのひとつとして家紋が入った物がある。
恐らくは忍びが薬箱の代わりとして携帯していたものだろう。
そして、何より印籠には、自身の所属する大名の家紋を入れてもらうことで自身の素性を明かす目的で見せられることもあるという。
その印籠には、【隅立て四つ目】が描かれていた。
そして、その家紋を扱う大名・・・それは・・・。
「南近江・・・六角が伊勢に進出してきただと?」
皆光の知る歴史では六角の伊勢進出など一切の記述もなかった。
何故今まで歴史をなぞっていたのに・・・今更剥離するのか・・・皆光には分からなかった。
そんな思考がぐるぐると巡る中・・・口を開いたのは半兵衛であった。
「南近江の六角氏は伊勢の北側に位置する伊賀の国の間接統治も行っていたと聞いたことがあります。もしかすると伊賀からの進軍ではないかと思われますが・・・その・・・くすん」
「そう言えば・・・そんな話を聞いたことがありますね・・・」
しかし、皆光の反応は良くはなかった。
そんな皆光を見兼ねた一益がやれやれと言った様子で皆光に話しかけた。
「戦に絶対はない・・・そう申したのはみっちーであろう?倒す勢力がひとつからふたつになったからと言って、何をそんなに愚弄しておる。軍の大将はお主じゃ。今尚敵は準備を進めておる。早く決めねば・・・それこそ、無駄に兵を減らすだけじゃぞ」
「ふう・・・全く・・・。あまり時間はかけられないよ。一度戦線を下げた方が無難だとは思うがね」
一益・・・そして義興の言葉にようやく皆光の思考が元に戻る。
過ぎたることはしょうがない・・・ならば一度撤退・・・もしくは援軍を要請する事も考えねばなるまいと皆光は一度思考をすっきりさせるために自身の頬を叩いた。
「はははっ。お見苦しい所をお見せして申し訳ありません」
自嘲気味に笑った皆光。
そんな皆光に、さらなる凶報が舞い降りた。
治宗、定保の二人が戻ってきたのだ。
見慣れない女性もいる。
そんな二人が口を開こうとした時、共に戻ってきた女性が馬から降りて矢継ぎ早に口を開いた。
「貴様が小早川皆光か」
「そうですがあなたは?」
まるで皆光を品定めするように顎を親指と人差し指で挟み込みじろじろと見つめる女性。
そして、何やら一人でよしっ!納得した後おもむろに口を開いた。
「ふむ、皆光とやら・・・ちょっと結婚して欲しんだが・・・」
「違うじゃろ・・・まっことくっきーはおバカじゃの。姫に早く報告せよ」
皆光がまたもや思考停止しかけたところに、一益の助け舟が入る。
そんな彼女は、はっ!?と何かを思い出したような表情をすると、何やら焦った様子で口を開いた。
「そうでした!姫さま・・・本当に申し訳ありません・・・。このあたしが腑甲斐無いばかりに」
「良いからはよう聞かせてたもう」
何処と無く勝家に似た雰囲気を持つ女性・・・この女性が九鬼嘉隆らしい。
皆光がほう・・・?と声を上げた。
見事なナイスボディである。
と横合いから抓られ、思わず体を飛びあがらせた皆光・・・その横では龍興がジト目で皆光を睨み付けていた。
わざとらしく皆光は咳払いをすると、九鬼嘉隆に話し掛ける。
「今は刻一刻を争います。出来れば早く報告を伺いたいのですが・・・。あなたは長野家に行かれていたはずでは?」
「そうなんだが・・・実は・・・あ〜」
なんだったかな・・・と頭を抱え始めた九鬼嘉隆に、いよいよやばいと皆光は焦り出す。
そんな彼女を見兼ねた定保が、口を開いた。
「失礼を承知でご報告申し上げますわ。伊勢長野家当主・・・長野稙藤、長野家嫡男・・・長野藤定が本日・・・ご逝去なされました。家督は北畠具教のご子息・・・長野具藤が継承・・・兵を挙げる準備に取り掛かっておりますわ」
「その数は・・・その・・・二千程と思われますです。周囲の城からも兵を集め・・・まるで主君の軍の退路を断つ様に展開していましたです」
「馬鹿な・・・」
皆光は拳を握りしめ・・・唇を噛んだ。
展開が早いどころの話ではない。
早すぎるどころかまるで未来を分かっていたかのようだ。
自らの二手・・・三手先を行く謀略。
その裏では・・・誰が手を引いているのか。
こればかりは皆光だけの手には負えないと悔しげな表情をしながら・・・皆光は命令を出す。
「軍議を開きます」
コメント・・・評価等々お願い致します。
既に書いていただけた方々・・・誠にありがとうございます。
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本日もご閲覧ありがとうございました。