謀っ子世にはばかる〜織田信奈の野望   作:☆蛇☆

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オリジナル・・・だと思います。

12話執筆終わりましたので、五話目、投稿します。

主人公の心情とか・・・難しいですよね

感想をくださった方に感謝を・・・


主従

 

 

 

リーン・・・リリーン・・・。

 

遠くに聞こえる虫の鳴き声。

 

風が生垣を揺らす音。

 

真っ暗闇の中、皆光は敷かれた布団の上で、意識を取り戻した。

身体には丁寧に包帯が巻かれ、傍には水桶と手拭いがある。

目を凝らすと、犬千代が机に突っ伏して寝ているのが分かった。

 

(そうか・・・私は・・・勝家殿に斬られて・・・)

 

何故自分でも、あそこまでの憤りを感じたのか、皆光は分からなかった。

 

(と言うか・・・良くもまぁ助かりましたね・・・)

 

 

 

「犬千代・・・手当てしてくれていたのですね・・・そんな所で寝ていたら寒いでしょうに・・・」

 

皆光は、痛む体を労りながら、自分の上に乗っていた掛け布団を犬千代の背へとかける。

 

「おや、随分と可愛い寝顔ですね」

 

感情の起伏が少なく、今日一日、冗談を混じえながらも、終始無表情であった犬千代の寝顔を見て、皆光は微笑む。

しかし、その直後、犬千代の寝顔を覗き込む自分の姿を想像して恥ずかしくなった皆光は、痛みを耐えながらもしっかりとした足取りで、長屋を出た。

 

軒先には、誰かが上げてくれたのだろう。八の餌が置かれているが、所々、生け垣を齧った跡がある。

 

八は起きており、皆光が姿を現すと、首を上げ、胴体を起こす。

 

「そのままでよいですよ。八、ゆっくり休んでください」

 

八は、皆光の言葉に静かに、短く嘶くと、胴体を下ろし、眠る体制をとった。

 

そんな八を撫でながら、皆光は一人の少女の名前を呼ぶ。

 

「五右衛門。いますか?」

 

すると、周囲には誰もいなかったはずが、まるで最初から居たように、忍び装束を纏った少女が立っていた。

 

「蜂須賀五右衛門、参上つかまつる」

 

一瞬飛び上がった皆光だったが、原因が五右衛門と分かり、苦笑いした。

 

「小早川氏(こばやかわうじ)。寝てなくて良いでござるか?」

 

五右衛門から、労りの言葉が聞こえるが、皆光は、八を撫でながら、「やはり見てましたか・・・」と零した。

 

「未だ多少痛みますが、激しく動かなければ問題ありません。それよりも・・・」

 

皆光は、八を撫でるのを辞め、五右衛門に向き直った。

 

「いつから、私を観察していました?」

 

五右衛門は、目をぱちくりと、瞬かせたが、何故か嬉しそうに口を開いた。

 

「いつから気付いていたでござるか?」

 

困ったように、肩を竦めながら、皆光は答えた。

「貴方が、そうですね。私が勝家に斬られた時でしょうか?あの時は些か感覚が鋭くなってましたので、あの喧騒の中の隠れた殺気で・・・ね」

 

「そうでござったか。いやはや、忍びの殺気に気付かれるとは・・・」

 

五右衛門は感心したように頷くが、皆光の追求は止まらない。

 

「それで・・・いつから?」

 

五右衛門は気まずそうに答える。

 

「ずっとお傍にいたでござるよ。織田家の姫様を助けた時も、正徳寺でにょかいきぇんでも」

 

五右衛門は噛んだことが恥ずかしいのか、口布で口元を隠す。

 

「つまり、あの時からずっと私の傍に居たのですね・・・」

 

「そうでござる」

 

皆光は、心の中で思っていたことがある。それに、柴田勝家に斬られたことでそれがさらに強くなっていく・・・。

 

皆光は、重々しく口を開いた。

 

「・・・・・・ずっと、見ていたなら話は早いです。私は・・・私は貴方の主君たりえますか?」

 

皆光は、ずっと思っていたことを口にする。

 

「私は所詮、口先だけです。知略?ハハ、ただただよく口が回るだけです。武術?ちょっとばかり弓を齧っただけです。政務?生まれ育った環境が良かったからです・・・。どうです?それでもあなたは私に仕えますか?」

 

五右衛門はきょとんと首を傾げたが、その後直ぐに笑みを作りながら、話す。

 

「小早川氏は、何が不安なのか、分からないでござる。口先だけで良いではごじゃらんか。美濃の蝮、さいちょーどうさんをそのくちしゃきりゃけれ、その心をしゅかし、織田家の主君のわりゅぐちに怒り、織田家のごーゆーとなだきゃい、柴田勝家に斬りきゃきゃる。これりゃすべて、小早川氏の成した事でごじゃるぞ」

 

噛み噛みになり、顔を真っ赤に染めながらも必死に言葉を繋げる五右衛門に、少し・・・皆光はたじろいだ。

 

「ですが・・・」

 

「ですが、ではござらん。小早川氏は拙者が主君と認めた相手にごじゃる。」

 

「主君と認めた相手・・・」

 

「言ったでござろう?拙者は宿り木でござる。幹である主君を支えるのは宿り木であるしぇっしゃの役目でごじゃる」

 

五右衛門の覚悟を見て、眩しいものを見るかのように、皆光は目を細めた。

 

「そうですか・・・」

 

顔を伏せる皆光だったが、次に上げた時の表情は、とても柔らかかった。

 

(まさか・・・このような幼子に諭されるとは・・・)

 

見た目に寄らず、しっかりしている。そう、自分よりも。

 

(眩しいな・・・。このような子に、影なんて勿体ない。そう、この子はもっと輝くべきだ・・・)

 

皆光は、正徳寺の会見の時に信奈に感じた輝きを、五右衛門にも感じた。

 

(ならば・・・私も・・・)

 

覚悟を決めるべきだろう。

いつの日か、人を殺めるかもしれない。いや、もし矢に当たった将が死んでいれば、もう殺めている。

 

いつの日か失うかもしれない。

大切なものを。

 

いつの日か・・・。

死ぬかもしれない。

事故か、討死か、暗殺か、はたまた病魔か。

 

(まぁ、父上も言ってましたしね。神隠しにあったならば、一度死ねば戻れるかもしれないと。)

 

ならば、この地に沈むも一興。

 

この先、この世でやっていこうではないか。自信に足りないものはすべて、【求めればいい】

 

皆光は覚悟を決めた。

 

「腹を括ったでござるな?」

 

「おや?何故わかったので?」

 

「小早川氏は、何やら高ぶると体が震える傾向がありゅよーでごじゃるな」

 

「そう言う五右衛門こそ、噛まずに言えるのは、30文字が限界みたいですね?」

 

「う・・・うるさいでござる・・・」

 

「ははは・・・気にしませんよ。むしろ可愛らしいではないですか」

 

「むぅ・・・」

 

ようやく、柔らかい微笑みを見せた皆光を、ほっとしたように、しかし恥ずかしがり、そっぽを向きながら、五右衛門は安心したように笑みを浮かべた。

 

「さて、ではおひとつ五右衛門に聞いていただきたいことがあるのですが・・・」

 

「なんでござるか?」

 

「貴方は、私が未来から来たと言ったら、信じてくれますか?」

 

「・・・・・・・・・何がとは言わないでござるが・・・大丈夫でござるか?」

 

皆光は膝を折り、地面に突っ伏した。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆光は一通り五右衛門に説明した。

 

最初は全く信じた様子も無く、ただ呆れられたり、皆光が頭痛い奴認定されていただけであったが、大方話し終えた皆光の前で、ようやく五右衛門は納得したような仕草を見せた。

 

「通りで・・・」

 

「と、いいますと?」

 

「なに、一度、小早川氏に引っ掛かりを覚えたことがあったでござるが、にゃるほど、なっちょくいったでごじ・・・ござる。」

 

「引っかかり?ですか・・・」

 

「正徳寺にて、斎藤道三を小早川氏が、説き伏せた時、その時でござるよ」

 

「なるほど、まぁ、こちらの世界・・・と言うより時代では、歴史が好きな者にとっては既知でしたからね」

 

「むぅ・・・そういう事でござったか。それを拙者に話してよかったでござるか?」

 

ようやく信じてくれた(それまで目が痛かった)五右衛門を見て、皆光はホッと胸を撫で下ろす。

 

「えぇ、それを加味して、あなたには動いてもらわねばならない時が来るはずです。ですから、私は少なくとも五右衛門には話しておくべきだと思いました」

 

「織田の者達へは言わないでござるか?」

 

皆光は少し悩み、首を横に振った。

 

「私が知る者と同じ性格をしているのであれば、姫様はそも、そのような話は信じまいと、逆に姫様に話していない事をその家臣達に話すべきではないと思いますが」

 

「ふむ、それもそうでござるな」

 

「なので、これはあなたと私だけの秘密です。漏らさないでくださいね?」

 

二人の秘密、と言う言葉に、少しだけ五右衛門は動揺したようだったが、すぐに、「御意」と、返事を返した。

 

「さて、随分と長い間、話し込んでしまいましたね」

 

「拙者は良いでござるが、小早川氏は傷にさわるでござるよ」

 

「おや、心配してくれるのですか?」

 

「・・・・・・・・・」

 

「ありがとうございます。ですが、こうゆっくりもしてられないのですよ」

 

「どういう事にござる?」

 

「恐らく、しばらくすれば、また戦が始まります。その為の備えをと思いましてね。五右衛門に、頼みがあります」

 

「なんでござるか?」

 

「五右衛門、知り合いの忍びとか、います?」

 

「拙者ではご不満でごさるか?」

 

五右衛門が幾らか悲しそうな表情をするが、皆光は首を横に振る。

 

「申し訳ございません。言葉が足りなかったですね。頼みと言うのは他でもない。一人では、成せない事もございましょう。あなたが私を心配してくれたように、私もあなたが心配ですからね。」

 

五右衛門は、皆光の言葉に少し、頬を染めると

 

「何をすれば良いでござるか?」

 

とたずねた。

 

「あなたは川並衆を率いてはいますが、忍びとして動けるのは、あなただけどお見受けします。ずっと、私につききっきりでと言うのも、無茶な話でしょう?自分の露払い位はしたいものですが、また勝家殿と対立して斬られてしまっては、また心配をかけてしまう。主が何度も斬られるのは、流石のあなたでも、ごめんでしょう?」

 

「そうでござるが・・・拙者は・・・」

 

「それに、言ったでしょう?私はあなたが心配なのですよ。それに、未来の事は、秘密にしておきたいのです。ですが、恐らく未来の知識が必要な時が多々来るでしょう。そういった時の情報源として、偽れる部分の必要です。」

 

幾分か納得いっていない様子の五右衛門を、宥めるように皆光は言葉を続ける。

皆光の言葉は、全て建前ではなく本当の事だ。

 

「ですので、どのような事情を持っているものでも構いません。忍びを集めてきて欲しいのです。期限は七日です。しかし、無理はしないでください。最低限で良いです。抜け忍でも、どのような失態を犯した人物でも良い。ただし、主君の寝首を掻いたり、完全に悪の道へ走った者はダメです。そのような者とは、接触もしないように。分かりましたか?」

 

「御意にござる」

 

五右衛門は臣下の礼として、跪きこうべを垂れる。

 

「期限は七日。七日後の夜。必ず生きて戻ってきなさい。散!」

 

一瞬で消えた五右衛門の居た場所を暫く見つめていると、後ろからふと声が掛かる。

 

「皆光・・・誰かいた?」

 

未だ眠そうに目を擦りながら、長屋の入口から顔を覗かす犬千代。

 

「おや、起こしてしまいましたか。失礼、気が高ぶってしまって大声を出してしまいましたね・・・」

 

「そう・・・」

 

「さぁ・・・もう一眠りしましょう。眠らないと、大きくなりませんよ?」

 

「余計な・・・お世話」

 

「イッッッ」

 

思い切り足の指を踏まれた皆光は、情けない声を出しながら、蹲る。

 

 

(必ず・・・帰ってきなさい)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





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