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オリキャラとなる忍び達には、それぞれエピソードや、生い立ちなどがございますが、当分そのストーリーに触れる事はございません。
翌朝、皆光の前には五人の忍び達が侍っていた。
そして、もはや定位置となりつつある皆光の右隣には犬千代がいる。
「皆、おはようございます」
静かに頭を垂れる五人に、皆光は苦笑する。
「では、早速・・・まずはこの三千貫・・・元手を増やすところから始めましょうか」
「元手を増やす?でござるか?」
五右衛門が疑問に思ったのか、挙手しながら皆光に疑問をぶつける。
「はい。そこで、あなた達忍びには、他国・・・周辺国へ散ってもらい、尾張とその周辺国とで、相場を調べて欲しいのです。」
「なるほどナ。この国で安い物を他国で高く売れってことダロ?」
そうのたまったのは、伊賀崎 奏順、金髪のロリ忍だ。
「おや、理解が早くて助かります」
他の忍び達も納得したようだ。
「今から・・・調べる?」
「ええ、それを皆に頼みたいのです。清洲は勿論のこと、近隣ですので尾張、伊勢、美濃、三河・・・この四カ国に絞ります。それぞれ一人ずつ各国へ散ってください。これについては、奏順、治宗、右衛門、定保に任せます。よろしいですか?」
「任せロ」
「了解しましたです」
「ん・・・」
「お任せ下さい」
「二日もあれば充分だナ、またこの時間に集まるカ」
上から奏順、治宗、右衛門、定保が返事をする。
最後に奏順が日時を指定した。
「五右衛門には、別に仕事を用意しました。各々終わり次第、戻ってきてください。散!」
皆光が指示を出すと、四人の姿が掻き消える。
最近、この「散」と言う言葉を使うのが、ちょっと楽しい皆光であった。
が、すぐに五右衛門に向き直る。
「小早川氏。拙者に仕事とは?」
皆光は、笑みを消して犬千代に席を外すように頼んだ。
犬千代は訝しみながらも、了承、しばらく戻ってこない事を皆光に伝えると皆光の長屋を出ていった。
「さて・・・五右衛門の仕事ですが・・・」
ここで皆光は一度言葉を切り、五右衛門はただ事では無い空気に、気を張り詰める。
「五右衛門には、姫様の弟君である、織田信勝様の監視を頼みたい」
「ほぅ・・・なにか心配事でも?」
五右衛門の紅い瞳が怪しく光る。
「いいえ、ただ確定事項なのですよ。そう・・・五右衛門にも話していなかったですね。この仕事を引き受けた経緯を」
そう言った皆光は、自分が信勝に斬りかかったせいで、信勝が自分の首を欲している・・・がそれを信奈が押さえ込み、さらに、他の者には出来ないような仕事をやらせ、それを達成させることで、信勝の事を帳消しにしようとしている事を、そして失敗すれば、皆光の首が物理的に飛ぶことを五右衛門に説明した。
「という訳なんですが、正直言って私はこの仕事は失敗する気はありません。が、恐らく成功したとしても・・・いえ、恐らく道中でも邪魔をしてくるでしょう」
「つまりは小早川氏が心配なのは・・・謀反・・・でござるな?」
「流石です。と言うより、恐らく確実に挙兵するでしょう。そうなれば、内乱は必須。最悪今川が兵を率いて内乱状態の尾張に攻め込んでくるでしょう。同盟を結んだとは言え、恐らく斉藤家もすぐには対応出来ますまい。何せ、一枚岩ではないのですから・・・」
そう言ったものの、皆光は常に絶やさない笑みを未だ保ち続けている。
「なるほど・・・そこまで見通していたでござるか・・・流石、木下氏が弟分とみこんにゃおのこで・・・ふふふ・・・」
何やら興奮して不敵な笑い声を上げる五右衛門に、皆光は軽く頬を引き攣らせながら
「頼めますか?」
と問うた。
「無論」
「とは言え、あなたの郎党、川並衆とは私は面識がありません。売り買いや荷運びの陣頭指揮は、あなたに頼みたいので、途中で交代を入れます。ですので、二日後のこの時間に戻ってきてください」
「承知したでござる・・・ふふふ・・・」
余程忍びらしい仕事が嬉しかったのか、ずっと笑みを浮かべたままの五右衛門を少し怖く思いながら送り出す。
「後は結果のみ・・・」
そう言った皆光の口も・・・笑っていた。
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二日後、戻ってきた四人衆からの報告を手早く纏めると、五右衛門と右衛門を交代させ、右衛門を末森城へ、五右衛門を川並衆の陣頭指揮にあて、詳しく説明をした上で、五右衛門含む四人衆に先導させ、川並衆を送り出した。
その間皆光は、信奈から正式に私兵百を貰い、(編成は騎兵百)二週間みっちり彼らと傷が祟って中々相手をしてやれなかった八に跨り、訓練を行った。
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〜二週間後〜明朝〜
「これは・・・またすごい量でございますね・・・」
皆光は素直に絶句した。
隣にいる犬千代も絶句していた。
部屋にあるお金、合わせて五万貫である・・・と五右衛門が教えてくれた。
「増やしすぎましたかね・・・」
「・・・見ればわかる・・・やりすぎ・・・」
「ふふふ・・・これも小早川氏の策略の賜物でござる」
「すげーナー。あんた、商人の才能あるゾ」
「まさか・・・これ程とは・・・です」
「私達も走り回ったかいがありましたわ」
皆、思い思いの感想を述べていくが、今日が約束の日、刻限が迫っている。
皆光は手早く指示を出す。
「では、この四万貫で、尾張中から米を集めてきてください!米を買い終われば、そのまま清洲城へ、私は用意がありますので、少し外します。残りのお金は、今後あなた達へ支払われる給金になりますので残しておいてください。あと、三千貫だけ貰いますね?」
そう言って、慌ただしく動き始めた皆の背を、皆光は見つめながら、三千貫を包み、背中に下げる。
「さてと、やりますか・・・犬千代、あなたは私についてきていただきたい」
「分かった・・・」
各々慌ただしく長屋を飛び出して行く中、皆光も、この最近で急に逞しくなった八の元へと急ぐ。
「乗ってください!犬千代!」
犬千代を八の背に乗せ、最近すっかり大将と慕ってくれる兵達の元へと急ぐ皆光。
そして、練兵場として、使っている平野に着くと、既に思い思いの修練をしている騎兵達が、皆光に気づき、集まって来る。
「お〜いみなぁ〜!大将が来たみゃあ〜!」
「大将!今日はどんな訓練をするだなも?」
「相変わらず立派な馬だにやぁ〜・・・」
そう言って集まってきた兵達に、皆光は挨拶を返し、
「すみませんが、少し頼みを聞いていただきたいのです」
そう言った皆光は、犬千代と兵士達に説明を済ませ、その場を去っていった。
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清洲城に向かう道すがら、皆光の髪を散らせながら、苦無が降ってきた。
ストっと言う快音と共に、地面に刺さる苦無。
皆光の額から冷や汗がこぼれ落ちる。
皆光は、周囲の人気を確認し、苦無を拾い上げ横道に逸れた。
人気が無くなったことで、皆光は手首を使い、振り向きながら苦無を後ろに投げる。
それを危なげなく受け取ったのは、右衛門。末森城で信勝の動向を監視させていた忍びである。
「主(あるじ)・・・末森城にて・・・挙兵の兆しあり・・・」
率直に結果を告げる右衛門に、皆光は慌てる事もなくいつもの飄々とした笑みを浮かべたまま
「そうですか」
と答えた。
「それと・・・信勝の・・・若侍が・・・主の計画・・・邪魔しようとしている・・・」
それを聞いた皆光は、更に笑みを深める。
「挙兵と、妨害・・・読んでいないとでも思ったか・・・信勝」
「どうする・・・?」
「妨害は既に、犬千代に策を授けてあります。挙兵も勿論・・・右衛門、五右衛門にこの事を、その後は彼女の指示に従うように、他の者達への言付けを頼みます」
「・・・御意」
そう言って右衛門は消えた。
歩みを再開する。
「王手・・・」
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清洲城へ登城した皆光、真っ直ぐに信奈の待つ本丸へと足を運んだ。
部屋に着くと、いつもの格好で金平糖を転がしている信奈が居た。
部屋に入り、信奈の目の前に腰を下ろす皆光。
「姫様、しばらくですね」
信奈は金平糖を置くと、面白くなさそうに皆光を見つめた。
「えぇ、久しぶりね。それで?あんだけ自信満々に言っときながら失敗したわけ?」
「んなわけないでしょう?」
そう言って、信奈の目の前に、包みを置きそれを解く。
「しめて三千貫。全て返納に参りましたよ」
流石の信奈もこれには目を剥いた。
「はぁ?!あんた!三千貫返してきてどうすんのよ!米は?って三千貫がある時点で・・・」
「おや、米ならば今私の乱波が買い集めていますよ」
「あんた・・・頭大丈夫?」
「おやおや・・・手厳しい」
おかしなものを見る目で、信奈は皆光を見つめる。
しかし当の本人はどこ吹く風とやら・・・である。
「米が来なかったら打ち首よ?あんた分かってるの?」
「ええ、知ってますよ、あ、すいません・・・茶をひとつ頂いても?」
信奈の事をそっちのけで女中に茶を頼む皆光に、信奈の額に青筋が立つ。
「あんた、最近なんか遠慮が無くなってないかしら?誰が主君か教えてあげましょうか?ん?」
そう言いながらも幽鬼の様にゆらりと立ち上がり、白鞘の刀を抜き始める信奈にすら、皆光は余裕を崩さず笑みを絶やさない。
「主君なら目の前にいるではないですか。ええそうですとも」
「こんのっッッッッ!」
刀を抜いたり刺したりとガチャガチャさせている信奈を見て、皆光はやれやれ、と肩をすくめる。
「さてと、揶揄うのもこれまで・・・あの〜・・・真顔で刀を首に当てないで欲しいのですが・・・」
チャキ・・・ブォン!
首元に当てた刀を、遠慮なく振り切った真顔の信奈の刀を、寝そべる様に避ける皆光。
「・・・今殺す気できましたよね?」
信奈はニッコリ笑った。皆光も笑った。神だって仏だって、笑っただろう。
「あんた、うざい」
またもや、刀を構え始める信奈に、皆光は、さすがにまずいと思った皆光は、出来うる限り後ろに下がりつつ口を開いた。
「はぁ・・・姫様。ひとつ、お聞きします」
「はぁ?何よ。くだらないこと言ったら斬るからね」
相変わらず斬る気満々な信奈に、未だ若干後退りながら話す。
「姫様は、弟君をどう思われてます?」
それを聞いて、ようやく刀を収め、刀を肩にかけながら座り込んだ信奈は、渋面をしながら、無言で鞘に収めた刀を見つめる。
「勝手ながら、動向を探る為に末森城に乱波を放っておりました」
信奈は興味無さそうに振る舞いながら、聞き耳を立てる。
「それで?」
「・・・織田信勝、末森城にて挙兵の準備をしております。それと、私が今行っている米集めも、妨害する為に隊を派遣するとの由」
信奈の渋面が消えた。
「そう・・・ならこっちも迎え撃つ準備をしなきゃね」
そう言って立ち上がろうとする信奈の表情は、冷たい。
(これが第六天魔王としての姫様・・・か・)
「あんたも準備しなさい。末森城を攻めるわ」
そう言って、部屋を後にしようとする信奈だったが、刀を振り回され、入口に追いやられた皆光がどかない限りは、出られない。
しかし、皆光は席を立とうとはしなかった。
「どきなさい」
「姫様・・・私に「退きなさいって言ってるのが分からないの!」・・・」
「命令よ。皆光、退きなさい」
皆光を無表情で見つめる信奈だったが、全く動く気配がないのを見ると、収めた刀を再度抜き放つ。
「最後よ。退きなさい」
「ふふふ・・・」
「そう、残念だわ」
そう言って刀を振り上げる信奈をずっと笑顔を貫いていた皆光は、怖気付く事無く、口を開いた。
「信勝殿を斬られるか?姫様」
未だに無表情のまま信奈は
「ふん、口を開いたと思えばそんな事?急に命が惜しくなったのかしら?」
「いえいえ、斬りたければ、斬ればよろしいですよ」
「それもそうね」
「そうやって、全て斬って行かれるおつもりか?」
無表情だった信奈の顔に、一瞬の揺らぎが生じる。
その揺らぎに気付いた皆光は、ようやく立ち上がった。
「姫様、私に策がございます。何も国力をすり潰し合わなくとも良いでしょう。末森城・・・無血開城させて御覧に入れましょう」
「そんなこと「出来ますよ?それに、ほら、米が届きました」え?」
皆光は、信奈へ窓の外を見るように促す。
先程までの視線で人を殺せそうな雰囲気はどこへ行ったのか、信奈は窓の外へ釘付けにっている。
そこには、膨大な数の米俵が次々と城内に運び込まれている。
長い長蛇の列は終わる事なく、浅野の爺とねねが運び込んでいる川並衆とそれを手伝う侍衆を笛と太鼓で鼓舞していた。
そして犬千代が、本丸へと上がってきた。
「ものすごい数だわ!一体いくつ・・・でもあんた!金は私に返したじゃない!」
「・・・十万俵」
「ふむ、しめて、四万石と言った所でしょうか」
「なっ!?じゅ・・・四万石って・・・」
「おや、金なんぞ増やせば問題ありますまい?」
信奈は、引き攣った笑いを浮かべながら「種子島を買ってもお釣りが来るわ・・・」とぼやいていた。
「それで?我が知恵、如何様に?」
信奈は、隠しきれない満面の笑みを浮かべながら、
「皆光・・・あんたに末森城攻めを命じるわ。兵は・・・」
「言ったでしょう?無血開城と、私の私兵だけで充分です。それに、あまり大っぴらに動き過ぎると、今川に気取られますよ?ですので、必ずや、成し遂げてみせましょう」
「デアルカ・・・」
喜んでいた信奈の袖を、犬千代が引いた。
「・・・姫さま・・・犬千代を、斬る」
「えっ?ちょっと、何を言い出すの」
「言ったでしょう?姫様、信勝様は我らの仕事に兵を出したと」
「っ!?まさか!」
「そう・・・犬千代はさっき、信勝さまの小姓を斬った。法度を破った」
「そんな事・・・」
苦しそうに顔を歪める信奈に、皆光は助け船を出す。
「犬千代、少しの間出奔してきなさい」
「・・・出奔・・・」
「忍び達から、信勝に挙兵の動きありと報告がございました。今夜、私が末森城攻めを行います。その間だけは、隠れていなさい」
「・・・でも・・・」
「私の成した策が不完全だったせいです。ならば自らの失態を拭うだけ、それに、私は犬千代が斬られるのを黙って見ていられません。姫様だって、犬千代を斬りたくはないでしょう?」
「嫌よ!絶対に犬千代を斬ったりなんかしない!」
信奈は、首を横に振りながら斬る事を拒絶する。
「犬千代が斬られても、謀反は必ずや起こります。ですので、お願いです」
「・・・・・・分かった・・・」
そう言って信奈に擦り寄る犬千代は、
「姫さま・・・お別れ・・・」
と告げて本丸から飛び出そうとする。
「犬千代!」
「・・・皆光・・・姫さまを頼んだ・・・」
「えぇ、勿論。帰ってきたら、今回の礼をしなければですね」
「ん・・・約束・・・」
「ええ・・・約束です」
次話、作者が自信満々に書き上げたと言った話でございます。
最終調整を行い、明日、投稿予定となっております。
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