謀っ子世にはばかる〜織田信奈の野望   作:☆蛇☆

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ご閲覧ありがとうございます。

注意・オリキャラが出てきます。が今後は増やす予定はありませんので、何卒、お許しください。


米騒動 前

 

 

皆光が清洲城のうこぎ長屋に来てから、一週間が過ぎた。

 

皆光は、これ程短かった一週間を過ごしたのは初めてだった。

 

何故か信勝一派には距離を置かれ、元気なねねに連れ回され傷が開き、犬千代の家の間にあった生け垣が消えて傷が開いたり。

弓と矢の手入れをしていると、ねねと犬千代の二人に見たいとせがまれ、弓を射ると同時に傷が開いたり。

浅野の爺に槍の稽古をと、亡き木下藤吉郎の槍を一心不乱に振るい、傷が開いたり・・・。

何故か部屋から犬千代の私物が出てきて驚きで傷が開いたり・・・。

 

そのうち喋り出すのではないだろうかと言うほど、傷が開いた。

 

狩衣をはだけさせた肩からは、未だに真新しい包帯が巻かれている。

 

周囲が常に騒がしいせいか、元の世界が恋しくなる事はなかった。

 

その間、何度か信奈に謁見を求めた皆光だったが、どうやら信奈は忙しいらしく、丸々一週間、皆光は放置されていた・・・が。

 

今日、本丸に呼び出された。

 

多芸な浅野の爺に、修復された、勝家に両断された一張羅であったが、綺麗に修復されている。

 

どこにもおかしい所はないかと、一通り身嗜みを整え、皆光、信奈の部屋へと足を踏み入れた。

 

部屋の中は、未来で生活していた自分の部屋と大して変わらなかった。

 

とは言え、時代の違いはあるが・・・。

 

「・・・・・・連れてきた。小早川皆光」

 

「デアルカ。犬千代、皆光、ちこう寄りなさい」

 

犬千代と皆光は、信奈の近くへと、寄る。

何処と無く不機嫌そうな信奈を見て、皆光は原因が自分にあると予想した。

 

「姫様、お久しぶりでございますね。何度か謁見を申し込んではいましたが、まさか今日まで放置されるとは思いませんでしたよ・・・」

 

と、皆光はおどけて見せるが、どうやら逆効果だったようだ。

 

「うっさいわね・・・誰のせいで・・・ま、いいわ。いえ、よくはないわね」

 

「や、失敬。さすがにふざけ過ぎましたか。大方、私の首を差し出せと信勝様と揉めておられるのでしょう?」

 

信奈の眉が少しだけ吊り上がる。

 

「あら、何故そう思うのかしら?」

 

皆光は首を竦め、

 

「だって、私、あの方斬ろうとしましたもん」

 

となんでもないかのように言い切った。

犬千代にももを思い切り抓られ、身をよじる皆光。

 

「イタタッ!い、犬千代!もげます!もげますってば!」

 

ようやく離した犬千代は、皆光を軽く睨むが、それどころではない皆光は、涙目でももをさする。

 

しかし、犬千代でこれなのだ。信奈の怒りは怒髪天を衝く勢いで膨れ上がった。

 

「ええ!そうよ!全く、あんな愚弟くらいなら、あんたなら軽く無視してくれるか、蝮の時みたく口でなんとか丸め込んでくれると思ったのに!」

 

「いや・・・丸め込むというか・・・」

 

「うっさいわね!手討ちにするわよ!」

 

そう言いながらも、信奈は太刀を抜き放つ。

 

「や、抜いてる!もう刀抜いてます!」

 

「姫さま・・・落ち着く」

 

「ふぅー、ふぅー、ああもう!とにかく!今からあんたに仕事を与えるわ!それが出来なかったら打首よ!」

 

「えぇ・・・」

 

あまりの怒り様に、流石の皆光もおどける余裕なく、姿勢を正した。

 

「して、その仕事とは?」

 

信奈が手を打つと、背後に控えていた小姓が、積み上げられた小判の束を持ってきて、皆光の膝元に置いた。

 

「これは?俸禄・・・にしては多いですが・・・」

 

「はぁ?こんな大金、あんたに出すわけないでしょ?」

 

「・・・デスよね〜」

 

皆光は項垂れる。ここに来てから一度もお金を貰っていないため、いい加減、ウコギ汁にも飽きてきているのだ。

 

「三千貫あるわ。期限は二週間。これで、米を買ってくるのよ」

 

「ふむ、米ですか。所で犬千代、これだけあればここ、清洲の相場だとどれほど買えますか?」

 

「・・・今の清洲の相場だと・・・四千石。これ以上は買えない」

 

「なるほど・・・ただのお使いではない訳ですか・・・それで?いくらお求めで?」

 

皆光と犬千代の会話に、先程は、怒りで真っ赤になっていた信奈であったが、今度は感心したように、そして、皆光の言葉を聞いて楽しそうに、笑みを浮かべた。

 

「ふん。知恵者を自称するだけあるわね。そうよ、その倍・・・八千石は買ってきなさい。出来なければ、打ち首よ」

 

「ふむ。分かりました。八千石でよろしいのですね?」

 

そう言って、犬千代と共に席を立つが、部屋を出る際に、「そうね、一万石でもいいわよ?」と信奈のからかう声がした。

 

「いや・・・犬千代の話、聞いてました?」

 

これには流石の皆光も、突っ込んだ。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

長屋に戻ってきた皆光はすぐに・・・・・寝転んだ。

 

「・・・・・・どうするの?」

 

「考えは既にあります・・・が、こればかりは犬千代と私の二人だけでは時間がかかりますしね。とりあえず、夜を待ちます」

 

犬千代は、訳が分からないといったように、首を傾げる。

 

「・・・なぜ?」

 

「とりあえず、寝ましょうか。ゆっくりと時が過ぎるのを待ちましょう。そうすれば、分かります。」

 

「・・・分かった」

 

未だに不思議そうにしながらも(最近ようやく犬千代の表情が少しわかるようになった) 何故かこの家にある犬千代専用の布団へと犬千代はもそもそと入っていく。

 

(やれやれ、全く・・・おかしな同居人です)

 

世話好きなのか、甲斐甲斐しく世話を焼いてくれている犬千代に、心の中で礼を言いながら、皆光は目を瞑った。

 

(ん?いつの間に犬千代の布団が?)

 

皆光は、考えるのをやめた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと目を覚ますと、外は真っ暗であった。

 

何故か長屋の明かりは灯っており、皆光は重々しく体を起こすと、犬千代が台所に立っており、見慣れた鍋をグツグツと煮ている。

 

「犬千代・・・おはようございます」

 

「外はもう夜、こんばんは・・・が正しい」

 

犬千代は、さっと、鍋を椀によそうと、皆光と自分の分を用意し、席に着いた。

 

「いつもすいませんね・・・頂きます」

 

いつも、食事をする時はお互い無言で食べるが、珍しく犬千代が口を開いた。

 

「皆光、恨まれるような事・・・した?」

 

「おや、と言いますと?」

 

まるで分からないと言ったふうに皆光は目を瞬かせた。

 

「・・・監視されてる。でも気配が薄くてどこにいるか分からない」

 

ふと、犬千代の足元を見ると、手の届く範囲に愛用の朱槍が置かれていた。

 

「ふむ・・・まずは味方か・・・敵か・・・ですがまず間違いなく味方でしょうね」

 

「・・・なぜ?」

 

(私が起きるまで待っていてくれたのですか。お二人共・・・ね)

 

「今にわかります。待たせましたね・・・・・・五右衛門」

 

すると、襖の先からはっきりと返事が帰ってきた。

 

「・・・蜂須賀五右衛門、ただいま戻ったにござる」

 

皆光は立ち上がり、襖を開け放つと・・・。

 

 

そっと閉めた。

 

皆光の不可解な行動に頭に疑問符を浮かべる犬千代と五右衛門。

 

「や・・・ちょっと疲れているのかと思いましてね・・・」

 

もう一度襖を開くが、現実は無常にも変わらない。

皆光は、時代は変わってくれるんですが・・・とこぼした。

 

そこには、五右衛門の他に、四名の忍びがいた。

五右衛門と似た忍び装束を纏った・・・少女達が。

 

「・・・・・・ご、五右衛門、良く戻りました。任務ご苦労様です」

 

「もったいなきお言葉」

 

そうして跪く五右衛門以下四名。

 

皆光の横へと槍を携えながら移動した犬千代は、目を細めながら、油断なく五右衛門達を睨みつけている。

そんな犬千代を宥めるかのように、頭を撫でながらニッコリと微笑む皆光は、犬千代に声をかける。

 

「安心してください。私の相方の忍びですよ。背後の方達は、初めて会いますが、私が五右衛門に頼んで連れてきてもらった忍び達です」

 

ようやく槍を下ろした犬千代は、一言「・・・驚いた」と言いながらも未だに目元は油断なく五右衛門達を見据えている。

 

「五右衛門、彼女達が?」

 

「左様にござる。小早川氏に言われた通りの者達を集め申した」

 

「ありがとうございます・・・しかし何故?いや、なんでもありません」

 

何故皆、少女なのか聞こうとしたが、途端に鋭い視線を横から感じ、閉口する皆光。

 

「して、背後の方達、お名前を伺っても良いですか?」

 

すると、おもむろに頭を上げ、左から順番に名乗っていく。

 

「伊賀崎 奏順(いがさき そうじゅん)ダ」

 

と、綺麗な金色の髪を肩口まで伸ばした少女が、いたずら好きっぽさ漂うが暗くニヒルな笑みをしながら、名前を名乗る。

 

「望月 治宗(もちずき はるむね)です」

 

と、黒髪を背中の中程まで伸ばした、幸薄そうな少女が名乗る。

真っ直ぐ見つめる黒い瞳には、不安が見て取れる。

どことなく、自分に自信が無いような印象を受ける。

 

「篠山 右衛門(ささやま うえもん)・・・」

 

と、白い髪を後ろで結った、青い瞳をした少女が名乗る。

名乗りながらも、全く表情が読めない・・・と言うより、どこか物悲しそうな雰囲気を醸し出し無表情にこちらを見つめる。

 

「藤林 定保(ふじばやし さだやす)・・・と申します」

 

と、青い髪を左右に結ったどこかしっかりしていそうな少女が名乗る。

まっすぐとこちらを見つめる瞳には、しっかりとした意思を感じる。

 

「蜂須賀五右衛門でござる」

 

「いえ、あなたは知っていますよ?」

 

先の四人に続いて、名乗った五右衛門に突っ込む皆光。

 

「今のは名乗る流れかと思ったでござる」

 

どこか抜けている相方に呆れつつも、五右衛門が無事、戻ってきた事に安堵し、微笑む皆光。

 

「前田利家、あだ名は犬千代。歳は12才。生まれは尾張「はいはい、もう終わりましょう?いつまで経っても、私が挨拶出来ないではないですか」むぅ・・・」

 

流れに乗って名乗り始めた犬千代を止めて、皆光は改めて名乗る。

 

「どうも、初めまして、小早川皆光と申します。よく来てくれました。あなた方四人は私に仕えるということでよいですか?」

 

どうやら、説明は既に五右衛門から聞いているようだ。否と言ったものはいなかった。

 

「ふむ、では、明日から仕事です。皆さんの協力が必要となりますので、今日はもうお休みなさい。五右衛門、まとまったお給金が出せるまでは、この子達を任せても?」

 

「承知したでござる」

 

「では、明日、明朝にここに集まってください」

 

「「「「「御意」」」」」

 

「散!」

 

返事をした途端、全員の姿が掻き消える。

 

皆光は、忍びはすごいですねー・・・と思いながらも、ずっと聞きたかったことを聞けなかった事に、今気づいた。

 

「なぜに全員幼女?」

 

「犬千代は、もうおっきい」

 

「ちょ・・・ちが!あなたではないですグァ!?」

 

皆光の腹部に、犬千代の肘が突き刺さった。

 

 






この次の次のお話、個人的に序盤最高の仕上がりかもしれないと思います。
絶対面白いと思いますので、期待していてください。
ではまた明日(・ω・)ノシ
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