ありふれた世界に異幻者を   作:ユキシア

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気紛れにクソウサギの我儘に付き合い、勝負をすることになった。

桜、ハジメ、ユエ、そしてハウリア族に見守られながら俺とクソウサギは勝負が始まる合図を待つ。

「始めるぞ」

「はい!」

「ああ」

ハジメはドンナーを上空に掲げて発砲。勝負が始まった。

「でぇやぁああああああああああああっっ!!」

始まると同時に大槌を握りしめて豪速とともいえる速さで接近してくるクソウサギはそのまま大槌を振り下ろす。

「遅い」

「あう!」

躱して蹴り飛ばすも、すぐに態勢を整えて向かってくるその姿にクソウサギの評価を少し上げる。

へぇ、少しはマシにはなったみたいだな……………。

チラリ、とクソウサギが砕いた地面を見る。

力も耐久力も少なくとも天之河よりはある。けど、良くも悪くもそれだけだ。

恐らくは〝身体強化〟に特化しているのだろう。まだまだ俺達には遠く及ばないが、成長の見込みはアリだな。

「やぁあああああああああああああ!!」

だが、身体強化だけでは限界がある。

俺は魔弾を連射させる。けど、クソウサギはそれがわかっていたかのように避けた。

「〝未来視〟か…………」

「貰いましたよ!」

直径一メートルはある樹を剛速球に投擲するクソウサギだが、俺は呆れるように息を吐く。

「この程度で勝った気になるな」

〝物理耐性〟の派生技能〝集中強化〟で樹を受け止めて、投げ返す。

「うぇえええええええ!!」

投げ返されるのが予想外だったかのように喚きながらもしっかりと避けるクソウサギに魔弾を撃ち込む。連射で。

「あだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだ!!」

殺さない程度に、だけど、痛めつける程度の威力で魔弾を連射させるも、クソウサギは折れずに向かってくる。

「無駄だ………」

今度はぶっ飛べ。

向かってくるクソウサギを空に飛ばす。強制的に。

「ま、まだまぁ…………ぐず」

ドシャッと落ちても立ち上がる。涙目になりながらも。

だから今度はカウンターの要領で〝豪脚〟で青白い空へ飛び立たせてやった。

ついでに空中にいるクソウサギに魔弾(威力中)を発射。命中。

「ひでぇな……………今、顔面にヒットしてなかったか?」

「…………………んっ、鬼畜」

「戒。後で少しお話しようね?」

離れた位置で桜達が何か言っているが無視(スルー)

頭から地面に落ちるクソウサギは頭を引っこ抜いて顔を泥だらけにしながらもその瞳は死んではいなかった。

確かに強くはなったみだいだな。身体だけではなく心まで。まぁ、そうでなければユエとの訓練に耐えられるわけもないか。

だが。

「俺はユエのように優しくはないんだよ」

「やぁあああああああああああ――――っ」

迫るクソウサギの首を掴んでそのまま地面に叩きつけて、再び〝豪脚〟で蹴り上げる。

「ぐふ……………」

「まだ終わりじゃねえぞ?」

上空に蹴り上げたクソウサギよりも上空に跳んで容赦なく地面に叩きつける。

今のを天之河がまともに喰らえば間違いなく死ぬ。それだけの威力でやった。だけど、この頑丈なウサギなら気絶程度で収まっているだろう。最悪、死んでもクロノスの力で死ぬ前の時間に戻してやればいいだけだ。

まぁ何はともあれ、これで終わり―――

「ま……………まだ、終わっていませんよ……………?」

かと思いきや、クソウサギは立ち上がった。

おいおい、マジかよ……………。それなりに威力は込めた筈なんだが……………。

流石の俺もクソウサギの頑丈さに驚きを隠せれない。

あそこまでされたら普通は身体だけではなく心までも折れる筈なのにどうして立ち上がれる? いったいなにがこいつを立たせている?

「……………………おい、クソウサギ。どうして立った?」

「ふえ? な、なんですか? いきなり」

「俺は別にお前が旅に同行することに反対したわけじゃない。ユエとの訓練に耐え切ったお前をそれなりに評価しているつもりだ。この勝負じたい俺にとっては時間の無駄しかない。それにそこまで痛めつけられてどうして立ち上がる?」

思っていた疑問をそのままクソウサギに告げるとクソウサギは変わらない真っ直ぐな瞳で言う。

「……………………戒さん。私達に言いましたよね? 家族を見殺しにしていると」

「ああ」

「戒さんの仰っていた通り、私達は心のどこかで自分の弱さを理由に家族を見殺しにしていたと思います。あの時の戒さんの言葉は今も私の胸に突き刺さっているのです」

「それで?」

「ですから証明したいのです。私達はもう奪われるだけの存在でも、弱さを理由に逃げないことを。戒さん、貴方に証明したいのです」

「そうかよ……………」

俺は心底呆れる。

それだけの為に痛めつけられ、涙を流し、泥だらけになりながらも立ち上がるなんてどうしようもない馬鹿に俺は心底呆れている。

けど、不思議なことに俺はそんな馬鹿は嫌いじゃない。

「なら、証明してみろ。お前が折れるまでとことん付き合ってやる。〝シア〟」

「ッ! はい! シア・ハウリア! 行きます!」

どんなに惨めな目に遭いながらもシアは笑顔を絶やすことなく折れずに立ち向かう。その瞳から輝く光も消えず、それでいて真っ直ぐに目を逸らさない。

強い意思を持つ兎人族シア・ハウリア。認めてやる。

お前はもう立派に俺達の仲間だと。

「ひやぁぁああああああああああ~~~~~~~!!」

けど勝負は勝負。負けるつもりなど毛頭ない。というか、負けたら負けたでこのウサギは絶対に調子に乗る。心は折れずとも、ここで絶対に鼻っ柱は折ってやる。

そうしてウサギは今日も星になる。

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