あと、検討した結果、桃科さんは名字を「白桃(しらもも)」に替えました。
ごめんよふみふみ……
今日の出撃は東京シャードを離れて琵琶湖シャード近海で、とのことでした。
以前にもあって、その時行ったのは私ではなかったのですが、どうやら叢雲傘下の事務所所属の人が初出撃らしく。
その後詰としての出撃だとか。
いつもと違う宙域ではありますが、新人さんの為とあらば、この吾妻楓、全力でサポートしましょう。
当然ながら東京シャードと琵琶湖シャードはそれなりに距離はあります。でも今回は大型の出現の可能性が急に高まったとかで、高速艇での移動になりました。
「ねぇねぇ、今日は移動が長いね、どこ行くの?」
「リン、聞いてなかったの? 今日は救援で琵琶湖シャードまでいくってオペレーターさん行ってたよ」
「あれー、そうだっけ?」
「リン……」
少しぼんやりした様子で疑問を投げ掛けたのは日向リンちゃん、それにクールに答えたのは小鳥遊怜ちゃん。私のチームのメンバーでリンは焼夷属性、怜ちゃんは冷撃、私は雷のバランスのとれたチーム。
と、そこに通信が入る。
『お嬢さん方、ご歓談中申し訳ないがそろそろだ。ハンガーの方に移動を頼むぜ』
「了解いたしました。 直ちに向かいます」
『俺はお嬢さん方を放出したらその時点での宙域で待機する。 いいか、絶対に帰ってこいよ』
高速艇のパイロットのおじさんがそう言うのにうなずきを返し、私はハンガーに出てギアを装着。琵琶湖シャードの管制宙域に切り替わったのを確認すると、管制官に繋ぎつつ、宇宙にこぎだした。
「こちら叢雲社所属アクトレス、吾妻楓以下2名。琵琶湖シャード管制、応答願います。」
『《こちら琵琶湖シャード管制。ようこそ本シャードへ。貴方たちの目的は、湖西事務所のサポートで合ってる?》』
「はい、それで問題ありません。」
『《了解しました。 今ランデブーポイントの座標を送信します。 確認次第、そちらに向かってください。》』
「……座標を確認しました。これよりランデブーポイントに移動を開始します。」
『《特に急がなくても大丈夫です。湖西事務所のアクトレスも、まだ戦闘は開始していませんし、観測できる範囲でのワープドライブの予兆もありませんから。》』
「了解しました」
『《ああ後、湖西事務所さんに新人さんが居るのは知ってる? その子の経験の為に、2チーム間の通信をその子がすることになってるの。 優しくしてあげてね?》』
「そうでしたか。 そういうことならこの吾妻楓、微力ながらお手伝いいたします。」
『《気負わなくていいからね? ……それじゃあ改めて、移動をお願いします》』
「『『了解」』だよ~』
思わずまったりと返したリンを睨むが、彼女はどこ吹く風、といった雰囲気である。
まあそんなリンはいつもの事だし、怜ちゃんの方を見ても、やれやれといった様子。
私はひとつ、気合いを入れ直すとランデブーポイントに向けて舵を切りました。
道中ヴァイスの出現も、その兆候もなく。
しばらく移動していると、やがて目視で何人かのアクトレスを確認しました。
それとほぼ同時に管制が通信で目の前の集団が湖西事務所の人間で、今から通信を開く、と言ってきました。
向こうから開いてくる、とのことなので合流しつつ少し待機しているとやがて開いた通信の向こう側から、やや緊張している硬い声が。
そういえば私にもこんな頃がありましたね、と思いつつ、回線を繋ぎ、私も応答します。
『こちらランデブーポイント、湖西事務所所属アクトレス河瀬翠。叢雲本社隊の応答を願う』
「はい、こちら叢雲工業所属アクトレス、吾妻楓です。どうかよろしくお願いいたします」
そう、返答した、瞬間。もちろん無いものだが、空気が変わった。
『あがつま……かえで……?』
「……? ええ、私は吾妻楓ですが……」
そう、改めて返答をした、その時。
『______!』
声にならない叫びが聞こえた。一瞬、どこから聞こえたのかわからなかった。ややあって、今通信を開いているのは湖西事務所の、新人さんだな、と思い至って、
エリア通信で管制官の慌ただしい声が聞こえてきた。
『《河瀬翠のバイタルデータに異常を観測した、周辺アクトレスは状況を知らせろ!》』
『こちら湖西事務所、白桃です。翠は急に叫びだして頭を抑えています! こちらから観測できるのはそのくらいです!』
「こちらは叢雲、吾妻です。私が通信に応答した時にその異常が起こりました。接触しますか?」
『《二人に感謝する。管制としては現状は異常の観測で精一杯だ。エミッション適性値のギア装着中の急変動など、前代未聞だぞ……! 》』
「エミッションの、急変動……?」
エミッション適性。
平たく言えば、対機械生命体用兵装、アリスギアを扱う為の適性です。一部例外はあるものの、一般的には思春期の女子に多く見られます。
さらに、一般には年齢にともなって減少します。その減少には個人差があり、ある時全て無くなってしまう場合、緩やかに減少していく場合、あるいは30代に突入しても実戦に耐えうる適性を保持している人間も存在します。
しかし、しかしです。
新人が、それも出撃中に急変動するのはおかしいとしか言えないのです。
『《ベイルアウト準備! これ以上は何が起こるかわからんぞ! 》』
ベイルアウトとは緊急の脱出手段。シャード側から発動し、アリスギアが安全保証限界に到達したアクトレスを宙域から強制的に脱出させる手段です。
ベイルアウトならば一気に回収できる。河瀬というアクトレスに何が起こったのかわからないが回収して精密検査を受ける方が良いだろう。
それを言おうと口を開き___
『警報! 重力変動、数値から小型ヴァイス群の出現と予想、タイミングは____! 吾妻、後ろ! 』
唐突なヴァイス出現の警報。しかもアリスギアは後方への攻撃手段を持ちません。
迎撃の為、振り返り_____
『そこっ! 』
青白いビームが、後ろから駆け抜けて行きました。
2話です。切りが良いのでここでカットします。
ちなみにですが、CVイメージは
高速艇のおじさんはファットマン(ACVDより)
琵琶湖シャードの管制官はフィオナ(AC4シリーズ)とセレン・ヘイズ(ACfA)をイメージして書いてます。
キャラクター間の他人称がわからなくてつらみ……