人間は究極的なまでに自分主義の生き物だ。
思いやり、分かち合い、助け合い。そう口にはするもそれを実行しようとはしない。仮にしたとしてもそれは自分に安全の保障と利益がある時だけだ。
だから俺―――
将来の為、お前のことを考えてと自分の事を棚に上げて毎日のように説教してくる両親や嘲笑い、貶し、自己解釈の大義名分で虐めを正当化させる学校の奴等もそれを見て見ぬ振りをする大人も全てが屑だ。
そう思って全てに、何より自分自身にも絶望した俺は自殺した。
生きることに疲れた。よくある理由で俺は自殺したが、生きていた。特殊な能力を得て。
そして同じ能力を持つ
それからは忙しい毎日だった。
けど、この世界に居続けるよりかはマシだと思いつつ、俺は組織の一員として働いているある日に俺達と同じ
――
そいつらは俺達の組織とは違って自分達が人間という生物を超越した存在として人間を支配下に置こうとする組織。対立する組織との戦い。何度も死にかけることもあったけどそれも今日で終わる。
「クロノス! へレス!」
《はい! マスター!》
《これが最後の戦いです。気合を入れましょう、我が主!》
俺の呼び声に応じてくれる頼もしい相棒達。これまで共に戦ってきてくれたこいつらに感謝しながら俺は銃口を奴に向ける。
「何故足掻く!? 人間など下らない生物だと貴様は知っているはずだ! それなのに何故人間を庇う真似などする!?」
「英雄のつもりか!? 正義の味方になったつもりか!? くだらない! そんなものになったところで人間は何も変わらない! 己の欲を満たす為なら世界を救った英雄すらも穢す強欲者に何の価値がある!?」
叫ぶレイリーに俺は答える。
「ああ、そうだな。人間は強欲だ。欲を満たす為ならなんでもする。薄汚く、醜い生物だ。認めてやるよ、お前は何も間違っていない」
けど。
「だけど、それが人間の全てじゃない。それを俺に教えてくれた人がいる」
後ろを振り返る。そこには俺に光を与えてくれた桜が俺が勝つことを信じてくれている。
「別に人間を助けるわけでも庇うつもりもない。俺は俺を信じてくれる人の為に戦う。それだけだ」
そう、それだけだ。それだけで俺は戦える。
絶望した俺に光を与えてくれた。救ってくれた。桜と出会えたおかげで俺はここにいる。
「だからお前を倒す。この一撃に全てを込めて」
銃口に蓄積されるのはクロノスとへレスの二人の能力を融合させた最強の一撃。その身、その魂までもこの世から抹消させてしまうその一撃を放つ。
「
放たれたその一撃はレイリーに直撃し、レイリーの身体は崩れ散っていく。
「みと、めない……………にんげん、など……………」
その言葉を最後にレイリーは完全消滅。俺はレイリーが消滅した場所を見据えて最後に告げる。
「さよならだ、レイリー」
お前は過去の俺だ。絶望という暗闇に囚われた時の俺だ。
誰か一人でもレイリーのことを信じてくれる人がいたら……………いや、今更か。
過ぎたことはどうすることもできない。だから俺は突き進むしかない。
俺を信じてくれる人と一緒に。
それから後に
月曜日。いつものように学校に赴くと。
「おはよう。戒」
「ああ、おはよう」
桜と出会って二人で教室に向かう。その道中でこちらに視線を向けてくる奴もいるが無理もない。桜は学校で白崎香織、八重樫雫と並ぶ三大女神の一人。
そして俺の彼女でもある。
同じ
他の奴等には面倒なので言ってはいないが、俺は今の生活に満足していると思う。
教室に到着して始業チャイムが鳴るのを待っていると。
「よぉ、キモオタ! また、徹夜でゲームか? どうせエロゲでもしてたんだろ?」
「うわっ、キモ~。エロゲで徹夜とかマジキモイじゃん」
一体なにが面白いのか檜山とそのツレは南雲のことをゲラゲラと笑う。
「くだらねえ……………」
南雲も南雲で愛想笑い。笑って誤魔化して自分の席に座る。
《本当、嫉妬は見苦しいですね》
《男なら我が主のように好意を抱く異性に想いを遂げねば》
俺の中にいる二人がそんなことを言ってくる。
ほっとけ。別に関わることなんてないんだ。というよりも南雲ならともかくクソ之河とはこっちから願い下げだ。
人の善しか見てない、いや、悪を見ようともしない狂信者の類と関わったら面倒なだけだ。
《そうですね。どうしたらあのような性格になるのでしょうか?》
《あの者が戦場にいれば間違いなく己の理想で人を殺すでしょう》
二人にとっても天之河の評価はその程度だ。そう話している内に教師がやってきた。
いつものように朝の連絡事項を伝え、授業が開始される。
しばらくして昼休み。桜が俺のところにやってくる。
「はい戒。お弁当」
「ああ、何時も悪いな」
桜お手製の弁当箱を開けて一緒に食事をする。そんな俺達に男子は嫉妬、女子は羨望の眼差しが向けられる中で一人の女子生徒が男子生徒に近づく。
「南雲くん。珍しいね、教室にいるの。お弁当? よかったら一緒にどうかな?」
白崎香織だ。白崎は南雲と一緒に食事を誘うも。
「あ~、誘ってくれてありがとう、白崎さん。でも、もう食べ終わったから天之河くん達と食べたらどうかな?」
そう言って断るも白崎は追撃。そこに更に天之河が乱入した時だった。
教室の床に魔法陣が出現したのは。
「桜!」
俺は咄嗟に桜を抱える。
俺達は光に呑み込まれた。